ART / DESIGN

百瀬聡文がアンリアレイジと作る木製パーツのライダース─TAKUMI CRAFT CONNECTION-KYOTO Vol.2

2020.01.20 MON
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百瀬聡文がアンリアレイジと作る木製パーツのライダース─TAKUMI CRAFT CONNECTION-KYOTO Vol.2

2020.01.20 MON
百瀬聡文がアンリアレイジと作る木製パーツのライダース─TAKUMI CRAFT CONNECTION-KYOTO Vol.2
百瀬聡文がアンリアレイジと作る木製パーツのライダース─TAKUMI CRAFT CONNECTION-KYOTO Vol.2

挽物師とは、木工ろくろや旋盤を使い、木の椀、皿、鉢、家具の脚など円形のものをつくる伝統工芸職人。いまや数えるほどになった挽物師の一人である百瀬聡文氏が、モード界のトップランナーであり、世界的ファッションブランド「アンリアレイジ」を率いる森永邦彦氏とタッグを組み、新しい概念のライダースジャケットを発表した。

Text by Yuka Tsukano
Photographs by Masuhiro Machida

若き匠たちが異なるジャンルへ飛び込む

日本の伝統工芸を担う若き匠をレクサスが支援する「LEXUS NEW TAKUMI PROJECT」。47都道府県から選ばれた伝統工芸職人たちが、地域から日本全国へ、そして世界へ羽ばたくためのサポートを行ってきた。
建築やファッションなど異なるジャンルの第一線で活躍するクリエイターたちとコラボレーションし、新たな作品を展示した。
「CREATORS connection」では、建築家 隈研吾氏、ファッションデザイナー 森永邦彦氏、プロダクトデザイナー 辰野しずか氏、クリエイティブディレクター 廣川玉枝氏、建築家 谷尻誠氏らトップクリエイターと6名の匠たちによるコラボレーション作品が発表された
昨年11月、3年間におよぶ同プロジェクトの集大成として、クラフトの祭典「TAKUMI CRAFT CONNECTION-KYOTO」を京都で開催。平安神宮 額殿を会場とする「CREATORS connection」では、これまでに支援を受けてきた150名の若き匠のなかから選ばれた6名が、建築やファッションなど異なるジャンルの第一線で活躍するクリエイターたちとコラボレーションし、新たな作品を展示した。

関連記事:レクサスと若き匠が共鳴し合う、CRAFTEDという精神─TAKUMI CRAFT CONNECTION-KYOTO Vol.1

静岡県を拠点に活動する挽物師の百瀬聡文氏と、アンリアレイジのファッションデザイナー、森永邦彦氏は、木製ファスナー、木製スタッズがあしらわれたライダースジャケットを発表した。
木製のファスナーとスタッズが施されたライダースジャケット。左の作品は300%、つまり通常の3倍のスケールとなっている
森永邦彦氏と百瀬聡文氏による木製のファスナーとスタッズが施されたライダースジャケット。左の作品は300%、つまり通常の3倍のスケールとなっている

不変のファッションパーツを刷新したい

静岡県を拠点に活動する百瀬聡文氏は、木工ろくろや旋盤を使い、木の皿など丸いものを製作する挽物師である。2016年の「LEXUS NEW TAKUMI PROJECT」に参加し、富士山の稜線形をモチーフにした計量カップ「ICHIGOU(イチゴウ)」をつくり、高い評価を受けた。
百瀬氏が手掛けた計量カップ「ICHIGOU(イチゴウ)」。富士山の稜線形をモチーフに、檜を静岡産のお茶で染めている
百瀬氏が手掛けた計量カップ「ICHIGOU(イチゴウ)」。富士山の稜線形をモチーフに、檜を静岡産のお茶で染めている
2019年初頭、トップクリエイターと匠のコラボレーション企画「TAKUMI CRAFT CONNECTION-KYOTO」の募集を知り、百瀬氏は挑戦を決めた。エントリーした理由は、「何とかして挽物を世の中に広げたいと思ったから」だと百瀬氏は言う。

「年齢が近いアンリアレイジのデザイナー森永邦彦さんなら、コミュニケーションがとりやすく、自分にとって面白いことができると確信しました」
アンリアレイジのデザイナー、森永邦彦氏(左)と挽物師の百瀬聡文氏
アンリアレイジのデザイナー、森永邦彦氏(左)と挽物師の百瀬聡文氏
一方、コラボレーションを引き受ける森永氏は、「洋服を構成するパーツのなかで、大きさや素材のイメージが固まっているものを変えられたらと以前から考えていました」と話す。

「ファスナーは洋服を脱ぎ着する上で重要なパーツですが、金属製で大きさも決まっています。唯一変わらないファスナーを変えてみたいと思いました」
木製であることが信じられないほど精緻に仕上げられたファスナー
木製であることが信じられないほど精緻に仕上げられたファスナー
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森永氏からのリクエストは、「開け閉めができる300%大の木製ファスナー」。2019年春から、百瀬氏の挑戦が始まった。

激減する挽物師の道を選んだ理由

木を扱う工芸は多々あるが、挽物師という現代では珍しい職をなぜ百瀬氏は選んだのか。そのルーツは子ども時代にあった。

「幼い頃、親はテレビをあまり見せてくれないし、ゲームも買ってくれませんでした。だから自分で遊びをつくるしかなかった。どうやって友達を公園に連れ出すか、自然の中にあるものを使って、遊びを日々考えていました。ものづくりの精神はこの頃に育まれたのだと思います」

プロダクトデザインの専門学校で学ぶうちに、ガラスや金属よりも木工が好きなことを知った。

「当時、木と言えば家具職人だと思っていました。静岡は挽物で有名なことすら知らなかった」という百瀬氏だが、卒業後は静岡の挽物師に師事することに。次第に挽物が自分に向いていることに気がついた。
2015年に設立した工房「挽物所639」にて、作品づくりに励む百瀬氏
2015年に設立した工房「挽物所639」にて、作品づくりに励む百瀬氏
「挽物師は、木を削る刃物や道具を、自分で鋼を叩いてつくります。自分で刃物がつくれなければ挽けないし、刃物には微妙な仕上げが求められる。そういう細かなところにはまっていきました」

2015年に独立。屋号に掲げる静岡市内の639番地に、「挽物所639」を設立した。

初めての木工ファスナー

「TAKUMI CRAFT CONNECTION-KYOTO」の企画で百瀬氏が初めてつくることになった木製ファスナーは、挽物技術でつくれるものではない。挽物師の百瀬氏にとって全く新しい木工のチャレンジだった。

ファスナー用に選んだ木材は、粘り強いメープル材。まずはファスナーの開閉の構造を理解し、パーツをつくる日々。その道程は未開の地を切り開く如く、失敗の連続だった。

「1000個以上のファスナーをダメにしました。何度も挫折しそうになったところを、挽物所639のチームと家族に支えてもらいました」
「森永さんの仕事ぶりを間近で見て、トップクリエイターは寝る間も惜しんでこんなにも攻めるのだと驚きました」と百瀬氏
「森永さんの仕事ぶりを間近で見て、トップクリエイターは寝る間も惜しんでこんなにも攻めるのだと驚きました」と百瀬氏
半年かけて、会期の1カ月前にようやく試作品が完成した。

「木工のファスナーづくりという新たな挑戦によって、物事をクリアする力が備わったと思います。技術的にも精神的にも振り幅が広がりました」 

ファスナーの試作ができあがる頃、森永氏サイドはライダースジャケットのデザイン案を完成した。森永氏は「挽物でしかつくれない木製のスタッズを追加で製作できないかと相談しました」と語る。

1カ月間に百瀬氏は300個近い木製スタッズを仕上げ、11月末に平安神宮での展示を無事に迎えた。
「百瀬さんは本当にすごかった。どんどんつくるものを追加していったけれど、すべて仕上げていただきました」と森永氏
「百瀬さんは本当にすごかった。どんどんつくるものを追加していったけれど、すべて仕上げていただきました」と森永氏

お客さまに思いを馳せるものづくり

百瀬氏がものづくりのなかで大切にしている信条がある。

「何個も何個も、同じ形のものを高いクオリティでつくってこそ職人だと思っています。同じものを1000個つくるときに、1個うまくいかなかったとします。でも、1000分の1だからまぁいいかな、ということは絶対にありません。お客さまに渡ったとき、それは1分の1だからです」

お客さまの使うシーンに思いを馳せてものづくりをする。まさにレクサスの掲げる「CRATED」の精神である。

故郷である静岡の木材を使いたい気持ちはある。「でも、お客さまのことを考えたら、同じ値段で仕入れられる最良の木材を使います。もっと静岡の木材を使いたいから、ゆくゆくは静岡の林業にも携わりたいと思っています」

挽物の可能性と未来

戦後の静岡では、胡椒挽きをメインに挽物の盛況な時代があった。機械で量産した結果、手仕事ができる職人が激減。少量多品種が求められる時代に変わると、静岡の挽物自体が衰退してしまった。

「手で挽ける技術を大事にすれば廃れなかったと思います。アナログの部分を大事にした上で、AIや3Dプリンターなど最新技術を取り入れていきたいと考えています。挽物の可能性はつくるしかない。同時に、若い人たちを育てていかなければならない。チャレンジを続け、新しい世代とぶつかり合うことで、新しい挽物が生まれてくるのではないでしょうか」
今回、木工のファスナーづくりという新たな挑戦によって、物事をクリアする力が備わったと百瀬氏は語る
今回、木工のファスナーづくりという新たな挑戦によって、物事をクリアする力が備わったと百瀬氏は語る
さらにこう続けた。

「今はレクサスさんが伝統工芸を応援してくれているいい時代です。こういうときに力をつけておかないといけない。いま皆が切磋琢磨すれば、伝統工芸の未来は明るいと思っています」

挽物師として自身の置かれた状況を見据え、柔軟な発想と確かな技術でチャレンジを続けていく百瀬氏。日本全国にいる若き匠たちは「ライバルではなく仲間だ」という。志を同じくする仲間たちとともに、これからも静岡から世界へと発信を続けていく。

■TAKUMI CRAFT CONNECTION - KYOTOイベントレポート
https://lexus.jp/brand/new-takumi/craft-connection-kyoto/report.html

■CRAFTED FOR LEXUS
百瀬氏のオリジナルブランド《SEE SEE》が作るレクサスオリジナル、スピンドルトレイ
https://lexus.jp/brand/intersect/tokyo/crafted-for-lexus/#tray15

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ご回答いただきありがとうございました。

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