SPORT

グッドウェーブは造り出せる。
今、サーフィンはプールで始める時代

2021.09.13 MON
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グッドウェーブは造り出せる。
今、サーフィンはプールで始める時代

2021.09.13 MON
グッドウェーブは造り出せる。今、サーフィンはプールで始める時代
グッドウェーブは造り出せる。今、サーフィンはプールで始める時代

オリンピック競技化で認知度を増したサーフィン。「やってみたい」という声は海のない場所からも聞こえてくる。注目される解決策がサーフィン用ウェーブプール。この夏には静岡県牧之原市にも誕生するなど、人工的に波を造れる施設が世界的に新設ラッシュを迎えている。

Text & Edit by Takashi Osanai
Photographs by Yasuma Miura, Shizunami Surf Stadium, Wavegarden

海外では“プール”でも試合が開催されている

五十嵐カノアと都筑有夢路によるメダル獲得の記憶も新しい東京2020オリンピックでのサーフィン競技。最終日の7月27日は台風8号の影響により、会場となった千葉県・一宮町の釣ヶ崎海岸はジャンクコンディションともいえる荒れ模様に。一般サーファーでは太刀打ちできない、世界の一流である彼ら彼女たちだからこそ波に乗れる状況となった。

本来は4日間での開催予定であり、台風発生後も、最も海が荒れそうな27日はオフにして翌28日以降に最終日を当てるという選択があった。台風が過ぎ去れば風は落ち着き、波はクリーンな姿を見せる。ただ、サイズは小さくなる。この点を嫌い、7月25日〜8月1日までの競技期間中において、荒れながらも最も大きなサイズとなる波でのファイナルを選んだ。大会関係者からは、そのような声が聞かれてきた。

サーフィンは自然のなかで行うスポーツ。日々、波のコンディションが変わることは、競技が行われた3日間すべてで波の状況が異なったことからも分かる。自然の波はコントロールができないため、海以外での開催地を促す議論が随分と前からあった。同じ波を何度も繰り返し生み出せる造波装置を備えるウェーブプールの方が、テレビ中継もあるオリンピックにはいいのではないかというものだ。

実績はすでにある。世界のプロサーフィンツアーを運営するワールドサーフリーグ(WSL)が、チャンプオンシップツアー(CT)と呼ばれる世界最高峰のプロツアーの1戦を米国カリフォルニアのウェーブプール「サーフランチ」で開催してきた。
「サーフランチ」でチューブをメイクするサーフィン界のカリスマ、ケリー・スレーター氏
CTはモータースポーツでいうなら国際自動車連盟が主催する最高峰の自動車レース、F1の位置付け。世界王者を決するツアーであり、トップオブトップの精鋭たちが年間を通して凌ぎを削る。その真剣勝負の場の1つとして「サーフランチ」は選ばれ、ウェーブプールのクオリティを証明してきた。
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静岡に誕生した国際規格の「静波サーフスタジアム」

実のところ、この「サーフランチ」は東京2020大会の開催会場となることを目指し千葉県木更津市に建設される予定だった。建設予定地も決まっていたものの、正式に釣ヶ崎海岸が会場となったことで予定は白紙となってしまった。

しかしその一方で、静岡県牧之原市では海から徒歩数分の場所に「静波サーフスタジアムPerfectSwellⓇ」の建設が進められていた。東京2020大会前にはアメリカ代表チームが事前キャンプ地に選択。女子の部で金メダルを獲得したカリッサ・ムーア氏らが本大会に向けて調整を行った。
「静波サーフスタジアムPerfectrSwellⓇ」は国内唯一の大型ウェーブプール。人生における1本目をかなえたい人からトッププロまでを受け入れる
そしてこの8月、一般向けにグランドオープンした静波サーフスタジアムPerfectSwellは、2018年、米国テキサスにオープンした「BSRサーフリゾート」で使用される造波装置を採用。テキサスのプールではサーフィンコンテストやサーフブランドのプロモーション撮影が行われるなど、すでに多くの実績を残してきた。

用意される波はエキスパート用だけではない。ビギナーまでを含めたあらゆるレベルの人が楽しめ、子どもたちがサーフィンデビューを果たせる小さな波も生み出せる。さらに静波サーフスタジアムPerfectSwellには、レストランやソファとハンモックのあるリラックスエリアがあり、温水対応可能のジャグジーまで備えている。サーフィンをしていないときでも清潔感あるプールサイドでくつろげ、大型プール施設に家族で遊びに行くレジャー感覚でサーフィンにトライできるのだ。
クリーンな波が生み出され続ける環境は反復練習に最適
上級者は“チューブ”も堪能できる
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ヨーロッパアルプスを見ながら波に乗れる時代

こうした人工的に波を造るウェーブプールは近年多くの国で新設されてきた。アメリカやオーストラリア、ブラジルといったサーフィン大国だけでなく、イギリス、スイス、韓国といったサーフィン新興国においても同様だ。特にスイスのように海のない内陸の土地でもサーフィン体験が可能となるところにウェーブプールの存在意義はある。
Wavegarden社の造波装置を備えた英国ブリストルのウェーブプール。15種以上の波を造り出せる
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実際、スイス南部のシオンに立地する「アライアベイ」では、雪をかぶるアルプスの高峰を目にしながらグッドウェーブが味わえるという。スクールやショップもそろえ、海はないけれども、将来的なサーフコミュニティ形成も見据えている。
スイスに誕生した「アライアベイ」では山々を背に波に乗れる。サーフィン体験はどこでもできる時代となった
ドイツ南部のミュンヘンからも、2023年のオープンを目指して今秋着工予定だというニュースがあった。ドイツには北海とバルト海があるが通年良い波は望みにくく、同国のサーファーたちは欧州サーフィンのキャピタルと呼ばれるフランス南西部のビアリッツや、スペイン、ポルトガルへ陸路や空路で向かうのがこれまでの通例であるという。

自然の波ではなくとも、グッドウェーブが約束されるなら喜々として足を運ぶサーファーは少なくない。そう予想され、またオーストリアやチェコといった隣国からのトラベルサーファーの訪問も期待されている。

オリンピックで競技化されるほどサーフィンはグローバルスポーツとなった。そして始めるうえで海に行く必要はない時代にも。これまで、実際興味はあるけれど“どこでどう始めていいのか分からない”という声は多くあり、そうしたネガティブな要素を払拭するのがウェーブプール。今、サーフィンへのハードルは格段と低くなっている。


■静波サーフスタジアムPerfectSwellⓇ 
静岡県牧之原市静波前浜2220
https://www.surfstadium-japan.co.jp
Instagram: @surfstadium.japan
Facebook: surfstadium.japan
LINE公式アカウント: https://lin.ee/EztyTvJ

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