JOURNEY

1日1組限定。
鎌倉の一棟貸し宿
「Modern Ryokan kishi-ke」で
日本のおもてなしに触れる旅

2022.06.22 WED
JOURNEY

1日1組限定。
鎌倉の一棟貸し宿
「Modern Ryokan kishi-ke」で
日本のおもてなしに触れる旅

2022.06.22 WED
1日1組限定。鎌倉の一棟貸し宿「Modern Ryokan kishi-ke」で日本のおもてなしに触れる旅
1日1組限定。鎌倉の一棟貸し宿「Modern Ryokan kishi-ke」で日本のおもてなしに触れる旅

自分には何が足りていて、何が足りていないのか。禅宗の概念である「知足」をコンセプトに、普段の生活で見落としがちなことに目を向ける機会を創出してくれるのが、鎌倉にある一棟貸しの宿「Modern Ryokan kishi-ke」(以下、岸家)だ。古都 鎌倉で日本の文化や“おもてなし”に触れ、心を充足させる知足の旅へLEXUS UX300eで向かった。

Text by Kaori Kawake(lefthands)
Photographs by Kunihisa Kobayashi
Edit by Shigekazu Ohno(lefthands)

エアビーアンドビーとホテルを融合させたハイブリッドな宿

我々が岸家の“おもてなし”の一端に触れたのは、メールでのやり取りからだった。こちらの要望を丁寧にヒアリングして、岸家の持つさまざまなコネクションを駆使したユニークな提案を次々にしてくれたのだ。そう聞いて、もしも三つ星ホテルのコンシェルジュを想像されたのなら、岸家のおもてなしはそれともまた大きく印象が異なるだろう。

「サービスのクオリティ自体はホテルに寄せていますが、コミュニケーション自体はAirbnb(エアビーアンドビー)のホストをイメージしています」と話すのは鎌倉にある一棟貸しの宿「岸家」のオーナーである岸 信之氏。ちなみにAirbnbとは、「暮らすように旅しよう」をコンセプトに、部屋を貸したい人(ホスト)と部屋を借りたい旅人(ゲスト)をつなぐオンラインサービスのこと。
「岸家」のオーナーである岸 信之氏
「岸家」のオーナーである岸 信之氏
「エアビーアンドビーの良さは、その土地の人や文化と深く関わることができる点にあると思っています。僕自身、海外旅行ではよくエアビーアンドビーを利用しますが、これまでにエキサイティングな体験をたくさんしてきました。ホストが庭に招いてくれて一緒に食事をするなど、いい意味でいろいろと絡んでくれるところが楽しいんですよね。一方で、電気がつかない、鍵が閉まらないというようなトラブルもあり、ホテルと比べると不安な点が多いのも事実です。だから岸家では、エアビーアンドビーとホテルの良いところを掛け合わせています」

きめ細かなサービスが行き届いている半面、接客スタイルはカジュアルに寄せている。そのうえ、「なんでもかなえますよ」という受動的な姿勢ではなく、「こんなことも、あんなこともできますよ」という能動的な姿勢で、さまざまな提案をしてくれるのが非常に印象的だ。岸家ではお客様の宿泊前からさまざまな準備を重ね、お客様一人ひとりのスタイルに見合う、オーダーメイドとも言えるサービスを提供している。

そんな岸家のおもてなしはドライブから始まることも。羽田空港を利用されるお客様の場合は、空港まで岸氏自らが迎えに行くという。空港から宿までは1時間ほど。通常、到着時に提供しているウェルカムドリンクの日本茶を車内に持ち込み、移りゆく景色とともに楽しんでもらっているという。
岸家の送迎車LEXUS RX450hで颯爽と迎えに行く岸氏
ラグジュアリーなハイブリッド車に乗りたかったという岸氏。
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伝統と革新が息づく洗練空間

岸家は、神奈川県 鎌倉市の相模湾を見晴らす海岸沿いにある。

設計は隈研吾建築都市設計事務所出身の建築家 田中亮平氏、インテリアデザインは岸家の美術担当であり岸氏の妻でもある岸 仁美氏が手がけた。

「当初は古民家の移築も検討していましたが、現代的なライフスタイルを送る我々にとって、日本の伝統的な家屋をそのまま継承するというのは合わないと判断しました。結果として、日本家屋の伝統スタイルを踏まえたうえで、僕らの考える新たなエッセンスを加えて新築しました」
敷地に一歩足を踏み入れると、侘寂(わびさび)を感じさせる見事な枯山水が広がる
旧岸家から引き継いだ灯篭と新たにセレクトした現代作家の備前焼が整然と並ぶ
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旧家屋で使われていた建具や古材といった古き良きものと、岸家の感性に共鳴する新しいものとが絶妙なバランスで掛け合わされた洗練空間は、モダンでありながらも日本人ならではの美意識や精神性を息づかせる。
宿泊建屋の1階はリビングとダイニングを兼ねたオーシャンビューの和室
現代のライフスタイルに合わせ、セミダブルのベッドが用意された宿泊建屋2階のベッドルーム
広々としたバスルームには、1回使い切りのせっけんなど、自然環境にも配慮したオーガニックなバスアメニティがそろう
やわらかな木の香りに包まれる青森ヒバの檜風呂
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そんな岸家の感性は、空間デザインのみならず家具や調度品にも落とし込まれている。見せてくれたのは、岸家が現代作家にオーダーしたというオリジナルの器の数々。

禅僧が食事に用いる修行道具「持鉢」(じはつ)にインスパイアされたという碗(わん)は、ミリ単位でサイズを調整した入れ子状のデザインが特徴。伝統文化に匠の技術と現代的な価値観を掛け合わせた、まさに伝統と革新が息づく逸品だ。
通常、漆で作られる椀をガラスや陶器で表現することで、モダンなたたずまいにアップデートされている
通常、漆で作られる椀をガラスや陶器で表現することで、モダンなたたずまいにアップデートされている
「日本の伝統文化を僕らなりに解釈して表現し直しました」と岸氏。職人と打ち合わせを重ね、トライアンドエラーの末に出来上がったというから、そのこだわりは半端ではない。

常識にとらわれず、果敢に新しいことへと挑戦を続ける姿勢は、LEXUSのものづくりのあり方にも通じるところがあると感じた。

日本古来の叡智(えいち)で心を整える

「のぶ、お茶を飲もう」——かつて忙しいときに限って、祖父からそう声を掛けられたという岸氏。

玉露は、低温でじっくりと抽出して3煎、4煎と楽しむもの。お菓子と一緒にゆっくり味わうと、飲み終わるまでに20分ほどの時間を要した。

「当時は、祖父からの誘いを無下にもできず、正直、嫌々付き合っていました。しかし、飲み終わる頃には不思議と頭がリフレッシュしていたんですね」
岸家では常時30種ほどのお茶を用意している。岸家流にアレンジした茶歌舞伎体験やお茶会を開催することも
岸家では常時30種ほどのお茶を用意している。岸家流にアレンジした茶歌舞伎体験やお茶会を開催することも
もともと半導体の商社で忙(せわ)しなく働いていたという岸氏。お茶の記憶がよみがえったのは、祖父が亡くなって半年ほど経った海外出張中のことだった。

「ホテルで缶詰めになって働いていたときに、ふと祖父のことを思い出したんです。お茶の時間というのが、自分の心を整える時間になっていたと気がついたんですね。日本古来の文化には、心の充足につながる知恵がある。それを自分以外の人たちとも共有したいと思いました」

そんな想いを形にした岸家の根底に息づくのは「知足」(ちそく)の概念だ。

「知足」とは、古代中国の思想家である老子の言葉で「足るを知る」ということ。今の自分には何が足りていて、何が足りていないのか……現状と向き合い、未来に向けて思考を巡らせることが、結果的に心の充足につながるというのが岸氏の考えだ。
岸家のおもてなしには「知足」の世界観が落とし込まれている
岸家のおもてなしには「知足」の世界観が落とし込まれている
例えば食事。朝食に用意されるのは、季節の野菜や豆腐など、植物性の食材のみで作られた滋味深い精進料理。五味(甘味・酸味・塩味・辛味・苦味)・五色(赤・青・黒・黄・白)・五法(生・煮・焼・揚・蒸)をバランスよく組み合わせて作られる彩り豊かな料理は、素材の旨みを感じられるやさしい味わいが特徴だ。
「一品一品を味わいながらじっくり食すと、今は大根がおいしい季節なんだ、ナスがおいしい季節なんだ、と普段見落としていることが不思議と見えてくるんですよね。心と体が充足する気付きにあふれる時間となるよう心がけています」

また、精進料理には食材を余すところなく使い切るという先代の知恵が詰まっているとも話す岸氏。宿でも余った食材は出汁やお菓子に使ったり、お風呂に入れたりと食材廃棄はほとんどないという。

「もともと日本人の生活の中には、無駄を出さないという考えが根ざしていたんですね。僕らが宿を始めたときは、SDGsやサステナブルを意識していたわけではありませんでしたが、知足の概念を表現していったら、自然とそこに行き着いていました。精進料理は和食の原点といわれていますが、一番古くて一番新しい料理のカテゴリーではないでしょうか」

ドライブを記憶に残る時間に変える、岸家流おもてなし

心の充足につながる時間は、宿の中に限ったことではない。LEXUS車で訪れると伝えていた我々に、岸氏はドライブを盛り上げるセンスあふれるおもてなしを用意してくれていた。
その一つが、エディブルフラワーのブーケだ。大切な記念日に利用するゲストが多い岸家では、ブーケをオーダーされることも多い。その際に岸氏がセレクトしているのが、農薬不使用のエシカルなブーケだという。
決して派手ではないけれどセンスが光るブーケは、千葉県のしまむらファーム&ガーデンから取り寄せたこだわりのもの。野原から摘み取ってきたかのような可憐な花々やフレッシュなハーブで作られたエシカルな花束は、その見た目はもちろん、爽やかな香りでも楽しませてくれる。

さらに、ブーケから摘んだ花や葉をポットやガラスの急須に入れてお湯を注げば、ハーブティーとしても楽しめるというから驚きだ。ブーケには、「家に持ち帰った後も余すところなく楽しんでほしい」と願う岸氏の想いが込められている。
花やハーブを入れたカップにお湯を注ぐと、フレッシュな香りが車内にふわりと広がる
やさしい味わいのハーブティーは、心と体を穏やかに整えてくれる
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もう一つが、車内でも食べやすい最中とそれに合わせた煎茶。生のフルーツを使った最中は手作りならでは。通常、ウェルカムサービスとして提供しているものだが、ゲストのプランに合わせて車内で楽しめるようアレンジすることもあるという。今回はドライブ旅ということで、車内での楽しみの一つとして提案してくれた。
甜菜糖を使った白あんにフレッシュいちごを合わせた最中とお茶
甜菜糖を使った白あんにフレッシュいちごを合わせた最中とお茶
そして、オーダーメイドのおもてなしに触れながら向かった先は、岸氏が「知足」を体感できるドライブデスティネーションとしてコーディネートしてくれた本格茶室「北鎌倉 宝庵」。知る人ぞ知る禅宗の寺院、浄智寺の谷戸にひっそりとたたずむ茶室だ。

走行音の静かなBEV(電気自動車)は、静かな北鎌倉にもよく似合う。宿から20分ほどのドライブであっという間に到着した。
道幅の狭い北鎌倉もコンパクトSUVなら走りやすい
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クルマを降り、雨で湿った苔が風情を感じさせる門をくぐると、緑に包み込まれるように2棟の茶室が現れる。どちらも通常は非公開だというが、特別に見せてもらえるのはオーナーと親交のある岸氏ならでは。
戦後日本のモダニズム建築を牽引した山口文象が設計した茶室「常安軒」
2つの茶室と水屋、広い待合スペースで構成された室内は、すべてが奇麗に手入れされ、今もなおその美しさを保っている
茅葺(かやぶ)き屋根の「夢窓庵」は、大きな円窓がかわいらしい一畳台目の茶室
緑豊かな庭を独り占めできるかのようなぜいたくな空間
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静かな茶室に身を置き、水の流れる音や鳥のさえずり、虫の音に耳を傾けていると心が浄化されていくようだ。

今回は時間の関係上惜しくも諦めたが、実は茶室の他にも、クルマで海岸まで行ける絶景スポットや心の充足につながるさまざまなアクティビティを提案してくれていた岸氏。せっかくなら1泊と言わず2泊、3泊して鎌倉に住まうように滞在してみたい……そう思わされる旅だった。

最後に、岸氏に今後の展望について聞くと、次のように話してくれた。

「将来的には、岸家で表現しているような日本人らしいプレミアムなライフスタイルを、宿という枠を超えて広めていけたらと思っています。例えば、セカンドハウスを建てるゲストの器や調度品を選んだり、部屋のスタイリングをお手伝いするなど、我々にできることならなんでもやります。だからゲストとは、そういう話もできるような関係性を築いていきたいですね」

岸家はその名の通り、フランス風に言えば「シェ・キシ」であり、アメリカ風に言えば「キシズ・ファミリーホテル」である。岸家の想いが込められたホテルで、鎌倉に根ざした上質なライフスタイルを体験しに、出かけてみてはいかがだろうか。
「Modern Ryokan kishi-ke」
https://kishi-ke.co.jp/jp/
「北鎌倉 宝庵」
https://www.houan1934.com
「浄智寺」
https://jochiji.com

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ご回答いただきありがとうございました。

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