DESIGN DRIVEN Vol.1歴史と革新が共生するデザイン都市 バルセロナを“F”で巡る
稀代の建築家、アントニ・ガウディの作品群で知られるバルセロナは、コンテンポラリーな現代建築が見本市のように並ぶデザイン都市としての認知も高い。伝統を守りながら、新しい潮流を拒まない “Design Driven” な進取の精神にあふれた街とその文化、そしてヨーロッパのモータースポーツを目撃する。
ローマ帝国時代の植民都市として基礎を築いた街らしく、通りに迫り来るような重厚で迫力のある石造りの建物が並ぶバルセロナ。サッカーの FC バルセロナや、港町であるがゆえの美味なシーフードを求めて訪れる旅行者が途絶えることはないが、現代建築や都市デザインもまた、この街の大きな魅力のひとつとなっている。バルセロナを語るうえで何よりも欠かせない稀代の建築家、アントニ・ガウディ(1852-1926)が手がけたサグラダ・ファミリアをはじめとする、一連のガウディ建築群はもちろんのこと、フランク・ゲーリー、ヘルツォーク&ド・ムーロン、ジャン・ヌーヴェル、伊東豊雄といった世界有数のスター建築家が手がけた作品が、文字通り隣り合わせに軒を連ねているのだ。
そんな “Design Driven” な街をドライブするのに選んだクルマは LEXUS RC F。というのもバルセロナをクルーズして気づくのは、この街がもつデザインへの“執着心”にも似たパッションが存在するからである。電柱1本立てるのにもデザインコンセプトがなければ NG が出るのではと思ってしまうくらい、街のいたるところに造形と美学の意識が徹底していきわたっている。まさにこの造形、美学、さらには機能へのこだわりが昇華したクルマこそ、この街を駆けるにふさわしいのである。
港湾都市バルセロナの象徴たち
バルセロナが港湾都市であることを高らかに主張しているともいえるのが、ガラス張りのエクステリアがビーチサイドのランドマークにもなっている、ラグジュアリーブティックホテル『W』の存在だ。地元出身の世界的建築家、リカルド・ボフィルによるデザインで、かつてバルセロナの港から世界の海へと旅立っていった船の帆にインスピレーションを得たフォルムをもつ。目と鼻の先に広がる地中海の蒼さや、表情豊かな天空の様相がミラー状の外壁に映り込み、一見するとボリュームのある佇まいながら、視界の限り広がる海の情景に溶け込んでしまうかのようなデザインは、見るものを圧倒する。この W ホテルが見下ろす麓には、個人所有の大型クルーザーが多数停泊するマリーナがあり、そのさらに先には「海に浮かぶ高層ビル」とでも形容したくなる超大型豪華客船が並んでいる。劇場、プール、スケート場などを壮大なスケールで船内に備えるこれらクルーザーシップは、その大きさゆえに見る者の遠近感を狂わせるほど圧倒的だが、同時に海に接するバルセロナという街を象徴する存在ともいえる。
世界的建築家の作品が一堂に会する
Wホテルを南端の起点として北東方向に伸びていくのがバルセロナの観光名所のひとつでもある砂浜のビーチ、バルセロネータだ。レストランやバーが数多く立ち並び、サーフィンなどマリンスポーツを楽しむ市民の姿が多く見られる。ここから弓状に広がる海岸線を一望すると、バルセロナがなにゆえに“建築デザイン都市”として知られるか合点がいくに違いない。
Wホテルからスペインの自由で奔放な空気に満ちた地中海沿いのシーフロント・ロードを RC F でドライブすると、最初に目に飛び込んでくるのが “魚” の巨大オブジェ。グッゲンハイム美術館を手がけたことでも知られるカナダ人建築家、フランク・ゲーリーの作品で、その名も「Flying Fish」だ。1992 年に制作されたもので、高さ35メートル、長さ 54 メートルのステンレス製オブジェの表面は淡い金色を帯びている。時間帯によって輝きの表情を変化させる作品は、シーフロントのランドマークとなっている。さらに巨大ソーラーパネルのような躯体をもったバルセロナ・インターナショナル・セーリング・センターや、すぐ隣にはスイス人建築家、ヘルツォーク&ド・ムーロンによる「フォーラム・ビル」、「ダイアゴナル・ゼロゼロ」などが建ち並び、車窓はまるで世界的建築の見本市を見ているかのような“賑わい”ぶりなのである。
バルセロナの市街をドライブ
古代から続く旧市街と、19 世紀半ばに敢行された市域拡大政策によって築かれた新市街のアイコニックなデザイン建築が融合する街、バルセロナ。このバルセロナの蒼い空と呼応するかのようなボディカラーが美しい LEXUS RC F。パフォーマンスモデルとしてその卓越した機能だけではなく、クーペとしてデザインをも、さらなる高みに昇華させたこのクルマのボディラインは、“Design Driven” なこの街の息遣いにもピタリと呼応する。意外ではあるがバルセロナではブルーのボディカラーは珍しいようで、スレ違う歩行者、隣に停まったクルマのドライバーなど多くの人の視線を集めていることに気づく。
この市街ドライブの途上では、数多くの目を引く現代建築に遭遇する。フランス人建築家、ジャン・ヌーヴェルがデザインした、吹き上がる水をイメージしたビル「トーレ・アグバール」や、中世に起源をもつ蚤の市が開かれる「エン・カンツ」は、幾何学的な大屋根が特徴で、気鋭のスペイン人建築家、フェルミン・バスケスの手による。さらに、日本人建築家、伊東豊雄は「トーレス・ポルタ・フィラ」と呼ばれるホテル&オフィスビルや、ガウディ作品のひとつである「カサ・ミラ」の通りを挟んだ斜向かいに建つホテル「スイーツ・アベニュー」のファサードも手がけている。
100 年超でも未完成のサグラダ・ファミリア
ガウディの親友であり、最大の支援者でもあった実業家、エウゼビ・グエルの邸宅や庭園など、ユネスコ世界遺産に登録されている建築群はもちろんだが、サグラダ・ファミリアを見ずしてバルセロナを語ることはできない。1882 年に着工して以来、完成までに 300 年は費やすと言われてきた教会建築。ガウディはまだ無名だった頃、辞任した初代建築責任者の後を継ぐ形で設計の責務を任ずることとなった。オリジナルのプランを全面的に見直して建てられることとなったガウディ案は、イエス・キリストの生涯や逸話を伝える彫刻によって壁面が彩られている。元来、ガウディの頭の中にしかなかったといわれるサグラダ・ファミリアの最終デザインだが、ガウディ死後も弟子が口伝するなどして資料化し建設を進めたという。途中、スペイン内戦など不運も襲うが、現在では 3D モデリングなど設計技術の進化からスピードアップが図られ、当初の 300 年計画からほぼ半減する(!)2026 年(ガウディ没後 100 年に当たる)には完成予定とされている。
カフェ文化に新しい潮流が到来
時にクルマ一台通るのがやっとという路地が続く旧市街は、昔ながらのバールや生活必需品を扱う店が軒を連ね、バルセロナ市民の日常を垣間見ることができる。なかでもスペイン人の生活に欠かせないのがカフェの存在だろう。カウンターに立ってエスプレッソを一杯“ひっかける”のが定番のイメージかも知れないが、バルセロナの街にも「サードウェーブコーヒー」(日本にも進出した「ブルーボトルコーヒー」のように、コーヒーがもつ本来の味を追求する)の風が吹いている。サグラダ・ファミリアからほど近い、ヴィラ・デ・グラシア地区にある「SYRA COFFEE」もそのひとつ。コーヒーへの惜しみない愛情を“拡散する”ため、2015 年にオープンした店内は、無垢の木材で仕立てられ、コーヒーの薫りに満ちた気持ちの良い空間だ。バリスタが客の注文を受けて自慢の一杯を淹れる、デザインとエンジニアリングが融合したコーヒーマシンは、モーターバイクのシャーシに着想を得た構造をもち、温度計やタイマーがスピードメーターを模しているユニークな逸品だった。スペイン人が自動車やモーターサイクルを愛している証拠であろう。
自動車生産のハブでもあるカタロニア州
スペインという国に対してクルマというイメージは決して強くないかもしれないが、実はドイツに次ぐヨーロッパ有数の自動車生産国という地位を確固たるものにしている。なかでもバルセロナが州都となるカタロニア地方は中心的存在であり、国内で生産される 4 台に 1 台の割合がこの地でつくられているという具合だ。
市街の道路の様子は、グローバル都市であればどこもそうであるように、世界各国のクルマが一堂に会する“るつぼ”と化しているが、そのなかでひと際目を引くのがタクシーだ。ニューヨークのイエローキャブや、ロンドンのブラックキャブのようにアイコニックな存在で、キーカラーはブラック&イエロー。まるでニューヨークとロンドンの間をとったかのようなカラーリングだが、客待ちで行列を成すタクシーは、まるで舞台のセットを構成するプロップのようで愛らしく、しかし同時に存在を誇示しているかのようでもある。
こうしてモダン建築や都市デザインの魅力あふれるバルセロナの街だが、8 気筒 5.0 リッターエンジンを積む RC F にとっては、走りの面でいくばくか物足りないのも確か。心地よいエンジンサウンドを求めて、Vol.2 では市街区を飛び出し、RC F GT3 が世界の強豪と戦うヨーロッパの GT3 レースの最高峰であり、世界の GT3 レースの総本山とも称される、ブランパン GT シリーズ最終戦が開催されるカタロニア・サーキットへと一路向かう。
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