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理想の家具をオンラインでカスタマイズ。ものづくりを
解放するプラットフォームサービス「EMARF」

2020.02.26 WED
理想の家具をオンラインでカスタマイズ。ものづくりを解放するプラットフォームサービス「EMARF」

オンライン上で自分好みの木工家具をデザインし、自分の手で組み立てることができるカスタムメイド家具のプラットフォームサービス「EMARF(エマーフ)」が、個人ユーザーから大手メーカー、自治体まで幅広い注目を集めている。家具を販売するだけでなく、モノづくり体験として提供する革新的なサービスは、いかにして生まれ、住まいの未来をどう変えていくのか。

Text by Sachiyo Kamata
Photographs by Sachiko Horasawa(CROSSOVER)
Edit by Hitomi Miyao

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デジファブをもっと身近にし、誰もが家具を作れる世の中に

自分の部屋や身体にフィットする家具を見つけるのはなかなか難しい。オーダーメイド家具は高価だし、DIYには技術と時間を要する。かといって既製品の中から探すとなると、サイズやデザイン、材質など、どこかで妥協せざるを得ない……。

そんな家具選びの現状を打破する救世主となり得るのが、カスタムメイド家具のプラットフォームサービス「EMARF」だ。利用方法はシンプルで、オンライン上で椅子や棚といったベースになる家具のデザインテンプレートと素材を選び、それを元に自分好みのサイズや形状に調整するだけ。しばらくすると工房から加工された家具パーツが自宅に届き、それを組み立てるだけでオリジナル家具が完成する。
EMARFの開発を手がけるだけでなく、次世代を担う若手建築家としても注目を集める秋吉氏
EMARFの開発を手がけるだけでなく、次世代を担う若手建築家としても注目を集める秋吉氏
「家具パーツの出力(切り出し)はShopBot(ショップボット)という3D木材加工機で行います。ShopBotはデザインデータ通りに木材を素早く切り出すことができますが、デザインデータの作成には、ある程度の知識や技術が必要です。そこで、デザインデータや機械加工コードを簡単に作れるようなシステムを開発して、誰もが自由な発想で家具を作れる世の中になったら面白いんじゃないかと考え、EMARFを立ち上げました」

こう語るのは、VUILD株式会社代表の秋吉浩気氏。同社はデジタルファブリケーションを活用した設計施工を行う建築テック系スタートアップだ。デジタルファブリケーションについて研究していた大学院在学中にShopBotの開発者と知り合い、同機の代理販売を行うようになった。2017年に法人化し、これまで全国44カ所(2019年9月現在)へ機械を導入してきた。
ShopBotは、板から正確な形を切り出すことができる3D木材加工機。全世界で1万台以上が普及する
ShopBotは、板から正確な形を切り出すことができる3D木材加工機。全世界で1万台以上が普及する
そして、2019年春にEMARFをローンチ。家具を作りたいユーザーとShopBotを保有している各地の工房とをオンラインでつなぎ、ユーザーが編集した家具パーツの機械加工データを即時生成するシステムを独自に開発することで、「家具づくりをすべての人に解放すること」に成功した。

「誰もが直感的に操作できるインターフェイスじゃないと“体験”としてのモノづくりは根付いていかないと思ったので、操作性にこだわりました。幅、奥行、高さだけでなく、角の丸みといった細かい部分もカーソル操作だけで調整でき、3Dデータでその都度仕上がりイメージを確認しながら発注できます。

見積もり金額も機械加工用コードもリアルタイムに生成され、工房ではその加工コードをShopBotにダウンロードすればすぐに家具パーツが出力できる。デザインから見積もり、木材加工までが1つのインターフェイスで完結するので、今までのオーダーメイド家具と比べて、時間もコストも大幅に削減できるのが強みです」
パソコンやタブレット上での直感的な操作でフォルムやサイズを調整し、思いのままの家具をデザインできる
パソコンやタブレット上での直感的な操作でフォルムやサイズを調整し、思いのままの家具をデザインできる
パソコンやタブレット上での直感的な操作でフォルムやサイズを調整し、思いのままの家具をデザインできる

日本の木材と工房を使うことで森を育み、地方を盛り上げたい

スツールのようなシンプルな家具の場合、工房内でデータを作成すれば組み立てまで1時間ほどで完了。金額も一万円台からとリーズナブルだ。ここまで手軽だと、休日に欲しい家具をデザインして組み立てるという楽しみ方も可能になる。

「切り出されたばかりの木の香りや、やすりがけ後のなめらかな手触りを感じながら家具パーツを組み立てていく作業はすごく楽しくて、子どもも大人も夢中になりますね。自分たちの空間を自分たちの手で作り上げていくことで創造力が育まれ、モノに対する愛着や、木が育まれた森林への興味も自然と生まれる。実際に教育やコミュニケーションのツールとしてEMARFを利用するリピーターも増えています」
出力データをもとにShopBotで切り出されたスツールのパーツ。組木のように木材同士をはめ込み完成
出力データをもとにShopBotで切り出されたスツールのパーツ。組木のように木材同士をはめ込み完成
EMARFでは現在、全国5カ所の工房を生産拠点としており、ユーザーはそこから好きな工房や木材を選択できるようになっている。直接工房を訪ねて一緒に家具づくりを行うことも可能で、秋吉さんは「ぜひ興味を持った工房に足を運んでほしい」と力を込める。

「日本は国土の2/3が森林で、各地域に魅力的な木材や工房がありますが、後継者が育たず林業は衰退の危機にあります。このサービスが浸透することで日本の林業が再び活気づき、森林再生や地方創生に貢献できたらうれしいですし、家具作りと観光を掛け合わせた“木育ツアー”も開催できたらと考えています」

近い将来、自分好みの家を“出力”することも可能に!?

今後は、全国各地にShopBotおよびEMARFの導入を進め、2020年に生産拠点を100拠点まで増やすことを目標にしている。また、国内外のデザイナーとコラボレートしてデザインテンプレートのラインナップを増やし、さまざまなメーカーや自治体と連携を図ることで、家具づくりの枠を超えた新たなサービスも生み出していきたいという。
オフィスが入居するビルの共有スペースには、ShopBotで出力したモニュメントが飾られている
オフィスが入居するビルの共有スペースには、ShopBotで出力したモニュメントが飾られている
「将来的にはAIを導入して、手描きのスケッチから3Dデータが自動生成されるようなシステムを開発したいと考えています。そして家具だけでなく、オンライン上で自分好みの家を設計し、自分の手で組み立てられるような世の中になったら面白い。

実際にバス停や駅のベンチといった公共物を、ワークショップを通して子どもたちと組み立てたことはありますし、2019年には富山県南砺市に、実際にShopBotを使った初の建築物『まれびとの家』が竣工したので、可能性は十分あると思います。初心者向けのワークショップも行っているので、まずは考えたことをカタチにする楽しさを体験してもらいたいですね」

理想の家具を、デジタルツールを使って自分の手で作り出せる時代がやってきた。「テクノロジーの進化とは人の能力を退化させることではなく、拡張させること」という秋吉さん。その言葉通り、EMARFによって誰もが自由に創作できる日も近いかもしれない。

EMARF
https://emarf.co
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