JOURNEY

旅もSDGsへ。
世界自然遺産・西表島で感じる最新リゾートのカタチ

2021.08.13 FRI
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旅もSDGsへ。
世界自然遺産・西表島で感じる最新リゾートのカタチ

2021.08.13 FRI
旅もSDGsへ。世界自然遺産・西表島で感じる最新リゾートのカタチ
旅もSDGsへ。世界自然遺産・西表島で感じる最新リゾートのカタチ

いま、世界のツーリズムシーンに大きな変化が起きている。最先端リゾートに共通するのは“エコツーリズム”というキーワードだ。今回はそんな新しい旅のかたちを体験できる「星野リゾート 西表島ホテル」を紹介する。

※緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の解除後の外出をお願いします

Text by Takashi Osanai
Photographs by Hoshino Resorts, The Brando

自然と一体になれる特別な体験——世界の最旬リゾートのカタチ

朝は生き物たちの鳴き声や小鳥のさえずりを聞きながらコーヒーを飲み、昼には船でしか行くことのできない白い砂浜から熱帯魚が泳ぐサンゴ礁の海を眺める。夕暮れ時にはカヤックを漕ぎ、水平線に沈んでいく夕陽に照らされたマングローブの林を渡っていく——。

ここ、西表石垣国立公園内にある「星野リゾート 西表島ホテル」では時間がゆっくりと流れる。ホテルのコンセプトは「イリオモテヤマネコが棲む島のジャングルリゾート」。島の約90%がジャングルに覆われ、そこに生息するのはイリオモテヤマネコをはじめ、絶滅危惧種やこの島固有の種たちだ。2021年7月、世界自然遺産にも認定された。
沖縄県内で沖縄本島に次ぐ面積を持つ西表島は島内の90%が原生林。落差5mほどのクーラの滝もマングローブのジャングルの中にある
いま、世界にはこうした自然に溶け込むようなホテルが増えている。

例えば、タヒチ本島から北へ50㎞の位置にある、テティアロア環礁を形成する12の小島のうちの1つに立つリゾート「ザ・ブランド」。35棟あるヴィラはどれも広々としていて、ゲストの要望はバトラーがケアしてくれる。ビーチを望むガゼボで朝食をとったり、パリのミシュラン二つ星レストラン「グランヴェフール」のシェフが監修するファインダイニングで美食に舌鼓を打ったり。かつてタヒチの王族が避暑地に選んでいたほどに自然の美しさが際立つ環境のなか、ぜいたくな時間を過ごすことができる。

しかし「ザ・ブランド」は、一般的なラグジュアリーリゾートとは一線を画している。

まず、太陽とバイオによるエネルギーを島内で生産し、冷たい深海の水を活用した冷房システムを導入。二酸化炭素の排出もゼロを目指している。島の自然や文化を保全・継承するために、専門家や島の自然ガイドらとともにプログラムも実施している、まさに“環境と共生するリゾート”なのである。
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オーストラリアには世界最古の熱帯雨林といわれるデインツリー・レインフォレスト内にエコリゾートがあり、オーストリアのオーバーレッヒは一般車の乗り入れを制限し、ノルウェーにはオーロラを部屋から眺めることができるホテルが建設され、フィリピンのボホール島には絶滅危惧種のメガネザル、ターシャの保全活動に力をいれるリゾートがある。

これらのホテルは単に絶景のなかに建設されただけでなく、「ザ・ブランド」同様、自然や現地の文化に配慮し、かつ積極的な保全活動も行っている。経営に通底するのは「エコツーリズム」というキーワードだ。

マスツーリズムからエコツーリズムへ。旅はどう変わったのか?

これまで日本国内の旅行は、大量の旅行客がバスなどで現地に乗り付け観光をする「マスツーリズム」がメインだった。ホテル経営も自然環境への配慮は二の次で、場所によっては建設に対して反対運動が起きることもあった。安くて手軽に旅を楽しめるメリットはあるものの、旅行客が集まれば集まるほど、本来の土地の魅力が損なわれる悪循環に陥ってしまった。

その反省を一因に、近年注目を集めているのがエコツーリズムだ。

エコツーリズムで大切なのは「環境を守ること」「観光地として魅力的であること」、そして「観光業で地域が元気になること」。観光で得た収益を自然や文化の保全に回し、その豊かな魅力を求めてツーリストがまたその地を訪れる——そういった持続可能な循環をつくろうという考え方だ。
熱帯魚が泳ぎ、サンゴが息づく透明度の高い西表島の海。シュノーケリングでの散策が楽しい
宿泊施設を軸にエコツーリズムが展開されることも多く、その土地を汚さない、環境に優しい経営に加え、専門家や地元の人々と協働して自然や文化を熟知したガイドによるツアーを組み、ゲストにその土地の魅力を伝える役割も担っている。

その土地の魅力を存分に味わえるように、少人数での長期滞在を目指しているため、ホテルはますます居心地いい空間に進化し、土地の魅力に触れられるアクティビティも充実。ゲストが忙しく動き回らなくても、ホテルに軸足を置きながら充実した体験をすることができる。
夕暮れ時にSUPで海上散歩。あまりの開放感に心と身体が自然と喜ぶ
旅好きな人ほどこうしたスタイルに惹かれるようで、世界中の感度の高いホテルが徐々にエコツーリズムに舵を切り始めている。そして日本初の“エコツーリズムホテル”を目指しているのが、冒頭でご紹介した星野リゾート 西表島ホテルなのである。

自給自足エネルギー、リサイクル、自然保護。星野リゾートが進めてきた“環境経営”

星野リゾート 西表島ホテルは、2021年春から3つの取り組みを始めた。

まずは「エコロジカルなホテル運営」。ペットボトルでのウォーターサービスを止め、ゲストにはマイボトルの持参を推奨。歯ブラシや髭剃りなど、使い捨てのアメニティの提供も止めた。ゲストにむけて「島の魅力と価値を感じるネイチャーツアー」をスタートさせ、「イリオモテヤマネコの保護活動」も行っている。
稀少な生物が多く生息する西表島。イリオモテヤマネコなどに出会える
天然記念物に指定されているカンムリワシも西表島で目にすることができる
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しかも、こうした取り組みは一朝一夕に始められたわけではない。実は、星野リゾートはこれまでにも持続可能な観光を目指してきた。

環境に配慮した経営を推進し始めたのは、今から約30年前。中心になったのは「星のや軽井沢」を運営する軽井沢事業所で、自家水力発電や地熱利用設備、温泉排熱利用設備を導入し、いまやエネルギーの約7割を自給自足している。

ごみも普通に捨てることはない。生ごみは牧場へ運搬して堆肥に、個包装のアメニティも極力減らした。その結果、2011年11月には、ゼロ・エミッション(運営によって生じる廃棄物の単純焼却・埋め立てゼロ=リサイクル率100%)を達成した。
西表島には国内最大のマングローブ原生林が広がる。カヤックやカヌーによるクルーズはぜひ体験したい
なかでも特徴的なのが、森の生きものを愛する専門集団“ピッキオ”の存在だろう。

ピッキオは軽井沢で人との共存を目指してツキノワグマの調査研究を行い、野鳥やムササビを観察する「自然観察ツアー」も行っている。西表島でイリオモテヤマネコや生物多様性の保全に取り組む予定なのも彼ら。ピッキオ監修で、ホテルスタッフがイリオモテヤマネコの生態を教える「やまねこの学校」は人気のネイチャープログラムになっている。

長期滞在したくなる「星野リゾート 西表島ホテル」の魅力

ゲストが西表島の魅力を知れるよう、そしてこの地の環境を守るため、星野リゾート 西表島ホテルは少人数での長期滞在がスタンダート。ホテルには長く滞在したいと思わせる、魅力的なポイントがいくつもある。

139室の客室はすべてが海側に位置し、窓を開けると波の音や野鳥のさえずりが聞こえてくる。ブーゲンビリアやヤシの木に囲まれたプールや、月桃アロマオイルやシークワーサーアロマオイルを使った極上スパもある。
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ダイナミックな世界自然遺産を満喫できるアクティビティは、ぜひともトライしたいプログラムだ。強い日差しが降りそそぐ4~10月に体験できるのは「秘境西表ボートシュノーケル」。世界有数の種類と規模を誇るサンゴ礁や、色とりどりの熱帯魚が泳ぐ楽園を見ることができる。

また11~3月には、「マヤグスクの滝トレッキング」で、島の中央最奥地にある神秘的なマヤグスクの滝を目指す。秋冬には水量が増え、柔らかくなった日差しをうけてキラキラ輝くこの滝は、一部の猟師しか知らなかったという秘境中の秘境だ。
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ほかにも、朝日を浴びながらの「おめざめマングローブストレッチ」や、日本随一の美しさといわれるビーチ「イダの浜」で遊ぶこともできる。

世界のリゾートが目指す先進的なスタイルで、世界に認められた大自然を体感できる星野リゾート 西表島ホテル。ここには、長い都市生活で培った価値観を変えてしまうひと時が待っている。
星野リゾート 西表島ホテル
https://iriomotehotel.com

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