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Bamboo(竹)を活用したクルマづくり【SDGs】

2024.03.21 THU
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Bamboo(竹)を活用したクルマづくり【SDGs】

2024.03.21 THU
Bamboo(竹)を活用したクルマづくり【SDGs】
Bamboo(竹)を活用したクルマづくり【SDGs】

2008年よりLEXUS内装材で使われてきたBamboo(竹)。LEXUSのシグネチャーマテリアルBambooの可能性について取材した。

サスティナブルなモビリティ社会を実現していくために。電気エネルギーの活用、持続可能なマテリアル、環境に配慮したものづくり。クルマ屋ならではのイノベーションを通じて多様な体験価値を未来へとつなげることを目指すLEXUS。

JAPAN MOBILITY SHOWで示した新たなるBambooの可能性

2023年10月に開催されたJAPAN MOBILITY SHOWで世界初公開した2台の次世代バッテリーEVコンセプトモデルの「LF-ZC」と「LF-ZL」がある。
LF-ZC
LF-ZL
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内装のドアパネルには、資源を循環させながら新たな体験価値の提供をするLEXUSならではのサスティナブルな取り組みの表現として「Bamboo CMF※1 Concept」が使用された。

※1 Color、Material、Finishの略。クルマづくりにおける、色や素材、質感を含めたデザインを指す
JAPAN MOBILITY SHOW 2023で公開されたLF-ZC
JAPAN MOBILITY SHOW 2023で公開されたLF-ZL
JAPAN MOBILITY SHOW 2023で公開されたBambooを練り込んだ金属布によりインスタレーション。
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コンセプトカーだけではなく、LEXUSはサスティナブルなクルマづくりの実現を目指しBambooを活用したクルマづくりの挑戦を進める。その取り組みの一つが竹繊維を高配合した複合樹脂材料で新たなBamboo複合材料だ。

この複合樹脂材料は繊維化した竹を55%使用することで、石油由来の合成樹脂の使用量を半減させることでCO2排出量を削減する。

使用される竹はLEXUSのBamboo内装材と同じ高知県産の孟宗竹で、内装材の場合は竹の太さに制約があったが、新たなBamboo複合材料ではそうした制約が少なく、細い竹や曲がった竹でも使用可能なため放置竹林の竹も使用できるようになった。

これまでのBambooステアリングホイールとして使用してきた竹材料は肉太の竹を竹林より選別伐採し、所定工場へ運び込み加工が必要だったが、新たなBamboo複合材料の場合は、竹林で竹を伐採後、すぐに山のなかで粉砕機に投入され、竹チップへと加工をされていく。
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チップ化されることで、竹は体積が小さくなり、一度に大量の竹を山から運ぶことができるようになる。

山から運び出された竹チップは専門の工場で繊維化され、粉砕、混錬の工程を経てペレットとなる。この竹由来のペレットが内装部品へ成形される原料だ。
このBamboo複合材は、繰り返しリサイクルをしても物性(物質が有する性質)低下が少ないため、サーキュラーエコノミー(循環経済)の上でも貢献が期待できるBambooのマテリアルとしての可能性を広げる。

内装材として早くから使われてきたBamboo

多様化するお客様の価値観に寄り添い環境へも配慮したクルマづくりをするLEXUSは以前から、このBambooの持つ可能性に注目し採用を進めてきた。

最初に採用したのは、2008年に発売された初のハイブリッドEV(HEV)専用モデルとして発売されたCT200hだ。

当時、ラグジュアリーブランドとして初のHEVシステムを採用したLEXUSは、使用する素材にもこだわり、音質の向上のためスピーカー取り付け部のスペーサー材にBambooを使用した。

それから4年後、2012年に発売のHEVモデルGS450hからは、オーナメントパネルとステアリングホイールでBambooが採用されるようになった。
Bambooは通常の木材の10倍の早さで成長するため、3年程度で素材として使用可能となる。この成長の早さや、生育中に大量のCO2を吸収固定化することができるなど、カーボンニュートラル社会の実現を目指すLEXUSにとっても多くの可能性を持つ。
このような素材特性から、LEXUSでは貴重な環境資源を効率的に循環させながら、サステナビリティの考え方の表現として、今ではBambooはLEXUSを象徴するシグネチャーマテリアルとしている。

地域社会と連携するクルマづくり

このBambooの産地となる高知県は日本で有数となる4544ヘクタールの竹林面積を持ち(17年3月時点)、古くから竹を農具・漁具・民具などの材料として使うなど、竹産業が盛んだったという。

しかし、高度成長期以降、農業の機械化や輸入筍やプラスチック製品の台頭により、竹の需要が低下し、竹産業は衰退の一途を辿り、放置された竹林による人工林への侵食と森林の荒廃などの竹害が問題となっている。
放置されている竹林の様子。竹が密集し、光も地面に届きにくく、枯れた竹が倒れている
放置されている竹林の様子。竹が密集し、光も地面に届きにくく、枯れた竹が倒れている
そして、高知県でLEXUSのBambooの製造を手掛けるのがミロクテクノウッドだ。
ミロクテクノウッドは、ミロクグループの猟銃製造で培われた「天然木材加工技術」と自動車部品製造の東海理化グループの知見を活かしてオーナメントやステアリングホイールなどの内装部品の製造を手がける合弁会社として誕生した。

豊富にある竹を利用して高知県とミロクテクノウッドと東海理化は新たなる付加価値を出せないかと考え、以前からニーズのあった自動車用の内装材としての利用を目指し取り組み始めたという。

Bambooをクルマの内装材にするために

しかし、Bambooを自動車の内装材として使用するためには、解決すべき大きな技術的課題があったという。
竹は中心が空洞となっているため、素材としての断面が小さいため、集成材として利用することが大前提となるが、竹は材質、質量、強度など素材のばらつきが大きく、品質を安定させることが難しい。

イネ科に属する草本のため、工業材料として使用するための基礎技術もほぼなく、耐荷重性・耐熱性・耐湿性など厳しい品質が求められる自動車部品とするためにはいくつものハードルがあったという。

そこで開発されたのが、乾留(なかの養分を留出させる)、乾燥、蒸気処理を行って材料として安定させたのちに、ラミナ加工をして、繊維方向に並行し集成して接着するという工程だ。

一連の工程により素材としての面積・体積も大きくなり、比重、強度の両方で個体間のばらつきが大幅に低減できるようになった。

この技術で竹を自動車部品として使用できるようにしたことで、竹の安定供給が必要となり、竹害の問題だけではなく、高知県内での竹産業の発展、雇用の創出にも貢献できる。

下地作業が終わったBambooはミロクテクノウッドの工場へ運ばれ、ラミネート、成形、トリミング、生地研磨、塗装、接着、組付けなどの11の工程を踏む。

このなかの塗装工程だけでも、さらに15工程の処理が行われる。この丁寧な作業により竹が持つ風合いが最大限に活かされる。

これらの、数多くの工程を経て手間暇をかけ、つくられたBambooのステアリングホイールは、独特のまっすぐと伸びる杢目と手触りの良さが好評となり、現在ではさまざまな車種に拡大され、日本だけではなく、海外でも人気の内装となっている。

ワンチームで進める竹の活用

取材のなかで、ミロクテクノウッドの片山弘紀社長は高知県のキャッチフレーズに「高知家」という考え方があると教えてくれた。
これは、2013年に当時の高知県知事が発表した 「高知県はひとつの大家族やき。」 をキャッチフレーズとし、同県全体を「家」と見立て家族のように協力し合う「高知家」という考え方だという。

そして、このBamboo複合材料の開発でも、産業や立場を超えて垣根なく協力し合うことができたのは、この「高知家」という考え方が根付いていたからだったと話す。

LEXUSと共にサスティナブルなモビリティ社会を実現するため、サーキュラーエコノミーとして、CO2の低減だけではなく、里山保全や産業を超えた地域の雇用創出にも挑戦する550万人の仲間たちの姿がそこにはあった。

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