JOURNEY

群馬・榛名山の麓の牧草地で、

現代アートを堪能する新生「原美術館ARC」にLEXUSで訪れる

2022.08.30 TUE
JOURNEY

群馬・榛名山の麓の牧草地で、

現代アートを堪能する新生「原美術館ARC」にLEXUSで訪れる

2022.08.30 TUE

1979年に東京・品川で開館し、現代アート専門の美術館として日本の現代美術界を牽引し続けてきた原美術館。国際交流と創作の活性化をアーティストたちとともに推進し、多彩な活動を展開してきた。その原美術館が2021年に建物の老朽化に伴い閉館し、榛名山の麓で別館として営んでいた旧ハラミュージアムアークと統合。「原美術館ARC」と改称して、のどかな牧草地で来館者を迎えている。LEXUS LCで同館を訪ねる魅力とともに、榛名湖までのショートトリップも紹介する。

Text & Edit by Mari Maeda
Photographs by Shu Okawara

のどかな牧草地で現代美術に出合う

2021年1月に、多くの現代美術ファンから惜しまれつつ閉館した東京・品川の原美術館。原家の私邸だった洋館を再活用した美術館には緑豊かな中庭が広がり、都会のオアシスのような趣が漂っていた。今もその風情を懐かしむ人は多い。

しかし建物の老朽化にはあらがえず、東京での活動を終えた美術館はその後、群馬にある別館、旧ハラミュージアムアークと統合し移転。建物のインフラのリニューアルなどを終えて、同年4月から「原美術館ARC」と改称して活動を続けている。
のどかな牧草地にたたずむ原美術館ARC。建物の背後には榛名山が
のどかな牧草地にたたずむ原美術館ARC。建物の背後には榛名山が
品川の原美術館には頻繁に訪れていても、群馬の別館にまで足を運ぶことがなかった人々にとっては、驚くほど豊かな自然環境の中で作品を鑑賞する新たな感動を体験する機会となっている。

また一方で、伊香保温泉に程近いこともあり、これまで現代美術に触れてこなかった人々の間でも観光スポットとして人気を集め、同館を起点に新しい人流が生まれているという。
エントランスでは同館のシンボル的存在、ジャン=ミシェル・オトニエルの作品「Kokoro(2009年)」が訪問者を出迎える
11
原美術館ARCは、群馬県渋川市、上毛三山のひとつに数えられる榛名山の麓の高原に位置する。東京から2時間半ほどクルマを走らせてたどり着く、広大な牧草地。ドライブを楽しむのにもちょうど良い距離感だ。

敷地はのどかな牧場に隣接し、鳥のさえずりとともに時折羊の鳴き声も聞こえてくる。大空の下、花や緑に彩られる野原がのびやかに続く景色は、日本でありながらどこかヨーロッパの草原に迷い込んだかのようだ。

磯崎新氏が設計した自然と融合する木造建築

建築家・磯崎新氏が1980年代に設計したシンメトリーが美しい木造建築。ピラミッド型の屋根も印象的だ
建築家・磯崎新氏が1980年代に設計したシンメトリーが美しい木造建築。ピラミッド型の屋根も印象的だ
自然に溶け込むようにしてたたずむ建物は、建築界のノーベル賞とも言われるプリツカー賞を2019年に受賞した建築家・磯崎新氏が手がけた。原美術館のオーナーである原俊夫氏が自ら磯崎氏に声をかけ、この地の自然に調和する建築を依頼したという。その結果、磯崎氏の作品の中では珍しい平屋の木造建築となり、1988年に別館として開館して以来、この建物を見ようと訪れる人も多い。

造りは開放的だ。廊下もロビーも外との隔たりがなく、豊かな自然に開かれていて、自然と融合する日本家屋を彷彿させる。
開放的なエントランスロビー
廊下の両側には屋外に展示された作品が訪問者を待ち受けている
榛名山の反対側には赤城山がそびえ、廊下から眺める景色は切り取られた絵画のようだ
11
現代美術の展示室は3つ。ピラミッド型の屋根を持つ正方形のギャラリーAと両翼に細長く伸びるギャラリーB・Cというシンメトリーを意識して配置された展示室は、それぞれに大きな扉があり、その扉を訪問者は自ら引いて開ける。重たい扉をおもむろに開けながら、室内にはどのような世界が広がっているのだろうと想像するのは、胸が高鳴る瞬間だ。

室内の天井は高く、天窓からは柔らかな日の光が降り注ぐ。自然光の中で作品を鑑賞することに新鮮さを覚えて、その日の天候や、朝から昼、夕暮れ時の光の変化の中で異なる表情を見せる作品群を眺めては、移ろう時空と永遠性の共存を思う。
3つの展示室にはそれぞれ扉があり、訪問者は自らその扉を開く
天窓からは柔らかな自然光が降り注ぐ
11

ARCという名に込めた、「架け橋」となる想い

同館では「原美術館コレクション」と、「原六郎コレクション」の2つのコレクションを鑑賞することができる。原美術館コレクションは、公益財団法人アルカンシエール美術財団理事長の原俊夫氏が美術館設立時から収集している1950年代以降の現代美術のコレクションで、その数は1000点余りに及ぶ。一方の原六郎コレクションは、原氏の曽祖父であり、明治時代の実業家である原六郎(1842-1933)が収集した古美術のコレクションだ。国宝・重要文化財を含む東洋古美術と、近代日本絵画を中心とする200余点で構成されている

原美術館ARCでは、この2つのコレクションを中心に展覧会を企画し、多彩な美を紹介している。草間彌生と束芋の大型インスタレーション、東京の原美術館より移設された奈良美智、宮島達男、森村泰昌の作品も長期常設展示されていて、東京で同作品を見ていた人にとってはうれしくもあり、場所と展示の方法が変わって新たな印象を抱く面白さをも感じることだろう。
展示室ごとに造りも展示方法も異なり、大型作品から小規模作品までさまざまな工夫を凝らして展示され、飽きることがない
どの展示室も天井が高く、天窓を生かして明るく開放的だ。この展示室の奥に、草間彌生のインスタレーション作品がある
11
一方、原六郎コレクションの古美術は、赤城山を一望する長い渡り廊下の先にある特別展示室「觀海庵」に展示されている。静謐な和風の空間は木や石、和紙やしっくいで仕上げられており、書院造りをモチーフにしているという。名工の技が至る所に光る品格ある内装は、時を経て鎮座する作品を重厚に支えている。

興味深いのは、同じ空間にその時々の展示のテーマに合わせて現代美術も展示されていることだ。学芸員の独創的な発想と審美眼によって、古美術と現代美術が時空を超えて出合う。こうした掛け合わせの妙味は、同館ならでは。既成概念にとらわれることなく、自由に作品を鑑賞する豊かさと楽しみを教えられる。

書院造りをイメージした特別展示室「觀海庵」
書院造りをイメージした特別展示室「觀海庵」
ここで同館の名称に加えられているARCという言葉に言及しておこう。原美術館を開館した1970年代に、原俊夫氏は仕事で海外に赴くことが多く、その渡航先で現代美術に触れ感銘を受けた。そうして当時としては希少な現代美術専門の美術館を開くに至るのだが、そもそも現代美術の世界に魅了された理由の一つは、多種多様な人々が集い、新たな価値を創造する場であったことにあるという。

運営母体の財団名「アルカンシエール/Arc-en Ciel(虹)」と同様に、今日、原美術館の新たな船出にあたりARCと名称に付け加えられたのも、現代美術を起点に人々が交流する「架け橋」となり、多様な価値が生まれる場になることを目指した当時の想いを未来に託したからだろう。さらにいえば、時空を超えて、現代美術と古美術の架け橋にもなっているのだ。
特別展示室「觀海庵」へと続く長い廊下
廊下を歩きながら、雄大な赤城山の景色を眺める
11

豊かな自然環境を守るために

この地に原美術館の別館(現・原美術館ARC)が建てられたのは、1988年のこと。現代美術の世界では80年代から作品の大型化が進み、品川の邸宅では収めきれなくなったためにより広大な場所を求めた。今日も屋外にはアンディ・ウォーホルやジャン=ミシェル・オトニエルをはじめ、内外の現代アーティストによる常設作品が点在している。

榛名山と赤城山を眺めながら、樹々に囲まれた敷地をゆっくりと散策し作品を見て歩くのはぜいたくなひととき。途中カフェもあるので、ガラス越しに、あるいはテラスでくつろぎながら、雄大な景色と作品を眺めるのも良い。
敷地内でお茶や軽食を楽しめる「カフェ ダール」。天気の良い日にはテラス席に座って景色を眺めるのもお薦め
敷地内でお茶や軽食を楽しめる「カフェ ダール」。天気の良い日にはテラス席に座って景色を眺めるのもお薦め
まさに自然と建築、そして作品が一体化する原美術館ARCだが、同館では10年前から、作品を管理する収蔵庫などで使用する電力の一部を太陽光発電で賄っているという。これからもこの美しい自然環境が各々の努力によって守られていくことを願わずにはいられない。

隣の牧場では、子どもたちが無邪気に動物たちと戯れ遊んでいた。

伊香保温泉から榛名湖へ

さて、豊かな自然の中で多彩な美術作品に触れて五感を研ぎ澄まし、心身ともに英気を養った後は、LC500でドライブを存分に楽しむ。榛名山の中腹、標高約700mの場所にある伊香保温泉街はクルマで10分ほどの至近距離。ここで一泊するのも一興だ。頂上の伊香保神社まで続く365段の石段の起源は400年前にさかのぼり、料理屋や土産物屋が連なる石段街は情緒にあふれて旅情を誘う。
旅情あふれる伊香保温泉の石段を、LC500の上質な室内から眺める
伊香保温泉の石段街は昔ながらの情緒が魅力だ
11
お薦めは伊香保温泉からさらに山を上って榛名湖まで走るコース。途中の長峰自然公園付近では曲率の大きなヘアピンカーブが連続し、LC500での意のままに操れるスポーティな走りを堪能した。長峰展望台からは伊香保温泉街を眼下に、小野子山や赤城山が一望できる。その後も続くワインディングロードをクリアし、山道を上りきると、直線道路が突然現れ視界が開ける。榛名湖へと延びる長いストレートラインを走る爽快感と、ここでしか見ることができない絶景は、忘れがたい印象を残す。
静けさに満ちた榛名湖の湖畔。榛名湖越しに見る榛名富士の前で、LC500の流麗なフォルムが映える
11
次の週末は原美術館ARCで感性を磨き、伊香保温泉で旅情を味わい、榛名山の自然を満喫する小旅行に出かけてみてはいかがだろう。日常では味わうことのできない数々の新鮮な情景に、驚くほど五感が揺さぶられるはずだ。

原美術館ARC
https://www.haramuseum.or.jp/jp/arc/

この記事はいかがでしたか?

ご回答いただきありがとうございました。

RECOMMEND

LATEST