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エアレース・パイロット室屋義秀選手とLEXUSが新生エアレースに挑戦

2021.10.21 THU
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エアレース・パイロット室屋義秀選手とLEXUSが新生エアレースに挑戦

2021.10.21 THU
エアレース・パイロット室屋義秀選手とLEXUSが新生エアレースに挑戦
エアレース・パイロット室屋義秀選手とLEXUSが新生エアレースに挑戦

2021年10月21日、エアレース・パイロットの室屋義秀選手とLEXUSが、室屋選手が拠点としている福島県のふくしまスカイパークで共同記者会見を開いた。2022年よりシリーズがスタートする「ジ・エアレース ワールドチャンピオンシップ(TARWC :The Air Race World Championship)」 開催に向けて、室屋選手が代表を務める株式会社パスファインダーとLEXUSが、チームパートナーシップ契約を結ぶことを発表するためだ。

Text by Takeshi Sato
Photographs by Maruo Kono

2年半の充電期間を経て、再始動

2017年、「レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ」において、アジア人初となるチャンピオンに輝いた室屋選手。2019年を最後に、世界規模のエアレースは開催されていなかったが、室屋選手が新たなるエアレースに挑むということで、当日はふくしまスカイパークに、テレビ局や新聞社などの取材陣が駆けつけた。会見の模様は、オンラインでもライブ配信された。

会見の会場となったふくしまスカイパークの格納庫に、特別限定モデルのLEXUS LC500h Limited Edition “AVIATION”が姿を現した。

LEXUS INTERNATIONALの佐藤恒治 President/Chief Branding Officerがステアリングホイールを握り、助手席には室屋選手の姿が見える。

LEXUS LC500hから降り立った両名はがっちりと握手を交わし、それぞれがこの発表会に臨む心境を語った。
新生エアレースにワンチームで挑む室屋選手と佐藤President/Chief Branding Officer
新生エアレースにワンチームで挑む室屋選手と佐藤President/Chief Branding Officerは、会場に登場するとまず握手を交わした
まず、室屋選手は満面の笑みを浮かべ、「本当にうれしいです」と切り出した。

「2019年にレッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップが終了し、約2年半ほどかけて準備をしてきました。いままで発表ができませんでしたが、公にすることができることを心からうれしく思います」

一方の佐藤Presidentは、「感無量です」と、晴れ晴れとした表情で語った。

「本日、室屋選手の新しいパイロットスーツにLEXUSのロゴがあるのを見て、一緒に挑む責任の重さを感じています」

佐藤Presidentからは、これまでのLEXUSと室屋選手はパーソナルパートナーという関係であったが、今後はチームパートナーとしてワンチームで戦っていくことが発表された。

これに伴い、これまでのTEAM MUROYAというチーム体制が、LEXUS/PATHFINDER AIR RACINGへと移行することも明らかにされた。
室屋選手はデザインが一新されたパイロットスーツで登場
室屋選手はデザインが一新されたパイロットスーツで登場
デザインが一新されたパイロットスーツの感想を尋ねられた室屋選手は、「スポンサーとは違う、本当のパートナーです」と感慨深げにLEXUSのロゴを指差した。

二人の挨拶が済むと、いよいよ新生エアレースに挑む機体が、濃紺の新しいカラーリングをまとって登場。室屋選手によると、勝利にこだわる武士に好まれた、日本の伝統的な色である「勝色」をイメージしたとのこと。縁起のいいカラーリングの機体に、LEXUSのロゴが大胆に描かれているのが印象的だ。

ここから室屋選手と佐藤Presidentのクロストークセッションが始まった。以下、これまでの活動を振り返ったトークセッションの内容を、簡潔にまとめてみたい。
「勝色」をイメージした濃紺にペイントされた新しい機体。翼をはじめ各所にLEXUSのロゴが描かれる
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空のプロと陸のプロから生まれたシナジー

そもそも室屋選手とLEXUSがパートナーシップを結んだのは、2016年。エアレースという世界の舞台でチャンピオンを目指して戦う室屋選手のチャレンジングスピリットに、同じく世界で戦う日本発のブランドとして、LEXUSが共感したことがきっかけだった。ただし両者の関係は、アスリートとその活動をサポートする企業という範疇を超えたものだった。

2017年、LEXUSと室屋選手は週に一度開催する技術交流会を立ち上げた。それまでの室屋選手は「レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ」において、2016年の千葉大会で初優勝に輝くなど善戦するものの、シリーズチャンピオンにはあと一歩届かなかった。そこで、空のプロと陸のプロが意見を交換して、さらなる高みを目指そうとしたのだ。
室屋選手とLEXUSによるパートナーシップは両者にシナジーをもたらした
室屋選手とLEXUSによるパートナーシップは両者にシナジーをもたらした
具体的には、LEXUS LC500のステアリングホイールの形状を作り込んだLEXUS車両性能開発部TAKUMIドライバーの、「数値よりも感性による評価を重視すべきでは」という意見を取り入れ、室屋選手はTAKUMIドライバーとともに、レース機の操縦桿の形状を試行錯誤しながら改良していった。従来の筒状の形状とは異なる、新しい操縦桿を採用して挑んだ2017年第3戦千葉大会で、室屋選手は見事に優勝を果たした。

また、LEXUSの空力性能を解析するエンジニアの意見を受けて、室屋選手は得意としているバーチカルターンのスタイルを変えた。すると、はっきりとタイムが向上したのだ。

こうして2017年、室屋選手は“空のF1”と称された「レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ」において、ついにアジア人初となるチャンピオンに輝いた。
LEXUS LC500 / 500h Limited Edition “AVIATION”
カーボン製のウィングに航空機のウィングレットの原理が応用されている
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一方、レクサスのクルマづくりにも、空の経験が活かされる。前出のレース機の空力解析により、ウイングレット(翼端板)の周囲で生まれる空気の渦が、運動性能に影響を与えることが分かったのだ。

この原理を応用して設計したカーボンファイバー製のウイングを装着した限定モデル*が、この日も登場したLEXUS LC500 / 500h Limited Edition “AVIATION”。AVIATIONとは鳥を語源とする言葉であるが、その名の通り、空から舞い降りた鳥のごとく、優雅で鋭い走りを披露した。

*現在は生産終了しております

LEXUSがエアレースに挑む理由

二人によれば、これまでWin-Winの関係を築き上げてきた室屋選手とLEXUSが、TARWCにおいては協力関係をさらに強化するという。

佐藤Presidentは、「テクニカルコーディネイターと、チーム運営をサポートする人材を派遣する」と語った。空力および冷却、人間工学分野での技術開発に協力し、互いの技術とノウハウをいままで以上にスピーディにレース機の開発につなげ、初年度総合優勝を目指して一体となって戦うためだ。
新生エアレースでは全LEXUSで戦うことができるのが心強いと語る室屋選手
新生エアレースでは全LEXUSで戦うことができるのが心強いと語る室屋選手
佐藤Presidentのこの発言を受けて、室屋選手は次のように述べた。

「テクニカルコーディネイターの方は一人ですが、彼がLEXUSのすべてのエンジニアと我々を結びつけてくれます。いわば全LEXUSで戦うことができるわけで、これは心強いです」

ここで、佐藤Presidentによってテクニカルコーディネーターを務めるLEXUSの中江雄亮氏も紹介され、室屋選手とともに戦う意気込みを語った。
LEXUS/PATHFINDER AIR RACINGのテクニカルコーディネイターを務める中江雄亮氏
LEXUS/PATHFINDER AIR RACINGのテクニカルコーディネイターを務める中江雄亮氏
LEXUSがエアレースに力を入れる理由を問われた佐藤Presidentは、「大きく3つ挙げることができます」と述べた。

「まず一つに、室屋選手と一緒に日本を代表して世界と戦うことで、モータースポーツの素晴らしさを伝えることができると思います。二つめに、レースのタイミングが決まっているモータースポーツでは、非常に短い納期で結果を出さなければなりません。特にエアレースはエクストリームな世界で、ここで戦うことで技術の限界を超えることができると期待しています。最後に、TARWCは電動化やカーボンニュートラルの取り組みも進めるモータースポーツのカテゴリーです。我々もカーボンニュートラルにつながる技術を一つでも発見し、モータースポーツが社会的責任を果たすことにつなげたいと考えています」
佐藤Presidentはエアレースというエクストリームな世界で戦うことで技術の限界を超えることができると期待している語った
佐藤Presidentはエアレースというエクストリームな世界で戦うことで技術の限界を超えることができると期待している語った
佐藤Presidentの発言を補足すると、発表会に先立って、TARWCの責任者を務めるウィリー・クルークシャンク氏のビデオメッセージが流され、2022年からのシリーズの概要がアナウンスされた。

初年度のレースカレンダーは2022年年初に正式発表されるが、ギリシヤ、ポルトガル、ロシアなどのヨーロッパ各国と中東を舞台に、5月から12月にかけて開催される。また、ゼロ・カーボン燃料の使用や原動機の電動化など、カーボンニュートラルに向けても精力的に取り組むと、クルークシャンク氏はコメントしている。

したがって、TARWCを戦うことはカーボンニュートラルに向けた取り組みにつながるのだ。

室屋選手も、福島県の航空宇宙関連産業事業に協力して、カーボンニュートラルに向けてチャレンジを行う。株式会社パスファインダーを中心に、地元企業の協力を得ながら、バイオ燃料や水素燃料、あるいは動力源の電動化の可能性を探る予定だ。同時に、航空産業の人材育成を後押しするなど、地域の活性化もサポートする。

最後に佐藤Presidentは次のような言葉で発表会を締めくくった。

「まだ何も成し遂げていませんが、思いを持つことは大事です。今日は挑戦の始まり、節目の日だと思っています」
室屋選手は、目標は総合優勝しかないと力強く語ってくれた
室屋選手は、目標は総合優勝しかないと力強く語ってくれた
発表会の後で個別取材に応じてくれた室屋選手は、こんな言葉で意気込みを語った。

「2017年にシリーズチャンピオンを獲得しているので、目標は総合優勝しかありません。しかも初年度だけでなく、何連覇もできるような強いチームを作りたい。そのためには、LEXUSとパートナーシップを結ぶことがベストだと考えました」

空のレースで誰よりも速く飛ぶこと。そこで得た知見をLEXUSのクルマづくりにフィードバックすること。さらには、地域の活性化と持続可能な社会の実現──。室屋選手とLEXUSのパートナーシップは、大きな目標にチャレンジする。

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