JOURNEY

食べることで、世界をよくしていく取り組みに参加できる──ウェルフード マーケット&カフェ「imperfect表参道」

2020.03.25 WED
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食べることで、世界をよくしていく取り組みに参加できる──ウェルフード マーケット&カフェ「imperfect表参道」

2020.03.25 WED
食べることで、世界をよくしていく取り組みに参加できる──ウェルフード マーケット&カフェ「imperfect表参道」
食べることで、世界をよくしていく取り組みに参加できる──ウェルフード マーケット&カフェ「imperfect表参道」

東京・表参道ヒルズの同潤館1階に、2019年7月にオープンした「imperfect表参道」。商品購入時に渡されるチップで投票することによって、世界の食と農の課題解決に取り組むプロジェクトに関わることができるのが特徴だ。その狙いについて、代表の浦野正義氏に聞いた。

Text & Edit by lefthands
Photographs by Takao Ohta

さまざまな人たちを巻き込み、世界の食と農を取り巻く社会課題の解決を目指す取り組み

「imperfect表参道」は、imperfect株式会社が運営する同ブランドのコンセプトを発信する場となっている。ブランドミッションとして掲げているのは、「The world is imperfect, so do well by doing good. 不完全なこの世界。だから、いいことをして世界と社会をよくしていこう」。社会課題に対して意識の高い20〜40代の女性を中心に人気を博している。
ガラス張りで日差しが差し込む、開放的な店内
ガラス張りで日差しが差し込む、開放的な店内
「imperfect」という名称に込められているのは、「世界の食と農を取り巻くさまざまな社会課題を世界の不完全(imperfect)の一つと捉え、たとえ不完全(imperfect)な取り組みだとしても、自分たちでできることから少しでも世界と社会をよくしていこう」という思いだ。

imperfectは、シンガポールの農産物商社、Olam International(オラム)社とパートナーシップを結び、同社とともに、農家の自立を促す3つのプロジェクトに、imperfect表参道の売り上げの一部を充てている。どのプロジェクトに資金が充てられるのかは、利用客の投票によって決められるのがポイントだ。

imperfect表参道では、社会的価値と環境的価値の高い取り組みを通じて生産された素材を使用した商品が提供されている。そのため、同カフェではメニューのことを「私たち生活者のみならず、世界や社会にとってもWell(よい)」という意味を込めた「ウェルフード&ドリンク」と呼んでいるのだ。

素材だけでなく、レシピにもこだわりぬかれたグレーズドナッツやアイスクリーム、コーヒーなどの商品を通じて、ただ「おいしさ」を提供するだけでなく、社会課題の解決を目指す活動に「たのしく」参加できる場所となっている。
アイスクリームを購入するとナッツを自由にトッピングできるのが嬉しい
アイスクリームを購入するとナッツを自由にトッピングできるのが嬉しい

利用客が自ら考えて投票することで、プロジェクトに参加できるシステム

商社で勤めてきた経歴を持つimperfect代表の浦野正義氏は、若い頃から食品生産の現場に関わり、食と農を取り巻く問題を目の当たりにしてきたという。フェアトレードなどの認証品は課題解決に対して成果を上げているが、それでも全ての問題が解決されたわけではないと語る。
imperfect代表の浦野正義氏
imperfect代表の浦野正義氏
認証品には厳格な審査があり、要求された基準を満たすために資金のある大農家が有利となっている。また小農家は、認証を得るために他の農家とコンソーシアムを組む際に仲介業者に利益の大半が落ちるケースもあるなど、不利な状況に置かれているのだ。

そこで、「認証の有無にかかわらず、よいものをよいと言える世の中にしていきたい」という思いが芽生えたという。

「そのためには、お客さまを巻き込んでよい食のサイクルを作る必要があると考えました。まず農家の方々がよいものを作って、それを我々がおいしいものに変えて、お客さまに召し上がっていただく。

そして、農家に自立支援などのかたちでお返しすることによって、さらにおいしいものを作れるようになり、結果としてお客さまにより喜んでいただけるようになります。

ですので、私たちは“支援”よりも“お戻しする”という言葉のほうがふさわしいと思っているのです」

農家に“お戻しする”ためには、ビジネスのなかに巻き込まなければ持続はしない。そのためには利用客を巻き込み、サイクルに参加してもらわなければならない。そこで、imperfect表参道が用いているのが、投票システムだ。オラム社とともに行っているプロジェクトの3つのいずれかに、お客さまに投票という方法で参加してもらうのだ。
商品を購入すると1回の会計ごとに1枚チップが渡されるので、3つのプロジェクトから選んで投票する
商品を購入すると1回の会計ごとに1枚チップが渡されるので、3つのプロジェクトから選んで投票する
「お客さまの意思でプロジェクトを決めることによって、サイクルが回ると思います。普段あまり考えることのない社会課題について、投票スペースの前で立ち止まって考えていただければ嬉しいです」
imperfectのロゴの右下が円形になっているのは、利用客の投票によって完全(perfect)になることをイメージしている
imperfectのロゴの右下が円形になっているのは、利用客の投票によって完全(perfect)になることをイメージしている

「自分が支援したんだと思っていただけるようにしたい」

では、どんなプロジェクトが取り上げられているのだろうか。取材時点では「環境」「教育」「平等」をテーマに、3つが候補に挙げられていた。

一つ目が「2万本の苗で森と生き物の命をまもろう!」と題した、コートジボワールでの活動だ。農地開拓によって、原生林が5年で1/5に減少してしまった同国で栽培が盛んなカカオは、直射日光に弱いのだという。そのため、カカオを陽射しから守るシェードツリーを植えるのが、このプロジェクトだ。チョコレートの品質向上につながると同時に、環境保全の役割も果たしている。
取材時点では「環境」「教育」「平等」をテーマに、3つが候補に挙げられていた。
同じく、コートジボワールでの二つ目のプロジェクトは、「農園の経営を支援してカカオ農家を笑顔に!」。同国では、農家の多くは日給が200円以下で、さらに女性の働く機会がほとんどない厳しい環境があるという。

そこでもう一つの収入源として、男性がカカオを作っている間に、女性にキャッサバの栽培を教育しているのだ。キャッサバは地元学校の給食に使われるため、農家の子どもたちがキャッサバを食べることで栄養改善にもつながっている。「農家の収入源、女性の支援、子どもたちの栄養改善と、一石三鳥につながります」

三つ目は、コーヒーの一大生産国・ブラジルでの「女性たちの農の学びを支えて平等な社会を!」だ。同国では、女性農家は男性農家と比べて、労働時間が週に7.5時間多いにもかかわらず、収入が30%低い。女性がコーヒーの栽培を教わる機会がないため、仕事が制限されてしまうのが原因だという。

そこで、大学教授を呼んで教育の機会を提供したり、地質調査を代わりに行うことで、女性農家の待遇を改善し、よいコーヒーを作ることができる環境を整える取り組みを行っているのだ。
店内中央のイートインスペースには、本物のコーヒーの木が植えられている
店内中央のイートインスペースには、本物のコーヒーの木が植えられている
以上のプロジェクトは、最初のシーズンとして2020年3月に投票を締め切り、最も票数を獲得したプロジェクトの資金として売り上げの一部が充てられるという。その様子は、imperfectのホームページなどを通じて報告される予定だ。

「お客さまの気持ちを背負ってプロジェクトを実行しますので、何にお金が使われているのかを明確にしたい。それによって、間接的かもしれませんが、自分がプロジェクトに関わったんだと思っていただけるようにしたいですね。それが食のよいサイクルにつながるのではないでしょうか」
商品を購入して投票したところ、どんなプロジェクトがあり、どんな社会課題があるのか、考える機会になった
商品を購入して投票したところ、どんなプロジェクトがあり、どんな社会課題があるのか、考える機会になった
今後、他の国・地域の社会課題解決の取り組みも支援していく予定だ。また海外に限らず、日本の復興支援なども候補として検討中だという。

素材の掛け合わせを工夫することで、よいものをおいしいものへ

利用客に食と農のサイクルに参加してもらうために、imperfect表参道では味にも大きなこだわりを持っている。どのメニューをとっても、別々の素材同士を掛け合わせていることが特徴だ。その狙いについて、浦野氏は以下のように語る。

「社会的・環境的価値の高い取り組みによって生産された素材を使うことにこだわっていますが、おいしいと思っていただけないことには活動が続きませんので、フードコーディネーターの協力のもと、素材の掛け合わせを工夫した開発を行っています」

例えば、ナッツと相性のいい素材を掛け合わせた「グレーズドナッツ」には、コンセプトが如実にあらわれている。「アップル&チョコレート」や「ソルティマスタード」などさまざまなテイストがあるなかで、浦野氏のお薦めは「ハニー&オレンジ」。オレンジピールの風味と、ハニーの甘さが、ナッツと絶妙な味わいを感じさせる逸品だ。
「グレーズドナッツ」の「ハニー&オレンジ」
「グレーズドナッツ」の「ハニー&オレンジ」
板チョコレートにナッツやドライフルーツをちりばめた「チョコレートバーク」も人気メニューだ。チョコレートに使用されるのは、プロジェクトの対象になっているコートジボワールの農家が生産しているカカオ。華やかな見た目も魅力だ。
「チョコレートバーク」の「レモン&ジンジャー」
「チョコレートバーク」の「レモン&ジンジャー」
imperfect表参道にはコーヒースタンドもあり、imperfectが厳選した世界の豆が楽しめる。もちろん、コーヒーのみの利用であっても投票チップを渡してもらえるので、プロジェクトに参加できる。

また、豆だけでなく機材にも随所にこだわりが見受けられ、特にエスプレッソマシンは日本での導入が3軒のみの稀少な機種だという。
コーヒースタンドでは不定期でコーヒーについてのセミナーも開催している
ブラジルやインドネシアなど、世界各地からコーヒー豆を厳選。粉や豆をテイクアウトすることもできる
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imperfectでは、「Do well by doing good.(いいことをして世界と社会をよくしていこう。)」という活動に賛同してもらえる企業とのコラボレーションを行うなど、店舗を「Do well by doing good.」の情報発信拠点として積極的に開放しているという。ウェブマガジン「DOWELLmagazine」でも、imperfectやパートナー企業の活動を随時紹介している。先述のとおり、投票で支援が決まったプロジェクトの様子も報告する予定だ。
「『DOWELLmagazine』をご覧になって、お客さまに来ていただいたり、企業の皆さまにご賛同いただけたら嬉しいですね」
「『DOWELLmagazine』をご覧になって、お客さまに来ていただいたり、企業の皆さまにご賛同いただけたら嬉しいですね」
また浦野氏は今後、「Do well by doing good.」ブランドを小売商品として展開することで、認知度や影響力を増やしていきたいという目標も語ってくれた。

「世界が少しでもよくなるサイクルを生み出したいと心から思っています」という浦野氏。imperfectが日本発の社会的価値・環境的価値を商品・サービスに盛り込んだブランドとして、世界中の人たちに愛される日が来るのはそう遠くないかもしれない。
imperfect表参道ではギフトセットも用意している。プレゼントやお土産にお薦めだ
imperfect表参道ではギフトセットも用意している。プレゼントやお土産にお薦めだ
「imperfect表参道」:
東京都渋⾕区神宮前4-12-10表参道ヒルズ同潤館1F
Tel:03-6721-0766
営業時間:11:00-21:00(日曜日のみ20:00閉店)
http://www.imperfect-store.com

「Web Magazine DOWELL」:
https://www.dowellmag.com

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