現代美術家を志した学生時代
「実は、大学3年生までファッションデザイナーになろうと思ったことが一度もなかったんです」と話すのは、日本を代表するファッションブランド『White Mountaineering』のデザイナー相澤陽介氏だ。相澤氏は多摩美術大学の染織デザイン学科を卒業後、『コム・デ・ギャルソン』に入社し、2006年に自身のブランドであるWhite Mountaineeringを立ち上げた。
相澤氏にクリエイティブの原点を振り返ってもらうべく、多摩美術大学で過ごした学生時代について尋ねると次のような答えが返ってきた。
「もともとは現代美術家になりたかったので、ずっと八王子の山奥で制作をしていました(笑)。しかし、美術業界は社会とのつながりが見えづらいところもある業界で、僕はヒップホップも含め同世代カルチャーも好きだったので、実際、美術だけにどっぷり浸かれない心境でもありました。ものづくりの方向に進みたくても、ずっと美術をやっていくことへの疑問があり、そこから自分にもっとフィットするファッションへと進んでいったのです」
相澤氏にクリエイティブの原点を振り返ってもらうべく、多摩美術大学で過ごした学生時代について尋ねると次のような答えが返ってきた。
「もともとは現代美術家になりたかったので、ずっと八王子の山奥で制作をしていました(笑)。しかし、美術業界は社会とのつながりが見えづらいところもある業界で、僕はヒップホップも含め同世代カルチャーも好きだったので、実際、美術だけにどっぷり浸かれない心境でもありました。ものづくりの方向に進みたくても、ずっと美術をやっていくことへの疑問があり、そこから自分にもっとフィットするファッションへと進んでいったのです」
自身のブランドであるWhite Mountaineeringを2006年に立ち上げてからは、世界最大のメンズファッション見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ」のゲストデザイナーとして招かれるなど、世界が注目するファッションデザイナーへの階段を着実に登り続ける。
サッカーから得るストロングポイント
さらに相澤氏は、2019年からサッカーJ1チーム「北海道コンサドーレ札幌」のクリエイティブディレクターに就任し、世間を驚かせた。
サッカーのプレー経験を持たないという相澤氏だが、サッカーというスポーツに対する親近感を常に感じ、White Mountaineeringの成長を描くうえでインスピレーションの源になってきたという。初めて招かれた「ピッティ・イマージネ・ウオモ」を振り返りながら次のように語る。
サッカーのプレー経験を持たないという相澤氏だが、サッカーというスポーツに対する親近感を常に感じ、White Mountaineeringの成長を描くうえでインスピレーションの源になってきたという。初めて招かれた「ピッティ・イマージネ・ウオモ」を振り返りながら次のように語る。
「僕らが海外で何かやろうとすると、それはサッカーの弱小チームが巨大クラブに試合を挑むのと同じ状況だったんです。つまり世界的に有名なメゾンブランドが揃う大きなフィールドでいかに爪痕を残していくか、が一番の関心事でした。
僕が好きなクラブのアタランタ(イタリアのサッカーリーグ・セリエA所属)は、小さな町のチームですが、選手の育成に力を入れていて、外国人枠もほとんど使わず、自分たちで選手を育てるという方針からブレることなく長年注力しています。これはWhite Mountaineeringの『しっかりとしたコンセプトを決めたうえで行動する』という姿勢にリンクしてきます。つまりサッカーと僕の仕事とはオーバーラップする点が数多くあるんです」
僕が好きなクラブのアタランタ(イタリアのサッカーリーグ・セリエA所属)は、小さな町のチームですが、選手の育成に力を入れていて、外国人枠もほとんど使わず、自分たちで選手を育てるという方針からブレることなく長年注力しています。これはWhite Mountaineeringの『しっかりとしたコンセプトを決めたうえで行動する』という姿勢にリンクしてきます。つまりサッカーと僕の仕事とはオーバーラップする点が数多くあるんです」
「服を着るフィールドは全てアウトドア」と掲げるWhite Mountaineering。今でこそ街中にアウトドアファッションが増え、多くのブランドが同様のコンセプトを展開しているが、White Mountaineeringは街とアウトドアを融合させた先駆けといって間違いない。
「東京には東京のトレンドがあり、アウトドアだけでいいのだろうか、と思うこともあります。しかしそれでもアウトドアウェアをベースにしたファッション作りを続けるのは、海外に出て、成功するためには自分のストロングポイントをいかにして強められるかということが重要になってくるとの信念からです。これはアタランタのクラブ経営に似ていると勝手に思っています(笑)。
人口10万人くらいの町のチームが、インテルやユベントス(同じくセリエA所属)などの強豪チームと戦う際、どのタイミングで攻めていくのか。5万人のスタジアムの中で数千人のサポーターしかいないときはどうやって応援をするのか。また毎年のようにスポンサーが変わるので、ユニフォームが変わったり、チームのカラーリングが変わったり。
僕がよく観戦するイタリアリーグでは、目まぐるしいスピードで変化が起きています。こういう変化を見ることが、ブランドを海外でどう打ち出していくかということにひもづいてくるのです。サッカーは、デザインの方法論とビジネスの方法論、双方の意味合いで大変参考になるところがあります」
「東京には東京のトレンドがあり、アウトドアだけでいいのだろうか、と思うこともあります。しかしそれでもアウトドアウェアをベースにしたファッション作りを続けるのは、海外に出て、成功するためには自分のストロングポイントをいかにして強められるかということが重要になってくるとの信念からです。これはアタランタのクラブ経営に似ていると勝手に思っています(笑)。
人口10万人くらいの町のチームが、インテルやユベントス(同じくセリエA所属)などの強豪チームと戦う際、どのタイミングで攻めていくのか。5万人のスタジアムの中で数千人のサポーターしかいないときはどうやって応援をするのか。また毎年のようにスポンサーが変わるので、ユニフォームが変わったり、チームのカラーリングが変わったり。
僕がよく観戦するイタリアリーグでは、目まぐるしいスピードで変化が起きています。こういう変化を見ることが、ブランドを海外でどう打ち出していくかということにひもづいてくるのです。サッカーは、デザインの方法論とビジネスの方法論、双方の意味合いで大変参考になるところがあります」
イタリアで受けるインスピレーション
相澤氏は、サッカーのみならず、自身の“ホームグラウンド”であるファッションでも、イタリアブランドからインスピレーションを受けることが多いという。
「カバンにしてもジャケットにしても、イタリアのハイブランドは、いいものを作ろうという意識がとても高い。彼らの真摯なものづくりの姿勢を間近に見ることで、共感を得たり、自分も立ち返らないと、という思いになります。
イタリアのものづくりは、スキルや歴史からアイデンティティが明確に見えてくるので、本当の意味でものづくりに向き合わないと、まともなものができてこないんです。そこがとても気持ちいいですよね。良い意味でプリミティブな伝統が今も残っているんです」
ファッション、そしてサッカー。イタリアで受ける数多くのインスピレーションは、White Mountaineeringの仕事にダイレクトにフィードバックされる。さまざまなものづくりの姿勢を柔軟に吸収することで、相澤氏は、海外で戦っていくための“唯一無二のストロングポイント”を見極めているのだろう。
「カバンにしてもジャケットにしても、イタリアのハイブランドは、いいものを作ろうという意識がとても高い。彼らの真摯なものづくりの姿勢を間近に見ることで、共感を得たり、自分も立ち返らないと、という思いになります。
イタリアのものづくりは、スキルや歴史からアイデンティティが明確に見えてくるので、本当の意味でものづくりに向き合わないと、まともなものができてこないんです。そこがとても気持ちいいですよね。良い意味でプリミティブな伝統が今も残っているんです」
ファッション、そしてサッカー。イタリアで受ける数多くのインスピレーションは、White Mountaineeringの仕事にダイレクトにフィードバックされる。さまざまなものづくりの姿勢を柔軟に吸収することで、相澤氏は、海外で戦っていくための“唯一無二のストロングポイント”を見極めているのだろう。