ART / DESIGN

夏の風物詩、デザインが美しい風鈴3選

2020.08.21 FRI
ART / DESIGN

夏の風物詩、デザインが美しい風鈴3選

2020.08.21 FRI
夏の風物詩、デザインが美しい風鈴3選
夏の風物詩、デザインが美しい風鈴3選

風に揺れて鳴る優美な音が、蒸し暑い日本の夏に涼感をもたらす風鈴。昔から愛される風鈴にも、今日のライフスタイルによく合うさまざまなデザインが生まれ進化している。夏の暮らしに風情をもたらす、今注目の洒落た風鈴をご紹介。

Edit & Text by Mari Maeda(lefthands)

洒落た風鈴を家に飾る

夏になると、どこからともなく聞こえてくる風鈴の音。風とともに運ばれてくる涼やかな音に、しばし心癒やされるのは、いにしえより私たちに受け継がれた感性によるものなのだろうか。

庭に流れるせせらぎや、茶室脇の水琴窟の音などに涼感を得て、夏の蒸し暑さを和らげてきた日本人。中でも風鈴は、一般庶民にも親しまれて今日もなお、愛され続けている。澄んだ音と、風に揺れるたたずまいは、目にも耳にも麗しい。

自宅で過ごす日々を、いつにも増して心地よく過ごしたい今年の夏。家に、風鈴を飾ってみてはいかがだろうか。昔ながらの風鈴にも心ひかれるが、現代の住まいにもなじむ、センス溢れる洒落た風鈴を見つけるのもいい。今回は、そんな3選をご紹介する。

繊細な竹細工のスタンドが美しいWDHの「置き風鈴」

繊細な竹細工の風鈴立てが、真鍮の風鈴に洗練された雰囲気をもたらす。短冊は富山・五箇山の和紙「悠久紙」
繊細な竹細工の風鈴立てが、真鍮の風鈴に洗練された雰囲気をもたらす。短冊は富山・五箇山の和紙「悠久紙」
古くより親しまれてきた素材や、伝統的な技術を活かした日本のものづくりの魅力を国内外に発信している「WDH」。日本のものづくりから生まれる作品を現代的にアレンジし、上質で、心豊かな暮らしを提案している。
風鈴を飾り楽しむことが好きだったオーナーが、ある夏の終わりに風鈴を片付けながら、ふと、このまま飾っておけるスタンドはないものか? と考えた。そうして、付き合いのあった職人の手を借りて、一年を通して置いておきたい洗練された「置き風鈴」が生まれた。

静岡県静岡市の伝統工芸である駿河竹千筋細工職人が、高級な虫籠を作るための技術とパーツを活かして製作した風鈴立て。形のベースとなる三つの竹輪は、絶妙な熱加減で曲げていくことで、合わせた継ぎ目が分かりにくいように工夫されている。そこに、熟練の職人が均一に割った41本もの竹を1本1本丁寧に差し込み完成させる。竹のしなやかさと、日本的な繊細さを感じさせ、庭園にある雪つりを思わせるたたずまいが美しい。

風鈴は、800年以上の歴史を誇る鋳物の産地、神奈川県小田原市で一つ一つ職人の手によって製作されたもの。風鈴好きなオーナーの「情景が浮かび、至福のひとときを過ごせるように」との思いを託されて、独自に調合した特殊な真鍮を使い音色を追求した。金色の風鈴は、夏の日の暑さを忘れさせるすがすがしい高い音を、黒色の風鈴は、夜へと誘う夕涼みに聞きたい落ち着きのある低い音を響かせる。音色の違いが、気分と場の空気感を演出する。

風鈴はスタンドから外して軒先につるすこともできる。桐箱に丁寧に納められているため、夏のギフトとして大切な人へ贈るのもすてきだ。
縁起が良いとされ、骨董品や美術品などの保管にも使われる桐箱に納められる
ギフトにも最適な上質感がうれしい
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「置き風鈴」セット(黒、金)1万3200円(税込)
WDH
http://www.wdh-store.com

高岡銅器の伝統的な製法から生まれた能作のモダンな風鈴

風に揺れてチリンと鳴る澄み切った音色が涼感を呼ぶ
風に揺れてチリンと鳴る澄み切った音色が涼感を呼ぶ
富山県北西部にある高岡市は、加賀藩主の前田利長が高岡城に入り開町して以来、豊かな歴史と文化を背景にものづくりの伝統を育んできた。中でも、開町から2年後の慶長16年(1611年)に、前田利長が7人の鋳物師(いもじ)を招いたことから始まった鋳物の歴史は長く、高岡銅器は、今日も高岡市の伝統産業として根付いている。 「能作」はその高岡の地で、鋳物の製造を大正5年(1916年)に開始した。

創業当時は仏具、茶道具、花器の生地を製造していた能作が、ライフスタイルの変化に伴いインテリア雑貨に取り組み始めたのは2000年頃のこと。中でも風鈴は、その美しい音色と、透き通るようなヘアライン仕上げによって多くの人を魅了している。

モダンでシンプルなデザインと色合いは、今日の住まいにさりげなくなじむ。玉ねぎをモチーフにした「オニオン」のコロンとしたフォルムは愛嬌があり、かつ滑らかで美しい。

製作には、高岡銅器の製造で用いられている昔ながらの「生型鋳造法」が用いられている。生型鋳造とは、鋳型用の砂に少量の水分と粘土を混ぜ、押し固めて鋳型を成型する方法だ。他の鋳造法と違い、鋳造前に鋳型を焼成・薬品処理をしないために「生型鋳造法」と呼ばれるが、鋳物砂は押し固めているだけなので、もろく崩れやすい。職人の熟練の技が必要とされるこの古くからの技法を、能作は今日も脈々と受け継ぎ活用している。

能作の風鈴の人気の秘密は、真鍮ならではの澄んだ音色にもある。ブラスバンドの“ブラス=brass”が“真鍮”を意味するように、真鍮は金管楽器の素材としても使われていて、この風鈴にも、楽器にも似た澄み渡る響きがある。窓辺に飾り、風と軽やかに戯れる様子は、目にも耳にも心地よい。
ヘアライン仕上げを施し、銅と亜鉛の合金である真鍮の美しさを最大限に生かした逸品
ヘアライン仕上げを施し、銅と亜鉛の合金である真鍮の美しさを最大限に生かした逸品
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「オニオン」(ゴールド、シルバー、ピンクゴールド)各6050円(税込)

能作
https://www.shopnousaku.com

「=K+」が手掛ける、オブジェのような置き風鈴「涼の音」

モダンアートのようなたたずまいが美しい。繊細な文様が浮かび上がる花結晶(左)と鉄色のシックな黒銹(右)
モダンアートのようなたたずまいが美しい。繊細な文様が浮かび上がる花結晶(左)と鉄色のシックな黒銹(右)
1935年の創業以来、京焼・清水焼の産地製造卸商社として、多数の作家や窯元とネットワークを築き商品の企画開発に取り組んできた熊谷聡商店。同店が2014年に、今までにない斬新なセラミック商品を展開しようとオリジナルブランド「=K+」を立ち上げて、京焼と清水焼の魅力を国内外に発信している。Kは「Kyoto」「Kumagai」「Kyoto ware」「Kiyomizu ware」を、+はデザイナーやアーティストとのコラボレーションを意味する。

風鈴を作るきっかけとなったのは、欧米からの依頼を受けて鉄瓶に合うお茶呑茶碗を製作する中で開発した陶器の黒銹だった。出来上がった茶碗を2つ、両手に乗せて軽くぶつけてみたところ、とても良い音色が響いた。その音色を聞いて、「=K+」プロデューサーの熊谷隆慶氏は「何か風鈴のようなものができないか」との思いを抱く。ある日、以前にもコラボレーションを行ったデザイナーの三宅一成(みやけかずしげ)氏と再度組める機会を得て、デザインを依頼。幾つかの中から最後の1点を選び、その後、現在の風鈴の形にするまでに熊谷氏が自ら試作を重ねた。

美しい音を追求してたどりついた舌(座金)は南部鉄器。器は陶器の黒銹で開発を進め、大きさや口元を工夫し、最も美しい音が鳴る口径を突き止めた。風受けには、さまざまな木のサンプルの中からメイプルの木をデザイナーとともに選定。そうして試行錯誤を繰り返した末に生まれた風鈴からは、焼き物ならではのなんとも柔らかな心地よい音が鳴り響く。
花結晶のシリーズには、白、ピンク、緑、青、瑠璃など14色がそろう。フレームは新潟燕三条製
花結晶のシリーズには、白、ピンク、緑、青、瑠璃など14色がそろう。フレームは新潟燕三条製
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黒銹は、鉄色の中に金色の光沢感が所々に現れ、表面に凹凸を施した立体感も味わい深くシックな印象。一方、磁器の花結晶は、花が咲いたように美しい。釉薬の中に含まれる亜鉛華が、冷却中に雪の結晶のような模様を作り出す。きれいな結晶の花を咲かせるには、1度単位のきめ細かい温度コントロールが必要で、職人の経験からくる勘に頼るところも多分にあるという。また、結晶の出方がそのたびごとに異なるため、1点1点が唯一無二の作品となり、豊かな色彩の実現から、現在14もの色から選ぶことができる。

伝統的な焼き物と、現代的感性が融合したアート作品のような風鈴。自宅に飾って、涼やかな音色とともに、しばし緩やかな夏の時を楽しんでみたい。


置き型風鈴「涼の音」
黒銹、花結晶(14色展開/青・白・茶・緑・黄・灰青・銀藤・青墨・瑠璃・縹・ピンク・紫・白地赤・白地青)各9350円(税込)

「=K+」
http://kplus.kyoto-kumagai.co.jp
Instagram
https://www.instagram.com/equal_k_plus/?hl=ja

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