板金技能を使った新たな挑戦
創業以来、トヨタ自動車で受け継がれる「手叩きの板金技能」。プレス機などは使わず、人間がハンマーで金属板を叩いて狙った形状にしていく技術であり、豊田喜一郎がつくったトヨタ初の量産車トヨダAA型乗用車にも活用されていた。
現代の量産車づくりは、プレス機・金型を使い金属は加工されることが多い。しかし、手叩きの板金技能は、複雑な形状や、鉄板をぎりぎりまで伸ばすなど、機械にはできない加工を可能とするため、量産前の試作車づくりには欠かせない技術となっている。
この板金技能を使い手加工ならではの製品を世に送り出すことに挑んでいるのがトヨタ自動車の試作車をつくる開発試作部にある「匠工房」だ。
試作車の生産に使われてきた匠の高い技能をお客様の手にも届けられないかと始めたこの活動について、開発試作部の田中 悠人主幹はこう話す。
この板金技能を使い手加工ならではの製品を世に送り出すことに挑んでいるのがトヨタ自動車の試作車をつくる開発試作部にある「匠工房」だ。
試作車の生産に使われてきた匠の高い技能をお客様の手にも届けられないかと始めたこの活動について、開発試作部の田中 悠人主幹はこう話す。
田中主幹
私はトヨタ自動車に入社後、CAE(Computer Aided Engineering: コンピュータを利用した工学支援)を使用し、材料力学、流体力学、熱力学などを考えたユニット部品の生産技術開発などに取り組んできました。
その後、ドイツにあるTOYOTA GAZOOO Racing Europeに出向し3Dプリンターを使った開発を学びました。
日本に戻ってきた後も、モノづくり技術開発部で3Dプリンターを使った部品開発などデジタルを使用した開発に関わってきました。
以前からデジタル化が進み、物があふれていく現代で、モノづくりの価値について考えていました。
そのなかで、日本の産業に根付き、丁寧に引き継がれ、進化し続けている職人技は非常に価値があると感じていました。
2021年に組織統合があり、私がいたモノづくり技術開発部とこの板金の匠がいる試作部が一つになり、手叩きの技能を持った匠のメンバーと一緒に働くことになりました。
そこで、匠がつくったというリンゴに出会いました。
その後、ドイツにあるTOYOTA GAZOOO Racing Europeに出向し3Dプリンターを使った開発を学びました。
日本に戻ってきた後も、モノづくり技術開発部で3Dプリンターを使った部品開発などデジタルを使用した開発に関わってきました。
以前からデジタル化が進み、物があふれていく現代で、モノづくりの価値について考えていました。
そのなかで、日本の産業に根付き、丁寧に引き継がれ、進化し続けている職人技は非常に価値があると感じていました。
2021年に組織統合があり、私がいたモノづくり技術開発部とこの板金の匠がいる試作部が一つになり、手叩きの技能を持った匠のメンバーと一緒に働くことになりました。
そこで、匠がつくったというリンゴに出会いました。
一枚の金属板からつくられた、このリンゴを見たときに、優れた板金技能ならではの温かみや金属の光沢感や色見を活かした深い質感を感じて、そのモノづくりの奥深さに感銘を受けました。
この匠の技能と技能員の方々の志をさまざまな人たちに伝えたいとチームで企画した「匠工房」について田中主幹はこう続ける。
田中主幹
どんどん機械化していくクルマづくりや、お客様の価値観が日々変化していくなかで、匠の技能をどの方向に伸ばしていけばいいのか技能員の方々が悩まれていました。
人間が持つ技能や知恵、感覚的なものを機械に教え、機械が育ったら、人間は、その上を目指して進化していく。
人間が持つ技能や感性をさらなる高みを目指して磨き続けながら機械をレベルアップしていく「ヒト中心のモノづくり」というトヨタならではの考えは大切にしていきたい。
そのためにも、この板金技能に魅力を感じてもらえるように、新しい方向性で技能を活かした取り組みをと思い、この匠工房をみんなで創り上げてきました。
どんどん機械化していくクルマづくりや、お客様の価値観が日々変化していくなかで、匠の技能をどの方向に伸ばしていけばいいのか技能員の方々が悩まれていました。
人間が持つ技能や知恵、感覚的なものを機械に教え、機械が育ったら、人間は、その上を目指して進化していく。
人間が持つ技能や感性をさらなる高みを目指して磨き続けながら機械をレベルアップしていく「ヒト中心のモノづくり」というトヨタならではの考えは大切にしていきたい。
そのためにも、この板金技能に魅力を感じてもらえるように、新しい方向性で技能を活かした取り組みをと思い、この匠工房をみんなで創り上げてきました。
匠工房の誕生前から板金の技能でお客様に届けられる商品をつくろうという活動は行われてきたというが、なかなか商品化できなかったという。
開発試作部の匠、土谷 仁志はこう話す。
開発試作部の匠、土谷 仁志はこう話す。
土谷
クルマの内装品などを企画していましたが、なかなか商品化まで結びつきませんでした。
試作品は好評でも、いざ商品化するとなると安全面などの制約条件などもあり、実際の商品化にたどり着けず、行き詰っていました。
そんな時に、組織変更により一緒になったメンバーとチーム一丸となって、この活動を進めることで、商品化が実現できました。
そんな時に、組織変更により一緒になったメンバーとチーム一丸となって、この活動を進めることで、商品化が実現できました。
LEXUSには、その時々においてできる改良は必ず織り込み、商品のたゆまぬ進化を追求する"Always On"という考え方がある。
この考え方と匠工房の板金の技能を合わせて商品化したのがLEXUSのフューエルキャップカバーだ。
板金技能で一つひとつ細部にまでこだわりつくられるこのフューエルキャップカバーは、立体形状にした金属を磨き整え、ハンマリングという匠の板金の打刻技術を利用して模様を入れる。
この考え方と匠工房の板金の技能を合わせて商品化したのがLEXUSのフューエルキャップカバーだ。
板金技能で一つひとつ細部にまでこだわりつくられるこのフューエルキャップカバーは、立体形状にした金属を磨き整え、ハンマリングという匠の板金の打刻技術を利用して模様を入れる。
通常、クルマづくりの板金では、滑らかなボディラインをつくるため、打刻痕は残さない。
しかし、このフューエルキャップカバーは匠の打刻痕をあえて模様として入れる。
しかし、このフューエルキャップカバーは匠の打刻痕をあえて模様として入れる。
どんなクルマも代わり映えのしない樹脂でできているフューエルキャップに打刻痕で立体美を表現する。
このフューエルキャップのカバーにレクサスボデー設計部・ブランディング推進部などの活動に共感してくれる仲間が加わり商品化は実現した。
コーディネーターを務めた開発試作部の村田 木綿子はこう話す。
このフューエルキャップのカバーにレクサスボデー設計部・ブランディング推進部などの活動に共感してくれる仲間が加わり商品化は実現した。
コーディネーターを務めた開発試作部の村田 木綿子はこう話す。
村田
新車を売って終わりではなく、より長くお客様にクルマを楽しんでもらいたいという想いがあります。
クルマを買ってもらった後にも、長く乗られたクルマで何か楽しんでもらえないかということで、フューエルキャップカバーを具現化しました。
クルマを買ってもらった後にも、長く乗られたクルマで何か楽しんでもらえないかということで、フューエルキャップカバーを具現化しました。
この活動を村田と一緒に進めた開発試作部の塩地 祥広もこう続ける。
塩地
クルマ職人の匠として、クルマ屋ならではの視点でのグッズにこだわり検討していました。
お客様がクルマを自分好みに仕上げられ、自己表現もできて、心に残る商品をお届けしたいという想いでつくってきました。
フューエルキャップカバーは、クルマを乗り換える際には、取り外して、愛車の思い出として残していただきたいです。
お客様がクルマを自分好みに仕上げられ、自己表現もできて、心に残る商品をお届けしたいという想いでつくってきました。
フューエルキャップカバーは、クルマを乗り換える際には、取り外して、愛車の思い出として残していただきたいです。
フューエルキャップカバーをつくる匠にも話を聞いた。
開発試作部 匠工房 仁田原 潤
板金は端から叩くとひずみ(金属のゆがみ)が溜まりやすいので、散らして叩きます。
繊細な作業となるため、1日に限られた数しかつくることができませんが、時間をかけてつくっても、納得がいかない場合は最初からやり直します。
先輩たちの背中を見て、こだわりをもってつくっていくことの大切さも学んでいます。
繊細な作業となるため、1日に限られた数しかつくることができませんが、時間をかけてつくっても、納得がいかない場合は最初からやり直します。
先輩たちの背中を見て、こだわりをもってつくっていくことの大切さも学んでいます。
開発試作部 匠工房 堀川 佳紀
モノをつくることが、ただ単にできる人の集まりでは、匠工房として成長していけません。
人を育てることがトヨタの強みであり、人を育ててよいモノをつくり、それを伝え続けることで、引き継がれていくと思います。
人を育てることがトヨタの強みであり、人を育ててよいモノをつくり、それを伝え続けることで、引き継がれていくと思います。
クルマづくりやお客様の価値観も多様化するなかで、今まで培ってきた匠の技を次の世代を育て、引き継ぐことでモノづくりのより良い未来を目指す。
フューエルキャップカバーは、今までに無かった商品だが、発売してみるとご購入いただいたお客様から嬉しい言葉も届いたという。
フューエルキャップカバーは、今までに無かった商品だが、発売してみるとご購入いただいたお客様から嬉しい言葉も届いたという。
堀川
給油のキャップは、通常は外から見えないですし、給油をするときにしか見えないアイテムですが、お客様から「究極の自己満足」と言っていただけました。
給油のキャップは、通常は外から見えないですし、給油をするときにしか見えないアイテムですが、お客様から「究極の自己満足」と言っていただけました。
LEXUSのフューエルキャップカバーをつけたことに価値を感じていただけたことは嬉しかったです。
モノづくりを通してお客様を笑顔にする
匠工房は、モノづくりの魅力や楽しさを知っていただけるように、お客様との接点も大切にしているという。
田中主幹
匠は部屋にこもってモノづくりをするイメージがあるかもしれませんが、板金の匠がお客様の近くで作業をして、お客様目線で商品を発案する事を大事にしています。
はじめから商品をつくるのではなく、LEXUSで行った板金体験のような、お客様とのタッチポイントをつくって、何が求められているかをしっかり聞いてきました。
それをクルマの開発に関わっている製品企画やデザイナー、ブランド企画、営業、品管、調達、物流と連携して、商品をブラッシュアップしていきました。
サプライヤー様など多くの方のご協力をいただきながら、お客様目線でみんながワンチームとなって活動をしています。
匠は部屋にこもってモノづくりをするイメージがあるかもしれませんが、板金の匠がお客様の近くで作業をして、お客様目線で商品を発案する事を大事にしています。
はじめから商品をつくるのではなく、LEXUSで行った板金体験のような、お客様とのタッチポイントをつくって、何が求められているかをしっかり聞いてきました。
それをクルマの開発に関わっている製品企画やデザイナー、ブランド企画、営業、品管、調達、物流と連携して、商品をブラッシュアップしていきました。
サプライヤー様など多くの方のご協力をいただきながら、お客様目線でみんながワンチームとなって活動をしています。
■匠工房「変わるもの」「変わらないもの」展
場所:レクサスインターナショナルギャラリー青山
「匠工房」初の個展を開催。「変わるものと変わらないもの」をテーマとした作品から、匠の妥協なき拘りを感じていただければと思います。皆様のご来場を心よりお待ち申し上げております。
開催期日:2024年3月6日(水)~17日(日)
休館日3月12日(火)
住所:東京都港区北青山2-5-8(レクサス青山 併設)
※お客様専用の駐車場はございません。
公共交通機関でのご来場をお願いいたします。
電話番号:03-5786-2711
営業時間:平日 9:30~18:00 | 土日・祝日 10:00~18:00
定休日:第1、第3月曜日 (8月第3月曜日は通常営業)火曜日
<関連リンク>
販売後の愛車に寄り添う新たな挑戦
LEXUS COLLECTION
トヨタイムズ「日本のクルマづくりを支える職人たち」第4回 板金・溶接職人 吉野栄祐
トヨタイムズ「幻のレースカーを復元せよ!」
場所:レクサスインターナショナルギャラリー青山
「匠工房」初の個展を開催。「変わるものと変わらないもの」をテーマとした作品から、匠の妥協なき拘りを感じていただければと思います。皆様のご来場を心よりお待ち申し上げております。
開催期日:2024年3月6日(水)~17日(日)
休館日3月12日(火)
住所:東京都港区北青山2-5-8(レクサス青山 併設)
※お客様専用の駐車場はございません。
公共交通機関でのご来場をお願いいたします。
電話番号:03-5786-2711
営業時間:平日 9:30~18:00 | 土日・祝日 10:00~18:00
定休日:第1、第3月曜日 (8月第3月曜日は通常営業)火曜日
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