TWO EPIC ROADS新型 RC F SPORT と刻む 3,300 キロのヒストリックロード
「真にスポーツと呼べるのは、登山、闘牛そして自動車レースだけだ」。この名言を残したノーベル賞作家、アーネスト・ヘミングウェイが居を構えたフロリダ半島の最南端キー・ウェストへと続く全長約 180 キロの海上道路「オーバーシーズ・ハイウェイ」と、絶大なる人気を誇るアメリカンレースを生んだサーキット「デイトナ・インターナショナル・スピードウェイ」。アメリカ・フロリダ州の地に人類が築き上げたふたつの偉業的モニュメントを「新型 RC F SPORT」で巡る。
アメリカが誇る“道の偉業”-デイトナ&オーバーシーズ・ハイウェイを走破する
冬でも比較的温暖なサバナ気候を特徴とするアメリカ・フロリダ州。マイアミ・ビーチに代表されるリゾートのイメージが強いかもしれないが、近年は世界有数のアートフェア「アート・バーゼル」が毎年開催されるなど、芸術、デザイン、ライフスタイル文化のハブとしても世界から注目されている。
フロリダは自動車文化との繋がりも深遠だ。その代表格が「デイトナ・インターナショナル・スピードウェイ」。バラエティに富んだコースレイアウトやコーナリングを主とする欧州スタイルとは異なり、“高速バトル”というアメリカンレース最大の特徴を生み出したオーバル・トラックの起源であり、世界のモータースポーツに多大な影響をもたらした功績は広く知られている。
そしてもうひとつは、キューバとの貿易路として建設された鉄道路線をベースに、42 の橋でサンゴ礁の海上をつなぐ「オーバーシーズ・ハイウェイ」。これまで数多くのハリウッド映画作品にも登場してきたアイコニックな建造物で、風光明媚なドライブルートが各地に存在するアメリカでも、“全米一美しい”と称される世界最大級の海上道路だ。
どちらも眼前に望むと息を呑まずにはいられない破格のスケールを誇示する、人類の記念碑的モニュメントといっても過言ではないだろう。そんな自動車文化にゆかりの深いロケーションを訪ねるロードトリップに、新型 RC F SPORT を駆って出かけた。
アメリカのモータースポーツ史にその名を刻むデイトナ
ウォルト・ディズニー・ワールドやケネディ宇宙センターといった、世界的観光名所を擁するアメリカ・フロリダ州オーランドから北東へクルマを走らせること 1 時間あまり。フロリダ半島の大西洋に面するほぼ中腹に位置するシーリゾートが、かの有名なデイトナ・ビーチだ。モータースポーツファンならずとも、アメリカン・レーシングの世界に燦然と輝くその名前を一度は耳にしたことがある人も多いはずだ。というのも年間の観客動員数は 400 万人を超え、ヨーロッパ起源の F1 に遜色ない伝統と人気を誇るストックカー(市販車)レースシリーズ、NASCAR(National Association for Stock Car Auto Racing)が誕生したのがまさにこのデイトナ・ビーチなのである。実際、街中をドライブしただけでも、レースにちなんだカフェやレストランがそこここに並んでいることに気づく。また NASCAR のホーム・サーキットであるデイトナ・インターナショナル・スピードウェイへと一直線に続く通りは、サーキット名をそのまま冠しているといった具合で、偉大なモータースポーツ史を“ともに築き上げた誇り”が、街のいたるところに息づいている。
ビーチは最速を競う“Car Guys”が集まったメッカ
デイトナがモーターレーシングの起源として特に際立っているのは、サーキットではなく海岸線でレースが行われていたという事実だ。足で力強く踏みつけても、靴跡すらさほど残らないほどの硬い砂を特徴とし、見渡す限りフラットに続くビーチは全長が約 37 キロもある。そのユニークな地形を生かして、 1900 年代初頭から Car Guys が集まり、自動車の地上最速記録を競いあった。自動車技術の進化の速さを語る逸話でもあるが、実際に 1920 ~ 30 年代にはワールドレコードが次々とこの地で樹立された。レース会場として、アメリカ国内のみならずヨーロッパのライバル都市と比べても、デイトナは一目置かれる存在で、「ティファニー」が勝者に授与するトロフィーを製造していたことからも、ステイタスの高さをうかがい知ることができる。“最速”の栄光を求め、ハイスピード、ハイパワーで抜きつ抜かれつのバトルを繰り返してきたこのデイトナ・ビーチの出自が、高速レースを追求したオーバル・サーキット誕生の布石となったのだろう。
NASCAR 設立を牽引した“ビッグ・ビル”の功績
海岸線を舞台としたスピードレースを、世界有数のモータースポーツへと進化させた功労者こそが、身長 198 センチを超える体格から“ビッグ・ビル”のニックネームで知られた、ウィリアム・フランス(1909-1992)だ。1929 年に勃発した世界恐慌を逃れて、ワシントン D.C. からデイトナに居を移していたビルは、レーサーとしての顔ももち、デイトナ・ビーチでのレースに参戦した経験もあったほど。当時は、レースの公式な興行主が不在だったため、賞金、保険、プロモーション、スケジューリングなどすべてがカオス状態だった。事態打開の相談をもちかけられたビルは、影響力のあるレーサーやプロモーターらと手を組み、1947 年に NASCAR を組織したのだった。アメリカを代表するモータースポーツ史の記念すべき幕開けである。先見の明と辣腕で知られたビルは、その後デイトナ・インターナショナル・スピードウェイ建設の指揮も執り、NASCAR を全世界に知らしめることとなる。この絶大なる功績を記念したビルの銅像はサーキット正面に建ち、今もその威厳を雄弁に語り継いでいるかのようである。人とクルマがビーチでともに歩んだその道は、大きなモータースポーツカルチャーのメインストリームとなっていった。
デイトナ・ビーチを走り、先人が目にした光景を追体験
世界のモーターカルチャーとつながるこのデイトナ・ビーチを、シャープに引き締まった新たなプロポーションと、スモールライトが一体化した精悍なフロントマスクが特徴の新型 RC F SPORT で走る。海岸線は一般開放されているためスピード規制はあるものの、自分の手でステアリングを握り、当時のドライバーたちが目にしたであろう光景を 360 度体感できるのはとても特別なひと時だ。先人たちが走った砂の感触を確かめるように、ゆっくりとアクセルを踏む。レーシングカー譲りの専用チューニングが施された足元は、やや硬い砂の路面でも、しっかりとした立ち上がりとクリアなレスポンスをドライバーに伝える。また海側から太陽の光が降り注ぐ朝方に訪れると、海面が黄金色に光り輝き、フラットで真っすぐなビーチがどこまでも続いているような幻覚におそわれる。デイトナがもつこの風光明媚な大自然の容姿に息を呑んだドライバーやレース関係者も数多かったに違いない。デイトナ黎明期から数えて1世紀近くが過ぎようという今でも、アメリカン・レーシングの起源に触れようと愛車で訪れる Car Guys たちがなぜ後を絶たないのか、ここに身を置けばすぐに理解できるだろう。
観戦シートは 10 万超!北アメリカ最大級の巨大サーキット
デイトナ・インターナショナル・スピードウェイのオープンは 1959 年で、以後 60 年の間に増改築工事は 4 度行われ、現在の座席数はなんと 10 万 1,500 席を数える。巨大な野球スタジアムをしのぐスケールで、観客席ひとつひとつが赤、白、青などランダムに彩色されるカラフルなデザインが目に楽しい。またデイトナ名物のバンクトラックは、間近で見ると直立に近い“壁”のようで、超高速でバトルを繰り広げるレースカーの模様が、地上レベルからでもはっきりと観戦できる設計になっている。トラック内に目を移すと、膨大な面積を誇るインフィールドには、キャンピングトレーラーで観戦に来るファンのためのパーキングスペースや、ファミリー向けに観覧車などを用意したミニ遊園地があり、アメリカならではのオープンでカジュアルな雰囲気に満ちている。ちなみに 24 時間レースには夜間照明が欠かせないが、デイトナには 2,000 本以上のライトが設置されており、照明器具を備えたスポーツ施設としては北米最大規模の大きさ誇るという。
スリリングでエンターテイメント性を追求したトラック
デイトナを建設するにあたって、高斜度のバンクトラックを望んだのは誰あろうビル・フランス本人であった。超高速レースの実現と、レースカーの熾烈なバトルを観戦しやすくするエンターテイメント性を追求してのことだった。バンクを建設するにあたっては、土台となる大量の盛り土が不可欠だったが、これはインフィールドを掘って用意したという。その盛り土をコースレイアウトに沿って高く積み上げて基礎をつくり、その上にアスファルトを敷くことで現在のような急峻なバンク角が実現されたというわけだ。最大斜度は 31 度あり、ホームストレッチでも 18 度ある。レース前にはファンの多くがターマックに座ったり、駆け上がったりと路面の斜度を確かめる姿が多く見られた。実はインフィールド内に真水を貯える“湖”があるが、これは盛り土を掘り出した際にできた巨大なくぼみに水を引き込んでつくられた人工湖なのだ。
LEXUS RC F GT3 新チーム「AVS」も初お披露目
米国最高峰のモーターレースシリーズのひとつ「IMSA ウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップ」の 2019 シーズン開幕戦であり、世界三大耐久レースのひとつ「ROLEX 24 at DAYTONA」が幕を開けた。半世紀以上の歴史をもつ 24 時間耐久レースだが、なかでも今シーズンから参戦する新チーム「AIM Vasser Sullivan(AVS)」は、ひと際目を引く蛍光イエローをあしらったボディカラーの LEXUS RC F GT3 を擁して、IMSA の舞台に初登場した。メルセデス、BMW、アウディ、ランボルギーニ、ポルシェなど世界最高峰の GT3 カーが集う GTD クラスへのエントリーを果たし、百戦錬磨の実績をもつライバルチームと対峙するレース本番への期待の高さは、AVS のレースカーやチームスタッフを取り囲むファンの熱量からヒシヒシと感じられた。手を伸ばせばレースカーに触れることができるほどの距離まで近づけるため、熱心にマシンのディテールをチェックしたり、写真を撮ったりするファンが多いオープンな点もまた、欧州と異なるアメリカン・レーシングの特徴と言える。
アメリカン・レーシングの歴史が詰まったミュージアム
サーキットで展開されるバトルが現代レースの粋を集めたひとつの象徴であるとすれば、隣接するアメリカのレース史の博物館「モータースポーツ・ホール・オブ・フェイム・オブ・アメリカ」は、時代とジャンルを超えてレーシングカーの輝かしい業績を集約した一大メッカといえるだろう。デイトナ・ビーチの起源とそれに続くヒストリーに始まり、オープン・ウィール、ドラッグ・レーシング、ストック・カーなど各カテゴリーの名車の数々や、殿堂入りしたドライバーの栄光と業績が展示されている。なかでも圧巻なのが、デイトナ・インターナショナル・スピードウェイ名物の 31 度バンクを再現した巨大ディスプレイ。NASCAR 創設者、ウィリアム・フランスが思い描いた急斜角コーナーに挑むレースカーの往年の勇姿が蘇ってくる展示となっている。映画「カーズ」シリーズに登場したキャラクター、ドック・ハドソンの元ネタとなった「ファビュラス・ハドソン・ホーネット」も展示されている。子どもから大人まで楽しめるコンテンツを網羅しており、アメリカン・モータースポーツ・カルチャーの裾野の広さを感じられる場所として、デイトナを訪れた際には絶対に見逃せないマストスポットだ。
次回は世界中のエンスージアストやモータースポーツファンが注目する 2019 年シーズン最初のビックレース「ROLEX 24 at DAYTONA」のドラマティックなレースの模様と、アメリカ独特の超高速オーバル・サーキットならではの“スポッター”と呼ばれる第 2 のドライバーたちの熱戦もお届けします。
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