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観客動員数を増やし続ける日本プロ野球。
その秘密を横浜DeNAベイスターズに探る

2019.10.18 FRI
観客動員数を増やし続ける日本プロ野球。その秘密を横浜DeNAベイスターズに探る

地上波放送の機会が減少している日本のプロ野球だが、観客動員数は年々増え続けている。特に目覚ましい伸び率を示しているのが横浜DeNAベイスターズだ。同球団でデータ分析によるマーケティング施策を担う経営・IT戦略部の林 裕幸部長にその秘密を聞いた。

Text by lefthands
Photographs by YOKOHAMA DeNA BAYSTARS, Isamu Ito (lefthands)

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年々増え続けるプロ野球の観客動員数

地上波放送の機会が少なくなり、以前のようにテレビで観るコンテンツではなくなりつつある日本のプロ野球。しかし、そういった状況に反比例するかのように、球場を訪れる観客数は年々増え続けている。2018年は、セ・パ両リーグ合わせて前年よりも41万1256人多い2555万719人の観客動員数を記録し、史上最多数を更新。プロ野球はいまこそが人気絶頂期だとも言えるのだ。

その大きな要因として、各球団のファンサービスへの注力が挙げられる。野球ファンだけでなく、野球を知らない人にも球場に足を運んでもらえるよう、球界全体がさまざまな施策を行っているのだ。

特に、横浜DeNAベイスターズは、前身の横浜ベイスターズ時代となる2005年には97万6004人だった年間動員数を2018年には202万7922人まで増やし、球団史上初めて200万人突破に成功。ホームゲーム72試合のうち、大入り満員は69回、チケット完売は52回を記録し、稼働率97.4%を実現させた。2019年も勢いは衰えず、ホームゲーム32試合目で動員数100万人を突破。前年より4試合早い、球団史上最速での達成となった。

スタジアム内外で野球観戦を楽しんでもらえるように

IT企業のDeNA が、TBSより横浜ベイスターズの経営を引き継いだのは、2011年のシーズン終了後。2012年から横浜DeNAベイスターズとして始動した球団は、「コミュニティボールパーク」化構想を当初から掲げてきた。このプロジェクトは、横浜スタジアムを地域のランドマークとして、“野球”をキッカケにさまざまな人々のコミュニケーションを育む公共空間の創造を目指すものだ。

その好例として、夏季にスタジアム脇の芝生エリアで開催されている「ハマスタBAYビアガーデン」が挙げられる。大型ビジョンでベイスターズの試合のパブリックビューイングを行っているため、スタジアムの外でも試合観戦を楽しむことができるのだ。観戦席の稼働率が97%超という人気ゆえ、チケットの売り切れという問題を考慮しての取り組みだ。
ビアガーデンには、観客だけでなくオリジナルビールを目的に訪れる人も多い ⓒYDB
ビアガーデンには、観客だけでなくオリジナルビールを目的に訪れる人も多い ⓒYDB
野球ファンだけでなく、野球に触れたことのない人にも球場に足を運んでもらい、観戦を楽しんでもらうために、球団はさまざまなサービスを試みてきた。特に、IT企業の強みを活かして、観客データの分析に力を入れてきたという。

どのような人が来場し、なかでもどのような層がリピーターとなるのか。分析の結果、集客のメインターゲットを20代後半〜30代の男性に定めた。独自に「アクティブサラリーマン」と名付けたこの層は、仕事帰りに飲みに行ったり、休日に友人たちとアウトドアやスポーツを楽しむ、文字どおりアクティブな働き盛りの世代だ。さらに、林氏は、もう一つ大きな要因があると述べる。

「この年代は、横浜ベイスターズの日本一や横浜高校の甲子園春夏連覇で横浜が野球に沸いた1998年を学生時代に経験しています。野球の面白さを知らない人に直接アピールして球場に足を運んでもらうのはハードルが高いと思うので、まずこの年代に野球の楽しさを再発見してもらおうと考えました」

アクティブサラリーマンは、職場、学生時代の友人、あるいは家庭など、さまざまなコミュニティに属していて、かつそれらのコミュニティの中で積極的に活動する層だ。

「では、どのような球場作りを行えば、アクティブサラリーマンが野球を知らない人たちを誘って球場に来ていただけるようになるのか。そのように考えた結果、『コミュニティボールパーク化』構想が生まれたのです」
「アクティブサラリーマンが、野球を知らない人たちが来場するきっかけを作ってくれました」と林氏は語る
「アクティブサラリーマンが、野球を知らない人たちが来場するきっかけを作ってくれました」と林氏は語る

初めて野球に触れる人でも楽しめる球場作り

横浜DeNAベイスターズは、2016年1月に横浜スタジアムに対し友好的TOBを成立させ、傘下におさめた。そのメリットは、オリジナルのフードやドリンクを球場で提供できるようになったことにあるという。
中華街の老舗「江戸清」と共同開発した「ベイ餃子」はビールに合う味。焼きたてを提供している ⓒYDB
中華街の老舗「江戸清」と共同開発した「ベイ餃子」はビールに合う味。焼きたてを提供している ⓒYDB
例えば、野球観戦といえばビールを片手に、というイメージを持つ人は多いかもしれない。常に試合が動き続けるサッカーなどのスポーツとは違い、野球はワンプレーごとに間が生じるため、食事をしながら観るという観戦スタイルに適している。試合時間が3時間を超えることもあり、またナイターでの試合が多いので、観客のアルコールやフードへのニーズが高い。そのため、球団はオリジナル醸造ビールなど飲食の開発にも注力してきたのだ。
オリジナル醸造ビールは、ラガーとエールの2種類 ⓒYDB
オリジナル醸造ビールは、ラガーとエールの2種類 ⓒYDB
女性や子ども向けのイベントを行ったり、フードに力を入れた結果、仕事帰りに同僚を伴ったり、休日に家族連れで訪れる観客が増加した。特に、女性客の増加は目覚ましく、現在では男女比がおよそ6:4だという。老若男女を問わず、初めて野球を観る人でも楽しめる場となった結果、横浜スタジアムは驚異の観客動員数を誇るようになったのだ。

球団が行っているさまざまな施策のなかでも、最も力を入れているのが夏の一大イベントとして行われる「YOKOHAMA STAR☆NIGHT」。この期間中は、特別にデザインされたユニフォームを選手のみならずファンも着用して試合に臨むイベントで、スタジアムだけでなく、近隣の駅や商業施設などで働く人も同じデザインのユニフォームを身に着け、街全体が一体となって盛り上がる。
球場が青一色に染まるさまは圧巻だ ⓒYDB
球場が青一色に染まるさまは圧巻だ ⓒYDB
横浜DeNAベイスターズ誕生初年度の2012年から行われているこのイベントは、花火や光の演出など、観客を楽しませる仕掛けが毎年随所に施されており、2019年はドローンを用いた演出が好評を得たという。
前身の大洋ホエールズ時代を含めて、球団創設70年の今年。ドローンが空中で“70”を描いている ⓒYDB
前身の大洋ホエールズ時代を含めて、球団創設70年の今年。ドローンが空中で“70”を描いている ⓒYDB

さまざまな観戦形態の提供

一方で、横浜DeNAベイスターズは、誕生当初からニコニコ生放送など、ネットでの試合中継を積極的に行ってきた。この点に関して、林氏は「球場観戦とネット観戦は良い補完関係になっています」と語る。

「球場に来られない日にネットで観戦していただいたり、あるいは、球場に訪れたことのない人に、まずネットやテレビで観戦していただいて、ベイスターズや野球に親しみを持っていただければと考えています」

これは、神奈川を離れて遠方で暮らしているなどの理由で、横浜スタジアムを訪れることのできないベイスターズファンに、観戦の機会を持ってもらう狙いもあるという。そのようなファンへの施策として、ECサイトで取り扱うグッズや、オフィシャルサイトの有料コンテンツでチームの裏側を公開するといったネットコンテンツの充実も図られている。

ベイスターズは2017年にセ・リーグのクライマックスシリーズ(注)を勝ち抜き、日本シリーズに進出したが、ビジター戦では横浜スタジアム内のセンターカラービジョンを使ったパブリックビューイングが開催された。特に、日本シリーズ進出を決めたクライマックスシリーズ・ファイナルステージ第5戦では、会場に入りきれないほどの観客が詰めかけたという。

横浜DeNAベイスターズが提供しているユニークな観戦形態として、もう一つ注目すべきは、スタジアムを飛び出し、街中で新たな観戦体験を提供するライブビューイングイベント「BAYライブビューイング」だ。先述した夏の一大イベント「YOKOHAMA STAR☆NIGHT」の試合を、球場外でも楽しんでもらうため、ホテルなどの会場にゲストを招いて、そこでしか聞くことができない試合解説などスペシャルイベントを用意。新たなエンターテインメントとして、スタジアムとは一味違う観戦体験を提供している。

街全体が毎日スポーツで盛り上がる環境作り

スタジアム外での新たな観戦体験については、現在、近隣の商業施設やレストラン、ホテルでも実施されている。「コミュニティボールパーク」化構想を進化させ、2017年より展開している「横浜スポーツタウン構想」は、スタジアムの中だけでなく、スポーツの力で、街全体ににぎわいを創出することがテーマだ。
2018年にホテル横浜ガーデンで行われたライブビューイングの様子 ⓒYDB
2018年にホテル横浜ガーデンで行われたライブビューイングの様子 ⓒYDB
「球場は改修を重ね、2020年には収容人数を約3万5000人にします。もちろん、増席には限界がありますが、球場の外に野球観戦の場を増やしていくことはできます」

さらに、横浜DeNAベイスターズがその先に見据えているのは、野球だけでなく、スポーツ産業そのものを街に生み出し、根付かせ、拡げることだ。

「ホームゲームは70試合程度ですが、ビジターも含めれば143試合あります。それだけでなく、プロ野球以外のイベントを自分たちで考えたり、誘致できるようになれば、365日スポーツで盛り上がる街作りを目指すことができる。それを次の目標にしています」


(注)レギュラーシーズン終了後に1〜3位のチームで行われるプレーオフのこと。セ・リーグとパ・リーグそれぞれで行われ、両リーグの代表を決める。その後、代表の2チーム間で日本シリーズが行われ、その勝者が日本一となる。
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