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Sep 11,2020. UPDATE

「LEXUS DESIGN AWARD」展示の見どころ
〜作品を紐解くキーワードは「メンタリング」〜

「LEXUS DESIGN AWARD 2021」の応募締め切りが10月11日(日)に迫る中、歴代日本人ファイナリスト6作品の展示がINTERSECT BY LEXUS – TOKYO 1Fガレージにて9月23日(水)まで行われています。これら展示作品の見どころを、同アワードを見つめ続けてきたITジャーナリスト・林信行氏とクリエイティブプロデューサー・川又俊明氏の視点で紐解いていただきました。


《ローテクにも、イノベーションが入っている。》

林:この展示ではLEXUS DESIGN AWARDの様々な年代の作品を並べて見ることができるのが面白いですね。考えさせられる作品でありながら、見た目の美しさにこだわった作品が並んでいることが、LEXUS DESIGN AWARDらしいと思います。2013年の作品である「making porcelain with an ORIGAMI」(2013年・五十嵐瞳氏)には、いまだに心打たれ、ときめきます。

川又:この作品は、紙を固めたモノのように見えて、実は陶器だというのはものすごい驚きだと思います。こうしたローテクの作品にも、イノベーションが入っているということを知って欲しいですね。クラフトの世界でもイノベーションで進化し続ける事がとても重要で、私もサポートしている「LEXUS NEW TAKUMI PROJECT」で、そのように若き匠に伝えています。



《サスティナブルが重視される中「デザインで何ができるか」が問われている。》

林:環境的なテーマでいうと、寒天を使った「Agar Plasticity -A potential usefulness of agar for packaging and more」(2016年・AMAM/荒木宏介氏・前谷典輝氏・村岡明氏)が気になります。本物の製品としてというか、実際に社会で広がっていって欲しい。

川又:「Bio-Vide」(山崎タクマ氏)もそうですが、2016年くらいから、こういうサスティナブルな系統のデザインが圧倒的に増えましたよね。

林:2020年のファイナリスト作品「Biocraft」(サザーリンサント氏)もそうですよね。バイオポリマーに炭を混ぜた新素材。
モノのデザインだけでなく、テクノロジーやシステムで社会課題を解決するデザインが増えてきています。

川又:「デザインで何ができるのか」が問われているところですからね。そういう意味では、「Recycled Fiber Planter」(2018年・横井絵里子氏)の世界観は意匠の力だなって思います。バイオティックな素材で、それをどうアップサイクルとして成立させるかは、デザインにかかっているんじゃないでしょうか。



《「メンタリング」を経て変化した作品が持つストーリー。》

川又:「Recycled Fiber Planter」は当初プランターにフェルトを使っていただけのものが、メンターの藤本壮介氏によるアドバイスによって、グッと姿を変えてきました。「デザインで何ができるのか」を問う意匠の力を感じさせられる作品になりました。

林:今年の1月に、2020年受賞者のメンタリングセッションを取材しました。私自身、これまでテクノロジー系やデザイン系のさまざまなアワードに関わってきましたが、ここまでコストと時間をかけた贅沢なメンタリングセッションは見たことがなく衝撃を受けました。その時点でもっとも注目度の高いクリエイター4人から真剣勝負での直接指導を継続的に受けられる。おそらくデザイナー人生が一変してしまうような素晴らしい経験を提供していると思います。あれは素晴らしかった。

川又:メンタリングはLEXUS DESIGN AWARDのキーポイントだと思いますよ。プロダクトやサービスをデザインして応募して、最後にそれを発表します、ではなくて、そこを入り口にメンタリングを加えるとやっぱりアイデアや世界観が広がる。応募段階からさらに1ステップ進めるというのは、このプロジェクトの1番の利点だと思います。

林:LEXUS DESIGN AWARD、最近は業界全体からも注目度が高まり2019年でグランプリに選ばれたリサ・マークスさんは普通には入れないアップル本社に招待されて講演をしたそうです。またLexus Design Awardが素敵だなって思うのが、表彰だけで終わらず、その後も受賞者を継続的に応援していることですよね。たとえば「Inaho」(2013年)をつくった吉本英樹さん。世界的なデザインイベントに招待しているだけでなく、商品化に向けた取り組みも応援し、空港の上級ラウンジへの設置を後押ししたりと本当によく面倒をみていますよね。また昨年、ロンドンで開催された彼のかなり大きな個展についてもサポートをされていましたよね。ファイナリストに残るのは大変かも知れないけれど、残るとそこから先の人生が大きく変わるアワードという印象を持っています。

川又:2019年からメンタリングのスキームが、マンツーマンから4人のメンターで6人の受賞者を一緒に見る形に変わりましたが、そこからまだ日本人の受賞者が出ていないそうなんです。たしかに、4人からいろいろなアイデアを出す、それをみんなでオープンに話して、その中からアイデアを自分で選ぶっていうのは、日本人がいちばん苦手なところですからね。

林:いまはあまり世の中のクリエイティブなものやデザインが表面的というか、インスタントになっているところはある。その中で真剣に考えて、考え抜いてブラッシュアップしていく過程というのは素晴らしい体験。こんな贅沢な体験できないですよ、普通は。

川又:それを踏まえて見てみると、ストーリーをしっかり知っていることが重要な時代になってきたんだなという感じはしますね。感性的な部分からそういうストーリーを感じる、“共感”することで作品の魅力が増す。ここにあるプロダクトもどこかしらに共感を得られるものが選ばれている気がします。

林:だからこそ心打つ力強さがあるんですね。



会期は9月23日(水)まで。パネルで展示中の2020年受賞作品と過去作品を同じ空間で見比べられる貴重な機会です。ぜひお2人のお話を踏まえて、作品が持つストーリーやLEXUS DESIGN AWARDの変遷を感じてみてください。


「LEXUS DESIGN AWARD」歴代日本人ファイナリスト6作品を公開中
https://lexus.jp/brand/intersect/tokyo/garage/design-award-2020.html

LEXUS DESIGN AWARD
https://lexus.jp/brand/lexus-design/design_award/


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