VISIONARYMAGAZINE BY LEXUS

CRAFTSMANSHIP

特殊性と多様性をデザインの糧とする
建築家・重松象平の哲学

2019.11.18 MON
特殊性と多様性をデザインの糧とする建築家・重松象平の哲学

世界的建築設計事務所OMA(Office for Metropolitan Architecture)のパートナーであり、ニューヨーク事務所の代表を務める重松象平氏。アメリカを拠点としてグローバルに活動する重松氏は、次世代を担う全世界のクリエイターを対象とした国際デザインコンペティション「LEXUS DESIGN AWARD」のメンターという顔をももつ。今回は、その重松氏に建築への想いや、LEXUS DESIGN AWARD が若手クリエイターのキャリアに与える意義について聞いた。

Text by Rie Noguchi
Photographs by Ari Takagi

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特殊性と時代性

OMAのパートナーであり、現在はニューヨークをベースに活動する重松象平氏。これまでにコーネル大学建築芸術学部新校舎、 コーチ表参道フラッグシップストア、ケベック国立新美術館新館などの建築から、クリスチャン・ディオール70周年記念展の会場デザインなど、その仕事は多岐にわたる。重松氏にとって、建物、展覧会などジャンルを超えた仕事を手がけるにあたり、共通して「大事にしているもの」は何だろうか。
ニューヨークをベースに活動する重松象平氏
「建築では敷地、クライアントなどの条件が毎回異なるので各プロジェクトのコンテクストからできるだけ“特殊性”を汲み取り、建築デザインに反映するようにしています。著名な建築家は強い作家性をもち、デザインのアイデンティティが伝わりやすい特定のスタイルを確立している場合が多いと思いますが、僕が大事にしているのは、自分の作家性や言語を押し付けすぎずに、最初からアウトプットの可能性を自分の経験則や好みの範囲内に限定しないことです」

「そうするには、まず初めにプロジェクトを取り巻く環境を多角的にリサーチして、そのプロジェクトが持つユニークな情報を抽出できるまで、デザインを始めないことが大事です。すぐにデザインを始めてしまうと、どうしても自分の知っている範疇で解決してしまうので、新しいものが生まれづらい気がします」

これまで中国中央電視台新社屋、メキシコ独立200周年記念タワーなど、時代を象徴する高層タワーも手がけているが、作家性を出すことよりも、土地や施主がもつ特殊性と合わせて、「時代性」を読み解くことも重要だという。

「日ごろからいろいろな分野に興味を持ち社会の変化にアンテナを張り、建築が進化する兆しを見逃さないように観察をすることが大事だと思っています。つまり建築以外のことを注視するということです。時代性とはなかなか表現しようとしてもできるものではないと思いますが、おおまかにいうと気候や社会の変化、テクノロジーの進化などによって生じる人々のふるまいの変化を丁寧にくみ取っていくことから表現が始まると思っています」
“特殊性”を汲み取り、建築デザインに反映

現実からつながる未来を

建築は私たちが生きる未来の都市を作り出す。この「未来」について、重松氏に尋ねると「未来は今、不安しかない。だから未来を考えすぎないようにしている」と答えた。未来を考えすぎない、とはどういうことなのだろうか。

「『海面の水位が上がるからこういう都市を作りましょう』というような、環境破壊によって生まれるディストピアを利用して新しい建築のビジョンを押し付けるのは好きではないです。でも建築も都市もデザインしなければならない。どうにかしてもっと積極的で根本的な解決ができないのか。そういうことを漠然と考えています。建築だけでは到底解決できないでしょうが、でもネガティブな変化もポジティブな変化も変化は変化。双方に対峙していけば、それが未来につながっていくと信じています」

未来は、もはや以前のようなユートピア的幻想ではない、と重松氏は説く。だからこそ現代が抱える変化や問題点を丁寧に拾い、それが建築や都市にどういう影響を与えていくかを突き詰める。その先に自ずと未来が出現する、というのである。
未来の都市を作り出す

国際人として生きる

幼少期の1年半程度をアメリカで過ごし、九州大学からオランダ留学をして以来、海外で活躍を続ける重松氏。日本人が海外で活躍するうえでの難しさを感じることはあったのだろうか。

「日本人としてというわけじゃないかもしれませんが、国際社会での歴史に対するスタンスやアイデンティティの感じ方はとても多様で、無知が故に戸惑うところが多々ありましたね。ご存知のようにヨーロッパは多様な文化が、ひとつの地域にとてつもなく長い時間をかけて集まっているので、日常会話にもデザインの議論にもいろいろなニュアンスがある。アメリカも多民族国家ですし、独自の社会的ルールみたいなものがあります。さらに国土が大きいので場所によってその文化も違います。安易なグローバル化が終わろうとしている昨今、海外と日本、グローバルとローカル、都市と地方、そういう形骸化された二元論的関係を再考してもっと子細に深く読み取るよう努力しています」

日本を出てから23年の月日が経過した今、重松氏は、自身のアイデンティティをどこに定めるのかを考える機会も多いという。

「グローバルコミュニティに入ると、世界に隔たりはなくなりますが、その分、自分のコアとなるアイデンティティが失われてしまう、そんな気がします。だから僕はいまニューヨークを “最終的に骨を埋める都市”と位置づけて活動しています。これから建築を続けていくうえで、自分が生まれた国や地域でなくても自分のアイデンティティを意識できる場が必要だと感じています」

そんな重松氏は、故郷である日本でも福岡の「天神ビジネスセンター」(2020年竣工予定)、東京・虎ノ門の「虎ノ門ヒルズステーションタワー」(2023年竣工予定)も手がけている。建築を考える際に日本人であることを特に意識しないというが、日本でのプロジェクトに関しては、「日本を分かっているからこそできた」とも話す。
「天神ビジネスセンター」と「虎ノ門ヒルズステーションタワー」
「虎ノ門のプロジェクトでは、新虎通りという新しい都市の軸線に対して、その軸線をいかに引き延ばして敷地を超えた継続性をつくるか、そしてそれと同時に軸線の通り内に発生するアクティビティをいかに建物に立体的に引き込むかということを考えました。東京という都市の構造には西洋的な軸線の概念はあまりありません。なので、軸線というある種特異なものと周辺の有機的な東京の街並みをうまく繋げてみたいと思ったんです。また、地下鉄の駅と建物同士を繋ぐブリッジを一体化するデザインの提案は、東京の人々の都市における立体的な動線に対するリテラシーの高さを理解していたからこそできたものだと思います」

また、福岡の天神ビジネスタワーも“地元”であるからこそ見えてくるものがある。しかし、そこでもあえて、自分を真っ白にして取り組み、その土地の特殊性を汲み取ることは常に意識しているという。

LEXUS DESIGN AWARD で多様性に触れる

重松氏がメンターを務めるLDAは、国際的なデザインコンペティションであり、2019は世界65カ国/地域から1548点の応募があった。

この年に初めてメンターを務め、今回で2年目の参加となる重松氏は、世界での活躍を望む若手デザイナーに対して、LEXUS DESIGN AWARDがもつ意義を次のように説明する。

「海外に出て触れることができる多様性は、デザイン業界でも建築業界でもプラスに働くものです。たとえ言語やコミュニケーションに問題があったとしても、異なる文化や考え方に触れることで自分の視座やアイデンティティを見つめなおすことができてたくさんのインスピレーションを得ることができます」
LEXUS DESIGN AWARDのデザインコンペティション
重松氏自身、もし海外に出ていなかったら現在と同等のキャリアを成し遂げていたか分からないという。例えば、日本で高層ビルを手がけるためには大手ゼネコンや組織設計事務所に所属していないとなかなか難しい。さらに、たとえそのような大手に所属していても個人の名前で勝負させてもらえる機会は多くはない。重松氏も「海外に出て継続して国際的に活動してきたからこそ、このように自分の名前で大きな仕事ができる機会を得た。日本という場所にこだわっていたら、このようなチャンスには恵まれてなかったと思う」と回想する。

このインタビューの最後を結ぶに当たって重松氏は、LEXUS DESIGN AWARDが持つ意義を次のように語った。

「LEXUS DESIGN AWARDを自分の作品を発表する場というだけでなく、同世代のデザイナーやメンターたちがもつ多様な文化、考え方に触れ、自分を成長させる場としても生かして欲しいですね」

経験豊富な建築家・デザイナー陣から多角的なアドバイスを受け、ミラノデザインウィークに自身の作品を展示するという大きなチャンスを得られるLEXUS DESIGN AWARD。国際人として、世界のクリエイティブ業界を舞台に活躍するという目標に向かう、大きな第一歩となるのが、まさしくこのLEXUS DESIGN AWARDであるといえるだろう。
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