ART / DESIGN

アートユニット「ANOTHER FARM」が見つめる
テクノロジーの進歩と生命、そして人間との関わりとは?

2019.02.22 FRI
ART / DESIGN

アートユニット「ANOTHER FARM」が見つめる
テクノロジーの進歩と生命、そして人間との関わりとは?

2019.02.22 FRI
アートユニット「ANOTHER FARM」が見つめるテクノロジーの進歩と生命、そして人間との関わりとは?
アートユニット「ANOTHER FARM」が見つめるテクノロジーの進歩と生命、そして人間との関わりとは?

アーティストの尾崎ヒロミ(スプツニ子!)氏とファッションデザイナーの串野真也氏によるアートユニット「ANOTHER FARM」。初の代表作品の展示が行われた「INTERSECT BY LEXUS - TOKYO」でのトークセッションの模様をお届けする。

(読了時間:約7分)

Text & Edit by Hitomi Miyao
Photographs by Bun

レクサスが活動内容に共振して実現した、初の代表作品展示

アーティストのスプツニ子!氏が本名の尾崎ヒロミ名義で、デザイナーの串野真也氏とともに活動するアートユニット「ANOTHER FARM」。自然界から得たインスピレーションをもとに人間と自然の新しい関係性を模索しながら、科学者やエンジニアらとコラボレートして最新テクノロジーと伝統技術を駆使した創作活動を行なっている。

ユニットの本格始動にあたって、インスタレーション作品「Modified Paradise」を発表。“テクノロジーの進歩と生命、人間の関わり”をテーマに、蚕にクラゲやサンゴの発光遺伝子を組み込んで生まれた「光るシルク」を用いて西陣織で紡いだ、動物をモチーフとした光る立体作品やドレスを制作した。
光るシルクと一般的なシルク、箔糸を折り合わせて模様を表現した織地は、まさに最新技術と伝統の融合
光るシルクと一般的なシルク、箔糸を折り合わせて模様を表現した織地は、まさに最新技術と伝統の融合
この作品発表の場となったのが、「INTERSECT BY LEXUS - TOKYO」。最先端のバイオテクノロジーによって生まれた光るシルクを西陣織で織り込み、新旧の伝統や技術を融合して生まれた作品は、レクサスが掲げる「常に社会や環境に配慮しながら、テクノロジーを創造的に活用し、未来に向けた革新的なビジョンを提供するブランドであることを目指す」ブランド理念とも合致する。レクサスがクリエイターの姿勢や表現テーマに共感したことで、今回のインスタレーション展示が実現した。

会場で行われたトークセッションに登壇したのは、「ANOTHER FARM」の尾崎ヒロミ(スプツニ子!)氏と串野真也氏、そして今回の作品の生地制作を担当した京都の西陣織の老舗「細尾」の細尾真孝氏。
「ANOTHER FARM」の尾崎ヒロミ氏(中央)、串野真也氏(右)、「細尾」の細尾真孝氏(左)
「ANOTHER FARM」の尾崎ヒロミ氏(中央)、串野真也氏(右)、「細尾」の細尾真孝氏(左)
尾崎 「Modified Paradise」という作品は、蚕にクラゲやサンゴの遺伝子を組み込むことで、蚕の出す糸が光るようになる技術に出合ったことがきっかけで生まれました。新しいバイオテクノロジー技術によって生み出されるものや、それによって引き起こされる問題に興味があって、これを使って何かできないかと思ったんです。

串野 そこでお声がけしたのが西陣織の老舗「細尾」の細尾さんでした。「細尾」の西陣織は、一般的な着物に使われる織り布をアップデートして、幅の広い織物にすることで壁紙として使えるようにするなど、呉服業界とはまた違う動きをしています。きっとコラボレートしたら面白くなるのではないかと思いました。

細尾 最初にこの話を聞いたときに思ったのは、単純にバイオテクノロジーと西陣織の組み合わせってかっこいい!ということ。それまで身近ではなかったですが、面白いと思いました。

尾崎 「細尾」さんの活動で衝撃を受けたのは、織物の幅を広げて織れるようにしたことで、西陣織という伝統の幅を広げているということです。

細尾 伝統はすごく強いものだから、その分振り幅があって、多少のことでは壊れないんです。であれば、今回も伝統を壊すつもりでやればきっと面白いものが生まれるなと思いました。テクノロジーと伝統技術なんて、すごいコントラストですし。未知の糸だったので織るにあたっていろいろと大変でしたが、面白かったです。
光るシルクは熱を加えると発光しなくなるという特性があるため、試行錯誤を重ねたという
光るシルクは熱を加えると発光しなくなるという特性があるため、試行錯誤を重ねたという
尾崎 そうやって生まれたのが今回の作品「Modified Paradise」です。制作にあたって繰り返し考えたのが、蚕にクラゲの遺伝子を入れることは、生命のあり方をどんどん変えていっているということでした。ですが人間は昔から、研究や美意識のために遺伝子組み換えを行っているんですよね。

串野 日本でいうと江戸時代から、桜、朝顔、菊、椿など植物の品種改良は盛んでした。このようにわれわれ人間が美の探求のためによりよいものを求めてきた結果、交配が増えたという側面もありますよね。

細尾 蚕だって人間が何千年も交配を続けて、より絹糸を取りやすいように改良してできた産物です。

尾崎 ほかにも人間が品種改良した生き物はいろいろあります。遺伝子組み換えが広く行われるようになった現在、それが美意識や倫理観、生命と密接に関わってきています。だからこそ、アートを通して考えたり、警鐘を鳴らしたりする大事なステージにきているのではないかと思いました。

串野 そこから生まれたのが、猫や鶏、うさぎといった動物や人間をぬいぐるみという一見愛らしいものにモディファイした今回の作品です。
品種改良されながら人間と生活をともにしてきた猫や鶏を、愛らしいぬいぐるみとして表現した
品種改良されながら人間と生活をともにしてきた猫や鶏を、愛らしいぬいぐるみとして表現した
うさぎの中には電動仕掛けのおもちゃが仕込まれ、動き回るようになっている
うさぎの中には電動仕掛けのおもちゃが仕込まれ、動き回るようになっている
尾崎 「Modified Paradise」のModifyという言葉には書き換えるという意味もあって、書き換えた先がParadise、つまり楽園という少し含みを持たせたタイトルにしています。

串野 人間もすべてのものをコントロールしているようで、実は支配されている側面もあるのではないかと思います。そこでぬいぐるみの周囲に黒い枠のフレームを作って、空間自体を「Modified Paradise」として制作しました。メッセージを直で伝えるより、ファンタジー性のあるニュアンスがほしかったので、ドレスは人のモチーフとして採用しています。

尾崎 あからさまでストレートなものにするより、ドリーミーな中で問いかけをしたかったんです。いいと感じる人もいれば、不気味だと思う人もいるはず。いまはデジタルアート全盛期ですが、そこに足りないもの──例えばウェットさや生命のあり方のようなものへの想いを込めました。京都の西陣織という伝統的な工芸品が持つ文化を取り入れることで、デジタルアートとは違う深みや側面を出すことができたと思っています。

串野 デジタルアートも人の手で作られるものですが、西陣織は20あまりの工程をすべて職人がやっていますよね。

細尾 そうですね。だいたい3キロ圏内くらいの地域にいろいろな職人がいて協業する生産性のなかで作っています。

串野 西陣織としてそのプロセスがずっと続いていることに理由があるし、人の手から生まれるものならではの美しさがあるのではないかと思いました。
「スプツニ子!の活動とは別の形でアーティスト表現をしたいと思って生まれたのが今回のユニット」と尾崎氏
「スプツニ子!の活動とは別の形でアーティスト表現をしたいと思って生まれたのが今回のユニット」と尾崎氏
「これからもいろいろな人と組んで、新しいアプローチをしていきたい」と串野氏
「これからもいろいろな人と組んで、新しいアプローチをしていきたい」と串野氏
「伝統を重んじながら革新に取り組むレクサスと関わりの深い場所での展示にシンパシーを感じた」と細尾氏
「伝統を重んじながら革新に取り組むレクサスと関わりの深い場所での展示にシンパシーを感じた」と細尾氏
尾崎 作品を見れば見るほど、伝統が持つ時間の豊かさや深みと、バイオテクノロジーのウェットさを出すことができたのではないかと思います。

細尾 これから人類が月に行ったりするなかで、人とは? 美とは? そして生物とは? と、さまざまなことを問われるときがくるのではないかと思います。そういう意味でも、この作品はすごく未来的なアプローチだと感じました。

串野 意思をもった決断、目的をもったものづくり、思想や未来のビジョンを見据えたものづくりが大切なのではないかと考えています。そのうえで、見る人の感性に問いかけるような作品として成立しているのが理想です。

細尾 人間の感覚は、科学でも追いつくことができないものですからね。

串野 そうですね。今後もその感覚をもっと磨いて、作品を作っていきたいと思います。

尾崎 感覚を大切にしながらイメージする未来は、なんだかぐっときますよね。これからもそのときの社会状況や現象にあわせて、テクノロジーと伝統を融合した、メッセージ性のある作品を通して社会に問いかけていきたいと思っています。

2019年5月には、ニューヨークの「クーパーヒューイット・スミソニアン・デザインミュージアム」で開催されるアートトリエンナーレでの展示が決定しているという「Modified Paradise」。バイオテクノロジーという先端技術と伝統を融合した、美しくも強いメッセージ性を持った作品が、世界にどう受け入れられるかにも注目したい。

本記事でご紹介した作品は、Media Ambition Tokyo 2019 でも御覧いただけます。
是非、足を運んでみてはいかがでしょうか。
展示期間:2019年2月23日(土)- 3月3日(日)

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