枯れることを知らない、生命を宿したセラミックの植物
ロンドンを拠点に活動するヒトミホソノに会いに行った。彼女とは初対面なので少し緊張しながらアトリエの呼び鈴を鳴らした。「遠い所から来てくださってどうもありがとうございます」。そんな丁寧な言葉とともに、彼女は私たちを柔らかな笑顔で迎えてくれた。
作品やメディアで紹介されている情報を通してしか彼女のことを知らなかっただけに勝手に想像を巡らせていたが、ご本人を目の前にしたらなんとも清々しい印象の女性だ。彼女の作品が生まれる現場に対面できることに興奮気味だったし、少し緊張もしていた私だったが、彼女の優しく心遣いのある振る舞いが気持ちを解放してくれた。私は彼女の仕事ぶりを間近で見て、写真に捉えるという幸運に恵まれたのだ。
作品やメディアで紹介されている情報を通してしか彼女のことを知らなかっただけに勝手に想像を巡らせていたが、ご本人を目の前にしたらなんとも清々しい印象の女性だ。彼女の作品が生まれる現場に対面できることに興奮気味だったし、少し緊張もしていた私だったが、彼女の優しく心遣いのある振る舞いが気持ちを解放してくれた。私は彼女の仕事ぶりを間近で見て、写真に捉えるという幸運に恵まれたのだ。
ヒトミホソノが作り上げる作品のほとんどが植物のモチーフとともにある。美しいフォルムの器の、内にも外にも植物がうごめいている。自然をモチーフにした表現は人の感情に訴えかける力が強いものだが、ヒトミホソノの作品の中にある植物たちは、繁殖力とでもいおうか、独特のざわめきがあり、それが彼女の作り上げるものの持つ魔力だろう。極精密に作られたほぼ実物大の花や葉が、器の形を支えてそこにあるようにさえ見える。
私たちが訪れる前にすでに仕事を始めていた彼女に、しばらく作業の様子を見せてもらうことにした。白っぽい粘土の塊を彼女が触っていくと、実物大の花びらに変化して、トレイに一枚一枚並べられていく。イギリスの土が、彼女の手を介して極精密なセラミックの植物世界に生まれ変わっていく。
私たちが訪れる前にすでに仕事を始めていた彼女に、しばらく作業の様子を見せてもらうことにした。白っぽい粘土の塊を彼女が触っていくと、実物大の花びらに変化して、トレイに一枚一枚並べられていく。イギリスの土が、彼女の手を介して極精密なセラミックの植物世界に生まれ変わっていく。
数日前に完成したという作品が窯の中でひっそりと息を潜めている。シダの葉が器の縁から上へ上へと這い上がっていて、縄文式土器の炎が立ち昇るイメージにも連なるように見えてくる。その白い器の内側から隅々に至るまで巡っているシダの葉、焼き締められて永遠に凝固されたはずの土が、生きた植物に見えてしまうからすごい。この葉の生命力は枯れることなど知らないようだ。
ウェッジウッドとのコラボレーション
ヒトミホソノの作品は、イギリスの大英博物館にも2点収蔵されているほどで、彼女の作品は近年注目され続けているが、つい最近まで同じく大英博物館で開催されていた「マンガ展」(https://www.britishmuseum.org/whats_on/exhibitions/manga.aspx)でも、普段とは違った作風のマンガをモチーフにした作品が展示されていた。
この度イギリスの代表的な陶磁器ブランド「ウェッジウッド」がヒトミホソノとのコラボレーション作品を完成させ、今秋日本に上陸するという。ウェッジウッドは18世紀から積極的に外部デザイナーとのコラボレーションをしてきたが、アーティスト・イン・レジデンスという形をとって、一人のアーティストがベテランの職人たちとの連携で作品を作り上げたのは初めてのケースだ。ウェッジウッドの代表作、ジャスパーを元にヒトミホソノが手がけた作品など数点が各地で公開されるので、ぜひとも注目したい。(https://www.wedgwood.jp/hitomihosono/)
イギリスのストーク・オン・トレントにあるウェッジウッドの工房で、このプロジェクトに関わった職人たちにも話を聞いたが、彼女の妥協のないリサーチとテスト、共同作業には彼らも大いに共感したようだった。大きな仕事を一緒に成し遂げた喜びは今も冷めやらない様子だ。テストピースを私に見せながら、当時の「細か過ぎて終わりがないようにさえ感じられた」という作業についての苦労話を聞かされた。
イギリスのストーク・オン・トレントにあるウェッジウッドの工房で、このプロジェクトに関わった職人たちにも話を聞いたが、彼女の妥協のないリサーチとテスト、共同作業には彼らも大いに共感したようだった。大きな仕事を一緒に成し遂げた喜びは今も冷めやらない様子だ。テストピースを私に見せながら、当時の「細か過ぎて終わりがないようにさえ感じられた」という作業についての苦労話を聞かされた。
難しい仕事ほど情熱が込められているというもの。職人たちの自信と誇りのある笑顔は本物だった。ヒトミホソノとの仕事は、彼らにとってもかけがえのない、忘れがたいものとなった。
ヒトミホソノのウェッジウッド作品についての問い合わせ先
ウェッジウッド
Tel.03-6380-8159
ウェッジウッド
Tel.03-6380-8159