VISIONARYMAGAZINE BY LEXUS

CRAFTSMANSHIP

カカオ豆と砂糖だけで表現する、豊かな味わいを求めて──日本のクラフトマンシップが宿る「Minimal」のチョコレート

2020.02.05 WED
カカオ豆と砂糖だけで表現する、豊かな味わいを求めて──日本のクラフトマンシップが宿る「Minimal」のチョコレート

バレンタインシーズンには、毎年様々なトレンドが話題に上るが、ここ数年、チョコレートの新しいかたちとして定着しつつあるのが“Bean to Bar”だ。日本における、その先駆け的ブランド「Minimal - Bean to Bar Chocolate -」を訪れ、一枚のチョコレートに込められたこだわりと魅力に迫る。

Text by Sachiyo Kamata
Photographs by Sachiko Horasawa(CROSSOVER)
Edit by Hitomi Miyao

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ワインやコーヒーのように“嗜好品”として楽しむチョコレート

“Bean to Bar(ビーン・トゥ・バー)”とは、カカオ豆(Bean)から板チョコレート(Bar)までを自社工房で一貫して手掛けるチョコレートの製造方法。2000年代後半にニューヨークから各地へ広まったといわれており、日本では2014年12月に東京・富ヶ谷にオープンした「Minimal - Bean to Bar Chocolate -(ミニマル)」が、その先駆けとして知られている。

代表の山下貴嗣さんは、コンサルティング会社勤務時代に、ビーン・トゥ・バーの存在を知ったという。一口食べてそのおいしさの虜になるとともに、「新しいチョコレート文化の到来」を確信。その後Minimalのエンジニアリングディレクター(製造責任者)である朝日将人さんと出会い、国内外でカカオ豆の発酵からチョコレートの製造までを学び、一念発起して起業した。
「日本におけるチョコレートのあり方を変え、ひとつの“文化”として成熟させていきたい」
「日本におけるチョコレートのあり方を変え、ひとつの“文化”として成熟させていきたい」
「それまではチョコレートというと、日常的な“お菓子” か、ギフト用の“高級品”かの二択だったと思います。しかも、そのほとんどが、カカオ豆と砂糖という主原料に、甘味や粉乳、香料など様々な添加物を加えた “足し算”のチョコレートでした。でも、カカオ豆はそもそも南国果実の種で、品種や産地、農法によって、驚くほど味わいが違います。そこを深掘りしていけば、ワインやコーヒーのように素材由来の香りや味わいの複雑さを“嗜好品”として楽しむ新しいチョコレート文化が創れるのではないかと考えました」

世界中から探し出したカカオ豆。その個性を引き出す独自製法

Minimalが目指すのは、日本食の発想で再解釈した “引き算”のチョコレート。そのブランド名には、「チョコレートの“最小限”であるカカオにこだわる」という思いが込められている。山下さんはアジア・中南米・アフリカの3大陸のカカオ農園に直接足を運び、世界上位5%程度といわれる最高品質のカカオ豆を探し出すことから始めた。

「これまでに世界30ヵ国、300以上の農園を訪れ、今も年間4ヶ月は産地を探索し、豆の買い付けを行っています。品種、天候、土壌など、豆の品質を決める要素はいくつかありますが、農家のモチベーションも重要です。各地の農家と対等な関係を築き、おいしいカカオ豆を作るという思いを共有して、一緒に農法や発酵を試行錯誤しています」
協業する産地は、世界各地に点在する。各産地の個性を食べ比べることができるのも魅力のひとつだ
協業する産地は、世界各地に点在する。各産地の個性を食べ比べることができるのも魅力のひとつだ
カカオ豆から板チョコレートを作るには、豆の選別に始まり、焙煎、摩砕、調合、成形など、いくつもの工程を経なければならない。どれも緻密さを要する作業だが、カカオ豆の表現に徹底的にこだわるMinimalでは、仕入れた豆の特徴に合わせて作り方を毎回変えている。工房では年間3,000以上のレシピが生まれているというから驚きだ。

「焙煎の1分1℃、磨砕という豆を砕く工程では粒の大きさを1,000分の1ミリ単位で調整しています。加える砂糖の量も1%刻みですね。たったこれだけの違いで、出来上がりが大きく変わってしまうのがチョコレート。カカオ豆はとても複雑な農作物で、同じ農園でも麻袋ごとに個性が違います。だからひたすら作って、経験値で答えを導き出していくしかないのです。でも、これがビーン・トゥ・バーの面白さでもありますね」
板チョコレートのパッケージには、豆の個性やペアリングのポイントなどが記載されたカードが添付されている
板チョコレートのパッケージには、豆の個性やペアリングのポイントなどが記載されたカードが添付されている
Minimalのチョコレートを初めて口にした時、これまでのチョコレートとは一線を画すような、カカオ豆の芳醇な香りと、ザクザクとした粗削りの食感に衝撃を受けたことを覚えている。

「一般的なチョコレートは口どけのなめらかさを追求していますが、うちではあえて豆の粒子を感じられるように作っています。元々カカオ豆がもっている香りを最大限引き出すため、素材へのダメージを最小化する製法と調理器具を使った結果の粗挽きザクザク食感ですが、これによって噛んだ時にカカオ由来の多様で豊かな香りがふわっと広がるのです。良質な豆は、ベリー、パイナップル、ナッツ、シナモンなど、多彩な香りがするので、よく『本当にカカオ豆と砂糖だけ?』と驚かれますが、素材と製法にこだわれば、最小限の材料でここまで豊かな味わいを引き出すことができるのです。そのことを多くの人に知ってもらえたらうれしいですね」

チョコレート定期便やワークショップで、奥深い楽しみ方を提案

産地や品種、製法による味わいの違いを楽しめるよう、ラインアップも豊富に展開している。主軸の板チョコレートは大きく分けて“ブレンド”と“シングルオリジン(単一原産国のカカオ豆で製造したもの)”があり、香り、カカオの濃度、季節、テーマなど、嗜好や気分、用途に合わせて選ぶことができる。

「毎年20アイテムほどの新作を作っていて、バレンタインシーズンにはその前年に生まれた3,000以上のレシピからピックアップした、チョコレートの作品集『Minimal Works(世界各国のカカオ豆を使ったチョコレートアソート)』も発表しています。今後は、チョコレートスイーツも充実させて、裾野を広げていきたいですね」

さらに、ビーン・トゥ・バーの奥深い楽しみ方を提案する、さまざまな試みも行っている。毎月おまかせで3枚の板チョコレートが届く定期便「カカオツアー」、カカオ豆からの手作りチョコレートワークショップ、テイスティング体験、ペアリングイベントなどは、ビギナーからコアなファンまで、幅広い客層が集まるそうだ。
良質で希少なカカオを紹介する「カカオツアー」。テイスティングシートや産地を紹介するリーフレットも同梱
良質で希少なカカオを紹介する「カカオツアー」。テイスティングシートや産地を紹介するリーフレットも同梱
「カカオ豆の個性を表現したビーン・トゥ・バーは、その時々で異なる“一期一会”のおいしさがあります。お酒やコーヒーとのペアリングによっても違った魅力を発見できて、本当に奥深い世界です。今後もさまざまな人たちと一緒にビーン・トゥ・バーの可能性を掘り下げ、カルチャーとして根付かせていけたらと思っています」

令和最初のバレンタインシーズンにふさわしい、チョコレートの新しいかたち、ビーン・トゥ・バー。日本のクラフトマンシップが生み出す革新的かつ感動的な味わいは、一口ごとに感性を刺激し、豊かなひと時を演出してくれるはずだ。

Minimal
https://mini-mal.tokyo
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