VISIONARYMAGAZINE BY LEXUS

CULTURE

世界的なムーブメントを巻き起こす
クラフトジンの魅力に迫る

2020.02.03 MON
世界的なムーブメントを巻き起こすクラフトジンの魅力に迫る

イギリスをはじめとして、世界中でムーブメントを巻き起こしているクラフトジン。近年、日本でも国産の銘柄が国内外で注目を集めている。ジンに加え、さまざまなお酒の情報を発信しているウェブメディア「LiquorPage」を運営する小針真悟氏と、2018年の初回から大盛況を博しているGIN FESTIVAL TOKYOの代表 三浦武明氏に、その魅力を聞いた。

Text & Edit by lefthands
Photographs by Isamu Ito(lefthands)

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薬をルーツに持つジン

ウオッカ、テキーラ、ラムと並んで4大スピリッツと呼ばれるジン。ジュニパーベリー(セイヨウネズの実)とボタニカル(botanical)による、独特の豊かな香りを持つお酒だ。ボタニカルにはハーブやスパイス、フルーツなどが一般的には用いられるが、素材選びに制限はなく、自由なレシピで造られるのが特徴だ。そのため、ジュニパーベリーの使用量やボタニカルに何を使用するかによって味や香りが変わる、自由度の高いお酒といえる。

ジンは、一説には12世紀のイタリアの医師の間で薬として見なされていたジュニパーベリーを使った、薬用としての蒸溜酒がルーツにある。15世紀に入ると、オランダでジュニパーベリーだけでなくさまざまな香辛料を用いた嗜好品としての蒸溜酒が造られるようになる。オランダでは「ジュネバ」と呼ばれていたが、やがてイギリスに広まった際に、名称を省略するようになった。それこそが、現在の一般的な呼び方となっている「ジン」である。

産業革命期には、蒸溜機の発展により、ロンドンドライジンという現在でも主流となっているタイプのジンが誕生した。その定義にはいくつかのポイントがあるが、特に重要なのは、天然のボタニカルのみで香り付けすることと、基本的にごくわずかな糖分以外の添加物を用いないという点だ。こうしてジンは、イギリスの地で独自に進化を遂げた。

やがて、第2次世界大戦後にウオッカの世界的ブームを迎え、ジンの人気は下火となってしまう。そんな状況を一変させたのが、1987年に登場したボンベイ・サファイアだ。「洗練されたボトルのデザインによって、それまでのジンの武骨なイメージを覆すことに成功した」と小針氏は語る。

「また、もうひとつジンの歴史にとって大きな変化がありました。ボタニカルに何を使っているか公開しないのがジン業界の常識だったのですが、ボンベイ・サファイアはそれを公開したんです」

こうして、ジン業界が変革期を迎えたなかで、1999年に誕生したヘンドリックスは、バラやキュウリなど、今までジンに使われていなかった素材を使用して、世界中を驚愕させ、ジンの新たな可能性を知らしめた。このパイオニアがクラフトジンのひとつの土台となり、2000年代後半頃から世界的にクラフトジンが造られるようになる。
ジンの歴史にとって、ボンベイ・サファイアとヘンドリックスの登場は画期的な出来事だったと小針氏は語る
ジンの歴史にとって、ボンベイ・サファイアとヘンドリックスの登場は画期的な出来事だったと小針氏は語る

クラフトジンとは?

現在、イギリスやスペイン、ドイツ、そしてアメリカをはじめとして、世界中でジンのムーブメントが巻き起こっている。例えば、イギリスでは20年前には10数カ所だった蒸溜所が、現在では300〜400カ所にまで増加しているという。

これには、世界的なウイスキーブームによって、ウイスキーの蒸溜所が増えたことが関係している。スコッチなら最低3年というように、ウイスキーには熟成させなければならない期間がある。そこで、熟成中に並行してジン造りを行うことで、蒸溜所は安定した収入を得ることができるのだ。

また、ネットやSNSの発展によって、造り手も飲み手もジンのことを知りやすくなったのが大きいと小針氏は語る。

「海外ではYouTubeで造り方の動画が公開されていますし、積極的に蒸溜のワークショップが開催されています。そうした場でジンに大きな可能性を感じて造りだす人が増えているのだと思います。家族経営の造り手や個人で造っている人も多く、そうした造り手を応援する飲み手も増えていますね」

ジンは今や、世界で6000種類が存在するといわれている。初の国産クラフトジンが2016年に誕生して以降、日本でも注目度が増し、現在500種類前後の銘柄が流通している。また、輸出入ともに、2018年4月から2019年4月にかけて3割増になっているという。

では、そもそもクラフトジンの定義は何なのだろうか。実のところ明確な定義はないのだという。例えば、クラフトビールであれば、アメリカでは生産量が規定の数値以下のものと定義されている。だが、クラフトジンとして重要なのは、規模の大小ではなく、その土地の素材を使って個性を発揮することだと三浦氏は語る。

「大手メーカーが素晴らしい品質のクラフトジンを造っている場合もあります。大事なのは、アイデンティティとパーソナリティを持っていることなのではないでしょうか。クラフトジンは、その土地の素材をボタニカルとして用いることで、世界中の人たちに自分たちのことをアピールできるお酒なんです」
三浦氏はクラフトジンを“ご当地ジン”とも呼ぶ。自由度が高いからこそ、その土地ならではの個性を発揮できる
三浦氏はクラフトジンを“ご当地ジン”とも呼ぶ。自由度が高いからこそ、その土地ならではの個性を発揮できる
さらに、クラフトジンはジンツーリズムとして観光にも結びつく可能性を持つという。

「日本であれば、例えば新潟に観光すると、酒蔵を見学して、地酒を飲んで、その土地の食べ物を食べて、地元の人と触れ合い、お土産を買って帰りますよね。同じようにジンを通して、その土地にしかない魅力、価値を発信して、世界中の人々とつながることができると思っています」

国産クラフトジン3選

では、日本にはどんなクラフトジンがあるのだろうか。小針氏にお薦めのブランドを3つピックアップしてもらった。
小針氏に挙げてもらった3ブランド。美しいボトルデザインも魅力的だ
小針氏に挙げてもらった3ブランド。美しいボトルデザインも魅力的だ
国産クラフトジンの先駆け「季の美」(上の写真左端)は、宇治の玉露や柚子、生姜など京都の素材をふんだんに用いた逸品だ。京都にこだわりながらも、ジンの伝統も重視し、本場イギリスの蒸溜家と日本人のチームが設計している。

製造元の京都蒸溜所は、日本から世界へ発信するのにふさわしい場所として、水も良く、素材も豊富な京都を選んだという。世界的な評価が高く、IWSCという世界で一番名誉ある酒類品評会にて、カテゴリー内の最高賞を受賞している。

「香りも良く、柚子が主体ではありつつお茶の要素も感じられます。味も繊細でまろやか。和を感じさせる仕上がりなので、お湯割にして飲むのがお勧めです」

次は広島の蒸溜所、SAKURAO DISTILLERYによるクラフトジン「SAKURAO GIN」(上の写真、中央の2種類)。ロンドンドライジンの伝統的な製法で蒸溜しているため、正統派の味わいが特徴だ。それでいて、牡蠣殻やレモンなど、地元・広島の素材を使うことにもこだわっている。

「国内外のクラフトジンはその多くがマケドニアやイタリア産のジュニパーベリーを使っています。そもそも日本にはあまり自生していないとされている素材なんですが、広島には一部自生しており、『SAKURAO GIN LIMITED』はジュニパーベリーを含めた全て広島県産の素材を使用しているのが大きな特徴です。一方の『SAKURAO GIN ORIGINAL』は、伝統的なジンに近い爽やかな味わいで、トニックウオーターで割るだけでおいしい。『SAKURAO GIN LIMITED』については、何も割らずにストレートで飲むのもお勧めです」

もう一つご紹介したいのは、沖縄発の泡盛ベースの「ORI-GiN 1848」(上の写真右端)だ。1848年創業の泡盛の老舗蔵元、瑞穂酒造が170周年を記念してクラフトジン造りに挑戦した。こちらも地元沖縄産のボタニカルをふんだんに使用しており、特に幻のフルーツといわれている希少なピーチパインを素材にしているのが特徴だ。文字通り桃の香りがするこのパイナップルに加え、シークワーサーなど素材選びにも南国らしさが出ている。

「泡盛の甘さを感じるトロピカルなフレーバーに仕上がっていますが、ジュニパーベリーのフレーバーにも非常にこだわっていて、伝統的なジンをリスペクトしながら個性を打ち出した逸品です。今回ご紹介したなかでは、味のボディがもっともしっかりしているジンだと思います」

では、私たちが家でクラフトジンを楽しむ際は、どんな飲み方をしたらいいのだろうか。「世界的にはジン&トニックがオーソドックスな飲み方ではありますが、やはり自由に飲んでもらうのが一番です」と小針氏は語る。なかでも、日本のジンに関しては、水割りやお湯割りがお勧めだそうだ。

「ボタニカルはそもそも料理に用いられるような素材なので、もちろん料理と一緒にジンを飲むという楽しみ方も最適です。ハーブスパイスを使う料理に合いますよ。また、国産クラフトジンは、柚子など和の素材が香り、まろやかな味を持つので、日本料理に調和します」

飲み手にも造り手にもジンの魅力を発信できる場

三浦氏が発起人となって、2018年より開催しているのがGIN FESTIVAL TOKYO(ジンフェス)だ。日本最大、アジア最大級を誇るこのジンの祭典は、毎年6月第2土曜日のワールド・ジン・デイに合わせ、2日間にわたって催されている。第1回に5,000人を記録した来場者は、第2回の2019年には9,000人にまで増加した。ジンの注目度が加速度的に高まっている証しだろう。

「日本のジンを盛り上げて、世界に紹介していきたい。そして世界のジンを日本の皆さんに知ってもらいたいですね」と三浦氏は語る。

ジンフェスでは、生産者やインポーター、酒販店だけでなく、これからジンを造ろうと考えている人や、バーテンダーなど、国内外の各地から来場するさまざまな人々によって、多くの交流が生まれているという。
三浦氏が発起人となって、2018年より開催しているのがGIN FESTIVAL TOKYO(ジンフェス)
「ロンドンドライジンが築いてきた歴史のうえに、現在のクラフトジンがあるということを伝えていかないと、一過性のブームで終わってしまうと思います。来場者の方々だけでなく、出展者の方々にもそれを伝えたいですね」

もしクラフトジンに興味が湧いてきたら、LiquorPageのほか、三浦氏が主導するジン専門のメディア「craftgin.jp」もチェックしていただきたい。世界にはどんなクラフトジンが存在するのか、そしてどんな人がどのような思いで造っているのか、単にお酒の情報だけではなく、そのカルチャーを知ることができる。

今後、クラフトジンのムーブメントが世界中でどのように発展し、国や言語を超えた人々の交流を生むのか。そして、どれほどの国産クラフトジンが世界へ羽ばたいていくのか。これからも注目し続けたい。
ジンを楽しみたい人にお薦めのレストランが、世界中のジンを約500種類揃える「TOKYO FAMILY RESTAURANT」だ
ジンを楽しみたい人にお薦めのレストランが、世界中のジンを約500種類揃える「TOKYO FAMILY RESTAURANT」だ
GIN FESTIVAL TOKYO:
https://www.ginfest.tokyo

LiquorPage:
https://liquorpage.com

CRAFTGIN.jp:
https://craftgin.jp

TOKYO FAMILY RESTAURANT
〒150-0011 東京都渋谷区東1-3-1 カミニート20 3F
http://www.familyrestaurant.jp
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