ART / DESIGN

花の廃棄ロスを解決するオンライン花屋「LIFFT」の挑戦

2020.11.09 MON
ART / DESIGN

花の廃棄ロスを解決するオンライン花屋「LIFFT」の挑戦

2020.11.09 MON
花の廃棄ロスを解決するオンライン花屋「LIFFT」の挑戦
花の廃棄ロスを解決するオンライン花屋「LIFFT」の挑戦

花の流通課題と廃棄ロスを解消するために昨年スタートしたオンラインの花屋「LIFFT(リフト)」。今春には東京・中目黒にコンセプトストアもオープンした。オンラインで気軽に花を贈る楽しみを提供するとともに、花業界が抱える諸問題の解決に取り組むLIFFTの挑戦に、今注目が集まっている。

Edit & Text by Mari Maeda(lefthands)
Photographs by LIFFT

花をオンラインで届ける理由

この春、思いも寄らないコロナ禍によって、離れて住む家族や友人に少しでも寄り添えたらと花を贈る人が多かったと聞く。贈られた人は、閉塞感が漂う日々の中で、贈り主の思いと可憐な花々にさぞ心癒されたことだろう。また、自宅で過ごす時間が長くなった今、花を贈り、飾る楽しさに目覚めた人たちも増えている。花に宿る自然の息吹が心を潤し、家に心地よさをもたらしてくれることに改めて気付かされたからだろう。

そうして生まれた花との関係を、より一層気軽に深めてくれるのがオンラインの花屋LIFFTだ。花を贈りたい気持ちも、家に飾りたい気持ちもある。しかしながら、花屋を訪ねる時間的な余裕がない人や、気恥ずかしいと感じる男性も実際には多いのではないか。そんな人たちにとって、オンラインで気兼ねなく花を買い、大切な人へ直接贈ることができるLIFFTの存在は心強い。

しかしLIFFTの魅力は、そうしたオンラインによる利便性だけにとどまらない。なぜならLIFFTは、花の業界におけるさまざまな課題を解消するために創設されたからだ。

LIFFTのチケットを贈ると、贈られた人は花束を選び都合のいい配送日時を入力して受け取ることができる
LIFFTのチケットを贈ると、贈られた人は花束を選び都合のいい配送日時を入力して受け取ることができる
「オンラインによるシステムを構築した理由には、花屋に立ち寄ることに抵抗感のある人でも気軽に花を購入し、花を贈る楽しさを知っていただきたいことももちろんあるのですが、実店舗が抱える花の在庫による諸問題や、花の流通課題をいかに解消するかを模索した結果でもあるんです」

LIFFTを経営するBOTANIC Inc.の代表取締役、上甲友規氏は、今日の花の産業にはいくつもの解決すべき課題があるという。その中でもLIFFTは、複雑な流通経路による過剰なコストと花の鮮度に関わる問題、そして、実店舗を経営する上での廃棄ロスの問題に正面から向き合っている。
BOTANIC Inc. 代表取締役の上甲友規氏。花業界を改革したいと、コンサルティングファームから転職した
BOTANIC Inc. 代表取締役の上甲友規氏。花業界を改革したいと、コンサルティングファームから転職した

オンラインで花の廃棄ロスを解決する

花屋の多くは、少しでも多くの種類の花の中から消費者に選んでもらおうと、多種多様な花をそろえて店舗に飾る。実際に、そうした花屋を訪ねてたくさんの花に出迎えられると、気持ちも華やぎ、選ぶ楽しみもあるだろう。しかし、その裏側で、多くの花が廃棄されている現実があることを上甲氏は教えてくれた。

「通常、店頭に並ぶ2割から3割、時には半数近くもの花が売れ残り廃棄されているといわれています。実際に私たちもex.flower shop & laboratoryという実店舗を経営していて、少しでも廃棄ロスを防ごうと花の多種多様さを維持しながら、販売計画の精度を高めるように努めているのですが、それでも一部を廃棄しなくてはならないのが実情です。2年ほど前から、この問題をどう解決すべきかを考え、辿り着いた答えがオンラインという形態でした」
生産者が育てた美しい花の多くが無駄になる現状。花の廃棄ロスは、花屋が抱える大きな課題だ
生産者が育てた美しい花の多くが無駄になる現状。花の廃棄ロスは、花屋が抱える大きな課題だ
店に並ぶ美しい花々の多くが、誰の手にも渡らず捨てられているという現状。聞いて言葉を失うが、LIFFTではその問題をどのように解決しているのだろうか。

「オンライン上でオーダーをいただいてから生産者さんに採花していただき、送られてきたものを私たちがアレンジしてお客さまへお届けしています。ですから、在庫を持つ必要がなく、花が無駄になることがありません。つまり、廃棄ロスがゼロとなります」

Farm to Vase(農園から花瓶へ)を目指し、新鮮な花を届ける

現在は、産地から送られてきた花をスタッフが束ねて客へ届けているが、いずれは産直にも取り組みたいと上甲氏は語る。花のアレンジに長けた生産者さんも多く、LIFFTらしいデザイン性を維持しながら、アレンジから発送までを生産者さんに委託することで、産地から消費者へ直接花を届けることができるのだ。そうすることで、消費者はより鮮度の高い花に触れることができるようになる。
採花したてのみずみずしく新鮮な花が、丁寧に束ねられて速やかに届けれられる
採花したてのみずみずしく新鮮な花が、丁寧に束ねられて速やかに届けれられる
「私たちがこだわっているのは、先ほどお話しした廃棄ロスの解決と、花の鮮度に関わることです。一般的に花は、産地から市場へ出荷されて、市場から花屋、または、さらに卸業者を通して花屋へと渡ります。その間おおよそ3、4日ほどですが、花屋や卸業者が在庫として持つと、実際に消費者が花を手にするまでに1週間近くたっていることもある。花の鮮度は当然ながら日に日に落ちていきます。花が店に並び何日たっているかは、実際のところ消費者には分かりません。ある意味ブラックボックスなんです」

そうした問題を解決するために、上甲氏らはLIFFTを立ち上げ、最適な流通を経て産地から直接送られてきた花を速やかに束ねて、消費者へと発送している。輸送する回数も減るため、花が傷むリスクも減少する。その結果、より新鮮で、より良い状態の花を消費者は受け取ることができるのだ。

「上質な、採花されたばかりの花のみずみずしさを、ぜひ手に取って見ていただきたいと思います。お届けした花をより楽しんでいただくために、発送する際には花の手入れの仕方や産地情報などを記したカードも付けているのですが、今後はそうした情報も充実させていく予定です」

上甲氏の言葉から、花を思い、花の魅力を最大限に伝えていきたいとの思いがひしひしと伝わる。

花・植物とのサステナブルな関係を目指す

オンラインストアの設立から1年を迎えた今春、LIFFTの取り組みと活動を伝えるコンセプトストアが東京・中目黒にオープンした。“フラワーロス削減”をモットーに、提携農家から直送されたこだわりの花や植物を置き、訪れる人はオンラインで販売している商品や、商品に使用している花を実際に見て、その場で購入することもできる。特筆すべきは、店頭で取り扱う花が、仕入れから3日以内の新鮮な花のみであることだ。4日以上経過した花は、LIFFTが入居する建物の1階にあるブルーボトルコーヒーカフェの店内装飾として有効活用される。
東京の中目黒にあるブルーボトルコーヒーカフェの2階にLIFFTがある
1階のブルーボトルコーヒーカフェの店内。LIFFT系列のBotanicが店内の緑を手がけ、今後はLIFFTの花が店を飾る
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「LIFFTのコンセプトを伝える上でも、店自体がサステナブルであることが大切だと考えています。仕入れからの日数を明言することは、現在の花の業界においてかなり挑戦的な行為ではありますが、それをしなくては改革は起こせませんから」

このコンセプトストアでは、廃棄ロスの問題を理解し、鮮度の高い高品質な花に触れられるのみならず、コンシェルジュデスクで花や植物の扱い方を学び、相談することもできる。それぞれの花の魅力や、飾り方、生産者の話など、知識豊富なスタッフが懇切丁寧に花の楽しみ方を教えてくれる。
実際に訪ね歩いて信頼関係を築いた農家から、直接届く花の数々。鮮度も品質も保証されている。秋から定期便も始まった。
実際に訪ね歩いて信頼関係を築いた農家から、直接届く花の数々。鮮度も品質も保証されている。秋から定期便も始まった。
「一般的に、まだまだ花の魅力は伝えきれていないと思うんです。花の水を毎日変えるだけで日持ちがすることや、最初の花が枯れても二番花が咲き、長く楽しめる花があることも、意外と知られていません。産地の話も含め、花を今以上に楽しんでいただくためのヒントやアドバイスを、オンラインでもコンセプトストアでも、私たちはより一層伝えていかなくてはならないと思っています」

花を作る人にとっても、贈る、贈られる人にとっても、花に関わる全ての人が幸せになる形態を模索し続けるLIFFT。「設立から1年を経て、まだまだ道半ばです」と語っていた上甲氏だが、花の業界に一石を投じ、未来につながる新しい形を確実に生み出している。

まずはぜひ一度、花との新しい体験を得るためにLIFFTを利用してみてはいかがだろうか? 花とのサステナブルな関係が、きっとそこから始まるだろう。





LIFFT(リフト)
https://lifft.jp

LIFFT Concept Shop(リフトコンセプトショップ)
東京都目黒区中目黒3-23-16 2F

BOTANIC Inc.(ボタニク)
https://www.botanic.in

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