ART / DESIGN

世界的時計フェアがネット開催に!
「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2020」

2020.12.11 FRI
ART / DESIGN

世界的時計フェアがネット開催に!
「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2020」

2020.12.11 FRI
世界的時計フェアがネット開催に!「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2020」
世界的時計フェアがネット開催に!「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2020」

新型コロナウイルス危機により、毎年、スイスのジュネーブとバーゼルで行われてきた2大時計フェアが中止になった2020年。だが、この危機が時計業界を動かした。史上初のオンライン時計フェアが開催されたのだ。本記事では、同フェアから注目の新作を紹介する。

Report & Text =Yasuhito Shibuya
Photos=Yasuhito Shibuya, WATCHES & WONDERS、Cartier

リアルからバーチャルへ

例年1月から3月にスイスのジュネーブとバーゼルで行われてきた2大時計フェアは、時計業界にとって最大の「お祭り」イベント。新作時計が世界中から集まったバイヤーやジャーナリストに対して公開される。今日の高級時計ブームはこの2大時計フェアを起点にして始まった。

だが今年は、新型コロナウイルス危機で、ほとんどの時計フェアが中止になった。これは時計ブームが起きて以来、約30年間で初のことだ。
2019年のスイス2大時計フェア。左がS.I.H.H.で右がBaselworld
2019年のスイス2大時計フェア。左がS.I.H.H.で右がBaselworld
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しかし、その中で唯一「開催」されたフェアがある。通称ジュネーブサロン、昨年までは「Salon International de la Haute Horlogerie(S.I.H.H.=国際高級時計展)」として行われてきた「WATCHES & WONDERS GENEVA (ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ) 2020」だ。

世界初の画期的な試み

8月4日のトップ画面 © 2020 - WATCHES & WONDERS
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「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2020」のキャンセルが発表されたのは2月27日のこと。「今年はフェアのない年になるな」と、時計業界の誰もが考えていた。

だが、「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2020」は、リアルなフェアの開催予定とほぼ同じ現地時間4月25日、同フェアのオフィシャルサイト(https://www.watchesandwonders.com/en/)で、世界初の「オンライン時計フェア」としてネット上にオープン。スケジュールに沿って、毎回数ブランドずつ、新作時計のプロモーションビデオ、CEOやプロダクトマネージャーのメッセージや製品解説の動画の配信を開始した。
オンライン出展した時計ブランドは20ブランド © 2020 - WATCHES & WONDERS

誰でもアクセスできる、オープンな時計フェアが実現

同フェアが画期的なのは、オンラインであることにとどまらない。最も画期的なのは、史上初めて時計フェアが“誰にでも開かれたオープンなイベント”になったことだ。

これまでのスイス2大時計フェアはあくまで時計業界向けのイベントだった。もちろん一般の人でも、チケットを購入すれば会場に入りショーケースの新作を見ることはできた。だが、そこまでだった。
2019年、バーゼルワールドでパテック フィリップの新作に熱い視線を注ぐ人々
2019年、バーゼルワールドでパテック フィリップの新作に熱い視線を注ぐ人々
ところが、オンライン化されたらウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2020では、誰もが時計業界のプロ向けコンテンツを見られるようになったのだ。
今回、最も注目したいブランドの一つ、カルティエのコンテンツ © 2020 - WATCHES & WONDERS
今回、最も注目したいブランドの一つ、カルティエのコンテンツ © 2020 - WATCHES & WONDERS
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注目の新作を紹介

ところで、今年はどんな新作時計が発表されたのか。本原稿執筆時点で発表済みの新作時計の中から、お薦めの新作6点をご紹介しよう。どれも店頭で実物に触れてほしいものばかりだ。

まず、最も注目したいのは、S.I.H.H.の時代からフェアの盟主的な存在であるカルティエのスポーツウォッチ「パシャ ドゥ カルティエ」。

伝説のスポーツウォッチが待望のカムバック
Cartier / カルティエ Pasha de Cartier 41mm / パシャ ドゥ カルティエ 41mm
©Cartier
©Cartier
1985年に誕生したカルティエ伝説のラグジュアリー スポーツ ウォッチが、20年余りの時を経てメインコレクションとして待望のカムバック。基本スタイルはそのままだが、着け心地が快適な薄型ケース、完全自社製(マニュファクチュール)ムーブメント、工具なしにストラップとブレスレットをワンタッチ交換できる「クイックスイッチ」機構、やはり工具なしでブレスレットの長さ調節ができる「スマートリンク」機構などすべてが新しい。SSモデルもある。自動巻き、ケース径41mm、イエローゴールドケース、176万4000円(税別予価)。2020年9月発売。

次に注目したいのが、時計愛好家垂涎の時計ブランド、A.ランゲ&ゾーネのアイコンモデル「ランゲ1」コレクションのこの新作だ。

大きな進化を遂げたトラベラーズウォッチ
A. Lange & Söhne / A.ランゲ&ゾーネ Lange 1 Time Zone / ランゲ1・タイムゾーン
ドイツ・ザクセン王国の伝統から生まれたアウトサイズデイト、オフセンター配置の文字盤を備え、ブランドが復活した1994年からの定番で、不動の人気を誇るアイコンモデル「ランゲ1」。今年は都市名を設定するだけで、文字盤5時位置のインダイヤルでその場所の現在時刻が分かるオンデマンド・ワールドタイム機構を備えた「ランゲ1 ・タイムゾーン」が完全リニューアル。設定都市のサマータイムの有無を表示する新機能は画期的だ。手巻き、ホワイトゴールドケース、ケース径41.9mm、551万円(税抜予価)。2020年8月以降発売。

また、名門ジャガー・ルクルトのこちらの新作も見逃せない。

機能美を極めた多機能クロノグラフ
Jaeger-LeCoultre / ジャガー・ルクルト Master Control Chronograph Calendar / マスター・コントロール・クロノグラフ・カレンダー
スイス・ジュウ渓谷のル・サンティエで時計作りを続けるスイス3大ブランドの一つがジャガー・ルクルト。レディスウォッチから超複雑時計、置き時計に及ぶ卓越した製品の中から、時計のプロフェッショナルなら誰もが称賛する“通好み”の丸型ウォッチが「マスター・コントロール コレクション」。シリコン素材脱進機の採用など大きく進化した今年の新作。その頂点に位置するのがこのフルカレンダークロノグラフ。自動巻き、ケース径40mm、SSケース、160万8000円(税別)。

そして、クラシックなスタイルの腕時計が好きな人にお薦めしたいのが、IWCのクラシックなコレクション「ポルトギーゼ」のこのモデルだ。

新世代・永久カレンダーモデル
IWC/アイ・ダブリュー・シー Portugieser Perpetual Calendar 42 / ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー42
高精度な腕時計を求めるポルトガル商人のリクエストに応えて、高精度な懐中時計のムーブメントを転用して作られた腕時計。このエピソードから生まれたクラシックスタイルはそのままに、さらに進化した「ポルトギーゼ」コレクション。どれも魅力的だが、このモデルはダブルムーンフェイズを備えた従来モデルに加えて、新登場のオーセンティックなパーペチュアルカレンダーモデル。着けやすい直径42mmサイズも魅力。自動巻き、ケース径42.4mm、SSケース、234万円(税別)。

海好きの人は見逃せないのが、この新作ダイバーズ。エコな新素材の採用という意味でも、時代を先取りしたモデルといえる。

天然新素材ケースなど話題満載
PANERAI/パネライ LUMINOR MARINA 70th ANNIVERSARY COLLECTION FIBRATECH™-44MM / ルミノール マリーナ 70周年記念コレクション フィブラテック™ - 44MM
イタリア海軍第1潜水特殊部隊のために生まれたダイバーズウォッチ。そのスタイルを受け継ぐ今年の新作は、同社開発の夜光塗料「ルミノール」の70周年を祝う3種類の限定モデルだ。これはエコ素材として注目されているバサルトファイバー(玄武岩繊維)をベースにした軽量でタフな複合素材を採用したもの。ケースやストラップまで最新の蓄光素材で光る新機能や70年の特別保証期間も大きな話題に。自動巻き、ケース径44mm、ファイバーテックケース、209万円(税別)。世界限定270本。12月発売予定(ブティック限定)。

アウトドア、山歩きが好きな人にお薦めしたいのが、「時の感じ方」を緩やかにした、モンブランのユニークな趣向のこのモデルだ。

時に「追われない」24時間モデル
Montblanc / モンブラン Montblanc 1858 Automatic 24H / モンブラン 1858 オートマティック 24H
山を歩く男たちをイメージし、モンブランが引き継いだ名門ブランド「ミネルバ」のクロノグラフや懐中時計の伝統的なデザインコードを継承しつつ開発されたこのモデルは、珍しい24時間ダイヤル&1本針スタイル。赤い針がゆっくりと24時間かけて文字盤を1周するため、分単位の細かな時間を気にしたくない、ゆったり過ごしたい人にぴったりだ。また、文字盤表面には地球の半球図がグレーの蓄光塗料で描かれていて、暗くなると鮮やかに浮かび上がるのも楽しい。自動巻き、ケース径42mm、SSケース、33万円(税別)。10月発売。

時計の文化振興は新しい次元に

高級時計の最新の製品や技術、その背景にある文化を詳細に紹介・解説したコンテンツが、ここまでオープンに、しかも一堂に集合したかたちで公開されたことはない。この無料の時計フェアコンテンツを見た世界中の人々の中から、将来、間違いなく時計の歴史を変える新たな才能が出現することだろう。もちろんそれが、世界のどこからか、いつになるかは分からない。だが、その日は必ずやってくるはずだ。時計文化は人をとりこにするものだから。

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