CAR

“F”を究めた垂涎のスポーツカー、
レクサスRC Fの真価に迫る

2019.09.09 MON
CAR

“F”を究めた垂涎のスポーツカー、
レクサスRC Fの真価に迫る

2019.09.09 MON
“F”を究めた垂涎のスポーツカー、レクサスRC Fの真価に迫る
“F”を究めた垂涎のスポーツカー、レクサスRC Fの真価に迫る

富士スピードウェイをはじめとする世界有数のサーキットで走りを鍛え上げられ、サーキット走行から日常でのドライブまでシームレスにこなす性能を備えた、レクサスのハイパフォーマンスモデル “F”。同シリーズの最新モデル、新型レクサス「RC F」を、モータージャーナリストの島下泰久氏が富士スピードウェイで試乗。その真価に迫った。

Text by Yasuhisa Shimashita
Photographs by Hirohiko Mochizuki

速さの質にこだわったプレミアムスポーツカー

レクサスの「F」とは、すなわちハイパフォーマンスの象徴である。サーキット走行までこなせる圧倒的な動力性能、運動性能を実現しながら、日常域では快適な走りを楽しめるのが、その根幹。スペックだけを重視するのではなく、走らせて心踊る。速さそのものだけでなく、その質にこだわったプレミアムスポーツである。

そんなFの歴史は2007年の「NAIAS(北米国際自動車ショー)」で幕を開けた。ここで発表された「IS F」は、ISのボディに当時の「LS600h」譲りのV型8気筒5リッター自然吸気エンジンを搭載することで圧倒的な高性能を実現し、市場から大いに喝采を浴びたのだ。
「高い限界性能と、意のままに操る喜び」というコンセプトを妥協なく追求した「RC F “Performance package”」
「高い限界性能と、意のままに操る喜び」というコンセプトを妥協なく追求した「RC F “Performance package”」
特筆すべきは、デビュー以降も毎年のように改良、進化を続けて、さらに完成度を高めていったことである。ユーザーと向き合い、その声を開発にフィードバックして一層の高みを目指す。それはブランドとユーザーの絆を深めることにもつながった。

そうしてIS Fは、それまでのレクサスがリーチできていなかったハイパフォーマンスを求めるユーザーに訴求する本格的なスポーツモデルとして、レクサスの新たな世界を創出する重要な役割を担ったのである。

さらに、その間の2010年にはレクサス初のスーパースポーツカー、「LFA」が世界限定500台で発売される。カーボンファイバー製の車体に、最高出力560psを発生するV型10気筒4.8ℓ自然吸気エンジンを搭載したこの「LFA」は、まさに「F」が目指す世界を象徴する存在として大きなインパクトを放つこととなった。

“量産型”Fモデルの第二弾が登場したのは2014年。舞台は同じNAIASだった。ここで発表された「RC F」は、国際的なモータースポーツシーンでの活動を見据えてプレミアムスポーツクーペのRCをベースとすることで、一層のハイパフォーマンスを実現していた。

さらに、2015年には「GS F」が登場。IS F以来の4ドアセダンボディのFの投入で、現在に至るラインアップが揃った。

レーシングカーにインスパイアされたスタイリング

 V型8気筒5リッター自然吸気エンジンは最高出力354kW(481ps )と最大トルク535N・mを発生させる
V型8気筒5リッター自然吸気エンジンは最高出力354kW(481ps )と最大トルク535N・mを発生させる
発表から5年。RC Fに商品改良が行なわれ、またも2019年1月のNAIASにて最新モデルが世界にお披露目された。そもそも驚異的なボディ剛性の高さなど、Fの存在を前提に開発されたRCをベースとするRC Fは、改良されたV型8気筒5リッター自然吸気エンジン、初採用となるTVD(トルク・ベクタリング・ディファレンシャル)などによって優れた走行性能を実現していた。

しかしながら、このセグメントの競争は苛烈で、ライバルたちも次々と進化していく。そんな中でFの存在感を際立たせるべく、新型RC Fは飛躍的な進化を目指して開発されたという。求めたのは「高い限界性能と、意のままに操る喜び」。単なる化粧直しではなく、走りの性能向上に徹底的にこだわった。
スタイリングにはGT500をはじめとするレーシングカーにインスパイアされたデザイン要素を採用している
スタイリングにはGT500をはじめとするレーシングカーにインスパイアされたデザイン要素を採用している
実際の改良点を見ても、その哲学は明らかだ。スタイリングは、国内最高峰の自動車レースであるSUPER GTのGT500やGT300、世界的なレースカテゴリであるGT3といったレーシングカーにインスパイアされたもので、デザイン要素すべてが機能、すなわち速さに裏打ちされたものとなっている。ベースとなったRCや、他のレクサス車のエレガントさとは一線を画するスパルタンなたたずまいと言える。

しかも、その車体はボディ剛性をさらに高めながら、20kgの軽量化を実現している。他にもエンジン、トランスミッションを含む駆動系、サスペンション、電子制御などありとあらゆる部分が改良され、いわゆるマイナーチェンジにもかかわらずタイヤまで新設計としているのだから驚く。
そして極めつきは“Performance package”の設定だ。CFRP製の外板パーツや固定式リアスポイラーなどの空力デバイス、カーボンセラミックブレーキやチタンマフラーの採用、そしてまさにグラム単位の軽量化などにより、車両重量は従来型比、実に70kg減を実現した。成人男性1人分を下ろしたのにも等しい軽量化は、当然ながら加速だけでなく、制動、旋回という走りのすべての面に効いてくる。
高い空力性能、専用セッティングのサスペンションなどと相まって、サーキットにおける「高い限界性能と、意のままに操る喜び」というコンセプトを妥協なく追求したモデルである。
CFRP製外板パーツや固定式リアスポイラーなどの空力デバイスが与えられた「RC F “Performance package”」
CFRP製外板パーツや固定式リアスポイラーなどの空力デバイスが与えられた「RC F “Performance package”」

“F”を再定義する新型RC F

実際に富士スピードウェイでステアリングを握った新型RC Fは、まさにスペック以上の進化を実感させた。吸気系が改良されたV型8気筒5リッター自然吸気エンジンは、スロットル特性を変更し、またファイナルギア比を下げた効果もあり、アクセル操作に対して活き活きと反応し、加速も勢いを増している。

ドライブモード切り替え制御を採用したAI-SHIFT制御によって、8速SPDS(電子制御オートマチック)の変速もさらに切れ味鋭く、Dレンジのままでも刺激的な走りを楽しめる。もちろん、操作と同時に瞬時に反応するパドルシフトを駆使して走らせるのも快感である。大排気量の自然吸気エンジンならではの豪快なサウンド、そして意のままになるレスポンスは、まさにここにこだわったFだけの世界だ。

そして何より感心させられ、唸らされたのがコーナリングである。特にパフォーマンスパッケージは、低速コーナーでも高速コーナーでも操舵に対する応答性が非常に正確で、しかも安定性が際立って高いから、自信をもってステアリングを切り込んでいけるし、アクセルを思い切り踏み込める。

481psものハイパワーを誇るだけに、特に富士スピードウェイでいえば後半セクションの低速コーナーの連続する区間では、ブレーキングをきっかけに、あるいはアクセルを深く踏み込むことでテールスライドに持ち込むのも容易だが、滑り出してからのコントロール性も素晴らしく、まさに自在に操れるのだ。
モータージャーナリスト島下泰久氏(右)と、Fモデルの走りの作り込みを統括する“F TAKUMI”の平田泰男氏(左)
モータージャーナリスト島下泰久氏(右)と、Fモデルの走りの作り込みを統括する“F TAKUMI”の平田泰男氏(左)
速いというだけでなく、質へのこだわりを感じさせる走りを作り込むのは、レクサスのTAKUMI=匠の役割である。Fモデルの操縦安定性、乗り心地の味付けを総括する“FのTAKUMI”である平田泰男氏は言う。

「Fモデルは、必ずニュルブルクリンク(難コースとして知られるドイツのサーキット)でテストして走りを煮詰めています。ここをいかに安心して速く走らせることができるか。高い安心感を土台に、いかに楽しく走れるかを追求しています」

何より大事にしているのは4輪の接地感。サスペンションをしなやかに動かし、タイヤの性能を引き出すことに常に重点を置いているという。それは当然、サーキットだけでなく一般道でも安心感、ひいては楽しさにつながる。
「Fモデルはニュルブルクリンクでいかに安心して速く走らせることができるかを追求している」と語る平田氏
「Fモデルはニュルブルクリンクでいかに安心して速く走らせることができるかを追求している」と語る平田氏
「ヒヤヒヤする走りは、別の意味では楽しいかもしれませんが、求めているのはそういう世界ではありません」

その中でも、今回設定されたパフォーマンスパッケージは、より尖ったセッティングを施したそうだ。狙いはサーキットである。

「弦本(祐一)チーフエンジニアの意向で、Sport S+モードでは富士スピードウェイのような路面のフラットなサーキットで最高の力を発揮できるようにまとめています。一般道やニュルブルクリンクなどでは、Normalモードがいいですね」

新型RC Fの開発をとりまとめた弦本チーフエンジニアは「このクルマはFの再定義です」と話す。
その言葉、乗れば誰もが深く噛みしめられるはずである。Fを究めた垂涎のスポーツカーの登場である。

この記事はいかがでしたか?

ご回答いただきありがとうございました。

RECOMMEND

LATEST