小松島の新たなランドマークを目指す
徳島阿波おどり空港からLEXUS UX250h “F SPORT”で南へ快走。スマートなハイブリッドシステムや軽快なハンドリングがもたらす意のままの走りを楽しみながら、大河川の吉野川を越え、時おり潮風を感じつつさらに南へ。そうして30分ほどのドライブの後に到着する小松島市は、かつて海上交通の要衝として栄えた港町だ。徳島市内の港が整備される前は、大阪南港や和歌山港を結ぶフェリーが寄港していた小松島港が、京阪神からアクセスする際の徳島の玄関口であった。
しかしどちらのフェリーも1990年代に廃止。背景には、徳島港が整備されてフェリーや旅客航路がそちらにシフトしたことや、本州と四国を結ぶ明石海峡大橋、大鳴門橋が完成するなど陸路の整備があった。以降、旅行者は通り過ぎるようになり、小松島は徐々に賑わいを失っていった。
しかしどちらのフェリーも1990年代に廃止。背景には、徳島港が整備されてフェリーや旅客航路がそちらにシフトしたことや、本州と四国を結ぶ明石海峡大橋、大鳴門橋が完成するなど陸路の整備があった。以降、旅行者は通り過ぎるようになり、小松島は徐々に賑わいを失っていった。

「時代は移り変わりながらも長く栄えた港町としてのプライドが邪魔をして対応できず、活気を失っていったのでしょう。今の小松島は少子高齢化が進み、財政も苦しい状況です。若い世代が地域に腰を据えることで高齢者の生活は支えられるわけですから、若い世代にとって魅力ある地域にし、雇用を生むことが重要です」
そう話すのは、昨年4月に開業した「小松島リゾート」を経営する中山直治氏。同リゾートはアウトドアブランド「スノーピーク」監修によるホテル宿泊型のグランピング施設で、小松島に生まれ育った中山氏が、地元の郷土を後世に伝える目的で舵取りを始めた。
そう話すのは、昨年4月に開業した「小松島リゾート」を経営する中山直治氏。同リゾートはアウトドアブランド「スノーピーク」監修によるホテル宿泊型のグランピング施設で、小松島に生まれ育った中山氏が、地元の郷土を後世に伝える目的で舵取りを始めた。

「やるからには小松島のランドマークにしたい」と、元はある企業の保養施設だった建物を購入してリノベーション。そこにアウトドアブランド「スノーピーク」の世界観を反映し製品を設らえた。
小松島港を見下ろす低山の頂上に立地するため、すべてオーシャンビューのゲストルームは全9室。3タイプが揃い、最もハイグレードな「エグゼクティブスイート」は、ウッドデッキに露天風呂が備えられ、内風呂は総ひのき仕上げ。宿泊棟の最奥にあるため最もプライベート感を堪能できるラグジュアリーな一室となっている。
小松島港を見下ろす低山の頂上に立地するため、すべてオーシャンビューのゲストルームは全9室。3タイプが揃い、最もハイグレードな「エグゼクティブスイート」は、ウッドデッキに露天風呂が備えられ、内風呂は総ひのき仕上げ。宿泊棟の最奥にあるため最もプライベート感を堪能できるラグジュアリーな一室となっている。
「エレガンススイート」はウッドデッキに海一望のスパがあり、海と空が織りなす緩やかな時間のなかでゆったりと体を癒やすことができる。常設のグリルではバーベキュースタイルのディナーを味わえ、グランピング施設ならではの魅力を味わえる。
最大5名が泊まれる「アクティブスイート」はファミリーや友人知人との滞在時に人気の一室。ベッドやソファの仕様や、小上がりを備えた設計から視線を低く過ごすことができ、よりリラックスした滞在が約束される。
最大5名が泊まれる「アクティブスイート」はファミリーや友人知人との滞在時に人気の一室。ベッドやソファの仕様や、小上がりを備えた設計から視線を低く過ごすことができ、よりリラックスした滞在が約束される。
いずれも広々とした開放感が堪能できるつくりになっていて、オープン以降、卒業旅行や男性同士のグループ旅行、初めてバーベキュー体験をしたという老父婦まで、幅の広いゲストに利用されてきた。さらに「小松島リゾート」での滞在をきっかけに成婚にいたったカップルが10組以上も誕生。SNSによって拡散されたことも背景に、“恋人の聖地”としても注目され始めているという。

小松島の魅力を全身で感じられるサービスをそろえる
コロナ禍での開業ながら順調なスタートを切った今後は、どのように郷土を後世に伝えていくのか? この問いに対して中山氏は「豊かな自然を利用した体験コンテンツを柱にしたい」と述べた。
「クルマで到着された後に、リゾート周辺をe-Bikeで周遊しながら小松島を体感できるサービスを充実させたいと考えています。まず訪れてほしいのが、施設の裏にある阿波三峰のひとつ、日峰山。標高190mほどの低山なのですが頂上からの眺望は素晴らしく、自然や街並みが一望できることから小松島を知ってもらううえで格好の場所となります」
味覚狩りも多彩だという。
「糖度10度以上のトマト“珊瑚樹”や、近隣に白イチゴ、イチジク、ラズベリーなどの生産者が多く、柑橘類だけでもデコポンや甘夏など60種がそろいます。そうした契約農家をe-Bikeでめぐり、摘んだり狩ったりしたものを持ち帰ってもらう。そしてジャムを作り、たき火で焼きトマトを作るといった体験メニューを展開していきたいですね」
「クルマで到着された後に、リゾート周辺をe-Bikeで周遊しながら小松島を体感できるサービスを充実させたいと考えています。まず訪れてほしいのが、施設の裏にある阿波三峰のひとつ、日峰山。標高190mほどの低山なのですが頂上からの眺望は素晴らしく、自然や街並みが一望できることから小松島を知ってもらううえで格好の場所となります」
味覚狩りも多彩だという。
「糖度10度以上のトマト“珊瑚樹”や、近隣に白イチゴ、イチジク、ラズベリーなどの生産者が多く、柑橘類だけでもデコポンや甘夏など60種がそろいます。そうした契約農家をe-Bikeでめぐり、摘んだり狩ったりしたものを持ち帰ってもらう。そしてジャムを作り、たき火で焼きトマトを作るといった体験メニューを展開していきたいですね」

海ではワカメやシラスの漁、山ではワラビやフキノトウといった山菜の食材をメニューに盛り込む予定。さらに第二駐車場の近くに流れる小さなせせらぎではホタルの放流を視野に入れ、特別鳥獣保護区であることから地元の野鳥の会、山岳会からの協力を得て、春にはウグイスの鳴き声に耳を傾けるなど、野鳥との触れ合いを楽しむサービスも検討中である。
これから迎える夏はSUPやシーカヤックのような海のアクティビティが充実し、所有するプライベートビーチでは気兼ねなく釣りが楽しめる。カレイなどの底物、キス、タコなどを釣り上げたあとは、調理をリゾートのシェフに任せ、活き造りのような新鮮料理をシャンパンで食す、といった楽しみが待つ。そんな野遊び・海遊び・食遊びを通して豊かな地産の食材や自然に触れ、全身で町の良さを知ってもらいたいと、中山氏は言う。

飲食店も事業承継し、地元に賑やかさを再生する
後ろ盾がスノーピークであることの心強さも中山氏は感じている。実は「小松島リゾート」は市内に本社を構える創業55年を超える中山建設の事業。「中山建設がリゾートを手がけるのと、スノーピークが手がけるのとではインパクトが違う」と中山氏が言うように、確かに県外からの若者が宿泊に足を運んでいるのはその証左と言えよう。近年全国的に見られるアウトドアブームを支えるブランドの1つだけに、若い世代への訴求力が高いのだ。
期待値の高さは人材を呼び寄せてもいる。広報担当者は小松島出身ながら東京の企業に勤めていた人物であり、本リゾート開業にあたりUターンした。美しい自然のある町で暮らしたいと広島からやってきた女性スタッフもいた。彼ら彼女らが躍動する現場はとても快活で明るく、“若さ”を前に出すオペレーション法は「スノーピーク」によるディレクションだというが、そのホスピタリティははつらつとして爽やか。眼前に広がる大海原のように少しもよどんだところがない。
「小さな取り組みではありますが、地道に2人、3人と、若い人が増えていくことで、町が活気付いていくのだと思うんです。トゥクトゥクによる運転代行サービスもそのような思いから始めました。若いスタッフがハンドルを握り運転している様子を目にすると、異国情緒を感じたり、賑やかさを感じてくれると考えたのです」
「小さな取り組みではありますが、地道に2人、3人と、若い人が増えていくことで、町が活気付いていくのだと思うんです。トゥクトゥクによる運転代行サービスもそのような思いから始めました。若いスタッフがハンドルを握り運転している様子を目にすると、異国情緒を感じたり、賑やかさを感じてくれると考えたのです」

自らは表に出ず、若手のサポートに徹する中山氏による“持続可能な地域づくり”の試みは、実はこれだけではない。“昔ながらの味”を事業承継したのだ。
それは中山氏自身が幼少期に口にし、長く“地元の味”と親しんだ名店「洞月」の中華そば。中山氏にとっての“ふるさとの味”であり、つまり他の場所では得られない味ということになる。
「『洞月』は後継者不足から閉店になったのですが、ならば承継しようと店主のところを訪れ、教えてもらったレシピを私自身が厨房に入って身に付け、蘇らせることができました。人は五感で記憶しています。小さいときに食べた味があると、都会に出ていっても故郷を思うことができ、“久しぶりにあの味を食べたいから帰ろうか”と、帰省するきっかけにもなるのです。私にとっては『洞月』の中華そばが、まさにそれでした」
豚骨と鶏ガラからとった白くて優しい甘みのあるスープと太いストレート麺を特徴とする伝統の味は、小松島港に近い倉庫街に「小松島中華」として展開。加えて近日中に創業74年の串カツ店「赤いのれん」も事業承継するという。
「港はあるけれど活気は失われ、昔ながらの味もなくなってしまう。それではもはや寝て起きて働くだけの町となってしまいます。少しずつですが倉庫街に店舗が増え、いつか横丁のようになっていけば、もっと賑わいを創出できるはず。そのようなビジョンで、地道にやっていこうと思います」
それは中山氏自身が幼少期に口にし、長く“地元の味”と親しんだ名店「洞月」の中華そば。中山氏にとっての“ふるさとの味”であり、つまり他の場所では得られない味ということになる。
「『洞月』は後継者不足から閉店になったのですが、ならば承継しようと店主のところを訪れ、教えてもらったレシピを私自身が厨房に入って身に付け、蘇らせることができました。人は五感で記憶しています。小さいときに食べた味があると、都会に出ていっても故郷を思うことができ、“久しぶりにあの味を食べたいから帰ろうか”と、帰省するきっかけにもなるのです。私にとっては『洞月』の中華そばが、まさにそれでした」
豚骨と鶏ガラからとった白くて優しい甘みのあるスープと太いストレート麺を特徴とする伝統の味は、小松島港に近い倉庫街に「小松島中華」として展開。加えて近日中に創業74年の串カツ店「赤いのれん」も事業承継するという。
「港はあるけれど活気は失われ、昔ながらの味もなくなってしまう。それではもはや寝て起きて働くだけの町となってしまいます。少しずつですが倉庫街に店舗が増え、いつか横丁のようになっていけば、もっと賑わいを創出できるはず。そのようなビジョンで、地道にやっていこうと思います」

長く受け継がれてきた町の思い出がなくなることへの悲しさ、危機感を抱き、リゾート展開、“懐かしい味”のリブランディングを行う。そうして人で賑わう地元を創出し、時代に左右されずに永続する町にしていきたいと、中山氏は考えている。
小松島リゾート https://komatsushima-resort.com
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