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CULTURE

「チキンラーメン」によって誕生した即席麺を、現代の“完全食”としてアップデートする

──「All-in PASTA」

2019.11.13 WED
「チキンラーメン」によって誕生した即席麺を、現代の“完全食”としてアップデートする──「All-in PASTA」

日清食品初の“完全栄養食”となる「All-in PASTA」が、2019年3月の発売以来、好評を博している。「チキンラーメン」に代表される即席麺を、現代の日本人が求める形にアップデートしたものだ。栄養価だけでなくおいしさにもこだわったという同商品の、誕生の秘密に迫る。

Text by lefthands
Photographs by Isamu Ito(lefthands)

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栄養と味の両立

人間が必要とする栄養をそれ一つで摂取することができる“完全栄養食”は、シリコンバレー発の「ソイレント」に端を発して、ベンチャー企業を中心に開発が進んできた。だが、大きな課題として指摘されてきたのは、味と栄養のバランスをどう取るかだ。より多くの栄養を求めれば味が落ち、味を良くすれば栄養の面で完全ではなくなってしまうことが多い。このジレンマを解消するべく、さまざまな創意工夫を凝らした商品が誕生し続けている。

そうしたなか登場したのが、日清食品の「All-in PASTA」だ。即席麺のパイオニアは、栄養だけでなく味にもこだわった完全栄養食を誕生させた。その狙いについて、ブランドマネージャーの佐藤真有美氏は以下のように語る。

「栄養不足を補える、おいしい商品を作りたいという目的がありました。栄養と味が両立できれば、ターゲット層が広がると考えたからです」

完全栄養食に対する世間の認知と関心はまだ十分でなく、市場も開拓中であったため、販売は自社のオンラインストアとLOHACOに限定している。それにもかかわらず、「All-in PASTA」は発売直後から注文が殺到し、用意していた約2カ月分の在庫が5時間で売り切れたという。

予想を超える大きな注目を集め、現在もその勢いがまったく衰えていない「All-in PASTA」の秘密とは?

関連記事:健康義務から人類を解放する、完全食「COMP」の狙い / 麺やパンを完全栄養食に──「BASE FOOD(ベースフード)」が巻き起こす主食のイノベーション

現代の栄養不足を救う完全栄養食

日清食品といえば、何と言っても創業者、安藤百福が1958年に発明した「チキンラーメン」が有名だ。実は、発売当初、そのパッケージには“最高の栄養と美味を誇る完全食”と記されていた。戦後の食糧難で飢えに苦しむ人が多くいた時代に、「やっぱり食が大事。食がなければ、衣も住も、芸術も文化もあったものではない」と食の大切さを痛感した安藤が、1日平均4時間という短い睡眠時間で丸1年間、たった一人で1日の休みもなく研究を続けて生み出した。

では、なぜ現代において日清食品は完全栄養食を世に送り出すこととなったのか。そこにはこの時代ならではの課題に取り組もうとする姿勢があった。
「おいしく、簡単に、すべての栄養を」というコンセプトは、創業者、安藤百福の理念に合致するものだ
「おいしく、簡単に、すべての栄養を」というコンセプトは、創業者、安藤百福の理念に合致するものだ
「現代では、カロリーは足りているのに栄養が足りていない新型栄養失調などが問題視されています。また、そもそも自身に必要な栄養素が何なのか分からないという方も多いのではないでしょうか。そこで、1食の食事で日ごろの栄養不足が補える商品を作りたいと考え、開発をスタートしました」

佐藤氏によると、現代人は脂肪と炭水化物、塩分以外のほとんどの栄養素が足りていないという。そんな新しい形の栄養不足を解決するために開発が進められた「All-in PASTA」は、2019年3月27日に発売となった。
「早く発売したかったが、試作に試作を重ねたため想定より時間がかかった」と語る佐藤氏
「早く発売したかったが、試作に試作を重ねたため想定より時間がかかった」と語る佐藤氏
「All-in PASTA」は大きく分けて、袋麺とカップ麺の2タイプあり、それぞれ3種類のソースが用意されている。ボロネーゼ、ジェノベーゼ、アラビアータだ。栄養素を配合したパスタに合うように設計されており、このソースを用いるのが便利だが、もちろんソースを自作するなどアレンジしてもいい。
カップタイプは、お湯を注ぎ、湯切り後にソースを絡める。お湯を注ぐだけの手軽さは忙しい時に最適だ
カップタイプは、お湯を注ぎ、湯切り後にソースを絡める。お湯を注ぐだけの手軽さは忙しい時に最適だ
ところで、なぜラーメンではなくパスタという形で完全栄養食を発売したのかと、疑問に思う読者もいるのではないだろうか。その理由について、佐藤氏は以下のように語る。

「All-in PASTAはオフィスでのランチといったシーンで召し上がっていただくことを想定しています。デスクで食事することを考え、まずスープを使う商品を候補から外しました。また、焼そばはどうしても匂いが強く、食べるときに周囲が気になります。そこで、男女問わず人気の高いメニューであるパスタに決めました」

“完全食”にとって不可避の問題を解決する「栄養ホールドプレス製法」

開発には2年を要したと、佐藤氏は述懐する。商品設計やブランディングにも半年ずつかかったが、特に苦労したのは麺の開発で、1年もの時間を費やしたという。栄養の担保、製麺性、味という三つの課題をクリアする必要があったからだ。

麺はゆでる必要があるが、ビタミンやミネラルなどの栄養素はゆでることによって湯に溶け出してしまう。それは生鮮食品であっても加工食品であっても不可避だ。また、当然ながら時間の経過で劣化したり失われてしまう栄養素もある。保存性が求められるAll-in PASTAの賞味期限は8カ月で、8カ月後にゆでて食べても麺の中に含まれる栄養の量が1日に必要な栄養の1/3の量に保たれるよう、原材料を厳選しなければならなかったという。

次に、製麺性の問題がある。一般的な即席麺は、小麦粉のグルテンが持つ伸縮性によって1本の麺につながるのだが、All-in PASTAは小麦粉のほとんどを栄養素に置き換えている。栄養素は結着性が低いため、そのままでは麺としてまとまらないのだ。

そこで開発された新技術が「栄養ホールドプレス製法」だ。麺の中心に栄養素を閉じ込め、外側を小麦粉で覆う重層構造で製麺している。「日清ラ王」などの既存商品で培われた技術を応用した製法のため、製造ラインを新たに立ち上げる必要がないというメリットもあったという。
麺の断面。色が濃くなっている中心に栄養素が閉じ込められている麺の断面。色が濃くなっている中心に栄養素が閉じ込められている
麺の断面。色が濃くなっている中心に栄養素が閉じ込められている
また、栄養ホールドプレス製法によって、味の問題も解決することができた。栄養素を麺の中心に閉じ込めることで、口に含んだ際に感じる栄養素のえぐみや苦味が軽減されるからだ。これまで多くの完全栄養食に付きまとってきた味と栄養のジレンマは、このような仕組みによって解消されることとなった。

満を持してリリースした「All-in NOODLES」

All-in PASTAのターゲット層は、当初、30〜40代男女のビジネスパーソンを想定していたと佐藤氏は語る。

「購入されているお客さまのなかで30代の男性が圧倒的に多いことが分かりました。次に多いのが20代と40代の男性で、男性のお客さまの割合が非常に高いことに驚いています。また、ネットやSNSで積極的に口コミしてくださるのも、若い男性が多いように思います」

逆に、利用シーンに関しては、想定どおりオフィスで食べているという声が多く寄せられている。つまり、職場で手軽なランチとして食べる働き盛りの男性が購入者のメイン層ということだ。

All-in PASTAの人気を受け、8月19日には中華麺タイプの「All-in NOODLES」が発売された。販売開始時点では、「油そば」「トムヤムまぜそば」「担々まぜそば」の3種類をラインナップ。それぞれラー油、パクチー、練りごまを用いることで香りを引き立たせているが、強い匂いになりすぎないよう工夫がなされている。All-in PASTAと同様、オフィスで食べることを想定した配慮だ。

まぜそばにした理由について佐藤氏は、All-in PASTAと同じくオフィスのデスクで食べることを想定して、スープを使わないタイプの商品にしたほうがよいと考えたからだと語る。「麺にすべての栄養素を配合しているのですが、スープがある商品だと、スープをすべて飲まないと栄養素を摂取しきれないような印象を与えかねません。“1食で必要な栄養素を摂取できる”というイメージを崩さないためにも、今回は“まぜそば”というスタイルを採用することにしました」。
練りごまを用いたタレと別添の花椒をきかせたスパイスをかけて食べる「ごま香る濃厚担々まぜそば」
練りごまを用いたタレと別添の花椒をきかせたスパイスをかけて食べる「ごま香る濃厚担々まぜそば」
創業以来、人々の食を豊かにしてきた日清食品は、即席麺をアップデートした「その後」にはどのような発展を遂げていくのか。そして、食に溢れていながら、新型栄養失調や生活習慣病などを多くの人々が抱える現代社会において、完全栄養食の登場が食文化をどう変えていくのか。これからも食の未来に注目していきたい。
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