ART / DESIGN

共に時を過ごし、記憶を重ねる。
相棒のような時計「YATAGALLAS」とは

2021.09.15 WED
ART / DESIGN

共に時を過ごし、記憶を重ねる。
相棒のような時計「YATAGALLAS」とは

2021.09.15 WED
共に時を過ごし、記憶を重ねる。相棒のような時計「YATAGALLAS」とは
共に時を過ごし、記憶を重ねる。相棒のような時計「YATAGALLAS」とは

一度は失われてしまった職人技をよみがえらせ、現代のテクノロジーと融合させることで生まれた時計、「YATAGALLAS(ヤタガラス)」。持ち主の人生に寄り添い、共に時を刻む「相棒」のような時計の魅力を、JAEGER DOCSON(イエ―ガー・ドクソン)社のブランディング・ディレクターの工藤禎広氏に伺う。

Text & Edit by Miki Numata
Photographs by Teruaki Kawakami
Cooperated by R100TOKYO

失われた技術を現代に再生し、過去と今をつなぐ

ろうそくの炎のような暖かな色で、刻々と時を告げる時計。その光は、見る人を無心にして自分に返らせてくれるような、不思議な趣をたたえる。これが、JAEGER DOCSON社が手掛ける時計、「YATAGALLAS」だ。

「『八咫烏(やたがらす)』は、日本の神話に登場する3本足のカラス。神武天皇東征の際、高皇産霊尊(タカミムスビ)によって神武天皇の元に遣わされ、熊野国から大和国へ導いたとされる鳥で、導きの神、太陽の化身ともいわれています。日本人としてのアイデンティティーや誇り、そして我々のルーツに対する畏怖の念を込めてこの名前をつけました」と語るのは、JAEGER DOCSON社でYATAGALLASのブランディング・ディレクターを務める工藤禎広氏だ。
まるで小さな生き物のようにたたずむYATAGALLAS
神話に出てくる八咫烏をモチーフにしたロゴ
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YATAGALLASの誕生は2020年。この一台の時計が生まれるまでには、海を越えてのストーリーがあったという。

時間を表示するのに使われているのは「ニキシー管」。デジタル表示においては歴史上最古とされる技術で、1950年代に開発され、その後世界各地であらゆる器具に用いられてきた。日本でも電圧計やタクシーメーター、自動販売機など身近なところで使われてきた。

ところが、技術の発展によって液晶ディスプレイや発光ダイオードが登場してニキシー管に取って代わるようになり、ついに1990年代には完全に生産が終了。この技術は世界から消えてしまったのだ。
YATAGALLASには、透明度の高い特殊なガラスを使っているため、光が美しく透過される
「2011年、それを独学で研究し、復活させた人物がいたんです。チェコのダリボル・ファルニー氏がその人。2016年には大型ニキシー管を6本使った時計を作っています。彼が手掛けるニキシー管は芸術品のように美しく、力がありました」

それをニュースで見つけたJAEGER DOCSON社の代表、中野功詞氏は、その美しさに魅了され、チェコに足を運んでファルニー氏の元を訪れる。

「弊社のコンセプトは『Beyond Ages』。失われたものや無くなりつつあるものを掘り起こし、今という時代と掛け合わせることで時を超えたクリエーションを生み出す、ということです。単に『モノ』を作るのではなく、その『モノ』が人の人生にどう寄り添うことができるのかを考えたうえでのものづくりをしたい。ファルニー氏のニキシー管は、その我々の思いにぴったりと重なりました」
YATAGALLAS の前身とも言えるアート作品「Jaeger Docson」
YATAGALLAS の前身とも言えるアート作品「Jaeger Docson」

二つの時間を告げる時計で、自分だけの時を数える

中野氏がまず初めにニキシー管で作ったのは、今の社名でもある「Jaeger Docson」というアート作品だった。

「これは、いわゆる時計ではなく、紀元節からの時を秒単位で刻む『歴史カウンター』でした。日本人としてのアイデンティティーへの問いかけや、唯一無二の存在意義を表現したもので、これがYATAGALLASをつくるきっかけとなりました」

今の時代はモノがあふれている。一生かけても消費しきれないほどのモノに囲まれた生活の中で、本当に大切なもの、価値のあるものとは何なのだろう。

「そう考えたときに、消費するためのモノではなく、一緒に時を重ねていけるような、それこそ、その人にとって『唯一無二の何か』になれるモノを作るべきなのではないかと考えたんです」
住空間にあってこそ本領を発揮する時計は、置かれる空間によっても表情が変わる
YATAGALLASは、復活したニキシー管の技術にJAEGER DOCSON社独自のテクノロジーを合わせることでさまざまな機能を可能にした。

「表示される数字の動きや表情を、所有者の好みに合わせて選ぶことができます。操作はすべてスマートフォンと連動したアプリで可能。ロストテクノロジーと最新デバイスのコラボレーションですね」

搭載した機能の一つに、ある特定の時間からのカウンターの設定がある。前身となるアートピース「Jaeger Docson」で紀元節からの時をカウントしたように、ユーザーが自分で決めた日からの日数を数えてくれるのだ。

「例えば、今回撮影した2台は、時計が置かれているこのマンションが施工された日からの日数を表示させています。お客様によって、結婚した日だったり自分の誕生日だったりと、人生において最も大切な日を設定されることが多いですね」

自分と一緒に時を刻む、まさに唯一無二の、自分だけの、自分のための時計。時計という、生命体ではない「モノ」。されどこれはすでに、「人生を並走する、パートナーみたいなものですね」。
住空間の中に溶け込み、暮らしを見守るYATAGALLAS
住空間の中に溶け込み、暮らしを見守るYATAGALLAS

人生に寄り添い、心の奥を震わせる、時計という装置

YATAGALLASを通して、工藤氏にはひとつ忘れられない経験があるという。

「これまで何度か展示会などでお披露目をしたことがあるのですが、あるときご夫婦で見に来てくださった方がありました。ご主人に製品の説明をしていたときにふと奥さまを見ると、なんと、ポロポロと涙を流していらっしゃる。何かあったのかと驚いて尋ねたら、『自分でも分からないけれど、この時計をじっと見ているとなぜか涙が出てしまった』と。これには驚きました」

よくよく尋ねてみると、YATAGALLASを見ているうちにいろんなことが次々と思い出されて、感慨に涙がこぼれたのだという。
ちらちらと動き、一瞬止まっては時を告げるYATAGALLASには、人の記憶を呼び覚まし、今の自分と向き合わせてくれるような力があるようだ。
揺らぐような数字の動きは、ずっと見ていても飽きない
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よく、「ろうそくの炎を見ると心が落ち着く」という。これは、炎の揺らぎが人の心臓の鼓動のリズムに近く、リラックスさせる効果があるためだといわれている。YATAGALLASの暖かな光と数字の動きにもきっと、同様の効果があるのだろう。

「たかが時計、と思われるかもしれません。でも、テクノロジーが時間を超えて手を結び、人を介して大切につくられたものには、人間性、ヒューマニティがあります。使う人と二人三脚で一緒に時を歩く、そんなツールになってほしいです」

時代を超えて人に寄り添うクリエーション。神話の八咫烏が神武天皇を導いたがごとく、YATAGALLASは、我々人間を光へと、輝かしい未来へと導いてくれているのかもしれない。

※「YATAGALLAS」ニキシー管クロックシリーズは、2021年モデルの受注を開始します。詳細は公式サイトよりご確認ください。



YATAGALLAS
https://www.yatagallas.com

JAEGER DOCSON
http://www.jaegerdocson.com

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