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デザイン画から読み解くLBX | LEXUS SHOWCASE

2023.11.10 FRI
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デザイン画から読み解くLBX | LEXUS SHOWCASE

2023.11.10 FRI
デザイン画から読み解くLBX | LEXUS SHOWCASE
デザイン画から読み解くLBX | LEXUS SHOWCASE

2023年に発表された新型車とコンセプトカーが勢ぞろいしたメディア向けの体験説明会「LEXUS SHOWCASE」。プレゼンテーション会場の後方に展示された各車のデザインスケッチと「御神体」と呼ばれるデザインモック。そこから見えたLBXのデザインについて取材した。

LEXUS SHOWCASEの会場には、RZLBXLM、TXのデザインスケッチとそのスケッチを実際に具体化した「御神体」と呼ばれるデザインモデルが展示されていた。

1つだけ逆方向を向いたデザイン画

展示された4台のデザインスケッチのなかで1台だけ反対方向で書かれたクルマがあった。
RZの初期デザインスケッチ
LMの初期デザインスケッチ
TXの初期デザインスケッチ
LBXの初期デザインスケッチ
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RZLM、TXのデザインスケッチと異なる方向を向いたLBXのデザインスケッチ、この1枚に異例づくしのクルマづくりとLBXのヒエラルキーを超える挑戦が垣間見られるという。

LBXのワールドプレミアが行われたミラノの会場でサイモン・ハンフリーズ チーフブランドオフィサー(CBO)はこのクルマの誕生きっかけについてこう話していた

「『週末にジーンズとTシャツのまま乗れるカジュアルだけど上質で運転が楽しいそんなクルマがあってもいいんじゃないか』と豊田章男会長から言われ、私たちはこのクルマをつくりました。」

この言葉から始まったLBXは、スケッチを起こす前から章男会長との相談が始まっていたという。そのエピソードについてLEXUS SHOWCASEの会場でデザイン部の須賀厚一部長に聞いた。
須賀部長
LBXの開発は章男会長(当時社長)からの「上質で毎日履き倒せるスニーカーみたいなクルマができないか」という投げかけからスタートしました。

通常は市場の動向や営業ニーズなど、マーケティング視点の議論からコンセプトを固めて開発に着手するのですが、このクルマは、その始まりからして異例のプロジェクトでした。

きっとそれは、レクサスの開発陣に対して直観的に何かを感じていて、もっと本質に迫ったいいクルマをつくるべきだよ、という示唆ではないかと私は受け取りました。

そこでコンセプトやターゲットイメージなどの方向性を1年くらいかけて直接相談しながら、デザインスケッチを様々な方向性から検討しました。

通常のデザインプロセスでは、初期の複数アイデアの中から有力案を選択し、フルサイズのクレイモデルを1台つくり上げ、社長相談という形でデザインの方向性について意見をもらうのがそれまでのやり方でした。

このLBXではそうしたプロセスは一切踏まず、初期の複数案のスケッチが出来たところでチーフエンジニアとデザインチーフが東京の当時の社長執務室に出向き3案のスケッチを見てもらい、その場で即断で選ばれたアイデアがこの異なる方向を向いた初期デザインスケッチです。

このように仕事の進め方から新しいことづくめのLBX開発でしたが、最初の相談から商品化決定会議まで、デザインだけでも20回の相談を重ねました。

大失敗に終わった最初のフルサイズクレイモデル

アイデアスケッチの方向が決まり、次の開発フェーズであるフルサイズのクレイモデル製作に着手。その最初のモデルが完成し豊田章男会長(当時社長)に確認してもらったところ、そのコメントはたった一言「これなら要らない」でした。

LBXのワールドプレミアが行われたミラノでのインタビューでLBXチーフエンジニア(CE)の遠藤邦彦はこう話していた。
遠藤CE
当初からサイモン・ハンフリーズCBOや須賀部長の二人は「しっかりとした良いデザイン、そして会長が選ばれたデザインスケッチを実現させるためには、ちゃんとしたパッケージ、もっといいプロポーションじゃなきゃダメだよね」とずっと言い続けてくれていました。

しかし私たちが提案した最初のクレイモデルは貧弱な骨格と小さなタイヤとなってしまっていました。選ばれたデザインスケッチのクルマを実現するには開発前提を大きく見直し、プラットフォームの変更や新設部品の増加などが必要でした。

そして、当時のLexus International Co. Presidentの佐藤恒治(現トヨタ自動車社長)に相談したところ、佐藤社長は「いばらの道だけど、行こう!」と背中を押してくれました。

それにより、「やれること」ではなく「やらなきゃいけないこと」のクルマづくりがスタートしました。
プロジェクトチームは、それから5カ月という期間で諸元寸法やプラットフォームの見直しを行い、同時にデザインも大幅に変更を行った結果、見直し最初のクレイモデルからは全く別のクルマに生まれ替わらせた。

その結果、章男会長から「これで進めて行こう!」と言ってもらえたという。しかし、その2日後、章男会長から須賀部長の下にあるメッセージが送られてきたという。
須賀部長
それは「トヨタ・LEXUSのデザインは、他のクルマと比べるとなぜか腰高に見える?」というメッセージでした。

そのときはまだ何が違うか分からなかったので、章男会長に「低く感じるクルマも腰高に見えるトヨタ、レクサスのクルマも4輪が地面に接地していることに変わりないので、その腰高の理由を研究します」と返しました。

研究を進めていくなかで分かったのがカップケーキと鏡餅の違いでした。

LEXUS NEWS 記事 「鏡餅からインスパイアされたLBXのプロポーション」
ミラノのLBXワールドプレミアで掲示されていた資料
ミラノのLBXワールドプレミアで掲示されていた資料
背を高くしてスペース効率を高めるために、トヨタデザインでは1990年代後半モノフォルム基調のデザインが主流となっていました。それは長方形の中でカップケーキを膨らませるような形状でした。

その膨張したひとつの塊でデザインをしようとすると、どうしてもその容積の中で上に重心がいってしまいます。

LBXでは重心を下げるために、上と下(キャビンとボディ)を完全に分断して、ショルダーラインの位置を下げて、できるだけタイヤに近づけようと考えました。

二つの塊で構成され上からキャビンがポコっと乗っかっている姿、その様子をわかりやすく説明するのにいろいろと考えていきついたのが鏡餅でした。

その考え方をもとに全体の造形や、ボディの軸の通し方を抜本的に修正しました。
今回展示している4台のなかでもっともリヤのタイヤが張り出しているのが、実は一番コンパクトなLBXです。
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進化するスピンドル

またLBXの初期デザインスケッチには、発表されているモデルのデザインと大きく異なる部分がある。それがフロントに大きく書かれていたスピンドルグリルだ。
須賀部長
デザイン開発も終盤を迎えた1月に、トヨタテクニカルセンター下山で章男会長にLBXの最終フロントデザインスケッチを確認してもらう機会がありました。

その際も章男会長から一言だけ「だからスピンドルを壊してくださいと言っているでしょ」と言われました。

その言葉を聞き、本当にスピンドルを壊す覚悟をしましたが一体何をすればよいかわからず、一度スピンドルの系譜から考え直そうと整理したのがこちらの図です。
「Evolution of Lexus Spindle Grille(LEXUSスピンドルグリルの進化)」としてLEXUS SHOWCASEの会場に展示されていたイラストには逆台形アッパーグリル、アッパースピンドルグリル、上下一体スピンドルグリル、そしてスピンドルボディと続くデザインの進化が綴られる。
須賀部長
本来のこのスピンドルグリルは機能に根差した冷却のためのグリルなのでLBXのエンジンのサイズだとグリルは初期スケッチのサイズまで大きくなくて大丈夫です。

このデザインスケッチではエンジンが小さいので必要以上にグリルが大きくなってて、機能の本質になっていないということを章男会長は言っているのかなと考えました。

このグリルをシャッターが下りるみたいに、ラジエーターまで下げて、今までとは違う新しい表現ができないかなって思って描いたのがこの絵です。

これまでのグリル枠にとどまっていたスピンドルモチーフを、ランプ類や他の機能部品と統合させたunified spindle grillのアイデアにたどり着き、一気に最終デザインを仕上げることが出来ました。
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このようなことがあったので、LBXの初期スケッチにはスピンドルグリルが残っています。
会場に展示されたこれらのデザイン画は他の資料の裏紙に書かれており、短時間で検討された様子が伝わる資料となっていた。

LEXUS SHOWCASEの会場で展示されたTX、LMGXもそれぞれ機能に根差したデザインにより進化したスピンドルボディとグリルが表現されていた。


<関連リンク>
トヨタイムズ|預言者でもないのに未来予測?カーデザイナーがしていた意外なこと

LEXUS SHOWCASE特集

鏡餅からインスパイアされたLBXのプロポーション

LBXワールドプレミア現地インタビュー

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