ART / DESIGN

「LEXUS DESIGN AWARD 2023」

メンターシップを経て進化を遂げた最終4作品を公開

2023.04.17 MON
ART / DESIGN

「LEXUS DESIGN AWARD 2023」

メンターシップを経て進化を遂げた最終4作品を公開

2023.04.17 MON
「LEXUS DESIGN AWARD 2023」メンターシップを経て進化を遂げた最終4作品を公開
「LEXUS DESIGN AWARD 2023」メンターシップを経て進化を遂げた最終4作品を公開

世界の第一線で活躍するクリエイターによるメンターシップを経た4組の受賞者たちは、ついに最終作品を完成させ、審査員へのプレゼンテーションを行った。
約3ヶ月に及ぶ期間、ブラッシュアップを重ねた作品はどのような進化を果たしたのだろうか。
この期間、受賞者たちを勇気づけ、導いてきたメンターと、審査員から寄せられたコメントもあわせて紹介する。

 「Design for a Better Tomorrow(より良い未来のためのデザイン)」のテーマのもと、対話と共創を通じて次世代を担うクリエイターの支援・育成を目的とした国際コンペティション「LEXUS DESIGN AWARD 2023」。パオラ・アントネッリ氏、カリム・ラシッド氏、サイモン・ハンフリーズの世界的に著名な3名の審査員により、アワード独自の観点と基準から応募作品は審査され、受賞作品が選ばれる。「Anticipate(予見する)」、「Innovate(革新をもたらす)」、「Captivate(魅了する)」、「Enhance Happiness(そのアイデアがいかに人々に幸せをもたらすか)」を具現化し、豊かな社会とより良い未来を創造するためのアイデアである受賞4作品は、「Fog-X」「Print Clay Humidifier」「Touch the Valley」「Zero Bag」だ。
受賞当初の4作品
受賞当初の4作品
 それらを手掛けた4組の受賞者たちは、メンターであるデザイナーのジョー・ドーセット氏、ソーラーデザイナーのマーヤン・ファン・オーベル氏、アーティストのスズキ ユウリ氏、建築家のスマイヤ・ヴァリー氏という世界のトップクリエイターと対話を重ねながら、作品をブラッシュアップし、最終作品を完成させ、審査員への最終プレゼンテーションを行った。

 審査員の一人、LEXUSのグローバルデザインを統括するChief Branding Officerのサイモン・ハンフリーズは最終プレゼンテーションを受け、4組の受賞者たちを祝福するとともに彼らに感謝した。

 「私たちデザイナーは、より良い未来のために、革新的なアイデアや美しいデザインを通して、社会課題に対する解決策を生み出すという使命を負っています。この観点において、受賞作品は"デザインの力"に改めて気付かせてくれました。受賞者たちが課題を解決しようとする情熱と、作品に込めた想いや彼らの姿勢をとても心強く感じました。中でも、シンプルでエレガントな解決策を見た時は、うれしく思いました。それを両立させることは簡単なことではなく、デザインが生まれる背景には常にこの葛藤があるからこそ、『シンプル・イズ・ベスト』という言葉が生まれたのです。」

 また、同じく審査員の一人で、ニューヨーク近代美術館(MoMA)建築・デザイン部門のシニア・キュレーター兼研究開発部門責任者であるパオラ・アントネッリ氏は、4組の受賞者たちには共通点があるという。

 「デザインは目的や手段、形、機能などを複合的に考えて作り上げられます。そして最後には、世の中に対し影響を与え、新たな価値を創造するものかが問われます。4組の受賞作品には、それが感じられます。新たな価値を世の中にもたらそうとしています。」

 メンターシップを経て作品がどのようにブラッシュアップされたのか、伴走したメンターたちのコメントとともにお届けする。

Fog-X/パヴェルス・ヘッドストロム

 「Fog-X」は、空気中の霧を集めて水に変え、飲み水を提供するシェルターへ拡張可能なジャケットだ。世界中の乾燥地帯で水を確保することができるこのデバイスは、水不足という世界が直面する問題に対して何ができるか模索したいという想いから生まれた。
 「キリアツメ属」という和名を持つゴミムシダマシ類で、霧を体表に結露させて集めて飲むという、アフリカのナミブ砂漠にのみ生息する甲虫(Namib Desert Beetle)にインスピレーションを得たという。

 スマイヤ・ヴァリー氏は、「砂漠の生き物が持つ特性にヒントを得て、美しく洗練されたストーリーを完成させた。彼の作品は、自然界にまつわるデザインの役割と存在を改めて見つめ直し、現代社会におけるデザインのあるべき姿勢を提示している」と評した。

 「Fog-X」は、霧を集めるための帆のように広がるアンテナと、集めた水を溜める容器で構成されるため、当初は大きく重いバックパックという形でスタートした。そのため持ち運び用デバイスとして現実的ではなく、メンターシップを通じてその点をクリアし、より使いやすくなったとパヴェルス・ヘッドストロムはいう。
 そしてブラッシュアップされた「Fog-X」は、より軽いジャケットへと形を変え、水容器はジャケットと一体化された水袋となって水の運搬を容易にした。それだけではなく、彼は砂漠で霧を見つけるためのスマートフォン用GPSアプリも開発した。
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 「斬新でありながら実用面で課題があった当初のアイデアを、容易に実装できるソリューションに進化させることはとても難しいことだが、彼はそれを見事にやってのけた。次から次へと課題を解決し、問題を強みに変えていく彼の真摯な姿勢は素晴らしかった」と、ジョー・ドーセット氏はコメントした。

 スズキ ユウリ氏は、「メンタリング期間中のプロトタイプ化は難しいと感じていたが、やり遂げたことに感心している」と語り、マーヤン・ファン・オーベル氏もまたパヴェルスが終始意欲的であったことに触れ、「懸命にブラッシュアップに取り組み、厳しい気象のもとで様々な実験も行い、水不足に瀕した人々の命を救うデバイスを作り上げた」と述べた。

 Fog-X/パヴェルス・ヘッドストロムの動画はこちら

Print Clay Humidifier/ジャーミン・リュウ

 「Print Clay Humidifier」は、不必要になったセラミックをリサイクルして作った、電力を必要としないサステナブルな加湿器だ。ジョー・ドーセット氏は、「産業プロセスから排出された素材を持続可能な材料に作り替え、まったく新しい作品を作り出したことは画期的だ。この作品を皮切りに今後も革新的なチャレンジを続けてくれると思う」と評した。

 「Print Clay Humidifier」は、3Dプリンターで表面積の多いユニークな形状を作り出すことで吸水性を高めているが、メンターシップを経てもっとも進化させることができたのは、この吸水性だとジャーミン・リュウはいう。

 「メンターからのアドバイスをもとに、構造やサイズ、使い方も見直しました。最大の変更点は、花びら状の構造を採用したことです。この構造が吸水性能を大きく高めることがわかったのです」
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 マーヤン・ファン・オーベル氏は、セラミックの原料となるクレイの給水効率をどのように向上させるかという、材料研究を中心にセッションを行ったという。

 「彼は花びら状構造の厚みや材料の配合をテストし、強度と機能の面で作品の改善に取り組みました。更に、形状とその美しさにも焦点を当てたことにより、作品は大きく進化しました。」

 スズキ ユウリ氏は、「彼にはアイデアに対する強い想いがあった」と語り、スマイヤ・ヴァリー氏もまた、「ジャーミンは素材の特性を踏まえ、3Dプリントによる製造が最適であるという論理的な根拠を示した。彼の作品は、アイデアが拡張する可能性を秘めていて、古くからの技術と現代の技術の融合について考えさせられる」と振り返った。

 Print Clay Humidifier/ジャーミン・リュウの動画はこちら

Touch the Valley/Temporary Office

 「Touch the Valley」は、視覚障がいを持つ人が、触れた感覚を通して楽しみながら地形などを学べる3Dパズルだ。隣り合うピースを組み合わせていく過程で、パズルに触れた感覚から、その地域のスケールの大きさや雄大な自然環境をイメージすることができる。

 スズキ ユウリ氏によれば、「当初は3Dパズルを使って地形を学ぶ方法を理解するのは難しく、この作品ならではの独自性を定義するのに苦労した」そうだ。しかしメンターとの対話の中で、視覚障がいを持つ人を主な使用対象者としたことで、作品のオリジナリティを確立していった。

 ジョー・ドーセット氏は、受賞者のヴィンセントとダグラスが直面した主な課題は、「このように美しく、シンプルで考え抜かれたアイデアを取り入れながら、視覚障がいを持つ人に実際にどのように使ってもらうかを具現化することだった」という。
 そのために「視覚障がいを持つ人たちのグループに協力してもらい、機能性、触覚、そして質感等をテストした」ことをスマイヤ・ヴァリー氏は振り返る。そのフィードバックを受け、作品には磁石による結合や高低差を表す溝、滑らかなエッジといった新たな機能が追加され、より直感的に楽しめるよう、遊びやすさを向上させた。
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 ジョー・ドーセット氏はこの作品の進化について、「楽しみ、学ぶための新しいツールを提供することに成功しただけではなく、当初のアイデアの美しさはそのままに、改善を重ねながら大きな進化を遂げることが出来た」と評価した。

 また、マーヤン・ファン・オーベル氏は、視覚障がいを持つ人たちを対象とすることで、触覚に特化したパズルという作品の特徴を明確化でき、それにより目の見える人でも楽しめるツールになる可能性も秘めている」と指摘する。そして、メンターシップを経て、「彼らは実際に作品を成長させるプロセスを楽しんでいるようだった」と振り返った。

 Touch the Valley/Temporary Officeの動画はこちら

Zero Bag/パク・キョンホ& ホ・イェジン

 「Zero Bag」は、洗浄成分を一体化させた水溶性パッケージだ。「Zero Bag」に入った商品をパッケージごと洗うと、パッケージは溶けて無くなり、不要なプラスチックゴミを減らすことができる。洗浄成分により商品に付着した化学物質を洗い流すこともできるため、当初は衣類のためのパッケージを想定していた。
 受賞者のパク・キョンホとホ・イェジンは、メンターシップを通じて最もありがたかったアドバイスは、「ユーザー視点でどう使われるかを考えることが大切だ」というものだったという。その観点で作品を見直した結果、衣料用に限ることなく、他の幅広い商品にも適用できるようにブラッシュアップを進めた。

 スマイヤ・ヴァリー氏は、「彼らは果物やミールキット等パッケージの使用対象を拡大し、使い捨て容器に対する意識を変えるきっかけをくれた」と、用途を衣料用から広げたことで、コンセプトもまた拡大したことを評価した。

 マーヤン・ファン・オーベル氏は、「彼らは様々なアルギン酸ナトリウム材料と、それがどのように水に溶けるかという実験をし、また使い方を分かりやすく伝えるためにパッケージの印字テストを行った」と、メンターシップ期間を振り返った。そして、「ユーザーが実際にZero Bagを使ってみた反応を調査し、そのフィードバックを取り入れたことは、重要なステップだった」と指摘し、「Zero Bagは、今後さらにさまざまな商品の有効なソリューションとなりうる」と評価した。
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 ジョー・ドーセット氏は、「彼らは(廃棄される包装材という)巨大でありながらほとんど気にかけられることのない問題に取り組んだ。そして彼らのソリューションは、エレガントでタイムリーだ」と称賛した。

 Zero Bag/パク・キョンホ& ホ・イェジンの動画はこちら


 これらの最終作品は、来たる2023年4月17日~23日に開催される、世界最大のデザインの祭典「ミラノデザインウィーク2023」に出展され、世界から訪れる多くの方にお披露目される。また、イベント開催期間には、会場及びオンラインにて、「あなたが選ぶDesign for a Better Tomorrow(より良い未来のためのデザイン)な作品」に投票していただく、「Your Choice Award」も新たな取り組みとして実施される。
 4組の受賞者たちが世界へと羽ばたき、彼らのアイデアが人々に幸せをもたらしていくスタート地点となる「LEXUS DESIGN AWARD 2023」。ともに若きクリエイターたちの作品をご覧いただき、「Your Choice Award」にご参加いただくことで、より良い未来のためのデザインへの想いが広がっていくことを願う。

※Your Choice Awardは4月24日6:59amまで実施。受賞者は28日に発表。

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