VISIONARYMAGAZINE BY LEXUS

CULTURE

京都大学発、土佐尚子教授が
アートイノベーションで思考を変える

2020.10.14 WED
京都大学発、土佐尚子教授がアートイノベーションで思考を変える

2020年8月31日、京都東山にプロジェクションマッピングで彩られたLEXUS「UX」が現れた。粘性のある液体が有機的な動きで色と形を変えていく様がUXと一体化し、まるで近未来のクルマのようだ。この作品を手掛けた京都大学大学院教授でアーティストでもある土佐尚子氏は、学術界からアートでイノベーションを起こす仕掛け人である。

Text by Yuka Tsukano
Photographs by Masuhiro Machida

SHARE

この記事をシェアする

漆がボディでうごめくプロジェクションマッピング

2020年8月31日から9月3日まで、京都で開催された「Industry Co-Creation (ICC) サミット KYOTO 2020」。「ともに学び、ともに産業を創る」ことを目的に900名以上の経営者や経営幹部が集ったビジネスカンファレンスだ。ICCサミットをスポンサードしているLEXUSの車両がオープニングパーティ会場の「ザ ソウドウ東山」に展示され、プロジェクションマッピングが施された。ホワイトノーヴァガラスフレークのLEXUS UX250hの流線型のボディを這うように、朱、金、青、緑の液体が形状を変えながら流れていき、クルマが動いているように映る。
  • LEXUS UX250hのボディを這うように、朱、金、青、緑の映像が流れていく
  • LEXUS UX250hのボディを這うように、朱、金、青、緑の映像が流れていく
  • LEXUS UX250hのボディを這うように、朱、金、青、緑の映像が流れていく
  • LEXUS UX250hのボディを這うように、朱、金、青、緑の映像が流れていく
投影されているのは、アーティストであり京都大学大学院総合生存学館特定教授である土佐尚子氏のアート作品「四神 by Sound of Ikebana」だ。「これはCGではなく、漆で朱雀、白虎、玄武、青龍を表現したもの」と土佐氏は説明する。生きているように漆がうごめくこの映像の製作現場である京都大学の土佐研究室を訪ねた。

裸眼で見えない自然の美を先端技術で生け捕るアート&テクノロジー学

英国の高級スピーカーブランド「B&W」のウーハー、「カールツァイス」のレンズを備えたハイスピードカメラに、複数の大型モニター。アーティストのスタジオというよりも、実験室のような空間で、土佐氏が実演を始める。
京都大学の土佐研究室にてLEXUS UX250hのプロジェクションマッピングを実演する土佐氏
京都大学の土佐研究室にてLEXUS UX250hのプロジェクションマッピングを実演する土佐氏
粘性のある液体、今回はアクリル絵の具を重低音スピーカーの上に載せる。音の振動で液体が一瞬のうちに飛び散る様子を1/2,000秒のハイスピードカメラで撮影し、即座にモニターに映し出す。モニターに流れてきたのは、液体の色と色が混ざり合いながら、ゆっくりと形状を変えていく植物のような物体だ。

土佐氏はこの造形が生け花のように見えたことから、「Sound of Ikebana」と名付け、アート作品として国内外で発表してきた。恣意的に色を混ぜたり飛び散らせたりしたわけではなく、先端技術で初めて見えるカオスの美であるからこそ、形が変わる様にいつまでも目を奪われる。
  • 「Sound of Ikebana」を実演する土佐氏。手前の木製ボックスが重低音スピーカー
  • アクリル絵の具がスピーカーから発せられる音の振動で飛び散る
  • 絵の具が飛び散る様子を1/2,000秒のハイスピードカメラで撮影した映像
LEXUS UX250hに投射した映像には、アクリル絵の具より艶やかな漆を採用。漆と車体のテクスチャー、さらに流線型のボディの相乗効果で、今にもクルマが動き出しそうに見えたのだ。クルマが通り過ぎるときにフロントグリルやボディに当たる光が変化して表情が変わるといったように、LEXUSの意匠には “時の移ろい”までもがデザインされている。刻一刻と形状を変化させていく土佐氏の「四神 by Sound of Ikebana」は、まさにLEXUS UX250hの造形とシンクロしているかのようだ。
  • UXの造形とシンクロしているかのようなアート作品「四神 by Sound of Ikebana」
  • UXの造形とシンクロしているかのようなアート作品「四神 by Sound of Ikebana」
  • UXの造形とシンクロしているかのようなアート作品「四神 by Sound of Ikebana」

産学共同でアートをビジネスに役立てる

この「Sound of Ikebana」が日用品や乗り物、建築のデザインにも応用できるのではないかと土佐氏は考え、さらに3次元モデルに変換する研究を行っている。しかし、なぜ京都大学でアートなのか。

「私は意図的に京都大学にいます」と土佐氏は明かす。「京大に芸術学部はないのですが、山極壽一総長は常々、アートを取り入れたいとおっしゃっていました。2013年に京都大学大学院総合生存学館が新設され、アートを研究・教育する機会を得ました」

京都大学大学院総合生存学館は、課題解決能力や行動力を身につけ、グローバルに活躍できる人材の育成を目指す5年制の大学院。土佐氏はアート&テクノロジーの研究者として、凸版印刷とともにアートイノベーション産学共同講座を設置し、研究を進めている。

「新しいものを生み出すアーティストの思考法を企業活動に取り入れれば、ビジネスにイノベーションを引き起こすことができると考えました。主観に基づくアイデアや、直感や好奇心にしたがって形にすることを第一とし、社会的・産業的意味づけは最後に行うというものです」
三菱電機と共同制作した「光のいけばな」。溶けたガラスを垂れ落として3次元形状のガラスアートに
三菱電機と共同制作した「光のいけばな」。溶けたガラスを垂れ落として3次元形状のガラスアートに
それを「アートイノベーション」と呼び、その産物として出来上がった作品が研究室に並ぶ。他者とは違う斬新なアイデアを創出したい企業と一緒にアイデアを探り、土佐氏たちがそれを形に落とし込む。
あえて「たち」としたのは、「私は一人で推し進めるのではなくて、ワイワイ若い人たちとやっていくのが向いている」という土佐氏のスタイルがあるからだ。

非美術系学生にこそ、多角的に活躍する場がある

「アーティストだけが一人で出世していくスタイルじゃなくてもいいのではないかと思っています。
そのため、作品をつくるプロセスは積極的に公開するように心がけています。Give 、Give、Give です。まず、アイデアを見せて意見交換する。たった一人でやるより、さまざまな人の意見を聞いて生まれたアイデアの方が広がりが生まれますから」

こうして十数人の学生たちと日々にぎやかに研究を続けている。博士課程で在籍するのは、法学部や薬学部出身など、アートとは畑違いの分野からきた学生ばかり。異なる分野の視点があってこそ、イノベーションは生まれやすい。
京都大学大学院総合生存学館特定教授の土佐尚子氏。京都大学のキャンパスにて
京都大学大学院総合生存学館特定教授の土佐尚子氏。京都大学のキャンパスにて
京都大学という日本で一番ノーベル賞受賞者が多く、自学自習でマイノリティを大切にする学び舎でアートとビジネスの産学協同を行うからこそ、説得力も突破力も育まれる。柔軟な思考や解決力が必要とされるこれからの時代に、ポジティブかつフラットにアートを取り入れる術はぜひ身につけておきたい。

この記事はいかがでしたか?

不満

やや不満

普通

やや満足

満足

不満

やや
不満

普通

やや
満足

満足

評価する

ご回答いただき
ありがとうございました。

記事一覧へ

FOLLOW US

Mail News

レクサスの最新情報をお届けしています。
VISIONARYの記事情報も配信中。

Twitter

VISIONARYの最新記事や過去の人気記事を投稿します。

配信通知

VISIONARYの最新記事をプッシュ通知でお届けします。

RELATED

関連リンク

RECOMMENDED

あなたへのおすすめ

よく読まれている記事RANKING
よく読まれている記事RANKING
FOLLOW USVISIONARYの最新情報をお届けします。
  • Mail News
  • Twitter
  • 配信通知