SPORT

ここまで進化した、スポーツライドが楽しめる
電動アシスト自転車「e-bike」の現在形

2019.11.11 MON
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ここまで進化した、スポーツライドが楽しめる
電動アシスト自転車「e-bike」の現在形

2019.11.11 MON
ここまで進化した、スポーツライドが楽しめる電動アシスト自転車「e-bike」の現在形
ここまで進化した、スポーツライドが楽しめる電動アシスト自転車「e-bike」の現在形

今、欧州をはじめとする世界各国で、電動アシスト自転車へのニーズが生活密着型からスポーツ型「e-bike」へと広がりつつある。認知が高まるにつれ、そのスタイルはシティライドからスポーツアクティビティへと広がっているようだ。

Text by Yuka Ishizumi
Photographs by Yukimi Nishi
Edit by Mine Kan

スポーツアクティビティとして“使える”電動アシスト自転車

ドイツを中心に人気を博しているスポーツ型の電動アシスト自転車、通称「e-bike」。国内ツーリズムを楽しむユーザーの増加に伴い、e-bikeが新たなアクティビティとして市民権を獲得している。

日本で一般的に電動アシスト自転車といえば、いわゆるママチャリと呼ばれる形のものやシェアサイクルなど、生活密着型のイメージが根強い。だが、近年さまざまなブランドが本格的にクロスバイク、マウンテンバイクなどスポーツユース・モデルを展開している。

世界最大の電動アシスト自転車市場であるヨーロッパでも、その高い性能とデザイン性で評価を得ているブランドが「BESV(ベズビー)」。そもそも、e-bikeと電動ママチャリの明確な境界線はどこにあるのだろうか。BESV JAPAN代表の澤山俊明氏によると、モーターの出力トルクや、変速機のグレード、さらにスポーツライドに適したフレーム設計などが異なり、「使う目的は何か」でその呼称が決められるという。
150mmのストローク(作動量)を持ち、路面からのショックを吸収するサスペンションを備えている
150mmのストローク(作動量)を持ち、路面からのショックを吸収するサスペンションを備えている
「ヨーロッパの中でも、オランダは世界で最も自転車保有率が高く、1人で2台以上保有しているのが一般的ですが、主に通勤、買い物など、実用性の高いダッチバイクと呼ばれるものや、運搬用のカーゴバイクなど、アクティビティではなく移動を主とした、モビリティの要素が強い。

一方、ドイツではここ3年ほど、マウンテンバイクタイプのe-bikeが伸びている傾向がある。ドイツでは電車にそのまま自転車を持ち込むことができるため、電車で30分移動して、駅を降りればもう森の中、というシチュエーションが一般的で、スポーツアクティビティとしての需要があるんです」

e-bikeの普及により、ドイツではサイクリングが夏場の“旅”として定着。電動アシストのおかげで体力や脚力差のある夫婦やカップル、親子でのサイクリングが楽しめ、厳しい峠越えやロングツーリングも可能になったことが人気の背景にある。一方、体力もありスポーツとしてライドしたい若い世代にe-bikeが物足りないのかというと、そうでもないらしい。

「電動アシストはあくまでサポートの役割。峠を越えるのはある程度の体力も必要なので登りきった達成感はe-bikeにも一般のロードバイクと同じようにあります」と澤山氏。では具体的にモーターはどのようにサポートするのか。それは電動アシストのメカニズムを知ると想像できるはずだ。

「さまざまなタイプのモーターがありますが、基本的にはペダルを踏む力を感知するトルクセンサーと、ペダルの回転数を感知するクランク回転センサー、そしてスピードセンサーの3つで制御しています。

日本の法律で自転車として公道を走行可能な電動アシスト自転車は、あくまでペダルを漕ぐことによってモーターが駆動し、速度域ごとに法律で定められた電気出力量を制御できるもののみになります。かつて日本でも問題になりましたが、アクセルやボタンで動くものは原付バイク扱いになるので、ナンバープレートや、ウィンカーライトなどの部品、また自賠責保険の加入などが必要となります」

日本ではサポートする電気出力が厳密に決められ、1〜10km/hまでは動力の200%、つまり人力に対して2倍の力でアシストすることが可能。10km/hを超えると200%から徐々に下がり、24km/hに達すると電力のサポートは0%にしなければならないと定められている。

マウンテンバイク型e-bikeでオフロードを駆ける未来へ

BESVは台湾発祥の新生ブランド。台湾は日本の自転車製造技術を輸入したところ世界有数の自転車生産大国となり、今では全世界で生産されるフレームの6〜7割を占めている。また、流れるようなシルエットが美しいデザインはドイツで工業デザインを学んだ専属デザイナーによるもの。

「通常、e-bikeにはエコモード、ノーマルモード、パワーモードなど段階があり、アシストモードを弱くすれば、電気出力が減るので、ライダーの人力が必要になる分、電力でのアシスト可能距離が伸びます。

それに加えてBESVにはオリジナル制御システムの“スマートモード”があります。これは、ライダーのペダルトルクを瞬時に感知し、そのトルクが常に一定で快適なゾーンでペダリングできるように電気出力をコントロールするプログラムなので、勾配のありなしにかかわらず常に一定のペダリング負荷で漕ぐことができます」
バッテリーはダウンチューブに格納し、スマートなデザインを実現
バッテリーはダウンチューブに格納し、スマートなデザインを実現
海外のe-bikeには、GPSを搭載する盗難防止システムを取り入れたり、スマートフォンから自転車をロックできる機能を採用したりと、自転車の“スマートバイク化”もトレンドとなっている。

こうしたさまざまなスタイルのe-bikeが生まれる中で、目下、ヨーロッパで伸びを見せているのはマウンテンバイク型なのだという。

「ツールドフランスをはじめ、世界的にもロードバイクが人気のスポーツとしてあるのは事実ですが、ロードバイクの命題はいかに軽量化するかということ。一方、e-bikeは重量のある電動ユニットが必要なので、ロードバイクとe-bikeは基本的には相いれないものなんです。

一方、マウンテンバイクの目的は軽量化やスピードではなく、起伏のある道をいかにスムーズに走れるかということ。そこに電動のメリットが最大限に活かされるのです。e-bike市場でマウンテンバイクタイプが伸びている理由はそこにあるでしょう」

日本における自転車のムーブメントを辿ると、1990年代に悪路を走破するマウンテンバイクが過熱し、2000年代前半には映画『メッセンジャー』のきっかけもあり、スポーツバイクとしてのマウンテンバイクが流行。後半になると、現在は法規制されているブレーキを持たないピスト、2010年代には漫画『弱虫ペダル』に代表されるロードバイクが興隆した。現在はそうした自転車ブームは一段落し、新車販売台数は落ち込みつつある。

そんな状況の中、e-bikeを含む電動自転車の市場が伸びているという。「過去のマウンテンバイク・ブームを復活させようと、その楽しさを体験できる場としてパークを整備したり、景観の良いサイクリングロードを地方に増設する活動が見られます。また、電動タイプのマウンテンバイクを使うことで、年齢に伴う体力の低下を補うことができ、困難な道でも快適に走れると、高齢者の需要が高まってきています」と澤山氏。デザイン性にも優れたマウンテンバイク型e-bikeで山野を駆ける──2020年代にはこうした新たなるムーブメントが見られるかもしれない。

※記事トップの写真は、フルサスオールマウンテン型e-bike「TRS2 AM」

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