ART / DESIGN

「ニュー・ノーマル」とワイン業界の新たな関係

2021.01.18 MON
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「ニュー・ノーマル」とワイン業界の新たな関係

2021.01.18 MON
「ニュー・ノーマル」とワイン業界の新たな関係
「ニュー・ノーマル」とワイン業界の新たな関係

新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、ニュー・ノーマルへの試みが拡大するなか、ワイン業界も大きな節目を迎えている。三密を避けるバーチャル・テイスティングから、コロナ収束後に一層ヘルシーな生活を営みたいという需要への対応まで、新時代を見据えたワイン業者の取り組みを紹介する。

(C) Stylus

ロックダウン中も小売は伸長

新型コロナウイルスの世界的感染拡大は、国籍を問わずワイン業界に多大な影響を与えている。世界各国でバー、レストラン、ホテルが営業自粛に追い込まれただけでなく、テイスティング系のイベントやワイナリーツアーなども軒並みキャンセルを余儀無くされたことで売上は右肩下がりだ。

またドイツで毎年開催されてきた世界最大級のワインフェア「ProWein」などの見本市も中止となったため、小規模なワイン製造業者は宣伝や取引の機会すらも失って困窮しているというのが現状だ。

オンライン売上の急上昇

しかしながら、eコマースだけに限ってみると、ビジネスは必ずしも悪くはない。米国では2020年3月にワインのオンライン売上が急上昇し、前年比291%増の4億2300万ドル(約456億円)を記録。この大部分を占める、ワイナリーから消費者への直接販売(D2C)では、3月の売上が前年同月比40%増となった。これと同様に、英国でもワインのD2C売上が急上昇。ワイン専門店「Majestic Wines」では、2020年3月第2週に1日あたりのオンライン売上高が前年比で200%も増加したという報告もある。

またワインの定期購入であるサブスクリプション・サービスも人気を博している。米国のワインクラブ「Winc」の新規会員登録者数は3月第3週に578%も増加した。これまで同社の新規登録会員数は1日平均207人であったのに対し、パンデミック以降は1日あたり2000人を超える日もあるほどのペースで新規会員を獲得。コロナ後に新規登録した会員の総数は2万人にのぼるという。

ソーシャルディスタンス時代のテイスティング

移動の自粛やソーシャルディスタンスが避けられない現在、ワイナリーや宿泊施設などを訪れてガイド付きのワイン・テイスティングに参加することは非常に難しくなっている。この小さくない収入源を絶たれたワイン製造者の中には、バーチャル・テイスティングやライブストリーミングでワイン好きの消費者と語り合う機会を提供するなど、ワイナリー体験のオンラインコンテンツ化を開始したところもある。

例えば、米国西海岸最大のワイン・テイスティング・プログラム「Priority Wine Pass」は、オンライン・テイスティングを開始。同社のウェブサイトでは独立系の小規模ワイナリーが個別にセレクトしたワインのセットをお得な割引価格で購入できるだけでなく、ワイン製造者とのオンライン・ビデオ・ミーティングを設定することができる。

またオーストラリアでは、「The National Wine Centre」が新しいバーチャル・テイスティング・コースを開講。1人あたり40豪ドル(約2800円)の受講料には、地元アデレードにある6つのワイナリーが作るワイン6本(各50㎖)と、ワイナリー代表者とワイン講師が参加するZoomを使ったバーチャル・テイスティングが含まれている。

このほかにも、ニュージーランドの自然派ワイン生産者の「Tractorless Vineyard」、オーストラリアのワインクラブ「Good Pair Days」、ロンドンのワインショップ「Quality Wines」などがバーチャルのワイン・テイスティングを提供している。

食のトレンドとしては家庭的な温かみのある“コンフォートフード”の人気が高まっているが、アルコール飲料に特化した市場分析会社IWSRでディレクターを務めるアリスター・スミス氏は、パンデミック後には節度ある飲み方と“より健康的な”飲料への回帰が起こると予測している。

「コロナウイルスの流行で酒量が増えた人は多いですが、これは一時的な傾向で終わると考えられます。ソーシャルディスタンスやロックダウンが解除されるにつれて、消費者は再び酒量を減らし、質の高いお酒を飲みたいと思うようになり、節度ある飲酒や健康志向を追求していくでしょう。コロナ危機の結果、低アルコールおよびノンアルコール飲料の長期的な人気がさらに高まると思います」と同氏は言う。

ノンアルコールのワインも人気急上昇

世界中の消費者が健康を理由にアルコールを控えるようになってきたことを受けて、ワインのフレーバーにヒントを得たノンアルコール飲料を開発するブランドも出てきている。英国のワイン評論家、マシュー・ジュークス氏が手掛ける米国のブランド「Jukes Cordialities」は、スティルウォーターやスパークリングウォーターで割って飲む濃縮飲料、コーディアルを2種類販売している。

どちらもワインと同じく食事によく合い、シトラス・ハーブ味の「Jukes 1」は色も香りも白ワインにそっくりで、野性味溢れる芳醇な「Jukes 6」は赤ワインの替わりとして楽しめるといった具合だ。


今後も健康志向の高い層をターゲットにした同様のノンアルコールワインは種類・テイストともにその選択肢は増えていく傾向にある。未体験の読者は、一度、騙されたと思ってトライしてみてはいかがだろうか?その味わい深さに驚かされることだろう。

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