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カーボンニュートラル時代の”愛車”の楽しみ方

2023.01.24 TUE
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カーボンニュートラル時代の”愛車”の楽しみ方

2023.01.24 TUE
カーボンニュートラル時代の”愛車”の楽しみ方
カーボンニュートラル時代の”愛車”の楽しみ方

LEXUSはTOKYO AUTO SALON2023(東京オートサロン)でLEXUS初のバッテリーEV(BEV)専用車RZをベースにカスタマイズした「RZ SPORT CONCEPT」を公開した。このコンセプトモデルと並んで展示されたAE86との深い関係性について迫る。

クルマ好きだからこそできるカーボンニュートラル

東京オートサロンの初日となった13日の朝に行われたプレスカンファレンスの中で豊田章男社長はクルマが大好きな仲間たちへメッセージを届けた。
豊田社長

2023年の日本は「クルマ好きの想いを世界に発信していくチャンスの年」だと思っております。

その想いというのがこちらです。

「クルマ好きだからこそできるカーボンニュートラルの道がある」

「クルマ好きを誰ひとり置いていきたくない」

この想いはオートサロンから始まり、G7(先進7カ国首脳会議)にもつながってまいります。

こちらのAE 86トレノとレビン。これらがその想いをカタチにしたものです。

このトレノは水素エンジン車です。ですが、スーパー耐久のカローラのエンジンではありません。元の4AGを水素エンジンに改造しました。

一方のレビンはバッテリーEVです。半世紀前にできた車名ですが、実はEVの2文字が隠れておりました。
50年がかりでようやくバッテリーとモーターを搭載したわけです。元々の4AGも宝物ですから大切におろさせていただきました。

ただマニュアルミッションはそのまま。クラッチ操作やシフト操作が楽しめます。

「カーボンニュートラルの時代でも愛車に乗り続けたい」というチャレンジです。

カーボンニュートラルでも楽しさを追究する

2023年1月13日~15日に開催された東京オートサロン2023では、BEV専用車「RZ」をベースにカーボンニュートラル時代における走りとカスタマイズの楽しさを追究したコンセプトモデル「RZ SPORT CONCEPT」が公開された。
RZ SPORT CONCEPT(佐々木雅弘選手 プロデュースモデル)
RZ SPORT CONCEPT(佐々木雅弘選手 プロデュースモデル)
ベース車となるRZは昨年の4月20日にLEXUS初のBEV専用車として、ワールドプレミアされたモデルだ。
このワールドプレミアの際にRZの開発責任者を務めた渡辺剛チーフエンジニアは「RZはLEXUSの電動化の未来を体現したモデル」と表現した。
オートサロンの会場で電動化の未来について、渡辺チーフエンジニアに話を聞いた。
渡辺チーフエンジニア

BEVでは、電動化テクノロジーが持つレスポンスと制御の拡張性によって、あらゆる駆動力のコントロールが行うことができるようになります。

そのため、内燃機関では難しかったクルマの動きが実現できるようになります。

そこが今までのコンベンショナル(伝統的なエンジン)なクルマと大きく異なるところで、走りの深化に繋がっています。

これから先のカーボンニュートラルを考えたときに、BEVでLEXUSらしい走りを実現していくことを目指しています。

BEVをひとつの重要な要素技術として、しっかりと軸に置き、電動化テクノロジーを使って、どうやってLEXUSらしさを引き上げていくのか。

このようなことを考えてBEVに対してLEXUSは積極的に取り組んでいます。

BEV専用モデルとして初登場するRZがBEVの可能性をさらに広げ、技術を鍛えていくと考えています。
渡辺剛チーフエンジニア
渡辺剛チーフエンジニア
そのひとつの取り組みとして、サーキットコンディションだとか、もっと限界域まで性能を向上させていこうとすると、空力性能の追究や、さらなるパワーレンジの拡大を目指すことになります。

そうすると厳しい環境で熱の問題が出てきたり、ブレーキの制動力コントロールの課題が見えてきて、技術を鍛えていくことが必要になってきます。

そういったことを今回展示したRZをただのコンセプトモデルで終わらせるのではなく、しっかり機能を具現化するような活動も含めて、リアルにモノにしていくということをやっていきたいと思っています。

コンセプトだけで終わらせない

渡辺チーフエンジニアと水素カローラや会場に展示したAE86 H2 Concept(水素エンジン車)の開発を指揮するGR車両開発部の高橋智也部長が参加したトークショーで、豊田社長から前日に「コンセプトだけで終わらせないで、今後の開発もしっかり続けていってほしい」と声をかけられたエピソードが紹介された。
渡辺チーフエンジニア

このような開発を始めるとしても、きっかけがないと進まないので、今回、このオートサロンに合わせてコンセプトカーをつくることで表現してみて、パーツの1つ1つがどうあるべきなのかというところを改善しながら、本物に落とし込みたいと考えています。

空力性能のカスタマイズのパーツ、ブレーキ冷却のための開口、負荷を上げていく際にバッテリーやユニットを冷却するために必要な要素をデザイン的にコンセプトカーに盛り込みました。

この東京オートサロンをスタートとして、リアルなフィールドの中で鍛えながらブラシュアップしていくという位置づけになります。
ブレーキ冷却のための開口
エアロダイナミクスを考慮したリヤウイング
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限界域のサーキットコンディションでも、きちんと走れる。BEVの性能向上を図り、そうやって鍛えた技術を今度は量産のRZに展開していく、そういう流れをつくっていこうとしています。

AE86 BEV ConceptとLEXUSの意外な関係

このチャレンジを具現化した1台が、今回の東京オートサロンで話題となった「AE86 BEV Concept(電気じどう車)」だ。この電動化にもLEXUSが深く関わっているという。
渡辺チーフエンジニア

AE86はトヨタのクルマですが、今回織り込んだBEVを中心とした要素のところをLEXUSが今まで培ってきた電動化の知見を活かしながら、1つのパッケージとして「AE86 BEV CONCEPT(電気じどう車)」をつくり込みました。

我々、LEXUSが取り組んだBEVのコンセプトカーという意味も含んでいるため、AE86のリアに搭載されているバッテリーには、シンボリックにLEXUSのロゴを入れさせてもらっています。
AE86 BEV CONCEPT(電気じどう車)のリアに積まれたバッテリーに入るLEXUS ELECTRIFIEDのロゴ
AE86 BEV CONCEPT(電気じどう車)のリアに積まれたバッテリーに入るLEXUS ELECTRIFIEDのロゴ
バッテリーの側面には「powerd by Prius PHV」と書いてあります。システムの開発はLEXUSでやっていますが、使用した電池は量産のPrius PHVの電池を使っています。

プリウスの電池でパワーをもらいながら、我々LEXUSがBEV化をさせてもらいましたという意味を込めて、LEXUSとPrius PHVのロゴが入っています。
バッテリーサイドに入る「POWERD BY PRIUS PHV」の文字
バッテリーサイドに入る「POWERD BY PRIUS PHV」の文字
さらに、フロントのモーターユニットはタンドラのHEV(北米で発売されているピックアップトラック)で採用しているモーターを使っています。
北米で発売されているTUNDRA(タンドラ)
北米で発売されているTUNDRA(タンドラ)
トヨタコーポレートの中にある要素で、AE86のパッケージに合う最適なものをそれぞれ組み合わせて、LEXUSでチューニングして、走れるクルマにしました。

AE86の持つパッケージの良さを壊さないように、板金など余計な改造をせずに、原型を残したまま、パワーユニットの載せ替えだけで、実現できるものをトヨタ社内全体で探し、1台のクルマとして仕上げました。
フューエルリッド(給油口)は給電リッドに置換され「CN(カーボンニュートラル)電気に限る」のステッカーも貼られている。
リヤガラスには「電気 交流電源をご使用ください」のステッカー
ガソリンエンジンでは「TWIN CAM16」と書かれているところも電動化により「NON CAM0」の標記に変更されている。
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今回の「AE86 BEV Concept(電気じどう車)」もそうですが、トランスミッションから駆動力を伝えるタイヤまで、元のクルマの機構を残しています。

エンジンをモーターに載せ替えて、動力をモーターからもらってくるようにしているので、BEVと同様に自由にトルク特性が描けます。

例えば、バッテリーの出力容量特性を変えてあげれば、その出力レンジもいろいろとカスタマイズされていきますし、それをベースとして制御でトルク特性を弄ったり、アクセルに対するレスポンスを変えてだとか、電動化の制御技術を活かして、いろいろなカスタマイズ、パーソナライズができるようになります。

電動化が持つ良さが相乗効果となり、もっとクルマを楽しむ可能性が広がると思っています。
BEVであるにも関わらずマニュアルトランスミッションを採用している
BEVであるにも関わらずマニュアルトランスミッションを採用している
今回は、さらにAE86のオリジナルのマニュアルトランスミッションを搭載しています。モーターからの出力を直接タイヤに繋げる一般的なBEVの機構に全て置き換えてしまうことも可能でしたが、走る楽しさや操る楽しさを継承したいと思い、マニュアルトランスミッションをそのまま活かしました。

エンジン音が楽しめるBEV

そして、この「AE86 BEV Concept(電気じどう車)」のもうひとつのポイントは車内にのみ響き渡るエンジン音だという。
渡辺チーフエンジニア

外からはBEVらしい静かさで、周りの環境に溶け込みます。だけど、運転している人には運転している時の感情や操作、クルマとの対話に必要な音を出しています。

例えばV10、V8やV6の音をBEVのサウンドデバイスの中に入れることで、それぞれのオーナーの好みに合わせたサウンドを楽しむこともできます。
そして、この「AE86 BEV Concept(電気じどう車)」のフィーリングを自身もAE86トレノを所有する佐々木選手は「スポーツ走行ができる」、「ニヤニヤが止まらない」、「4A-Gでタコ足マフラーとエアクリーナーを換えたぐらいのパワー」と感想をトークショーで語っていた。

クルマ好きだからこそやれるカーボンニュートラルがある

さらに「AE86 BEV Concept(電気じどう車)」化されたレビンの隣には、「AE86 H2 Concept(水素エンジン車)」トレノも展示された。
水素エンジンはTOKYO OUTDOOR SHOW 2023(トウキョウアウトドアショー)で展示された 「ROV CONCEPT2」でも使用されている技術で、カーボンニュートラルの選択肢の1つとして注目を集めている技術だ。
この車両を開発したGR車両開発部の高橋智也部長に話を聞いた。
GR車両開発部の高橋智也部長
GR車両開発部の高橋智也部長
高橋部長

日本における”愛車”の代表格がAE86だと思います。このクルマに搭載されている「4A-G」というエンジンの愛好家がすごく多いので、この「4A-G」の持つ音や振動を残したいというこだわりです。
ファンの多い4A-Gをインジェクションの変更により水素エンジン化している。
給水素リッドには「CN(カーボンニュートラル)水素に限る」のステッカーが貼られる。
トランクに水素タンク、リヤガラスには「水素 高圧水素をご使用ください」のステッカー
テールには水素エンジンでは、ガソリンエンジンと同じく「TWIN CAM16」と書かれている
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AE86のオリジナルの「4A-G」エンジンは、素性が古いのと、燃料噴射の方式が異なるため、水素エンジン化すると異常燃焼のコントロールが難しく、まだ十分な出力が出ていません。

スーパー耐久に参戦している水素カローラも2年かけて育てたので、生まれたてのAE86も、しっかり育てて行きたいと思っています。
「AE86 BEV Concept(電気じどう車)」と「AE86 H2 Concept(水素エンジン車)」の2台は、既に持っている”愛車”のカーボンニュートラル実現の1つの方向性を示した。
なぜ、保有車のカーボンニュートラルに取り組んだのか、プレスカンファレンスの中で、豊田社長はこのように説明した。
豊田社長

多くの自動車メーカーが2030から40年頃をターゲットにバッテリーEVへのシフトを目指しています。

ところが現実には、これから売り出す新車をBEVにするだけでは2050年のゼロカーボンは達成できません。
クルマ好きたちが『カーボンニュートラルで大好きなクルマに乗れなくなっちゃう…』と寂しく思うのではなく、『クルマ好きだからこそやれるカーボンニュートラルがあるんだ』と未来にワクワクしていけたなら、今年、世界に向けて大きなメッセージが発信できるのではないでしょうか。

モリゾウもワクワクしてまいりました!

クルマ好きの皆さん! 皆さんのおひとりおひとりがカーボンニュートラルに向けたチーフエンジニアです。一緒に未来をつくりましょう! ありがとうございました。
「RZ SPORT CONCEPT」、「AE86 BEV Concept(電気じどう車)」と「AE86 H2 Concept(水素エンジン車)」が展示されたToyota GAZOO Racingのブースでは、カーボンニュートラルの可能性を一目見ようとする人の波が最終日まで途切れることがなかった。

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ご回答いただきありがとうございました。

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