FUTURE-MINDED FACTORY 建築家 谷尻誠 QUALITY OF LEXUS

FUTURE-MINDED FACTORY 建築家 谷尻誠 QUALITY OF LEXUS

真っ白な環境が
起こすモノづくりの革新
最先端技術の粋を集め、
時代を牽引する
世界最高峰のファクトリーへ

愛知県豊田市にあるトヨタ元町工場。広大な土地の一角には、従来とは全く違うアプローチでイチから生産体制・環境・技術のあり方を見つめ直したファクトリーがある。ここは、かつて世界を驚嘆させたスーパーカー「LFA」を製造していた場所でもあり、レクサスの新たな時代を築くフラッグシップ・クーペとして誕生した「LC」専用のアッセンブリラインだ。そこには、常に時代の先を見据えるカンパニーとして極めて高い品質のクルマを生み出してきた、モノづくりへの挟持ともいうべきこだわりの数々があった。その全貌と「LC」誕生の瞬間を、既成の枠にとらわれないイノヴェーティブな建築家として世界から注目を集める谷尻誠氏が追った。

“真っ白な空間を保つのは
とても難しい
だからこそ感性が
研ぎ澄まされるんです”

レクサスのフラッグシップクーペとして起こすべきイノヴェーションは何か――この問いかけに出した答えは、今までにない設備と環境を整えたファクトリーを作り出すこと。“品質は環境から生まれる”を信条に、内部は天井から床まで真っ白に、塵一つないクリーンな空間に仕上げ、さらには視界を遮っていたダクトや配線類を地中に埋めることで、ファクトリー全体の動きが一瞥できる環境を構築したという。

「自動車工場といえばどこか薄暗く汚れていて、機械の隙間で人が作業しているイメージがありました」こう語る谷尻氏は「白い空間は見た目には美しいですが、その状態を保つことは非常に難しい。ここでは、その環境を維持する意識が人の感性を豊かする、という考えの下、働く人のマインドを変えるところからスタートしているんですね」と深く関心を寄せた。

“まるでアートピース”――
ディテールに宿る、
ものづくりの真髄

谷尻氏は「LC」を構成するパーツにも着目。特殊な技法で精巧に形成された有機的なフォルムが印象的なパーツは、アートピースのようにひときわ存在感を放つ。
「それぞれのピースが組み合わさって、ひとつの“作品”として完成するんですね。建築もそうですが、完成形が大きく、膨大なパーツから成るからこそ、細部にその本質が見えるんです。どれをとっても美しいですね」と谷尻氏はじっとパーツを眺めていた。
パーツそのものがアートでなければならないという「LC」のポリシーは、ディテールに現れている。

“醸成された組織でなければ
いいモノは
つくれないですよね”――
受け継がれゆく職人の魂

「無駄な動きがない上に、連携が見事。仮に一人の技術者が優れていたとしても、周りとの連携がうまくいかなければいいものに仕上がらないですから」と谷尻氏が話すエリアは、電装やエンジンなどを積み込むラインだ。組み上げていくのは、レクサスの技能認定を受けた“匠”を中心とするおよそ200名の職人たち。高い技能と感性に加え、品質に一切の妥協を許さないマインドを兼ね備えた匠たちは、一工程20分の限られた時間の中で最大のパフォーマンスを発揮し続ける。

人間の目と専用タブレットで
わずかな差異も見逃さない

ボルトの締め上げひとつとっても、均一なトルクになるようデバイスによって完全にコントールされている。人間の身体でいえば心臓にあたるエンジン部分には最先端テクノロジーを凝縮。ここでの検査は、専用のタブレットを介して、肉眼だけではチェックしきれないコネクタの結合まで入念に精査していき、その項目数はおよそ120か所に及ぶ。諸元表にはあらわれない“見えない品質”を追求する姿勢こそ「LC」の名を冠する証だ。

人間工学から導き出した
30cmという光源の間隔

ファクトリーのなかでひときわ目を奪われるのが組み上げの最終工程、光によるボディのチェックを行う検査工程ラインである。
特筆すべきは、天井や壁はもとより床にまで仕込まれた大量のLEDライト。何本もの光が輪となり、ボディをぐるりと囲む巨大なブースが、車面にストライプの模様を映し出す様は、工場とは思えない近未来感に溢れている。LEDがあえて“面の光“ではなく”線の光”にこだわる理由は、ボディのシルエットに沿って、まるで等高線のように光の線が落とされることで、歪みや傷を発見しやすくなるからだという。
連続する光源の間隔は30cm。最高技能者たちが集まり試行錯誤を重ね、人間が一つの角度から目視できる範囲として導き出した適切な数値だ。

“追求する光のコントロール、
それは建築も同じ”――
2種類の光で「LC」のボディを
徹底的にチェックしていく

全ての組み上げ工程を終え、ついに一台の車輌が完成する――のではなく、「LC」では全車が走行テストへと進む。完璧な状態でお客様へ届けるために、わずかな個体差も許さず、納得の仕上がりになるまで検査と調整を繰り返していくのだ。
走行テストを終えたあとに向かった先は、さきほどのファクトリーとは別棟に設けられた最終工程専用のチェックブース。今度は晴天と曇天の明かりを再現した2種の光源を使い分けて、最終的な傷のチェックとパーツによる色差を、人の目で詳細に見極めていく。
「建築においても、光は非常に重要です。建物としての出来がいいのは当然で、いかに光をコントロールして居心地のいい空間を作り上げるかが大事。用途こそ違いますが光という素材はモノを作り上げるうえで欠かせない要素ですね」と谷尻氏。

このように数々の厳しい検査を乗り越えた車輌のみがお客様のもとへ届けられるが、組み上がっていくまでの一連の流れを見学し、“芸術”として完成された「LC」と対峙した谷尻氏は深く溜息をついたあとこう語った。
「芸術とも言うべき美しさを持っていますね。フラッグシップモデルとはいえ、作業のほとんどはオートメーション化されているものと思っていましたが、多くの部分が人の手による完璧なオーダーメイドだったことには驚きました。最先端テクノロジーを駆使しながらも、やはり人間にしか成せない技や感性があるんですね」
一切の妥協を許さない匠のこだわりと、隅々まで行き届いた管理体制を有するこの最新鋭ファクトリーは、今後世界各国で予定している新設ファクトリーに引き継がれ、デファクト・スタンダードとなっていく。匠と最先端テクノロジーが互いに補完しながら、世界最高峰の品質を持つ「LC」を生み出していくその姿に、これからのAI時代を見据えたモノづくりの未来を見た。