GAME CHANGERの思考法 Vol.3

塩田元規は
「エンタメの力で
“愛の世界“へ
行きたい」と語った
塩田 元規GENKI SHIOTA

アカツキ 代表取締役 CEO
POWERED BY
NEWS PICKS
SCROLL
アカツキ 代表取締役 CEO
株式会社アカツキ代表取締役CEO。1983年島根県出雲市生まれ。横浜国立大学電子情報工学科を経て、一橋大学大学院MBAコース卒業。株式会社ディー・エヌ・エー新卒入社、アフィリエイト営業マネージャー、 広告事業本部ディレクターを経て、退職後にアカツキを創業。

塩田元規は
「エンタメの力で“愛の世界”へ
行きたい」と語った

日本トップレベルの成長ベンチャーとして存在感を示すアカツキは、
2010年モバイルゲーム事業で創業。
数々のヒット作を連発し、2016年東証マザーズ上場、翌年には東証1 部へ市場変更を果たした。

マンションの一室から3人でスタートした企業は、わずか8年で1000人規模へと成長。
近年はモバイルゲームの領域を飛び出し、eスポーツのプロリーグ設立や複合型体験エンタメ施設のプロデュースなど、
エンターテインメントを軸に国内外を問わず事業を拡大している。

同社代表取締役CEOの塩田元規氏は創業者として節目節目で大胆な経営判断を下し、
世界を変えるべく大きな挑戦を続けてきた。

塩田氏が掲げる最終目標は「“ハートで遊ぶカラフルな愛の世界”へ行くこと」だという。
その本意について聞いた。

エンタメの力で人類の可能性を広げる

アカツキはビジョンとして「A Heart Driven World.- ハートドリブンな世界へ-」を掲げています。その意図するところは何でしょうか。

塩田 唐突に聞こえるかもしれませんが、究極的に表現すれば“愛の世界”へ行きたいってことなんです。

僕にとっての“愛の世界”とは、つながりの中で絶対的な安心感があり、ハートがつながって自分らしさを表現しつくせる場所のイメージ。そこでは、それぞれの才能、創造性、個性がさまざまな色で輝き、全体で見ると調和している。そんなカラフルな世界観です。

そんなふうに自分の可能性や才能が本当に開いていく場所があったとしたら、どんなものが生まれてくるのか。その点にめちゃくちゃ興味があるんです。

ゲームをはじめとしたエンターテインメントは、そんな世界観を実現するための、最強のツールです。

人の幸せを決めるのは心ですよね。僕たちはエンターテインメントを「心が動く体験」と定義してます。エンタメは人間の心にタッチし、ワクワクやドキドキといった私たちの心が喜ぶ体験を与えてくれるもの。そんなふうに感情が動けば、人はもっと幸せを感じ、いろんなことにチャレンジしたくなる。人はワクワクするものには本気で向き合いますから。結果、その人の可能性は格段に広がるはずです。

心が動く体験こそが、僕たちの信じる“ハートで遊ぶカラフルな愛の世界”を実現することができる。そう信じているから、既存の世界を変える「ゲームチェンジ」に挑戦し続けているのです。

壮大な話から始まりましたね。アカツキはモバイルゲーム事業で創業しましたが、既存の業界のルールにはどう挑んできましたか。

起業した当初に業界でよく上がっていたのは、「モバイルゲームって、そもそもゲームじゃないよね」という声でした。1980年代に家庭用ゲーム機が生まれてから30年以上経ちますが、その間にゲーム業界の方々には「ビジネスモデルはこう」「ゲームとはこうあるべきもの」といった型ができあがっていたんだと思います。

でも僕たちは、ゲームのあり方や市場のルールにとらわれずにチャレンジしてきました。

自分たち自身も含め、常に既存の何かを壊すことを意識。これだけ世の中が急速なスピードで変化しているので、とくにマーケットが成熟期に入ってきた時にはどこかでゲームチェンジを起こさなければ市場がシュリンクしてしまいます。

同じやり方だけでなく、新しいやり方も試す。そのために業界の常識にはこだわらない、と意識していました。

アカツキが打ち破ったゲーム業界のルールとは。

僕たちにはゲーム業界が「職人気質」で「閉鎖的」な世界に見えていました。もちろん職人の方はすばらしいと思いますが、情報が閉鎖的で下積みが長い、一子相伝の育成環境にある、と。実際にゲーム作りにチャレンジできるまでにすごく時間がかかりますし、上下の関係性によってクリエイターとしてのチャンスと成長が決まってしまう。そして、一人の天才によってすべてが左右されてしまう組織体制で、再現性も低いと感じていました。

アカツキは人の可能性を広げようとしている会社です。下積みが不要というわけではないですが、もっとクリエイター個人の得意分野をシンプルに伸ばす育成をしてもいいんじゃないかと。

情報をオープンにして、成長したい人は自分の意思でどんどん道を切り開いていけるように。情報や技術もクリエイターが閉鎖的に抱えるのではなく、シェアする。会社にとってだけではなく、そのほうが業界のためにもいいはずです。

どんなふうにシェアを?

まずは社内の開発情報をオープン化しました。ありがちなのは、他チームの取り組んでいる内容がクローズドで、リリースされて初めて知るというパターン。アカツキでは開発ノウハウなどはチームをまたいで共有してますし、チームビルディングなど組織づくりのノウハウなども全社の情報を共有しています。

情報をオープンにしてよかったのは、社内のあちこちで「助け合い」が発生したことです。ノウハウの共有が進んだり、ピンチに陥っているチームに自発的に助けに入ったり。そういうすばらしいことが、自然と、僕が知らない間にもどんどん生まれるようになりました。

“青臭い問い”を考え続ける

既存のルールを覆すために、塩田さんが大切にしている思考法はありますか。

とにかく深く本質を掘ることです。本質を掘ると、物事の可能性がめちゃくちゃ広がるんですよ。

話しているとわかると思いますが、僕、すごく抽象論が好きじゃないですか(笑)。でも、一生答えが出ないような青臭い問いをひたすら考え続けられるかどうかが重要だと思っているんです。

人間とは何か? 人生とは何か? そうした問いに対して、自分なりの価値観や考え方を持ち続けることで、見えてくる世界、描ける未来がある。そして、答えを出すこと以上にそのプロセスが自分の身になってくる。

それがエンターテインメントづくり、組織づくり、自分の意思決定すべてにおいて非常に重要だと思っています。

ゲームチェンジャーの思考法①
「とにかく深く本質を掘る」

本質を掘り続けた結果、塩田さんが見いだした世界とは。

アカツキを起業したとき、「ゲームとは何か」を徹底的に掘り下げました。

モバイルゲームの歴史は浅いですが、広くゲームと捉えられるものは紀元前から何千年にもわたる歴史がある。たとえば、ゲームの定義は学術的には4つで、「ゴールがあり、ルールがあり、フィードバックがあり、内発的である」とか。

最終的にはこの4つの定義を満たせば、なんでもゲームになりうるのでは、という結論にたどり着きました。つまり、ゲームの領域はもっと拡大できる、と。

僕たちはゲームの力で、閉じてしまった人の心を開き、可能性を広げて、人類の心をより豊かなものへと進化させるチャレンジがしたいのです。

人類の心が進化したらどんな「ゲームチェンジ」が起こるのでしょうか。

リアルの世界もゲームの世界のようにワクワクするものになります。

ゲームが楽しいのはなぜか、ご存じですか? ゲームの中でやることは必ず目的・ミッションにひもづいているからです。課題の難易度とユーザーの能力の相関性もうまく設計されているので、その絶妙なバランスの上で楽しさややりがいを感じることができる。

でも、現実の世界はなかなかこうはいきません。「コピーを取るこの仕事が世界を変える!」とは思えないわけです。ゲームなら無報酬で朝までがんばれるのに、バイトは時給1000円もらってもテンションが上がらない。

それはリアルの世界がワクワクする仕組みになっていないから。

本来、人はワクワクすることには本気で向き合えるものですよね。今はゲームの中に、“人間の理想の世界”が存在する状態になっています。つまり、ゲームにこそ、人間の求める真実があるのではないかと。

僕たちはゲームの領域をもっと拡大することで、リアルの世界をもっと楽しく幸せなものにしたいと思っています。

今、アカツキでは既存のゲーム事業に加え、「ライブエクスペリエンス事業」という位置付けで、リアルの世界にワクワクを仕掛けようとしています。アウトドアレジャーの事業もそうですし、横浜駅前に建設中の体験型エンターテインメント施設、eスポーツリーグの運営もそれにあたります。

短期の利益だけを考えた場合は、モバイルゲーム事業だけをやっていたほうがいいかもしれません。でも、僕たちは“愛の世界”に行きたいわけだから、それではダメなんです。

目の前の最適化をしない

なるほど。本質を掘り下げて考え続けた結果、ゲームで世界を変えていくという大きな可能性が見えてきた、と。塩田さんが、大きな夢を実現するために大切にしていることは。

「もし、すべてのリソースが揃っていたら世界に何を届けたいか」と想像してみることです。つまり、理想から考える。時間軸も短期ではなく、100年スパンで考えてみる。そうでないと目の前の最適化で終わってしまいます。

ゲームチェンジャーの思考法②
「全てのリソースが揃っていたら
何を届けたいか、と考える」

たとえばアントニオ・ガウディのサグラダ・ファミリアなんて、目の前の最適化だけを考えていたら絶対につくれませんよね?

創業3年で海外展開に踏み切った経営判断も、理想から逆算した結果でしょうか。

そうです。当時は「海外展開なんてまだ早い。うちの経営陣は何をやっているんだ」との声が社員からも上がりました。

でも、僕は早くから海外展開するのは当たり前だと考えていました。アカツキの社名には「夜明けに差す光のように、この世界をカラフルで輝く場所へと変えていく」という意味があります。“世界を変える”と言うのなら、早い段階で海外に出ていくのは当然のこと。

あまりローカライズやカルチャライズせずにゲームを海外に持っていったのも、同じ考えから。海外に展開する際は、それぞれの国に合わせて細かいところまでゲームをローカライズ・カルチャライズしてからリリースしなければならないという既存の常識がありました。

でも、僕はそこに疑問があって。いいものであれば、グローバルで受け入れられるはずだと。

早くから台湾にオフィスを構えリスクを取った結果、今では海外での売り上げが会社の成長に重要な役割を果たしています。このタイミングが遅かったら、今の成功はなかった。

ただ、僕たちは内需が落ち込んでいるから世界に出たわけじゃありません。すばらしい日本のコンテンツを世界に届けることで貢献したいという思いが強かった。海外展開って単純にワクワクしませんか? 海外に出ると自分たちの価値や希少性がよくわかります。こんなに可能性があるのに、やらないなんてもったいない。そう思うと、やらずにはいられないんですよね。

真実は常に2つある

大胆な意思決定でビジネスを拡大されていますが、塩田さんがほかに大切にしている考え方は。

二律背反に目を向けることですね。真実は常に2つあります。ある一面だけを見ていては判断を誤る可能性があります。だから両面を見ることはかなり強く意識しています。

ゲームチェンジャーの思考法③
「二律背反に目を向ける」

右脳と左脳。長期と短期。光と影。両極を行ったり来たりするんです。すべての物事はまったく逆の側面があるのだから、両方を統合して見なければ真に理解したことにはなりません。

会社経営であれば、自由に振ったら規律も考えよう、コントロールをするなら分散もさせよう、と考える。この二律背反を見ることはリーダーに必要不可欠な視点だと思います。そうでなければ絶対に外せない局面で、おかしな手を打ちかねませんから。

“ハートで遊ぶカラフルな愛の世界”にたどり着くために、アカツキは今後どんな戦略を取りますか。

今は幸せの形も人生のゴールも多様化しています。今後10年で現在の価値観はバンバン壊れ、一人ひとりの人生がそれぞれ自分の実現したいことを探っていく旅になる。僕たちはゲーム、エンターテインメントを通して、リアルとデジタルの世界から人間の「自己実現欲求」に応えていく存在になれると考えています。

「がんばって会社に行かなきゃ」と、いい大人を演じている人々の殻を打ち壊し、現状に違和感を感じさせたい。本当に自分が求めるものを探せる世界に連れて行きたいんです。

僕たちは今後、デジタルとリアルの世界を融合していきます。今はゲームと現実が明確に分かれていますが、この境界線をだんだんなくしていく。僕は「エンタメがリアルにしみ出していく」と表現していますが、デジタルとリアルが融合すれば、現実世界のあらゆるものがエンタメ化されていくと思います。

たとえば、今はほとんどの人は「農業」をエンタメとは思わないですよね? でも、農業を体験と捉えて、それがエンタメ化されたら、農業の価値は爆発する。めちゃくちゃおもしろい世の中になると思います。人生だってエンタメです。そういうことを、アカツキが中心となってやっていきたいんです。

そのために、僕は「自分らしい経営者」であり続けたいんですよ。世間がいうような“かっこいいイケてる”経営者になんかなりたくない(笑)。それは世の中が勝手に決めた価値観ですからね。

人間の想像できる世界は、どこまでいっても予定調和。僕は、夢にも見なかった世界に行きたい。だから、物わかりのいい大人を演じるんじゃなくて、やりたいことを自然とやっていた子どもの頃のキラキラした世界に戻ろうかなと。青臭さは絶対に忘れずにやっていきたいですね。

僕も知らず知らずのうちに「大人の仮面」をかぶってしまっていますから、それを外すのがこれからのチャレンジ。“まともな大人”が考えつきもしないことを、今後もどんどんやっていきますよ。

(取材・編集:
樫本倫子
構成:
横山瑠美
撮影:
岡村大輔
デザイン:
砂田優花)
LEXUS ES
LEXUS ES
LEXUS ES
LEXUS ES
LEXUS ES
心を揺さぶる、エモーショナルなセダン
LEXUS ES
1989年にLSとともにレクサス最初のラインナップとして誕生し、世界で愛されてきたES。その原点と言える「上質な快適性」の進化に加え、流麗で引き締まったエクステリアと心を揺さぶるエキサイティングな走りを両立させ、新世代LEXUSとして大きな変革を遂げた。