JOURNEY

地元民が愛するイタリアの穴場リゾート「エルバ島」。
ナポレオンが余生を過ごした島の魅力とは

2018.08.03 FRI
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地元民が愛するイタリアの穴場リゾート「エルバ島」。
ナポレオンが余生を過ごした島の魅力とは

2018.08.03 FRI
地元民が愛するイタリアの穴場リゾート「エルバ島」。ナポレオンが余生を過ごした島の魅力とは
地元民が愛するイタリアの穴場リゾート「エルバ島」。ナポレオンが余生を過ごした島の魅力とは

イタリアのリゾートアイランドといえば、シチリア島やサルデーニャ島がおなじみだが、イタリア半島とフランス領コルシカ島の間にあるエルバ島を忘れてはならない。ガイドブック等にはエルバ島の記載が少ないため認知度は高くないが、イタリア人の間では魅惑のリゾート地として知られる。かのナポレオンも過ごしたとされるエルバ島の魅力を解説。

(読了時間:約5分)

Text by Yasuhito Shibuya
Photopraphs by R.Ridi, Y.Shibuya ©R.Ridi

古代ギリシャ時代からの長い歴史

エルバ島は、イタリア中部に位置するトスカーナ州の沖合、リグリア海のイタリア半島とフランス領コルシカ島の間にあり、東西約27km、南北約18km、総面積は約224㎢。イタリアではシチリア島、サルデーニャ島に次いで3番目に大きな島で、総人口は約3万人。フィレンツェから鉄道で約3時間、クルマを飛ばしてもやはり3時間ほど。トスカーナ州リヴォルノ県・ピオンビーノの港からフェリーに乗って約1時間で島に到着する。
エルバ島の中心都市、ポルトフェッライオ。メディチ家とスペイン軍による2つの城塞がある ©R.Ridi
エルバ島の中心都市、ポルトフェッライオ。メディチ家とスペイン軍による2つの城塞がある ©R.Ridi
「エルバ島」と聞いてまず頭に思い浮かべるのが、フランス革命の英雄ナポレオン・ボナパルト(ナポレオン一世 1769〜1821)だろう。

コルシカ島で生まれたナポレオン・ボナパルトは軍人としてフランス革命戦争の中で国民の英雄となり、クーデターで政権の座に就いた。さらに1804年12月には国会の議決と国民投票を経て、物議を醸しながら「人民の皇帝」にまで登り詰める。しかし1812年のロシア遠征での大敗をきっかけに失脚。退位させられエルバ島に小領主として追放(流刑)される。

ナポレオンがこの島に滞在したのはわずか299日間。だが、今も島には彼の邸宅と別荘が当時のままに大切に保存されており、クリスマスと新年1月1日、5月1日を除けば、いつでも見学することができる。

また、地中海やフェリーが行き来する港、そしてナポレオンの邸宅を眼下に一望できるポルトフェッライオの城塞は、フェリー乗り場から階段を上ればすぐにアクセスでき、最上部には日中だけだが、ワインや軽食が楽しめる小さな店もある。
灯台の左下にある建物が、ナポレオンが滞在した邸宅
灯台の左下にある建物が、ナポレオンが滞在した邸宅
このナポレオンの滞在は、この島の長い歴史の中では、数多くある事件の一つに過ぎない。なぜなら、この島には今から約3000年前、古代ギリシャの時代に遡る長い歴史があるからだ。まず定住していたのはリグリア人で、鉄器時代の到来とともに、鉄鉱石の採掘と鉄の精錬が行われていたこの島は、地中海の中でも重要な価値を持つ場所となった。ゆえにエトルリア人を最初に、古代から19世紀まで、いつの時代もこの島は、さまざまな民族や国家に侵略され、その支配を受けてきたのである。ナポレオンがここに追放されたのも、19世紀初頭、この島がフランス領だったからである。
敵国や海賊などの侵略に備えて作られた、丘の上の城塞から地中海を望む
敵国や海賊などの侵略に備えて作られた、丘の上の城塞から地中海を望む
特に記憶に留めておきたいのが、紀元前約480年頃からの古代ローマ、そして16世紀から18世紀にかけてはあのメディチ家、つまりトスカーナ大公国に支配された時代だ。ローマ人たちはエルバ島に海軍基地を建設し、ここは軍事的な要衝となった。さらにトスカーナ大公国の時代は、この島が大きく飛躍した、島の全盛期ともいえる。メディチ家の手で島の北側の入り江には軍港が、そして高台には要塞が建設され、貿易で大きく栄えた。

マリンスポーツからトレッキングまで、豊富なアクティビティも魅力

シチリア島やサルデーニャ島とは違い、地中海のリゾートとしては、国際的には知名度の低いエルバ島。日本の旅行ガイドブックを当たってみても、エルバ島についての記述は驚くほど少ない。

だがイタリア国内では、エルバ島は非常に人気のあるリゾートだ。ビーチで優雅にくつろぐばかりでなく、シュノーケリングやダイビング、ヨットセーリングなどのマリンスポーツはもちろん、山岳地域ではトレッキングやマウンテンバイクも存分に楽しめる。
海の美しさ、魚影の濃さもこの島の大きな魅力の一つ ©R.Ridi
海の美しさ、魚影の濃さもこの島の大きな魅力の一つ ©R.Ridi
リゾートとしては大都市から比較的近い距離にあり、しかもシチリア島やサルデーニャ島のように大資本の手で開発されていない。島民によれば、外部からの移住者は少なく、住民のほとんどが親戚関係にある。そのため、昔ながらの素朴で豊かな島の風景や文化が残されているのだという。

実際、島に滞在してみると、島内のリゾートホテルやレストランで聞こえるのはイタリア語ばかり。イタリア人以外の観光客はほとんど見かけない。


ホテルも中心都市のポルトフェッライオをはじめ、地元のワイン産地としても知られるマルチャーナ・マリーナなど、プライベートビーチを持つ5つ星の豪華ホテルから3つ星、2つ星、さらに期間貸しのレジデンツやアパルトメント、さらには民宿まで多彩なスタイルを選ぶことができる。
ダイナミックな景観を楽しめるトレッキングもこの島ではお薦めのアクティビティ ©R.Ridi
ダイナミックな景観を楽しめるトレッキングもこの島ではお薦めのアクティビティ ©R.Ridi
また、エルバ島は美食の島でもある。高級ホテルにはレストランが併設されているし、ビーチや港にも魅力的なレストランがある。

まずお薦めしたいメニューは、やはり魚やカニやタコなど、地元の海で捕れたばかりの魚介類をぜいたくに使ったシーフード料理の数々。味付けもそのままで日本人の嗜好にぴったり。しかも、島の西側の山岳地帯で作られる白ワインのプロカイコや赤ワインのサン・ジョヴェートなど、特産のワインとの相性は絶品だ。
この島のランチは、エルバ島の豊富な海の幸を使ったシーフードが定番
この島のランチは、エルバ島の豊富な海の幸を使ったシーフードが定番
国外での知名度が低いのは、対外的なキャンペーンがあまり行われていないからでもある。地元の観光局のガイドやホテルの関係者の話では、7月から9月にかけては、島は例年、イタリア国内からの観光客でいっぱいになる。だから、わざわざ国外から観光客を誘致する必要もないのだという。

魅力を堪能するならぜひ島内ドライブを

ミラノやローマ、フィレンツェなどに行かれるという方は、少し足を伸ばして、この島を訪れてみてはいかがだろう。島内を巡るガイドツアーや路線バスを利用するのもいいが、できればレンタカーを借りて島内をドライブすることを薦めたい。
絶景はこの島のいたるところに溢れている。©R.Ridi
絶景はこの島のいたるところに溢れている。©R.Ridi
早朝や夕暮れに高台から陽光に輝くダイナミックな海岸線を鑑賞したり、いくつもある小さな港町を気の向くままに訪れてゆったりと散策したり……そんな楽しみ方は、自分でクルマをドライブするからできること。

そうすれば、イタリア人が心から愛するこの島が、あなたにとっても、唯一無二の特別な場所になるはずだ。
島内には空港もあるが、エルバ島に渡るにはピオンビーノの港から約1時間毎に出航するフェリーがお薦めだ
島内には空港もあるが、エルバ島に渡るにはピオンビーノの港から約1時間毎に出航するフェリーがお薦めだ
http://www.visitelba.info/(英語)

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