TECHNOLOGY

レクサスの先進技術に見る、レクサスが目指す車づくり

2020.04.20 MON
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レクサスの先進技術に見る、レクサスが目指す車づくり

2020.04.20 MON
レクサスの先進技術に見る、レクサスが目指す車づくり
レクサスの先進技術に見る、レクサスが目指す車づくり

レクサスはジャーナリストを対象に、静岡県にある東富士研究所にて「TECH DEEP DIVE」と名づけられた先進技術のワークショップを開催。そのなかで、今後の電動化において重要となる「E-AXLE(イーアクスル)」という先端テクノロジーを披露した。同ワークショップから、レクサスが目指す車づくりに迫る。

Text by Fumio Ogawa

2030年を想定したレクサスの技術的ショーケース「Lexus LF-30 Electrified」

2005年に「RX400h」を発売して以降、二段リダクションギヤやマルチステージハイブリッドの開発など、電動化技術の先駆者として世界をリードしてきたと自負するレクサス。シームレスな加速やリズム感とダイレクト感のある走りなど、優れたパフォーマンスはレクサスハイブリッドの特色として評価されてきたという。

「Lexus LF-30 Electrified」は、2019年10月に開催された「第46回東京モーターショー2019」で大きな話題を呼んだ展示車だ。

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レクサス車のシンボルであるスピンドルグリルを新たに解釈したフロント部分をはじめ、大型ウィンドシールドを使いながら、キャビンとボディが一体化したような流麗なスタイリングが、来場者の目を大きく引いた。

LF-30 Electrifiedが画期的なのは、実は、スタイリングにとどまらない。車名にある「L」はLexusを意味し、「F」はFuture(未来)、そして「30」はレクサススタート30年と、2030年を想定してのコンセプトという意味がこめられているように、技術的なショーケースでもある。

簡単に注目すべき技術的な内容を列記してみよう。LF-30 Electrifiedはバッテリーで走る電動車。駆動はインホイールモーターといって、前後左右、4つの車輪にモーターが組み合わされていて、現在のようにドライブシャフトを持たない。

操舵はステアバイワイヤだ。現在のクルマはほぼ、ステアリングホイールの先にシャフト(棒)がついていて、その先にある歯車のかみ合わせでラックが動き、前輪が右左に動くようになっている。

ステアバイワイヤは操舵をモーターで行い、モーターはステアリングホイールを動かした際の電気信号で制御されるシステムだ。シャフトとか歯車とかラックとか物理的な構造が不要になる。

ここまで書くと、子ども向けのビジュアル本に出てくる「みらいのくるま」のようだが、「LF-30 Electrifiedで紹介した技術は、どれも実現に向けて研究開発を進めているものばかりです」と、技術を統括するLexus International Presidentの佐藤恒治氏が教えてくれた。

LF-30 Electrifiedのインホイールモーターの考えに通じるテクノロジー

その一端を見る機会が、東京モーターショー直後の週末に与えられた。舞台は、東名高速道路・裾野インターチェンジ近くにある東富士研究所だ。門をくぐったところで、携帯電話を含めてレンズのついた機材はすべて使わないように、と厳しいお達しがあった。厳格なセキュリティなのだ。

「これまで私たちは、将来の技術は秘匿して、ジャーナリストの方々には見せてきませんでした。でも、いまは考えを変えて、たとえ研究中のものでも見せられるものはお見せして、ビジョンを共有していただけたらと思っています」

研究所で私たちを出迎えてくれた佐藤恒治氏の言葉だ。ここで体験させてくれたのが、「E-AXLE」と呼称される技術だ。後輪をモーターで駆動するシステムである。

従来のハイブリッドAWD技術「E-Four」が、雪上など走行安定性を眼目にしているのに対して、E-AXLEはより高出力のバッテリーを使い、後輪の駆動力によって運動姿勢を制御するのが狙い、と説明された。

「E-AXLEは、駆動力制御という点で、LF-30 Electrifiedのインホイールモーターの考えにつながるものです。トルクの立ち上がりが早く、かつ応答性にすぐれたモーターを使うと、ピッチングなどを抑えたフラットな姿勢を保つこともできるし、コーナリングでは回頭性や姿勢安定性や脱出時の加速など、多くの点で意のままのコントロールが可能になります」

レクサスの電動車の開発を統括している渡辺剛氏が、現場で上記のようにメリットを解説してくれる。これをレクサスでは「アドバンスド・ポスチャーコントロール」(訳すと先進的姿勢制御だろうか)と呼んでいるのだ。

「電動化技術によって今一度クルマの原点に立ち返り、走りの楽しさを大きく進化させ、未来の高級車の在り方を根本から変えてまいります。具体的には、ハイブリッドで培ったモーター制御技術を軸として、パワートレーン・ステアリング・サスペンション・ブレーキなどを統合的に制御。これにより走行シーンに応じた駆動力コントロールを行うことで理想的な車両姿勢を実現し、より安心安全で運転する楽しさを感じられるクルマを提供することを目指します」

レクサスES300hの実験車両でE-AXLEを体感

E-AXLEのコンセプトに基づいて、電気モーターを1基、後輪駆動用に備えたレクサス「ES300h」の実験車両を操縦してテストコースを走ってみた。第一印象は、運転がしやすい、というものだ。まず、アクセルペダルを軽く踏んだだけで、後ろから強く押しだすようなトルク感がある。

コーナーでとくに、新しいドライブ感覚が得られた。通りたいと思ったとおりの線を走れる。つまり、ライントレース性が高いのだ。曲がっている途中で、アクセルペダルを踏み込んでいっても、車体が外側、あるいは内側に出ていくことはなく、想定したラインを乱さずどんどん加速していくのに感心した。

直線路でアクセルペダルに載せた足の力を、ぱっと緩めたり、あるいは急速に踏み込んだりしても、ドライバーはもちろん、乗員の頭が揺れることもないようだった。後席に人が乗っていなかったので、横目で、同乗してくれたレクサスの研究員の人の頭を見た判断ではあるが、恐らくその印象は正しいだろう。

「電動車はこれからどんどん増えていくでしょうが、明確なビジョンを持って開発することで、独自の価値が提供できるようになる」とは、前Lexus International President澤良宏氏の言葉だ。

E-AXLEを体験すると、まさに、そのとおり。速く、そして静かというレクサスが、1989年のブランドスタート以来、伝統的に守ってきた価値が、新しい時代へ向かって羽ばたき始めた感じだ。早く路上で、多くの人に体験してもらいたいと、思った次第である。

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