ART / DESIGN

日本酒の未来を切り拓く「SAKE HUNDRED」の挑戦

2021.10.08 FRI
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日本酒の未来を切り拓く「SAKE HUNDRED」の挑戦

2021.10.08 FRI
日本酒の未来を切り拓く「SAKE HUNDRED」の挑戦
日本酒の未来を切り拓く「SAKE HUNDRED」の挑戦

最高峰の日本酒を生み出し、日本酒の価値を国内外で高めようと邁進する「SAKE HUNDRED」。日本酒のラグジュアリーブランドを育てるために、今日も既成概念を超えた数々の挑戦を重ねる。SAKE HUNDREDの創設者にその想いを聞いた。

Edit & Text by Mari Maeda (lefthands)
Photographs by SAKE HUNDRED

日本酒の未来をつくるために

世界中の人々の「心を満たし、人生を彩る」ことを掲げて、日本酒の最高峰ラグジュアリーブランドを目指す「SAKE HUNDRED」。「100年先まで光照らすように」という想いから生まれたフラッグシップ商品「百光(びゃっこう)」は、今日、最も入手困難な日本酒の一つだ。
透明感のあるクリアな味わい、ユリの花のような上品な香りと白桃やライチを思わせる瑞々しい甘み、長く続く余韻の美しさが特徴の「百光」は、イギリス、フランスで開催されたワインコンクールで2冠に輝き、昨年は海外で最も歴史ある日本酒品評会、全米日本酒歓評会でも金賞を受賞した。
フラッグシップ商品の「百光」。極限まで磨かれた上質でエレガントな味わいとともに、外観の美しさも手にする喜びをもたらす
フラッグシップ商品の「百光」。極限まで磨かれた上質でエレガントな味わいとともに、外観の美しさも手にする喜びをもたらす
そんな「百光」を世に送り出し、快進撃を続けるSAKE HUNDREDを率いる生駒龍史氏は、知人に誘われてある日本酒に出合い、その美味に感動して瞬く間に日本酒の世界に魅了されたという。その感動から2013年にClearを創設、日本酒の情報を国内外に配信するウェブメディア「SAKETIMES」の運営をまず開始した。

「社名のClearには“切り拓く”という意味もあります。後にSAKE HUNDREDというブランドを作ったのも、まさに日本酒の未来を切り拓くためでした」

そう語る生駒氏は、SAKETIMESの取材のために自ら数多の酒蔵を訪ね歩いた。そうして日本のものづくりの技術と自然の恵みを反映し、かつ食との相性も良い日本酒に大きな可能性を改めて感じたというが、その一方である課題にも気づいた。
Clearの代表取締役を務め、日本酒のラグジュアリーブランド「SAKE HUNDRED」を率いる生駒龍史氏
Clearの代表取締役を務め、日本酒のラグジュアリーブランド「SAKE HUNDRED」を率いる生駒龍史氏
「安くておいしいお酒が日本中で飲める。それはひとえに企業努力によるもので素晴らしいことなのですが、日本酒の魅力が世界にも通じると考えていた我々には、ラグジュアリーと目される高価格帯の市場がないことが不自然に感じられたのです」

世界に誇れるラグジュアリーブランドを目指して

精魂込めたものづくりの精神が宿り、奥深い表現力を持つ日本酒。極めれば本来数万、数十万円にも値する価値があり、国内外にはそれを嗜(たしな)むことを望む消費者もいる。にもかかわらず、高価格帯の商品が不在であることは産業における機会損失ではないか? そう感じた生駒氏は、次なるステージへと自身を駆り立てた。

「価格帯を上げて、最高の品質を備え、より多彩な日本酒を世界へ広げていきたいと考えました。そうすることで、市場規模が縮小しつつある日本酒業界の起爆剤にもなるのでは、と。まさに日本酒の未来を考える上で、高価格帯の市場を開拓する必要性があったのです」
吉祥文として古くから知られる菱文様を用いたラベル。100年先を照らす「百光」の名とともに、祝いの席にもふさわしい
吉祥文として古くから知られる菱文様を用いたラベル。100年先を照らす「百光」の名とともに、祝いの席にもふさわしい
そうして2018年、SAKETIMESによって蓄積した知見を駆使して、高級日本酒ブランド、SAKE HUNDREDを創業(※当時「SAKE100」としてリリース。2020年8月に「SAKE HUNDRED」にリブランディング)。冒頭で紹介した「百光」は、今日ある7銘柄の中の最初の1本として生まれ、瞬く間に高い評価を得ていった。日本酒としては強気な価格ながら、「待っていた」との喜びの声が上がり、自分の決断が間違いではなかったことを確信したという生駒氏。現在、「百光」は即完売してしまうために、幻の1本とまで称されている。

酒蔵との共創

百光の繊細な味わいを生み出すのは「18%」という精米歩合だ。原料の酒米を200時間以上もの時間をかけて丁寧に磨きあげることにより、雑味のないクリアな味わいを実現している。こうした緻密な作業を重ね、妥協のない商品を生み出すには、酒蔵との信頼関係が欠かせない。現在SAKE HUNDREDが有する銘柄は、それぞれ異なる酒蔵が手がけている。
酒蔵を選ぶ際には酒造りの技術から設備、社風に至るまで、厳格な視点で細やかに確認していく
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「SAKE HUNDREDの商品は、その大前提として品質が良くなくてはなりません。あらゆるラグジュアリーブランドの根本的な価値は品質です。ですから、生み出す商品への徹底したこだわりは自分たちに課せられた使命だと考えています。商品の品質を我々が誰よりも厳しく見る必要があり、酒蔵を選ぶ際には、酒造りの技術はもちろん、設備や蔵人(くらびと)、熱意や社風など細部にわたり見せていただきます。そして何と言っても、我々の展望や想いを共有していただけるかが重要です」
酒蔵を選ぶ際には、名が知れた酒蔵を選ぶでもなく、知り合いのよしみでもなく、自分たちが思い描くコンセプトを確実に形にし、体現してくれる蔵を吟味に吟味を重ねて選んできた。これまでに国内外の多くの酒蔵を訪ね歩き、その数を自負する生駒氏だが、たとえ今までに縁のなかった酒蔵であったとしても必要であればドアを叩きにいくという。コネクションに頼らない姿勢は、理想を追い求める生駒氏の信念をうかがわせる。
デザート日本酒という新しい概念を体現する「天彩(あまいろ)」や、26年の時を経た熟成酒「現外(げんがい)」など多様な価値を提案する世界が広がる

厳密な品質管理

品質への徹底したこだわりは、温度による商品の品質変化の検証にまで至る。本来5度以下で保管するのがベストだが、消費者の手に渡ってからは必ずしも適温で保管されるとは限らない。そのため、SAKE HUNDREDでは5度、15度、25度の温度で保管した場合の品質変化を検証している。

「各温度で週単位、月単位の品質チェックを行っています。そうすることによって、例えば『数週間ほど常温で置いてしまったけれど、まだ飲めますか?』というお客様からのご質問に対し、その日数と環境であればこういう変化が出ているかもしれませんが、温度を変えて、このような食事と合わせるとおいしく飲んでいただけますよ、とお伝えすることができるのです」
SAKE HUNDREDでは温度による商品の品質変化を調査し、的確に把握している
SAKE HUNDREDでは温度による商品の品質変化を調査し、的確に把握している
こうした品質への責任ある姿勢は、丹精込めて酒を造り上げた酒蔵からも喜ばれているという。

「厳密な視点で酒蔵を選び、その酒蔵で出来上がった商品をお客様のお手元でどのように楽しんでいただけるのか、品質変化も含め把握しておくことは、高価格帯の商品を扱う我々の責任だと考えています」

SAKETIMESは国内外最大の日本酒サイトであり、そのサイトを運営する生駒氏のもとには日本酒の最新情報が入ってくる。新しい技術や新しい設備で造られる商品も、どの企業よりも早く取り寄せて試飲するという。そうした積極的な情報収集と探究心に基づくさまざまな検証、仮説設計、試飲による日々の試行錯誤が、SAKE HUNDREDの妥協のない品質を生み出している。

サステナビリティの推進

現在、SAKE HUNDREDはサステナビリティへの取り組みも始めている。

「日本酒は水、米、麹という自然の素材で造られていますから、自然環境への配慮は当然必要です」

確かに、水質の悪化や、気候変動による米への影響は、日本酒の品質にダイレクトに響く。
実際にはどのような取り組みが行われているのか。
「例えば今、ある大学と日本酒造りにおける二酸化炭素の排出量を適切に把握する研究を行っています。さらにその結果に対してどのようなアプローチをすると削減できるのかを検証し、その情報をSAKETIMESに公開していこうと考えています」

自社の利益を追うだけではなく、産業全体の未来に貢献するために、生駒氏は自分たちが得た知見や情報を積極的に公開し、産業のスタンダードを引き上げたいと考える。

「調査すべきことが多岐にわたり大変ではあります。しかし産業全体、ひいては地球のために当たり前なこととしてやらなくてはなりません。サステナビリティへの取り組みは、ブランドの付加価値としてではなく、我々の事業の軸として捉えています」
自然の豊かな恵みを享受して日本酒は生まれる
自然の豊かな恵みを享受して日本酒は生まれる
日本酒の未来を牽引することを目指すSAKE HUNDRED。創設からわずか3年の間に、独自の視点でさまざまな施策を重ねてきた生駒氏は言う。

「本当においしいお酒を飲むことで心が満たされ、一緒に飲む人との関係が豊かになり、社会全体の豊かさにつながるような、そんな情緒的な価値をも我々は商品を通して世界に提供していきたいと考えています。そのためにも、前提となるものづくりへのこだわりは揺るぎません」
2020年末には、ミシュラン2つ星獲得の名店「NARISAWA」(東京・青山)でペアリングランチを開催した
2020年末には、ミシュラン2つ星獲得の名店「NARISAWA」(東京・青山)でペアリングランチを開催した
今後は酒の原料となる米や麹の研究も進めていくという生駒氏。SAKE HUNDREDの取り組みから、ますます目が離せない。

SAKE HUNDRED
https://sake100.com

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