VISIONARYMAGAZINE BY LEXUS

EXPERIENCE

人間の「原体験」に訴えかける
エンジニアリング・アート

2019.09.02 MON
人間の「原体験」に訴えかけるエンジニアリング・アート

「LEXUS DESIGN AWARD」の初代受賞者であるデザイン・エンジニアの吉本英樹氏。その受賞作品である「INAHO」が2018年にレクサスから販売されるようになっただけでなく、世界の名だたるブランドとコラボレーションするなど活動の地平を広げている。INAHOを作るきっかけとなったLEXUS DESIGN AWARDへの想いなど、世界を舞台に活躍する吉本氏に話を聞いた。

Text by Rie Noguchi
Photographs by Ari Takagi

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COLLABORATED WITH

初代グランプリを受賞した吉本氏

2013年よりスタートした「LEXUS DESIGN AWARD」は、革新的なアイデアで豊かな社会やよりよい未来を創造する気鋭のクリエイターを発見し、育成と支援を目的とした国際デザインコンペティションだ。

受賞者は、世界で活躍するクリエイター陣によるメンターシップ制度を通じた創作プロセスの支援を受けられるだけでなく、そこから生まれたプロトタイプ作品をミラノ・デザインウィークという大舞台で展示し世界に自身の作品をアピールする機会が与えられる。デザイン界における一気通貫のコンペとして世界各国の若手クリエイターから注目されており、その映えある第1回目のグランプリ受賞者が吉本英樹氏だ。

吉本氏の現在の活動の場は、「エルメス」「グローブ・トロッター」を始めとする世界的ブランドとの仕事など、国境を越えて広がっている。今回、LEXUS DESIGN AWARD受賞から6年が経った吉本氏の現在の活動に迫った。
稲穂の揺れが懐かしい個人的体験を想起させる
稲穂の揺れが懐かしい個人的体験を想起させる
吉本氏は、東京大学で航空宇宙工学を研究したのち、イギリスのロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)に入学するという、まさに異色の経歴の持ち主だ。まずは、吉本氏とLEXUS DESIGN AWARDとの出合いについて聞いた。

「2012年の秋にLEXUS DESIGN AWARDの募集をウェブで知りました。その年の審査基準となるテーマが“モーション”で、当時、僕はRCAで博士課程でしたが、論文のテーマが“パルスとリズム”でした。これは、振幅する運動、繰り返し反復する運動をデザインの要素として取り入れるという研究テーマで、この“モーション”というのは僕にぴったりだったんです。発表の場がミラノ(デザインウィーク)で、しかもレクサスの冠で作品を出展できるのがこのアワードの魅力でした」

そんな吉本氏がLEXUS DESIGN AWARDのために制作したのが「INAHO」だ。人が近くを通るとセンサーが感知し、穂が揺れ、光り始める。その名の通り“稲穂”をイメージした作品である。カーボンファイバーチューブで作られた茎に当たる部分は10ミリ秒単位でデジタル制御され、動きによって風を感じることができる。テクノロジーを駆使したこの作品の誕生には、吉本氏の異色の経歴が背景にあるのだろうか。
吉本氏がLEXUS DESIGN AWARDのために制作した「INAHO」
「もともと、航空宇宙工学や人工知能の研究をしていたので、もちろんエンジニアリングは強みではあります。でも特定の技術を使うこと自体が目的になることはありません。テクノロジーはあくまでもツールのひとつです」

吉本氏はテクノロジーを駆使して何かを作るというよりも、作品のコンセプトを丁寧に構築していくことがもっとも重要だという。

「例えばINAHOの穂に当たる部分は、穴がたくさん空いただけの形状なので一見しただけでは稲穂には見えないでしょう。でも金色にゆっくり揺れる様子を見ると、記憶にある田園風景とリンクするのではないかと思います。僕にとって重要なことは、作品を見ている人に夏の終わりや夕方の田園風景を想起させるきっかけにしてもらいたいということです。INAHOに近づくと、ふわっと揺れる。その体験が、個人的な体験や思い出と結びつくことで、作品が表現する以上のポテンシャルを引き出すと思っています」
作品のコンセプトを丁寧に構築していくことがもっとも重要だという吉本氏

自然の力を“借りた”コミュニケーション

前述のように大自然の風景など、人間の原体験につながるクリエイションをコンセプトとする吉本氏。作品づくりの軸となるアプローチについて聞くと次のような答えが返ってきた。

「僕にとっては“メタファー”が重要であり、そのために“借りる=borrow”という行為を特別なものだと捉えています。例えば、稲穂のようなメタファーを使うと、それをきっかけにして見ている人の中に存在する“景色”を借景して表現のポテンシャルを増幅することができる。つまり僕の中にあるイマジネーションだけで作品を構成するのではなく、鑑賞者のいろいろなイマジネーションを“借りる”のです。

八百万の神の国に生まれ育っているので、少なからず自分は自然の一部であると意識しています。その意味で、自然への畏怖があり、自然という圧倒的に超越したパワーを“借りる”ことで、作品を鑑賞する人たちとコミュニケーションできたらと思っています」
インタビューに答える吉本氏

活躍の場を世界に移した現在

LEXUS DESIGN AWARDの初代グランプリに選ばれたのち、吉本氏はロンドンにデザイン・エンジニアリング・スタジオ「Tangent」を設立。その後、ミラノサローネはもちろんのこと、パリやドバイの展覧会・ギャラリーなどにも招待され、急速的に活躍の場を世界に移すこととなる。

例えば2016年には、中東のドバイで開催されたドバイデザインウィークの場で、世界でもっとも高いタワー「ブルジュ・ハリファ」に映し出すアニメーションと連動させた音楽を手がけた。ブルジュ・ハリファのファサードは全面LEDで覆われているため「世界でもっとも巨大なLEDスクリーン」(吉本氏)を駆使した作品だ。さらに2017年夏には、エルメスのロンドン主要3店舗とダブリンにあるショップのウィンドウディスプレイもデザインしている。

「エルメスに限らず、本当に自由にやらせてもらっています。どんなクライアントも、僕自身の表現を認めてくれて、とてもいい関係ができていると思います」
Salon International de la Haute Horlogerie2019 Hermes「HERE」
Salon International de la Haute Horlogerie2019 Hermes「HERE」
Salon International de la Haute Horlogerie2019 Hermes「HERE」
Salon International de la Haute Horlogerie2019 Hermes「HERE」
直近では2019年3月、ジュネーブで開催された国際高級時計サロン(Salon International de la Haute Horlogerie=SIHH)において、吉本氏の最新作「HERE」がエルメスの展示ブースを飾った。

直径3.5メートルでゆっくり回転するこの地球は、古い太陽電池から切り出した20,480枚の三角タイルで覆われている。複雑で美しい青色を帯びた太陽電池に新たな価値を見出し、芸術作品に昇華させた意欲作だ。

躍進を続ける吉本氏。最後に、LEXUS DESIGN AWARDへの想いを聞いた。

「僕は幸運にもこの賞のおかげで舞台に引き上げていただいて、それがビッグチャンスにつながっているのは紛れもない事実です。INAHOは、ベルギーのブリュッセル空港にあるラウンジスペース『THE LOFT by Brussels Airlines and Lexus』に納品されたり、『CRAFTED FOR LEXUS』で販売する商品ラインナップに選んでいただいたりと、受賞の1回のみで終わるのではなく、ずっと関係が続いているのもありがたいです。

受賞時に、世界的プロダクトデザイナーのサム・ヘクト氏のもとで個人指導をうけるというのも、とても貴重な経験でした。あんなに有名な方が、学生の僕たちに真摯に向き合ってくれて。サムさんの本気を感じました。」

続けて吉本氏はこう語る。

「レクサスといえばデザイン業界からも注目されるブランドです。その力を、学生だった僕が借りることができ、現在にいたっています。LEXUS DESIGN AWARDは、独立して自分の名前でキャリアを築いていこうとする人にとって最大のチャンスであり、数多あるデザイン・アワードの中でもベストの賞だと思います。」

2019年9月14日からロンドンで行われるLonon Design Festivalでは再びLEXUSとコラボレーションし、過去最大規模のINAHOの展示を始め、吉本氏のこれまでの作品が一挙に展示される。

LEXUS DESIGN AWARDの受賞をきっかけに世界で活躍する吉本氏。今後、どのような作品を作っていくのか楽しみだ。
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