VISIONARYMAGAZINE BY LEXUS

CULTURE

安藤桃子監督が語る、
「LEXUS OPEN FILM」に見た日本らしさ

2020.10.09 FRI
安藤桃子監督が語る、「LEXUS OPEN FILM」に見た日本らしさ

米国アカデミー賞公認 アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2020 (SSFF & ASIA 2020)」が9月16日〜27日に開催された。コロナ禍で会期が延期となりながらも、充実したオンラインコンテンツが楽しめた今年度のSSFF & ASIA。SSFF & ASIAへの応募作品の中から、「日本の地方の魅力・日本の今後」を感じさせるという観点でセレクションした「LEXUS OPEN FILM」の3作品や、特別審査員を務める映画監督の安藤桃子氏へのインタビューから、改めて“日本らしさ”を考える。

Text by Rika Noguchi
Photographs by Masahiro Okamura 

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オンライン企画が充実したSSFF & ASIA 2020

未曾有のコロナ禍により1999年のスタート以来、初の延期を余儀なくされた「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2020 (SSFF & ASIA 2020)」。

9月16日に開催されたオープニングセレモニーでは、新型コロナウイルス感染症対策のため会場への入場者数が制限され、ソーシャルディスタンスに配慮したかたちでの開幕となった。

厳重に感染症対策がとられたリアル会場の一方で、2019年からスタートしたオンライン企画は、さらにコンテンツが充実。SSFF & ASIA 2020では、リアルとオンライン「ONLINE SCREENING」の両方で、世界112の国と地域から集められた選りすぐりの約200作品が上映されることになった。ONLINE SCREENINGは、会期中にSSFF & ASIAの公式ホームページから名前やEメールアドレスを登録すると視聴できる仕組みだ。

また、オープニングセレモニーはYouTube、Facebook、Twitterで世界中に生配信された。世界中の監督とリアルタイムでのトークが楽しめたのは、2020年ならではだろう。

今年度のテーマは「(NEW)BORDERLESS」。「その表現がどんな境界(ボーダー)を越えた新しい表現であるか」を考える、というメッセージが込められている。

オープニングトークで、SSFF & ASIAの代表を務める別所哲也氏は「ニューボーダレス」というテーマについて、「(コロナ禍で)自粛をしていると、あっという間に時間が経ってしまう。こんな時期だからこそ、改めて家族への思いを大切にしてほしい」と語り、2020年のSSFF & ASIAが開幕した。

“日本らしさ”を改めて問うLEXUS OPEN FILM

LEXUSは、人々の感性・感覚を開放する若手クリエイターを支援するSSFF & ASIAを2013年からサポートしている。「LEXUS OPEN FILM」は、SSFF & ASIAへの応募作品の中から、新鮮な感性で未知の映像を創り出す新しい才能の発掘を目的としてセレクションし、若手クリエイターをサポートするプロジェクトだ。

2020年は「日本の地方の魅力・日本の今後」をテーマに、映画監督の安藤桃子氏が3作品をセレクト。安藤監督はこのテーマについて、「今回作品を選ぶにあたって、日本らしさとは何だろうと考えたとき、 “日本の心”だと思いました。それは、LEXUS NEW TAKUMI PROJECTにあるような“匠の技”や、“クラフトマンシップ”とも共通する普遍的なテーマ。目に見えない心を大切にすることがコロナ禍のいま必要なことです」と語った。
  • オープニングセレモニーにてLEXUS OPEN FILMの上映作品と各監督が発表された
  • 大森 歩監督の「リッちゃん、健ちゃんの夏。」
  • 小川貴之監督の「アストロエイジ」
  • 富田 大智監督の「Future is MINE - アイヌ、私の声 -」
日本発のラグジュアリーブランドであるLEXUSは、日本の“ものづくり”や、職人の高い技術力をサポートしたいという思いをもつ。「日本らしさ」を考え抜くことは、「日本の地方の魅力」を発見することにもつながる。

選ばれた才能の原石たち

今回、安藤監督に選ばれた作品は、大森歩監督の「リッちゃん、健ちゃんの夏。」、小川貴之監督の「アストロエイジ」、富田大智監督の「Future is MINE -アイヌ、私の声-」の3作品。

SSFF & ASIA 2020のオープニングセレモニー後には、LEXUS OPEN FILMの特別審査員を務める安藤桃子監督、別所哲也氏、セレクション監督によるオンラインイベント「LEXUS OPEN FILM TALK EVENT」が開催され、安藤監督と別所氏から各監督に、作品に込めた思いや日本らしさについて、質問が投げかけられた。
ソーシャルディスタンスに配慮しながらのオンライン配信となった
ソーシャルディスタンスに配慮しながらのオンライン配信となった
長崎の美しい島が舞台となった大森監督の「リッちゃん、健ちゃんの夏。」について、安藤監督は「地域をPRする映画なのだけれど、いい意味でプロジェクト感を感じない。2人の純粋な恋を“変わらない視点”として映画の軸に置き続けていたので、映画として心に染みるものになっていました」と、選考理由を述べた。

監督の大森氏は、「カトリックも仏教もあるなかで、この島で一番大事にされているのは自然です。これは自給自足の島ならではで、人々は共に助け合い、自然を感じで生きています。私は目に見えない物を信じるという意味では、恋も宗教も同じだと思います」と語った。

安藤氏も「確かに恋は信じて仰ぎ見ますよね。この仰ぎ見る姿勢は日本の姿勢です。見えない生命にすら、つながりを感じて生き、見えないものに心を入れるのが日本人ですね」と答えた。

続いて、小川監督の「アストロエイジ」を選んだ理由について安藤監督は、「予測できないところにどんどん運ばれていき、人類の進化も感じました。どんなに進化しようとも、私たちの心は変わらない。それが一本貫かれている映画。“わらしべ長者”のようだなと思いました」と評した。

小川氏は安藤監督の話を受け、「わらしべ長者は考えていたことでした。日本人は、言いたいことも言えない人が多いけれど、聞けば話す、というイメージがありました。いろいろな人が、いろいろな考えや夢をもっていることを描きたかった」と話した。

最後に富田監督の「Future is MINE -アイヌ、私の声-」について安藤監督は、「民族として残していくこと。全く違う民族同士が出会い、心を一つにすることは、恐らくいまの時代でしかあり得ないことです。民族に根付き続ける愛があるからこそ、いまの命がある。主人公も母親で、深い母の愛への感謝がこみ上げてきて、胸がいっぱいになりました」と選考理由を述べた。

富田氏は日本人らしさについて問われ、「すごく難しい」としながらも、「今回の主役の彼女を見ていたら日本らしいと思いました。人との関わり方、心のさらけ出し方。フィルターがあって、いきなり心をオープンにできない。だから彼女がその先でアクションを起こしたことは美しいものになったのだと思います」と説明した。

最後に別所氏は、「みなさんはまさに才能の原石。ショートフィルムの作り方は三者三様です。目に見えない日本らしさは日常にあり、みなさんの足元にもキラキラした物語があります。今回のみなさんの作品は、そんな目に見えない日本らしさに光を当てた作品でした」とし、LEXUS OPEN FILM TALK EVENTは幕を閉じた。
「みなさんは才能の原石」と、3作品の監督をたたえた別所氏
「みなさんは才能の原石」と、3作品の監督をたたえた別所氏

安藤監督の“日本”への思い

今回、LEXUS OPEN FILMにて上映作品のセレクションを担当した安藤監督は、自身の作品「0.5ミリ」で舞台となった高知に2014年に移住し、活動の拠点を同地に移している。ニューヨーク、ロンドン、東京での暮らしを経験してきた安藤監督に、高知での暮らしについて聞いた。

「日本人はあらゆる命と対話し共感して、そのつながりを感じながら暮らしを営んできました。高知県は自分にとってそういうものを感じられる場所です。お米を食べても、お米の命を感じる。水を一杯飲んでも、生き物、微生物がつながって生きていることを感じる。東京でも、どこでも、その心はあると思うのですが、自分にとってはよりつながりを感じやすい、自分の中心につながり続けられるところです」

さらに東京と高知の違いについて伺うと、「感覚は全然違いますね。違うのだけれど、究極を言えば、自分がちゃんと中心にあれば、どこに行っても同じ」だと答えた。

「ロンドンやニューヨークにも住んでいたので、いろいろなところと比較してみると、高知は食べるものに困ることがないという大きな安心感があります。なんの仕事をしていても、どんなことをしていても、一番中心に鎮座しているのは“命”です。命と直結している食に不安がないというのは、何をしていても安心感の中で、大きく挑戦できる心のゆとりが生まれる。台風や地震の心配はありますが、コロナ禍でも食べることには困らない。経済規模は47都道府県中で下の方ですけれど、数字では測れない幸せと豊かさを感じます」
かつて「アエイオウ」という短編作品を撮ったことがある安藤監督。短編映画には濃厚なエキスが詰まっているという
かつて「アエイオウ」という短編作品を撮ったことがある安藤監督。短編映画には濃厚なエキスが詰まっているという
ゆったりとした時間が流れているイメージがある高知だが、安藤監督は同地でもミニシアターをオープンさせたりと、精力的に地方発のプロジェクトを手掛けている。安藤監督は「ゆとりが生まれるからといって、ゆとりにあぐらをかいてしまっては意味がない」とも語る。

「ゆとりが生まれた分、飛躍できるということなので、私は以前よりも精力的になりました。例えば、私には子どもは1人ですが、たくさん子育てをしているお母さんと話をしていると、子どもが増えれば増えるほど愛も増えていくんですね。愛が無限大であるのと同じで、ゆとりが生まれたら、さらに活動できるし、エネルギーを生み出すことができる。安心感があればあるほど、さまざまな挑戦を勇気を持ってできるようになります」


高知でますますパワーを蓄え、ますます精力的に作品をつくる安藤監督。最後に、今回のSSFF & ASIA 2020について聞いた。

「ショートフィルムは濃縮されたエキスが詰まった梅肉エキスです!観たあとの感覚は、長編映画と同じくらいの濃厚さで、記憶に刻まれます。短い尺で宇宙や歴史など、壮大なテーマをも感じられます。『デザインは見えないことを可視化する』という話がありますが、映画は見えない心を可視化するものです。映画を通して、心の呼応が生まれることを信じています」

コロナ禍で人々の心が沈みがちないま、私たちはイマジネーションや人を思いやる力を求めている。目に見えない日本の心、日本の繊細な手触りが感じられるSSFF & ASIA 2020を、ぜひ楽しんでほしい。
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