VISIONARYMAGAZINE BY LEXUS

EXPERIENCE

東京大学のスタートアップ支援プログラム──
「東京大学 FoundX」

2019.08.23 FRI
東京大学のスタートアップ支援プログラム──「東京大学 FoundX」

2019年4月にスタートした「東京大学 FoundX」は、世界に通用するスタートアップを創出すべく同大学に立ち上げられた支援プログラムだ。仕掛け人は、日本マイクロソフトでテクニカルエバンジェリストを務めた経験をもつ馬田隆明氏。この革新的なプログラムについて馬田氏に聞いた。

Text by lefthands
Photographs by Isamu Ito(lefthands)

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参加者に合わせた3つのコース

東京大学では、大学と民間企業の連携を推進する産学協創推進本部が中心となって、インキュベーション施設を用意し、積極的にベンチャー支援を行ってきた。

例えば、本郷キャンパス内に設置された「東京大学アントレプレナープラザ」や「東京大学アントレプレナーラボ」では、バイオサイエンス系の実験ができるようになっている。馬田氏は施策のひとつである「東京大学 本郷テックガレージ」でディレクターを務めている。

「オフィスの提供や、事業化・人材募集の支援などを行うこれらの施策は、主に東大で研究された技術が用いられている事業が対象になっています。また、オフィスへの入居には賃料がかかることもあり、実質的には事業としてすでに動き始めている企業に限られていました」

そこで、スタートアップを志す起業家の支援プログラムとして2019年4月にスタートしたのが、「東京大学 FoundX」だ。

同プログラムには、参加者の事業環境に合わせて3つのコースが用意されている。どのコースも、チーム内に東京大学の在学生、卒業生、研究者のいずれか1名以上が参加していることがエントリーの条件で、参加者が施設やプログラムを無償で利用できるのが大きな特徴となっている。

まず、スタートアップのアイデア自体を模索する「Fellows Program」。こちらでは、6ヵ月の個人向け育成プログラムが組まれており、2ヵ月ごとに参加者の新規募集が行われる。

「アイデアがまだ決まっていないが、プロダクトを作る意志があるという場合は、まずこちらのプログラムを利用することになります」

2019年4月の取材時点では、勤務先で仕事をしつつ、今後2年以内にスタートアップを始める予定という応募者が大多数だった。そのため、勉強会やミーティング等のイベントは夜に開かれている。

コワーキングスペースを利用できるので、他の参加者と意見交換して互いに刺激を与えあったり、アイデアを提供しあったりする機会が得られるのが魅力的だ。
ミーティングでは、アイデアに悩む参加者にスタッフや他の参加者たちがアドバイスすることもあるという
ミーティングでは、アイデアに悩む参加者にスタッフや他の参加者たちがアドバイスすることもあるという
スタートアップの具体的なアイデアがあるチームを対象にしているのが、最大6ヵ月の期間で実施される「Pre-Founders Program」。Fellows Program参加者がこちらにステップアップすることも可能だ。後述する「Founders Program」への助走期間という位置付けとなっており、アイデアをより具体的にするためのプログラムが組まれる。

また、企業の立ち上げと売却を繰り返すシリアルアントレプレナーが、新たな事業を立ち上げるためにFounders Programに入るまで利用するといったケースも想定されている。こちらのコースでも、コワーキングスペースを利用できる。
もとレストランだった場所を改装した開放的なコワーキングスペース
もとレストランだった場所を改装した開放的なコワーキングスペース
最終フェーズのFounders Programは、FoundXのメインプログラムである。期間は9ヵ月で、プログラム内容は以下となる。

「最初の3ヵ月で顧客開発とプロダクト開発を行い、次の3ヵ月で資金調達ストーリーを作りつつ、トラクション、つまりユーザーを獲得し、事業を成長させるための推進力の獲得を目指します。

最後の3ヵ月では、投資家などに事業をプレゼンテーションするピッチの練習や、資金調達を行います。そして、1200万円以上調達できた時点で、プログラム修了となります」

Founders Programでは、個室を利用できるのも特徴だ。また、同じタイミングで起業した創業者仲間とネットワーキングするための支援も行うので、起業後の人脈作りや協業といった側面もケアされている。
参加者が利用できる個室。いたるところにインスピレーションを与えてくれる英語のメッセージが掲示されている
参加者が利用できる個室。いたるところにインスピレーションを与えてくれる英語のメッセージが掲示されている

起業後のケアを含めた支援

プログラムがスタートしたばかりの現在、稼働しているのはまだFounders Programのみだが、Pre-Founders ProgramとFellows Programもすでに募集が始まっている。

また、同プログラムでもうひとつ力を入れているのは、経理や労務、法務といったバックオフィス業務に対するケアだ。

「スタートアップにおいて、バックオフィス業務は大きな負担や障害になってしまいがちです。そのため、専門の講師を呼び、勉強会を開くだけでなく、同プログラム参加者が共有できるバックオフィスサービスを検討しています」

このように、スタートアップするまでの支援だけでなく、その後の経営までケアする体制は、積極的にインキュベーションを行ってきた東京大学の経験が活かされているといえる。

さらにFoundXでは、英語でのコミュニケーションが推奨されているのも特筆すべき点だ。

「参加応募も英語での記入となっており、オンラインでのコミュニケーションなども基本的に英語で行われます」と馬田氏。

これは、海外で通用するグローバルスタンダードなスタートアップを目指してほしいと願う方針からだという。
バックオフィスの専門家を招いた相談会の様子
バックオフィスの専門家を招いた相談会の様子
馬田氏によると、プログラムが立ち上げられた2019年4月から参加しているチームは3つある。

「ロボット開発、漫画の自動翻訳プラットフォームの開発、そしてテクノロジーを利用した保険の販売仲介、いわゆるインシュアテックの開発を、それぞれ検討しています」

参加者の間からは、定例ミーティングによりプロジェクトにリズムができることや、周囲のチームとお互いを刺激し合えること、またスタッフによるメンタルケアも大きなサポートになっている、という声が聞かれた。

ともすれば孤独になりがちなスタートアップにおいて、こうした環境は非常に有意義だろう。プログラムはまだ始まったばかり。今後、本郷キャンパスから世界に通用する企業が誕生することを期待したい。
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