VISIONARYMAGAZINE BY LEXUS

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パンクな精神で既成概念を覆す、
片山正通の“深掘り力”

2019.06.10 MON
パンクな精神で既成概念を覆す、片山正通の“深掘り力”

日本国内のみならず、ニューヨークやロンドンをはじめ海外でも数多くのインテリアデザインを手がけてきた、Wonderwall代表の片山正通氏。空間によるコミュニケーションを通して、任意のコンセプトを伝える力の源泉について聞いた。

Text by Ryo Inao
Photographs by Arata Kato

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音楽との出会い、インテリアデザイナーへの道

片山正通氏の仕事は、既存のインテリアデザインの枠にとどまらない。

東京・青山から始まりドバイ、そしてニューヨークへと展開した「INTERSECT BY LEXUS」は、自動車ブランドが運営するスペースでありながら、「あえて自動車を売らない」という逆説的なテーマに立って作り上げた空間。レクサス愛好家が集まり、経験や価値観をシェアするクラブハウスのような場をコンセプトとして、ブランドの世界観をあますところなく伝えている。

また、「世界を豊かにする日本」というメッセージを発信するために外務省が企画した施設「JAPAN HOUSE London」でも、本質的な日本を伝えるインテリアを見事に現出してみせた。まさに、空間をデザインすることによって言語に頼らないコミュニケーションを創出する片山氏。そのクリエイティビティの源泉について聞くと、原体験は音楽にあるという。

「中学生時代に出会ったロックミュージックによって、それまで自分の中にあった既成概念が覆されました。音楽には、ファッション、アートワーク、アーティストの立ち振る舞いなどクリエイティビティに関するたくさんの要素が含まれています。

さらには、コンサート会場のデザインや、それらを取り巻くビジネスや政治など……。そのすべてが音楽そのものと一緒にスーッと私の中に入ってきたんです」
インスピレーションの源泉となる音楽のコレクションは膨大だ
インスピレーションの源泉となる音楽のコレクションは膨大だ
高校に上がると、ザ・ローリング・ストーンズのアルバム『Tattoo You』(1981)をはじめ、彼らの作品を片っ端から聴いたという片山氏。

洋楽に精通した親戚の影響もあり、ザ・バンドやデビッド・ボウイ、レッド・ツェッペリンなどのレコードも貪るように聴き、時代を築いた名盤に数多く触れた。なかでもパンクロックの突き抜けるような力強さに魅了されたという。

実家が家具店を営んでいた片山氏は、高校卒業後、親の勧めでインテリアデザインの学校へ進学した。パンクのレコードが買えたり、DCブランドのショップが軒を連ねていたりと、学校のある大阪は地元岡山にはない魅力に溢れていた。

「インテリアデザインを学び始めた時点では、実はまだインテリアにも、そもそもデザイン自体にも大きな興味をもっていませんでした。

しかし次第に、空間をつくることはあらゆるクリエイティブなジャンルと親和性があり、自分が好んで通うレコード店やアパレルショップのような場所をつくる仕事こそが、インテリアデザインなんだという認識にたどり着いたのです」
「音楽を起点に興味の枝が広がっていった」と片山氏
「音楽を起点に興味の枝が広がっていった」と片山氏
漠然とレールが敷かれていた家業への道で出会ったインテリアデザインと、積極的にフォローしていたカルチャーへの憧憬がリンクした決定的瞬間だった。

「自分という人間とインテリアデザインが結びついてからは、音楽にまつわるカルチャーがより一層のインパクトをもって目に入ってくるようになりました。あのレコードジャケットのデザイナーは誰か、スタイリストは、カメラマンは誰なのか……。

それまで必ずしも興味を惹かれなかった要素が、どんどん存在感を増してくるようでした。さらに派生して、このアーティストはどんなアーティストに影響を受けたのか、このカメラマンは他にどんな作品を手がけているのかと、音楽を幹にしてどんどん興味の枝が伸びていきました。この伸び続ける枝を追いかけることがその後の私の人生そのものともいえますね」
コンセプチュアルアートの中に「パンクの精神」を見つけたと語る
コンセプチュアルアートの中に「パンクの精神」を見つけたと語る

アートのなかに見出したパンクの精神

片山氏がデザイナーとして活動を開始した1980年代末、日本はバブル経済の中にあった。当時は景観に関する規制が緩やかで建築の自由度が高かったこともあってか、日本各地に世界中の建築家による意欲的な建造物が次々と建てられた。その様子を、片山氏は羨望の眼差しをもって見つめていたという。

「お祭りのような光景に胸を踊らせていました。若かりしフィリップ・スタルクやザハ・ハディドが日本に作品を残しています。彼らのようにリアルタイムで建築をアップデートしていく先達を追う一方、ル・コルビュジエやその従兄弟のピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンのようなミッドセンチュリー・モダニズムを代表する巨匠たちの作品も好んでチェックしていました」
アートコレクターとしても知られる片山氏のスタジオにはアート作品が溢れている
アートコレクターとしても知られる片山氏のスタジオにはアート作品が溢れている
「自分や社会が思い込んでいることにどれだけ疑いを投げかけ、新たな概念を立証できるか、その大切さを教えてくれたのがコンセプチュアルアートです。

以前は見るだけでしたが、自分で所有するようになると作家自身から直接創作意図を聞けるようになり、表現の根底にある概念をより理解できるようになりました。

アートは尖っていて、時に暴力的でもある。そんなコンセプチュアルアートの中にロックミュージックの姿勢を見つけ、かつてパンクロックを盛んに聴いていた頃の感覚をなぞるように、興味を向けているんです」
ライアン・ガンダーによる「The danger in visualising your own end」
イギリス人コンセプチュアルアーティスト、ライアン・ガンダーによる「The danger in visualising your own end」
ある場をクライアントの目的に沿った空間にすること、つまり出題者に回答を示すのがインテリアデザイナーの立場だとすれば、片山氏はしばしば出題者の意図を超えた回答をしてみせる。

「インテリアデザイナーとしてスキルを提供するのは基本で、そのプロジェクトの意義や将来性など、依頼されたフレームを超えた先まで見据えることを心がけています。

私にインスピレーションを与えてくれた先人たちに鑑みると、みんな既存のフレームのなかに収まっていない。ある問いに対して、彼らは新たな解決方法で取り組んでいました。既成概念を覆す人々こそが、私にとってもっともクールな存在なんです」

片山正通 Masamichi Katayama
Wonderwall® 代表、武蔵野美術大学 空間演出デザイン学科 教授。1966年岡山県生まれ。国内外で数々のプロジェクトを手がけるインテリアデザイナー。近作に、外務省主導による海外拠点事業 「JAPAN HOUSE London」(ロンドン)、「ピエール・エルメ・パリ 青山」(東京・青山)などがある。2016年には作品集『Wonderwall Case Studies』をドイツ・ゲシュタルテンから出版。
www.wonder-wall.com
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