ART / DESIGN

世界初のクラフトコーラ専門メーカー「伊良コーラ」
──漢方をヒントにしたクラフトマンシップとは?

2020.05.29 FRI
ART / DESIGN

世界初のクラフトコーラ専門メーカー「伊良コーラ」
──漢方をヒントにしたクラフトマンシップとは?

2020.05.29 FRI
世界初のクラフトコーラ専門メーカー「伊良コーラ」──漢方をヒントにしたクラフトマンシップとは?
世界初のクラフトコーラ専門メーカー「伊良コーラ」──漢方をヒントにしたクラフトマンシップとは?

世界初のクラフトコーラ専門メーカーとして、2018年に誕生した「伊良(いよし)コーラ」。移動販売や、シロップのインターネット通販をメインに、人気を集めている。2020年2月には、東京・下落合に初の常設店「伊良コーラ総本店下落合」をオープン。代表の“コーラ小林”こと、小林隆英氏のクラフトマンシップに迫った。

Text & Edit by lefthands
Photographs by Takao Ohta

祖父が従事していた漢方がヒントに

クラフトビールに代表されるように、日本のみならず世界中で「クラフト」のムーブメントが巻き起こっている。単なる希少性だけではなく、こだわりを持ってひとつひとつ丹精込めて作り上げられることで生じる、特別な価値が人気の要因だ。

その好例として、VISIONARYでは以前クラフトジンを取り上げたが、今回は「クラフトコーラ」をご紹介したい。

実は、世界初のクラフトコーラ専門メーカーがここ日本にある。東京・下落合を拠点に、2018年に誕生した伊良コーラだ。
世界初のクラフトコーラ専門メーカーがここ日本にある。東京・下落合を拠点に、2018年に誕生した伊良コーラだ。
東京・下落合の工房で、一つ一つ自らの手で伊良コーラを作っているのは、代表のコーラ小林氏。氏は学生時代からコーラが好きで、世界中を旅したときには、各国のコーラを飲み比べてきたという。コーラ作りを始めたのは、会社員として働いていた頃に、100年前のオリジナルコーラのレシピをインターネットで見つけたのがきっかけだった。

レシピを参考にコーラ作りに挑戦し始めた小林氏だったが、思うような味にならずに試行錯誤を繰り返した。そんな中、漢方職人だった祖父が遺した工房で、漢方の製法についての資料を発見したことが契機となった。

「それまでは一般的な手作りコーラの製法通り、全ての素材を一緒に煮込んでいたんですが、漢方の製法をヒントに素材ごとに火の入れ方を変えてみました。すると、味と香りの両面で飛躍的に奥深さとコクが出るようになったんです」
伊良コーラ代表の「コーラ小林」こと、小林隆英氏
伊良コーラ代表の「コーラ小林」こと、小林隆英氏
コーラを手作りする場合、レモンやライムといった柑橘類と、バニラ、シナモン、砂糖を水に混ぜてシロップを作るのが一般的だ。伊良コーラはそれらに加え、ショウガやナツメグ、コリアンダーなどの香辛料、そしてエゾウコギやクローブなどの漢方で使われる材料も用いている。何よりも、オリジナルコーラに倣い、コーラの実を使っているのが特徴だ。
オリジナルのコーラで使われていたコーラの実。現在では、コーラの実を使用しているコーラは少ないという
コーラの実がなっている様子
2019年に小林氏がガーナを訪れた際の1枚。コーラの実は客人へのもてなしとして振る舞われることもあるという
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こだわりをもって作られるコーラはヨーロッパなどにも存在するそうだ。だが、伊良コーラのように人工甘味料や香料を一切用いずに、天然素材のみで作られたコーラは世界でもまれだという。
実際に飲んでみると、爽やかな甘さとスパイスの絶妙なコントラストに驚かされた
実際に飲んでみると、爽やかな甘さとスパイスの絶妙なコントラストに驚かされた
漢方をヒントに、クラフトマンシップを存分に発揮する小林氏。そんな氏が最もこだわっているのは、香りだという。

「香水には、トップノート、ミドルノート、ラストノートといったように、時間の経過によって、香りに変化がありますよね。伊良コーラも、飲み進めていくことで香りが変わっていくことを楽しんでもらえるように、素材への火の入れ方を工夫しています」
後述の移動販売の様子。どんな素材を使っているのか、少しだけ垣間見ることができる
後述の移動販売の様子。どんな素材を使っているのか、少しだけ垣間見ることができる

工程も楽しめる移動販売

伊良コーラは、土日祝日を利用した移動販売からスタートすることとなる。その相棒がウォークスルーバンを改造したフードトラック「カワセミ号」だ。東京・青山の「Farmers Market @UNU」をメインに、2018年より販売を始めたところ、瞬く間に人気を集めることとなった。
川から川へ飛び回るカワセミをロゴに。体に良くない、手作りできないというコーラの既成概念への挑戦を表現
川から川へ飛び回るカワセミをロゴに。体に良くない、手作りできないというコーラの既成概念への挑戦を表現
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ヒットの秘密は、先述の味や香りへのこだわりだけでなく、製造工程をあえて見せることで、目でも楽しめるように工夫がなされている点にある。シロップを炭酸に混ぜる様子など、実際の工程を購入者に見えるようにしているのだ。
「カワセミ号」での移動販売は、遊園地のようなワクワク感を楽しんでもらえるよう意識しているという
「カワセミ号」での移動販売は、遊園地のようなワクワク感を楽しんでもらえるよう意識しているという
伊良コーラではシロップのインターネット通販も行っており、移動販売に赴けない場合でも、自宅で楽しむことができる。伊勢丹新宿店でもシロップの扱いがあるため、ギフトとして利用するのもお勧めだ。

また、渋谷と吉祥寺にある映画館「アップリンク」でも提供中だ。映画を観ない場合でも、テイクアウトができるうえに、シロップも販売されている。実際に飲んでみて気に入ったら、シロップを買って自宅で楽しむことができるのもうれしい。

カワセミ号の「冬眠」期間でも出来たてが味わえる「伊良コーラ総本店下落合」

2020年2月末には、初の常設店である伊良コーラ総本店下落合をオープン。12〜2月はカワセミ号が「冬眠」に入るため、移動販売は休止になるが、常設店で季節を問わずに出来たての伊良コーラを味わうことができるようになった。
神田川沿いにある「コーラ小道」の看板が目印
総本店の入り口
「のれんは、地元・落合の染物屋に作ってもらいました」と小林氏
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総本店には、工房を増設し、製造している様子が店舗内から見えるようになっている。その狙いについて、小林氏は次のように語る。

「どんな職人がどんな工房で作っているのかをお客さまに見てもらえるようにして、顔が見えるものづくりを行っていきたいです」
製造している様子が店舗の中から見ることができる。順番待ちで並んでいる際も楽しめる空間作りになっている
総本店では炭酸を強めにしているとのこと
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コーラ作りのワークショップなど、クラフトマンシップを人々に伝えていく試みも検討中だという。

「祖父が遺した漢方の製造法を私が参考にしたように、失われた価値に光を当てられるような試みをしていきたいと思っています。それが日本のものづくりの未来にもつながっていくのではないでしょうか。そして、クラフトコーラのようなこだわりを持ったプロダクトがもっと増えて、自分が得意なもの、好きなものを仕事にできる土壌を作りたいですね」
祖父・伊東良太郎氏。「伊良コーラ」は伊東氏の漢方工房「伊良葯工(いよしやっこう)」に由来する
薬箱や薬棚、そして「伊良薬工」の看板も祖父が遺したものを受け継いでいる
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最後に、いずれ伊良コーラを世界3大コーラブランドにしたいと意気込みを語ってくれた小林氏。カワセミのごとく、伊良コーラが下落合から世界へ羽ばたく日が来るのが楽しみだ。
伊良コーラ総本店下落合
東京都新宿区高田馬場3-44-2
営業日:金・土・日曜日(13:00~17:00)
※夏季(4月-10月)は13:00~18:00
http://iyoshicola.com/

オンラインストア
https://iyoshicola.shop

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