DRIVEN BY DESIGN建築とクルマ、日本の思想が生みだすデザインの革新

スペイン・バルセロナから北へ 1 時間半ほど走ると、同じくカタルーニャ州にある小さな町、オロットに到着する。ここをベースに長年活動し、2017 年には建築界で最も権威があるとされるプリツカー賞を受賞したのが、建築スタジオ「RCR アーキテクツ」だ。自然との関わり方を主とする自分たちの建築哲学について、日本の思想や伝統文化、マテリアルから強くインスパイアされたと公言する彼らの建築作品群を、ハイブリッドテクノロジーを搭載し、日本固有の思想をデザインにも応用した LEXUS UX250h F SPORT で巡り、日本の思想が広くデザインの世界にもたらす可能性を考察する。
そして、スペインのモータースポーツの聖地、カタロニア・サーキット。ここでは LEXUS RC F をベースにしたレースカーである LEXUS RC F GT3 が参戦する欧州最高峰の GT レース「ブランパン GT シリーズ」の “体験” を通じて、LEXUS F が磨かれる現場を目撃するだけではなく、そのレースで培った DNA を宿す UX F SPORT が誇るパフォーマンスを存分に体感する旅に出た。

日本の思想が息づく建築デザインを UX で旅する

日本滞在でたどり着いた建築哲学

旅は南ヨーロッパ特有の活気にあふれるバルセロナの街から始まる。UX250h F SPORT を駆る今回の旅は、発見の連続となること必至だ。伝統とモダニティを融合する独自の感性から建築を生み出す「RCR アーキテクツ」の作品群を目の当たりにして、いま世界が評価するモノづくりの現場を肌身で感じることで、クルマづくりとの共通点を見つけ出すことも目的の一つだからだ。至高の立体芸術とも称される建築を生み出す 3 人の創設メンバー、ラファエル・アランダ氏(Rafael Aranda)、カルマ・ピジェム 氏(Carme Pigem)、ラモン・ビラルタ氏(Ramon Vilalta)の名前のイニシャルから名付けられた小さな建築スタジオ。彼らの世界観は、周囲の世界と有機的に溶け合う建築の創造を前提とする。
「自然との関係性を理解することによって、この世界における人や建築の役割が自ずと分かるようになります」とビラルタ氏は語る。

1990 年に日本を訪れ、3 週間の滞在期間中に「それまでにない深遠な体験」を得たという RCR の 3 人。彼らの根幹となる建築哲学は、日本からの少なからぬ影響のもとに築きあげられたと語る。「私たちは日本を旅する途上で、内と外の境界線が美的で有意義な空間になり得るということ、つまり独立した物・対象とそれを取り巻く環境の関係性を大切にするという考え方に遭遇したのです」とアランダ氏。
RCR が日本滞在を経て獲得したこの哲学は、UX のデザインコンセプトにも通底する考え方だ。実際、UX 開発に携わったデザイナーたちは、建物の内と外の滑らかなつながりを一つの特徴とする日本建築のコンセプトを軸としたクルマを作ろうと試みた。プロジェクトチーフデザイナーは次のように説明する。

「日本家屋の特徴の一つとして、縁側やベランダがあります。視覚的に外部と内部の線をつないでその境界をあいまいにするという、日本建築の思想です。内と外の境界線を曖昧にするどちらにも存在しない空間を作ることで、二つの間を容易に行き来することができるようになります。UX もこの考え方を用いて、キャビンとエクステリアをシームレスにつなげるデザインを採用しました」

地下聖堂のようなワイナリー

日本の思想を通底する RCR と LEXUS。今回のドライブで、RCR の礎となる哲学をさらに深く体感するため、彼らの代表作とも言われる「ベルロック・ワイナリー」を訪れた。カタルーニャの田園地帯の奥深くにあるこのワイナリーの敷地内で RCR が手がけたセラーには、大胆でコンセプチュアルなアプローチが用いられている。第二次世界大戦時代の船体に使用されていた鋼板を再利用し構造体を構成する「セラー・ブルガゴル」は、文字通り地中に広がるワインの一大ギャラリーとも言える空間だ。

照明はほとんどなく、外光も天井にところどころ入ったスリットから神秘的に光が差し込むだけの暗闇濃い地下の世界に降りていく。目を凝らすと無数のワインボトルが壁面に並んでいることに気づく。また迷路のように入り組んだ通路を進むと、静寂に満たされた神秘的とも言えるワインのテイスティング空間が現れる。
醸造施設なども内包させるこの巨大な複合施設は、いたるところで太陽の光、風、また天候によっては雨などの“自然”が自ずと空間に入り込み、一見すると外界から切り離された地下空間のようであっても、実は周囲とのつながりがしっかりと感じられる。そして一番の驚きは、極めてモダンな意匠にも関わらず、同じ敷地に建つ 12 世紀に建てられた農家の母屋やその周辺に広がるブドウ畑と美しいハーモニーを実現している点にある。まさに RCR の真骨頂とも言うべき作品だ。

ベルロック・ワイナリーを後にして、次の目的地であるミシュランニつ星のレストランを有するホテル「レス・コルズ・パベヨーンズ」へと向かう。客室は禅の思想が反映されたシンプルな空間設計でありながら、天井、床、壁は幾重にもわたる巨大な半透明のガラスで構築することで、室内にいながら自然の一部となるような錯覚を感じさせる。さらに縁側的なスペースには、日本の坪庭にインスピレーションを得た庭園が隣接をする。ここもまた内と外の境界線に対する建築的なアプローチを体現する RCR の代表作であり、世界各国から“建築巡礼の旅”に訪れる人は絶えないと言う。

クリエイティブを深化させる場所

次の目的地への移動中、UX250h F SPORT のウインドウスクリーン越しには、まるで日本文化特有の「借景」のように、美しい田園風景が万華鏡のように次々と展開されていく。また高速道路や山麓特有のアップダウンを特徴とする幹線道路では、環境に配慮したハイブリッド性能を備えつつ、パワフルなパフォーマンスに満ちたこのクルマの迫力をアクセル、ステアリングの双方を通じて堪能することもできる。

しばらくして到着したのが、小高い山の麓に広がる「ラ・ヴィラ」だ。RCR のクリエイティブな研究・考察を促進するために開かれた建築研究施設とも言うべき建物で、その目的を「建築と自然をリンク」させるRCRの試みをさらに深化させることにあるとビラルタ氏は説明する。140 ヘクタールにも及ぶ広大な敷地のなか、ビラルタ氏に導かれて鬱蒼とした森を進んだ先には、無数の透明な円盤を水滴に見立てた野外インスタレーションがその姿を現す。ここは世事を離れてクリエイティブな思考に没頭したい時、自然の中に身を置き自身のルーツに戻るための場所として作られたと言う。
またビラルタ氏が敷地内に建設予定の「紙のパビリオン」の模型を見せてくれた。「紙のパビリオン」は、90 年代に初めて日本に訪れ、日本の美について大きな影響をうけたのち、近年、彼らが信頼を寄せる日本の友人から紹介された「吉野の森」が深く関係している。これは奈良県吉野町の人々と協力した日本文化との懸け橋となるプロジェクトで、作品には日本が世界に誇る吉野の木材(杉)と柔らかな内皮を用いて作る伝統的な和紙を随所に使用する予定だ。

日本古来の伝統に感化された意匠の採用は UX も同様で「刺し子」がその代表例だ。古くから日本に伝わる手法で、匠の技で作られた美しい刺繍は生地を丈夫にする効果もあるが、UX ではこの刺し子をモチーフにしたステッチがシートに施されている。
建築もクルマも古から続く日本の美意識や伝統技法を、現代の解釈と重ね合わせることで、世界中で人々が未だ見たこともない景色を作り上げているのである。

世界屈指のグランプリサーキットを
UX F SPORT で駆ける

スペイン GP 開催地であるカタロニア・サーキットを疾走

革新的な建築の世界を後にして、UX250h F SPORT はそのパフォーマンスの真価を発揮するため、カタロニア・サーキットに向けてハンドルを切った。
1991 年に建設された全長約 5 キロのこのレーストラックは、オープン以来長年に渡って、モータースポーツの最高峰である F1 スペイン GP を開催する地としてその名を知られてきた。F1 で 2 度の世界王者に輝いた母国の英雄フェルナンド・アロンソ選手の情熱的な走りを見るために、熱心なモータースポーツファンたちがスペイン各地から訪れた場所である。近年では F1 のプレシーズンテストの開催と同時に、このサーキットで各チームの最新の F1 マシンが全世界にお披露目されることが通例となっている。

高低差のある土地に全長 1 キロのロングストレートから続く、中低速・高速コーナーが織り交ざるレイアウトが特徴で、マシンの総合力が試されるサーキットとして名高い。そこに年間を通じて安定している温暖な気候が合わさることで、各メーカーのレースカーや市販車の開発にも頻繁に使用されている。また 2020 年東京オリンピックの富士スピードウェイと同じく、1992 年バルセロナ五輪の際には、自転車競技の会場として使用された舞台としても有名だ。
このテストコースとしても名高いカタロニア・サーキットで UX250h F SPORT を走らせるのは、官能的な体験であると同時に、UX250h F SPORT の実力を証明する良い機会だ。スタート/フィニッシュラインから力強くアクセルを踏み込むと、2 リッター直列 4 気筒エンジンは軽快にレスポンス良く加速し、瞬く間に第 1 コーナーに進入する。重心が低く、精緻なステアリングと視界の良さを特長とするこのクルマは、その後もアップダウン、中低速、高速コーナーを有するバラエティ豊かな特徴を持つサーキットで鋭くも安定した走りを披露した。世界中のサーキットトラックで鍛え上げられた、F SPORT の実力を十二分に感じることのできたホットラップであった。

世界最高峰の GT3 レースを体感する

表彰台に迫る果敢なレースを展開

次はこうしたサーキット走行をも可能とする LEXUS の開発に欠かすことのできないモータースポーツの世界を体感する。
現在、世界中でもっともポピュラーなスポーツカーレースのカテゴリーなのが、市販のハイパフォーマンスモデルにレースチューンナップを施したレース専用車両「GT3」による GT3 レースである。そして GT3 レースの最高峰とも言われるのが、RC F GT3 が参戦する欧州の「ブランパン GT シリーズ」であり、ここカタロニア・サーキットで同シリーズの 2019 シーズン最終戦を迎えた。
今シーズン、RC F GT3 を擁してフル参戦を果たした LEXUS TEAM は、ともにしのぎを削るメルセデス AMG、アウディ、BMW、ポルシェなどの名門と並んでの上位フィニッシュでシーズンを終えるべく、レース前の士気は最高潮に達していた。

その期待に応えるかのように、エリック・ドゥバール選手、ベルナルド・デレズ選手、ファビアン・バルテズ選手が乗り込んだ RC F GT3 は果敢な走りを展開し、レースも残りわずか僅かになった時点で、表彰台の現実味を帯びてきた。しかし、惜しくもライバルチームとのクラッシュが原因で排気管が破損、表彰台まであと一歩という位置まで迫ったが、最終的にはリタイアという結果に終わった。
「我々はこのシーズンを非常にポジティブな形で終えるつもりでいたので、とても残念です」とチームマネジャーを務めるサイモン・アバディ氏は語った。「リタイアは苦渋の決断でしたが、ほかに選択肢はありませんでした」
イタリアのモンツァ・サーキットから始まったブランパン GT 2019 シーズンは、2 戦目のシルバーストンで表彰台を獲得し、伝統のスパ 24 時間レースでは 6 位を獲得した。レース距離や天候も異なるバラエティに富んだシリーズで、こうした力強い走りを披露する一方、上位走行中にリタイアを喫する場面も多く、さらなる強さへの学びの多いシーズンとなった。
そして、最終戦のカタロニア・サーキットももちろんだが、こうした世界有数のサーキットで強力なライバルたちとレースで磨いた走りのデータは、LEXUS のレースカーのみならず市販車開発にも絶えずフィードバックされ、その走りの進化を支え続けているのだ。

今回、豊かな自然に彩られたスペイン北東部への旅で思考を巡らせたのは、自然と人間活動の融合に対するアプローチだ。日本の思想や日本建築の伝統に感化され、内と外のシームレスな融合と、そこに生み出される新たな空間価値の出現という困難な方程式の解を見出した、RCR の作品と UX F SPORT。モビリティも建築も自然との調和を追求する趨勢の中で、時代をリードするために伝統的な知恵やクラフトマンシップに対して、革新的かつ現代的な解釈を行うことで、デザインを推し進める確固たる哲学が必要なのである。
加えてLEXUS は、モータースポーツで得たデータや知見を F / F SPORT モデルをはじめ、すべての LEXUS 車に注ぎ、唯一無二の走りへの進化を加速させているのだ。

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