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電動化を推し進めるLEXUS初のPHEV

「NX450h+」

──その走りの“味”とは?

2021.12.16 THU
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電動化を推し進めるLEXUS初のPHEV

「NX450h+」

──その走りの“味”とは?

2021.12.16 THU
電動化を推し進めるLEXUS初のPHEV「NX450h+」──その走りの“味”とは?
電動化を推し進めるLEXUS初のPHEV「NX450h+」──その走りの“味”とは?

2021年6月にワールドプレミアされたLEXUS 新型「NX」。カーボンニュートラル社会の実現と、多様化するお客様のニーズに寄り添うクルマづくりを加速する次世代LEXUSの第一弾モデルだ。6つのパワートレインをラインナップする同車のなかでも、今回はブランド初のPHEV(プラグインハイブリッド)となる「NX450h+」に、モータージャーナリストの小川フミオ氏が試乗。LEXUSが掲げる電動化ビジョン「Lexus Electrified」に基づくその走りをリポートする。
※こちらの記事はLEXUSから小川フミオさんに依頼したコメントを掲載しています。

Text by Fumio Ogawa
Photographs by Masayuki Arakawa

ひたすらスムーズな走行をかなえるスマートなハイブリッドシステム

LEXUS新型「NX」がいよいよ公道を走り出した。2021年10月7日に発売されたNXシリーズは、魅力的なモデルバリエーションを展開するのが、大きな特長だ。

走り、デザイン、先進技術を全面刷新した次世代LEXUSの幕開けを象徴する第一弾モデル。それが新型NXである。とりわけ、カーボンニュートラルな社会の実現を目指すLEXUSの電動化ビジョン「Lexus Electrified」に基づいて設定されたのが、「NX450h+」。 LEXUS初のPHEV(プラグインハイブリッド)だ。
ダイナミックで躍動感のあるエクステリアデザインも新型NXの魅力の一つ
ボディサイドは光を受けると、シャープなキャラクターラインが際立つ
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試乗できたのは、秋の深まる長野県のリゾート、蓼科(たてしな)。新型NXシリーズのトップモデル「NX450h+」は、太陽の光が作りだす陰影でもって抑揚を強く感じられるボディのデザインが印象的だった。

私は「ダイナミックさと艶やかな造形」という、デザイナーの言葉をすぐに思い出した。全長は30mm伸びた一方で、リヤのオーバーハングは17mm切り詰められたプロポーションも躍動的だ。

プラグインハイブリッドとは、外部充電式のハイブリッド。通常のハイブリッドより、高出力バッテリーを搭載することが可能となり、結果、化石燃料を使わず走れる距離が延びるとともに、モーターならではの力のある走りが実現できるなど、メリットが多い。

ドイツのプレミアムクラスのSUVやセダンにも、このところ増えている。「NX450h+」では88km*におよぶEV(モーター)走行ができる(WLTCモード)というのも、プラグインハイブリッドならでは。
グリル面が垂直に立てられた次世代スピンドルグリルなど、LEXUSはデザインにおいても新たなチャプターに入っている
横一文字の薄型リヤコンビネーションランプと、新たなLEXUSロゴがリヤビューの特徴
PHEVである「NX450h+」にはボディの右サイドに充電ポートが設けられている
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「NX450h+」では、ドライブトレイン、すなわち電気モーターとエンジンによるハイブリッドシステムの活かし方が上手なのも、もう一つの大きな魅力だ。ドライブモードの切り換えもでき、EV走行、ハイブリッド走行、走りながら充電できるセルフチャージモードが選択可能。

なかでも、私が感心したのは、「AUTO EV/HVモード」だ。EV走行をメインにしながら、加速時のように瞬発力が欲しいときにエンジンを使うなど、自動的にEV走行と、ハイブリッド走行を切り替えてくれる。

「AUTO EV/HVモード」には、LEXUS初採用の「先読みエコドライブ」が組み合わされている。これが、とてもよい。ナビゲーションシステムを使った際、地図データをもとに、上記のパワートレイン切り替えを自動で行う。例えば、EV走行中に上り坂に差しかかると勾配に応じてエンジンを始動させる。

その先に下り坂があると、頂点付近でエンジンを停止させ、下っているときは回生ブレーキを利用してバッテリー充電を行うなど、スマートなシステムだ。

私が体験した限り、エンジンの始動も停止もほぼ無音で、振動も抑えられていて、急峻な坂でなければ、ドライバーはアクセルペダルの踏み増しを意識することなく、ひたすらスムーズな走行の恩恵にあずかっていられる。
電気モーターとエンジンによるハイブリッドシステムの活かし方が上手なのが「NX450h+」の大きな魅力と小川氏はいう
電気モーターとエンジンによるハイブリッドシステムの活かし方が上手なのが「NX450h+」の大きな魅力と小川氏はいう
「NX450h+」のエンジンは、2487cc直列4気筒。ハイブリッドモデルの「NX350h」と共用だ。そこにもってきて、「NX450h+」では、総電力量18.1kWhという大容量のリチウムイオン電池を搭載。

はたして、システム最高出力227kW(309ps)を実現している。最大トルクは、エンジンが228Nm。「E-Four」とよばれるAWD(全輪駆動)なので、モーターが前後に1基ずつ備わる。フロントモーターの最大トルクは270Nm、リヤが121Nm。

数値をみても、駆動のために必要なトルクが豊か。それを広い視野でもって、スムーズな走行に役立てている。LEXUSらしい電動化だと私は感じた。
風切り音やロードノイズは低くおさえられており、静粛性の高さが印象的だ
風切り音やロードノイズは低くおさえられており、静粛性の高さが印象的だ

“走っては直す”を繰り返して磨き上げた走りの“味”

さらにもう一つ、新型NXには大きな魅力がある。開発を担当したチーフエンジニアの加藤武明氏は、「LEXUSらしい電動化」とともに、「クルマの体幹を徹底的に鍛える」を開発のテーマに据えたとしている。

ドライブすると、その目標が見事に達成されているのが分かるのだ。SUVらしくないといいたいほど、ステアリングホイールを握った私の意思通り走れるのが、うれしい驚きだった。

あらゆる走行シーンで減速、操舵、加速がシームレスにつながる気持ちよさをはじめ、接地感、力感、安心感のある走りの実現を目指したそう。LEXUSの表現を借りると、「Lexus Driving Signature」となる。別の言葉でいうと、LEXUSならではの走り(のよさ)。それを深化させたという。
「クルマの体幹を徹底的に鍛える」をテーマに開発陣による“走り”が磨き上げられた
「クルマの体幹を徹底的に鍛える」をテーマに開発陣による“走り”が磨き上げられた
「NX450h+」の試乗コースは、夏のリゾート地ゆえ、晩秋には観光客の姿も消えた蓼科の空いた山岳路。ビーナスラインといって、北八ヶ岳をはじめとする山々の斜面を走る屈曲路は、自然の木々とその間からのぞく山々の景色が美しい。同時に、なかなか楽しいドライブコースだ。大小のカーブの数々とともに、上りと下りがある。

「NX450h+」をドライブしていると、ステアリングホイールを切り込んだときの車体の反応のよさと、カーブを曲がっていくときの安定感は、SUVというよりスポーツセダンのようだと思った。私の頭には、SUVを超えるSUVとして、“スーパーSUV”という言葉が浮かんだほどだ。

「NX450h+では“味磨き”をしました」。試乗会場でそう語ってくれたのはLEXUSシャシー設計部でグループ長を務める壇博貴氏だ。味磨きとは、興味をそそられる言葉ではないか。
軽量化と高剛性化が追求されたボディが、ハンドリングのよさと質感の高い乗り心地のベースとなっている
軽量化と高剛性化が追求されたボディが、ハンドリングのよさと質感の高い乗り心地のベースとなっている
「従来のNXも、走らせて楽しいと思っていただけるよう、ハンドリングのよさを意識して開発したモデルでした。今回はその考えを継承し、さらに、改善できるところは、すべて改善していこうと考えました」

新型NXのシャシーは、独自の溶接技術であるレザースクリューウェルディングと、構造接着材、さらに新開発のレーザーピニング溶接技術を採用して、剛性を上げるとともに、操縦性にとって大事な“しなり”をうまく作っている。アッパーボディは重心高を下げるために軽量化され、スポーティなハンドリングのために効果的に補強が入れてある。

ホイールの締結構造は(一般的なスタッドボルトとハブナット締結でなく)ハブボルトによる締結に変更。ハブナット締結は、バネ下の軽量化(約0.7kg減)に貢献。

従来の18インチに代わって20インチタイヤの採用も、堂々たる見かけばかりでなく、実際のハンドリング向上に役立っている。これらによって、すっきりとした手応えのある操舵フィールと、質感の高い乗り心地が実現した、と壇氏。
新たに採用された20インチホイールはハンドリングの向上にも寄与している
新たに採用された20インチホイールはハンドリングの向上にも寄与している
「大出力の電気モーターを使いつつ、乗る人の感性に合うよう仕上げるのも課題でした」。パワートレイン開発を主幹として担当した土田充孝氏が説明してくれた。

「例えば、アクセルペダルを踏み込んだとき。電気モーターはどんっと大トルクを出せますが、ドライブしている方のイメージ通りの加速感を作ることが大事なんです」

ナビゲーションまで含めてのパワートレイン制御と、シャシーとを見事に調整して、NXを作りあげている。愛知県にある「Toyota Technical Center Shimoyama」のテストコースで“走っては直す”を繰り返して作り上げたとされる。そこにも感心する。

軽量かつ高剛性で、反応のいいシャシーを作りあげた車体部の主事である松本将渓氏によると、エンジニアの人たちは、最後の最後まで、これで満足できるかと自問自答しながら、開発を続けたのだそうだ。はたして、アッパーボディ各所に補強ブレースや補強パネルを入れたのも、開発の最終ステージだったというから驚く。

この段階でそれやるかという声もあったものの、実際に手掛けたら、それまでとは別ものに仕上がりました、と満足げな発言を聞くと、LEXUSの絶え間ない開発姿勢に頭が下がる。ここまで凝ったクルマゆえに、手に入れて、自分のそばに置き、日常生活のパートナーにする価値がある、と思えるのだ。
気持ちのいいコーナリングを追求した結果、AWDの駆動力配分は従来よりリヤ寄りに仕上げられている
気持ちのいいコーナリングを追求した結果、AWDの駆動力配分は従来よりリヤ寄りに仕上げられている
「AWD(全輪駆動)であるNX450h+でカーブを曲がるときに、どう気持ちよく感じてもらえるかを突き詰めました。従来のAWDより、このモデルではあえて後輪により強めに駆動力がいくように設定しています」。前出の土田氏の言葉だ。

「ドライバーが考えた通りのラインをなぞって走れる感覚と、後輪が車体を押し出していくような後輪駆動車的な気持ちよさが味わっていただけるように、と設定しました」

クルマとの一体感を強く感じる「Tazuna Concept」によるコックピット

実は、私は4気筒ガソリンエンジンモデル「NX250」も気に入っている。このクルマでも、同じタイミングで蓼科の山岳路を走る機会があったので、そのときの印象がよかったのだ。
2.5L 直列4気筒ガソリンエンジンを搭載するエントリーグレードの「NX250」
2.5L 直列4気筒ガソリンエンジンを搭載するエントリーグレードの「NX250」
しっかりと足をふんばるという感じでカーブを曲がり、ハンドルを切ったときの車体の動きは俊敏で、エンジンは低回転域から力があり、乗り心地も快適。先に引用した加藤チーフエンジニアの「体幹を鍛える」というアスレチックな表現が理解できる運動性能が味わえる。

「NX250」のよさは、軽快さにある。比較的小さなエンジンを載せていて、一般的にいって、エンジンが軽いと慣性の関係で、クルマは操りやすくなる。同じシャシーで、小さめのエンジンから大きめな多気筒エンジンまで載せたクルマだと、私は、絶対に前者を好んできた。

ところが、新しいNXにおいては、そんな私の“常識”が覆されてしまった。重量で勝る「NX450h+」が「NX250」と同じ感覚で、くいくいと気持ちよくカーブを曲がっていくのだ。

「NX450h+」では、専用セッティングしたサスペンションシステムや、やはりこのクルマ専用に調整したステアリングシステムなどを採用。目的は、すべてのNXに統一された味を作りだすことだという。それが実現できているのだ。
「人間中心」の思想をより高次元で具現化するための新コンセプト「Tazuna」を採用したコクピット
ドライバーズシートは適度なタイト感が心地いい
リヤシートは十分なスペースが確保されている
ドアハンドルに指を当てて軽く押せば、電動でロックが解除されるe-ラッチシステムが備わる
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クルマとドライバーがより直感的につながり、より運転操作に集中できるように、というLEXUSによる、新たなコックピット思想「Tazuna Concept」を採用したコクピットに体を落ち着け、手にしっくりとなじむステアリングホイールを握っていると、クルマとの一体感を強く感じる。

インフォテイメントシステムも扱いやすく、14インチとだいぶ大型のモニターを使っての、ナビゲーションシステムやオーディオは扱いやすい。よく使う機能はショートカットスイッチを作って、トップ画面に置いておけるなど、スマートフォンの感覚で使えるのは、新しい。
スマートフォン感覚で操作できる高解像度の14インチワイドタッチディスプレイ
スマートフォン感覚で操作できる高解像度の14インチワイドタッチディスプレイ
カーボンニュートラルな社会の実現に向けて、「Lexus Electrified」として電動化を着実に進めているLEXUS。単にBEV(電気自動車)を作るのでなく、自動車づくりにおける豊かな経験を活かして、ドライバビリティの高い、いってみれば新しいBEV(電気自動車)を作ろうとしているのは間違いない。「NX450h+」はその嚆矢として、明るい未来を感じさせてくれた。


■LEXUS NX450h+
ボディサイズ:全長4,660×全幅1,865×全高1,660mm
ホイールベース:2,690mm
車両重量:2,010kg
パワートレイン:
2.5L 直列4気筒 プラグインハイブリッドシステム
最大出力 [NET]:136kW(185PS)/6,000r.p.m.
最大トルク[NET]:228N・m(23.2kgf・m)/3,600~3,700r.p.m.
フロントモーター(5NM)
最大出力: 134kW(182PS)
最大トルク: 270N・m(27.5kgf・m)
リヤモーター(4NM)
最大出力: 40kW(54PS)
最大トルク: 121N・m(12.3kgf・m)
駆動方式: E-Four(電気式4輪駆動方式)
メーカー希望小売価格(消費税込):714万円(“version L”)、738万円(“F SPORT”)

※価格にはオプション価格は含まれません。北海道地区の価格には寒冷地仕様の価格が別途加算されます。
※価格はメーカー希望小売価格<'21年10月現在のもの>で参考価格です。
価格はLEXUS販売店が独自に定めていますので、詳しくはLEXUS販売店におたずねください。
※価格は一部パンク修理キット、タイヤ交換用工具付の価格です。
※保険料、税金(除く消費税)、登録料などの諸費用は別途申し受けます。
※記事内の装備・オプション詳細に関してはLEXUS販売店におたずねください。

■充電電力使用時走行距離は定められた試験条件のもとでの値です。お客さまの使用環境(気象、渋滞等)や運転方法(急発進、エアコン使用等)に応じてEV走行距離は大きく異なります。
■エンジン、駆動用電池の状態、エアコンの使用状況や運転方法(所定の車速を超える)などによっては、バッテリー残量に関わらずEV走行が解除され、エンジンが作動します。
■WLTCモードは、市街地、郊外、高速道路の各走行モードを平均的な使用時間配分で構成した国際的な走行モードです。

*NX450h+“version L”において、18インチタイヤ&アルミホイールを装着して車両重量が1,990kgの場合、92kmとなります。また、18インチタイヤ&アルミホイールを装着して車両重量が2,000~2,010kgの場合、91kmとなります。NX450h+“F SPORT”において、18インチタイヤ&アルミホイールを装着して車両重量が1,990kgの場合、92kmとなります。また、18インチタイヤ&アルミホイールを装着して車両重量が2,000kgの場合、91kmとなります。

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