ART / DESIGN

月の満ち欠けを時計で知る
──女性用ムーンフェイズ機能付き時計3選

2021.03.19 FRI
ART / DESIGN

月の満ち欠けを時計で知る
──女性用ムーンフェイズ機能付き時計3選

2021.03.19 FRI
月の満ち欠けを時計で知る──女性用ムーンフェイズ機能付き時計3選
月の満ち欠けを時計で知る──女性用ムーンフェイズ機能付き時計3選

昨今、月の満ち欠けを意識する女性たちが増えている。そんな女性たちのために、機械式時計を作り続ける老舗ブランドから、ムーンフェイズ機能付きの時計を選んでみてはいかがだろう。文字盤の窓に現れる月の姿を眺めながら、月のサイクルと調和する暮らしをはじめるのもロマンチックで粋だ。

Text & Edit by Mari Maeda (lefthands)

月のサイクルと心と体の深い関係性

「ビオディナミワイン」をご存じだろうか。自然派ワインの中でも、月や天体の動きに合わせて作られる究極のオーガニックワインだ。たとえば満月の日には、土の中に住む微生物の働きが最も活発になるため畑仕事を行い、新月の日には、その微生物が眠ってしまうために畑仕事を行わない。このように、ビオディナミで用いられる農業暦では、月のリズムに合わせて畑を耕す日や収穫の日などがこと細かく決められている。
もっとも私たちの祖先は、はるか昔から月のリズムを利用して農作物を育てていた。聞く話によると、果実は満月の日に収穫し、穀物は新月の日に収穫するとよいと言い伝えられていて、今もそうした周期に合わせて農業を行うところもあるという。

農作物のみならず、この地球上に生きるすべてのものは月のリズムの影響を強く受けている。漁業では新月の日に大漁となることが知られているし、サンゴは満月になると一斉に産卵する。また、満月の夜にだけ咲く花もある。

そして人間も、同様に月の影響を受けている。月が満ちて欠けると潮も満ち引きするように、私達の体も60%~70%が水分であることから、潮と同じような影響を受けているのだ。
中でも女性の体が月のサイクルと深い関係にあることは、よく知られている。体の変化を敏感に感じ取る女性たちの間では、昨今、月のサイクルに従う美容法が注目されている。新月にはデトックスを、満月には栄養を与えるなど、月相に合わせて肌や体と向き合う。また、かねてから月は人間の心理に強い影響を与えると言われ、新月や満月の願い事なども、一部の女性誌で話題となっている。

もちろん男性も同様に月の影響を受けているのだが、女性たちにお薦めしたいのが、月のサイクルを日々手元で確認することができるムーンフェイズ機能付きの腕時計だ。
ムーンフェイズとは月相を意味し、ムーンフェイズ機能はその名の通り、月の満ち欠けを表示する。文字盤の小さな世界に宇宙のロマンを宿すこの機能は、高級機械式時計の象徴として昔から人々を魅了し続けてきた。時計好きであれば一度は手にしてみたい憧れの品だが、生活に自然のサイクルを取り入れたい今こそ、ムーンフェイズ機能付きの時計を選んでみてはいかがだろう。手元に夜空が宿り、月とともに暮らす生活がはじまる。

18世紀に生まれたムーンフェイズ機能

月の形が一巡する周期は約29.53日。この月相のサイクルを機械式時計で表現することを成功させた人物がいる。天才時計師、アブラアン-ルイ・ブレゲだ。今日のムーンフェイズ機能は、18世紀に彼がこの機能を懐中時計に搭載した際に完成したと言われる。注目すべきは、ブレゲが朔望月を「29.5日」サイクルに設定したこと。端数を丸めて「29日」とする方法もあっただろうが、ブレゲは「29.5日」を選択することによってより高い精度を目指した。
1823年に販売されたムーンフェイズ機能付きのブレゲの懐中時計
1823年に販売されたムーンフェイズ機能付きのブレゲの懐中時計
機械式時計は歯車で動くため、「29日」であれば29歯の歯車を利用し、29刻みの動きを生み出せば良い。しかし、実現したいのは「29.5日」である。そこで考案されたのが、「29.5」を倍にした59歯の歯車でムーンフェイズディスクを動かす手法だった。以来今日まで、月の満ち欠けを表示する仕組みは、2つの月を描いた回転ディスクにある。それを29.5日周期で一周させることで、月が小窓に姿を現し、その様子がそのままその日の夜空に浮かぶ月の形となる。

アブラアン-ルイ・ブレゲのスピリットを宿す

1775年の創設から240年余りの時を超えて、創業者ブレゲのスピリットを今日に継承する「クラシック ムーンフェイズ レディ 9087」には、ブレゲらしい魅力あふれる特徴が忠実に再現されている。ケース側面にはこのブランドならではの優雅なフルート装飾が施され、文字盤はぜいたくで艶やかなグラン・フー・エナメル仕上げ。アブラアン-ルイ・ブレゲが1783年にデザインしたことで知られる、通称「ブレゲ数字」もあしらわれている。
ムーンフェイズの月の顔は18、19世紀に流行した意匠で、今日も当時のまま継承されている
ムーンフェイズの月の顔は18、19世紀に流行した意匠で、今日も当時のまま継承されている
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星を象った小さな分目盛りや百合の花をモチーフにした「フルール・ド・リス」をデザインした5分ごとの目盛りなどにも、伝統への敬意が感じられる。先端にオープンワークのモチーフを添えたブルースティールの針もまた、同じく1783年に考案されたブレゲ針から想を得たものだ。古典的でありながら、今日のモダンさをも体現するピュアなデザインが美しい。

「クラシック ムーンフェイズ レディ 9087」
ケース径30mm。18Kローズゴールド製。自動巻き。
257万円(税別)

ブレゲ
https://www.breguet.com/jp

ジャガー・ルクルトが想起する輝く夜空

1833 年に創設したジャガー・ルクルトは、「アート・オブ・プレシジョン」をモットーに掲げて、正確さを芸術の領域へと昇華させてきた。創設者アントワーヌ・ルクルトの発明精神の下、ジャガー・ルクルトの歴史は「開発」とともにあるとも言われ、創業から今日に至るまで、数々の発明と1200以上ものキャリバーの製造に成功している。また、職人たちが受け継ぐ精緻を極めた細工の技は、精巧な外観美をも生み出してきた。
銀河を思わせるダイヤモンドの壮麗な輝きが、ムーンフェイズをさらにロマンチックに彩る
銀河を思わせるダイヤモンドの壮麗な輝きが、ムーンフェイズをさらにロマンチックに彩る
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女性らしさが際立つ「ダズリング・ランデヴー・ムーン」には、時計職人とジュエリー職人の技が融合する。ジャガー・ルクルトは、創業間もない頃からジュエリーウォッチも手がけ、歴史あるジュエラーと比肩する宝飾技術を備えている。手作業で一粒ずつ、丁寧に4つの爪で石を固定するグリフ・セッティングは、ダイヤモンドの輝きを最大限に引き出し、168個ものダイヤモンドに彩られたベゼルは、夜空の銀河を彷彿させる。
ダイヤモンドの輝きに包まれた文字盤には神秘的なマザー・オブ・パールを採用し、小窓に広がるアベンチュリンの夜空と呼応する。素材と宝石が織り成す幻想的な世界が、ムーンフェイズのロマンチックな趣をさらに引き立てる。

「ダズリング・ランデヴー・ムーン」
ケース径36 mm。18Kホワイトゴールド製。自動巻き。
516万円(税別)

ジャガー・ルクルト
https://www.jaeger-lecoultre.com/jp/jp/home-page.html

ヴァシュロン・コンスタンタンの格式と洗練美

1755年の創業以来、一度の中断もなく時計作りに専念してきた稀有な存在として知られるヴァシュロン・コンスタンタン。時計製造の分野における世界最古のマニュファクチュールと称され、圧倒的な格を誇る。何世代にもわたる名工たちによって時計作りの卓越した技術を途切れなく継承するメゾンは、洗練されたスタイルとともに輝かしい遺産を今日まで守り続けてきた。
昨年、女性たちに向けて発表された「エジェリー」コレクションにも、ヴァシュロン・コンスタンタンならではの技能と美意識を感じ取ることができる。クラフトマンシップと精密さ、卓越した技と美しいデザインが表現する、オートオルロジュリーとオートクチュールの融合。最古のメゾンにふさわしいエレガンスと、自由な創意が宿る。
「エジェリー」の名は、ローマ神話に登場する泉のニンフ「Egeria(エゲリア)」に由来する。この妖精は人々に霊感を授けたと言い伝えられることから、アーティストやデザイナーたちに豊かなインスピレーションを与え続けてきた。
優美で精緻な細工と完璧なデザインバランスが、夜空の神秘と時の美を詩的に表現する
優美で精緻な細工と完璧なデザインバランスが、夜空の神秘と時の美を詩的に表現する
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独特なアシメトリー表示はすでに19世紀から存在し、1時と2時の間に配されたムーンフェイズ表示の小窓に、魅惑的な表情が漂う。小窓の延長線上にあるリュウズが、全体のたたずまいにさらに洗練された印象を与えている。文字盤を彩る優美な数字の書体はこのモデルのために新たに考案されたもので、センターに施されたプリーツ模様のエングレービングとともに気品あるスタイルが体現されている。小窓に覗く夜空の可憐な美しさとともに、手元をこの上なく優雅に彩る逸品だ。
「エジェリー・ムーンフェイズ」
ケース径37mm。18Kピンクゴールド製。自動巻き。3色のアリゲーターストラップ付き。
362万円(税別)

ヴァシュロン・コンスタンタン
https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html


名門ブランドの矜持が宿るムーンフェイズ。それぞれの個性に彩られた文字盤の夜空を眺めながら、刻まれる時とともに永遠に繰り返される月の神秘を感じてみたい。

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