JOURNEY

東京大学本郷キャンパスで味わう絶品和菓子 ──
「廚 菓子 くろぎ」

2019.04.24 WED
JOURNEY

東京大学本郷キャンパスで味わう絶品和菓子 ──
「廚 菓子 くろぎ」

2019.04.24 WED
東京大学本郷キャンパスで味わう絶品和菓子 ── 「廚 菓子 くろぎ」
東京大学本郷キャンパスで味わう絶品和菓子 ── 「廚 菓子 くろぎ」

東京大学本郷キャンパス内に立つ「廚 菓子 くろぎ」。大学にありながら客の多くは和菓子好きや観光客が大半を占めるという。蕨もちや葛きりをはじめとした最高級の和菓子を堪能できるだけでなく、「猿田彦珈琲」とコラボレーションしたスペシャルブレンドコーヒーも楽しめる人気店を訪ねた。

Text & Edit by lefthands
Photographs by Isamu Ito (lefthands)

隈研吾建築の中にある和菓子店

東京大学本郷キャンパスの南側にある春日門をくぐるとすぐ目に飛び込んでくるのが、大学の建造物らしからぬ外観を持つ「ダイワユビキタス学術研究館」。世界的建築家、隈研吾氏が手掛けた、杉板をウロコ状に張り巡らせたデザインの建物は、学生のみならず、日本最高峰の学び舎をひと目見ようと訪れる観光客をも引きつけている。2014年にオープンしたこの先鋭的な教育研究施設には人気のカフェも入居する。それが「廚 菓子 くろぎ」だ。
「廚 菓子 くろぎ」は、春日門から入ってすぐの「ダイワユビキタス学術研究館」1階にある
「廚 菓子 くろぎ」は、春日門から入ってすぐの「ダイワユビキタス学術研究館」1階にある
同店の葛きりと蕨もちは、本来、東京・湯島にあった日本料理の名店「くろぎ 本店」(現在は芝大門に移転)のコース料理で甘味として提供していた人気メニュー。本家で追求してきた「料理屋の和菓子」を、より高い次元で実現させるために独立出店したというわけだ。

作り立てのおいしさを提供すること、職人が一つひとつ目の前で作るライブ感を味わってもらうこと、そしておもてなしの心という本家のコンセプトは、カフェ形態を採る同店にも受け継がれている。
一つひとつ手仕事で作る職人の向こうには、「くろぎ」の由来である二本の丸太が重なったマークが見える
一つひとつ手仕事で作る職人の向こうには、「くろぎ」の由来である二本の丸太が重なったマークが見える
看板メニューは、前述の葛きりと蕨もち、そしてかき氷。いずれも伝統を受け継ぐ和菓子の代名詞というべき存在だが、その全てが五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)のバランスと食感を大事にするという、本家直伝のきめ細やかな理念から作られている。

「吉野葛」をぜいたくに使った葛きり

短冊形の葛きりを口に入れた時にまず感じるのは、喉越しの良い清涼感だ。弾力もあり、透明感のある見た目とは裏腹に、食べ応えがある。
葛きりは飲み物とのセットとなっている。黒蜜につけても透明感を失わない
葛きりは飲み物とのセットとなっている。黒蜜につけても透明感を失わない
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当然のことながら素材にも徹底したこだわりを持つ同店で使用されているのは、奈良県産の「吉野葛」。山々に囲まれ、清流に恵まれた吉野の里で育てられた葛粉をぜいたくに使用している。
店内カウンターに飾られた葛の根と葛粉
店内カウンターに飾られた葛の根と葛粉
味付けは、国産大豆を使用したきな粉と黒蜜の2種類。黒蜜には桜の花の塩漬けが浮かばせてあり、甘さだけでなくアクセントとしての塩気も楽しめる。

五感で楽しめる蕨もち

無農薬栽培の上質国産ワラビ根から作られ、その漆黒のような艶から「黒い宝石」とも呼ばれる京都産の黒本(くろほん)蕨粉100%使用の「蕨もち」は、注文を受けてから職人がその場で練り上げるので、出来たてのもちもちとした食感を十分に堪能できる。

味付けには葛きりと同様に、黒蜜ときな粉、そして青大豆から作る青きな粉と宇治抹茶をブレンドした、うぐいすきな粉の3種類を用意。繊細な味の違いを楽しめる。また、好みのきな粉をまぶしてから黒蜜をかけるという食べ方もおすすめだ。
蕨もちも飲み物とのセットとなっている。箸で持ち上げると、その柔らかさが感触として分かる
蕨もちも飲み物とのセットとなっている。箸で持ち上げると、その柔らかさが感触として分かる
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季節を問わずに楽しめるかき氷

人気メニューの最後はかき氷。通常メニューとして黒蜜きなこを提供しているほか、月ごとに限定メニューを1種類用意している。特に黒蜜きなこはボリュームもあり、季節を問わず食べに来る人が多いという。
かき氷は単品と飲物セットを用意
かき氷は単品と飲物セットを用意
黒蜜きなこは、きな粉の上に小豆とクルミがトッピングされている。頬張ると、氷が淡雪のように舌の上で溶けつつ、きな粉の香ばしさが口の中に広がっていく。また、しょうゆで塩気を加えているので、量が多くても飽きがこない。五味のバランスを重要視する同店ならではの計らいだ。

おもてなしの精神で提供されるサービス

飲物セットで提供されるのは、「猿田彦珈琲」とのコラボレーションにより生まれたブレンドコーヒー。和菓子を引き立てるように、特別に味を調えたものだ。
コーヒーも1杯ずつバリスタがハンドドリップするこだわりぶりだ
コーヒーも1杯ずつバリスタがハンドドリップするこだわりぶりだ
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店内の飲食だけでなく土産物も充実している。特に蕨もちを家庭でも味わえる「まゆら」は人気商品とのこと。ブレンドコーヒーの「絹しずく」や煎茶の「雫」もあるので、自宅で再度和菓子と一緒に楽しむのもいい。
手頃な干菓子や芋けんぴもあり、用途によって選ぶことができる
手頃な干菓子や芋けんぴもあり、用途によって選ぶことができる
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利用者は、大学生よりも一般客の方が圧倒的に多いという同店。人気店のため順番待ちになることも多いが、席が空いたら電話で連絡してくれるので、店先で並んで待つ必要がないのはうれしい。順番待ちの時間は、観光を兼ねて一般開放されている本郷キャンパスを散策するのもいいだろう。
開放的なテラス席は、夏だけでなく冬も快適に利用できる
開放的なテラス席は、夏だけでなく冬も快適に利用できる
素材を厳選し、職人による手作りにこだわり、五味のバランスを考え抜く。そして、時には意外とも思える味付けを加えることで、常に新しい味覚を追求する、廚 菓子 くろぎ。伝統を昇華させた上に革新を生み出す和菓子作りは、隈研吾建築の思想にも合致するものだろう。

東京・本郷という歴史ある場所で、これからも彼らの挑戦は続いていく。


廚 菓子 くろぎ
東京都文京区本郷7-3-1
国立大学法人 東京大学 本郷キャンパス春日門側
ダイワユビキタス学術研究館1階
Tel. 03-5802-5577
http://www.wagashi-kurogi.co.jp/

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ご回答いただきありがとうございました。

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