VISIONARYMAGAZINE BY LEXUS

CRAFTSMANSHIP

世界へと羽ばたく
唯一無二の酒器「TRAVEL CHOCO」。
そこに込められた伝統文化への想いと未来

2019.02.04 MON
世界へと羽ばたく唯一無二の酒器「TRAVEL CHOCO」。そこに込められた伝統文化への想いと未来

脈々と受け継がれる日本文化を世界に発信するには、時代に合うものへと昇華させる必要がある。日本酒の味わいを豊かにしてくれるこれまでにない錫酒器を生み出した、プラットフォームブランド「NAGAE+」の鶴本晶子氏と富山県高岡市に拠点を構えるダイカスト総合メーカー「ナガエ」の長柄洋一社長、そして日本酒スタイリストの島田律子氏に話を聞いた。

(読了時間:約7分)

Text by Shigekazu Ohno & Kaori Kawake(lefthands)
Photographs by Isamu Itoh

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美しい心が宿る日本のモノづくり

世の中が健康志向へと移行しつつある昨今、日本酒が世界的ブームとなっている。麹が臭みを消し食材の旨味を引き出してくれる日本酒は、さまざまな料理との相性が良く、その斬新なマリアージュは世界の食通からも注目を集めている。

並行複発酵という、世界で最も難しいと言われる複雑な発酵方法でつくられる日本酒。それは日本が誇る伝統技術の結晶であると島田律子氏は話す。さらに、日本の酒器に金属、陶磁器、漆器など豊富なバリエーションがあるのもまた、日本の「モノづくり」と連動しているからだと言葉を重ねた。

「お酒の味というのは、五感で感じるものなんですね。お酒を飲むということは、神に近づく神聖な行為とされてきました。日本のモノづくりには素晴らしいストーリーがあります」と島田氏。
日本酒スタイリストの島田律子氏。日本酒は日本が誇る伝統技術の結晶であると語る
日本酒スタイリストの島田律子氏。日本酒は日本が誇る伝統技術の結晶であると語る

五感で味わえば、お酒はもっと美味しく

お酒を楽しむうえで、酒器は切っても切り離せない大切な要素。「同じお酒でも使う酒器によってまったく味が変わります。トクトク……と器に注ぐ音、冷んやりと唇に感じる温度、さまざまな要素が合わさって味わいとなります」と島田氏。

飲み口を移動させることで、飲み物の味わいを旅するようにさらに豊かに味わえる『TRAVEL CHOCO』は、日本酒好きな島田氏と、その友人でもあるプラットフォームブランド「NAGAE+」の鶴本晶子氏との何気ない会話から生まれた。「お花見に持っていける、持ち運びやすい“My ちょこ”があったら……。せっかくのお酒をプラスチックのコップで飲むのはもったいない!」。そんな発想に「ひとつの酒器でいろんなタイプのお酒を楽しめるものをつくれないか」と斬新なアイディをプラスしたのは島田氏。割れない、傷が付きにくい、お酒がおいしく飲めるという条件をかなえてくれる理想の素材が錫だった。
MADE IN JAPANの商品で「上質な小休憩」を提案。人々の日常生活を輝かせたいと語る鶴本氏
MADE IN JAPANの商品で「上質な小休憩」を提案。人々の日常生活を輝かせたいと語る鶴本氏

桔梗のつぼみがイメージソースとなった美しいカタチ

特に二人がこだわったのは見た目の「美しさ」。アイデアを形にするうえで、何よりも苦労したのはデザインだった。「これまでにないものをつくるからこそ、参考にできる情報もなく悩みました」と島田氏、鶴本氏は口を揃えて話す。

そんなとき、鶴本氏の知人であるワインソムリエが紫色の着物を着ていた島田氏を一目見て、桔梗のつぼみをイメージしてはと話が上がった。「桔梗のつぼみが花開くように」──そんな物語のような着想を得て、富山県高岡市の鋳物職人の手によって仕上げられたのだ。モダンで洗練された実用的なデザイン。脈々と受け継がれてきた伝統文化を、今の生活に合うデザインに見事に変えて輝かせた。

つくり手となるナガエとの幸運な出会い

「NAGAE+」がつくる多種多様な錫器。『TRAVEL CHOCO』はこの技術力のうえに製品化された
「NAGAE+」がつくる多種多様な錫器。『TRAVEL CHOCO』はこの技術力のうえに製品化された
鶴本氏がクリエイティブ&マネージングディレクターを務めるブランド「NAGAE+」は、富山県高岡市の中堅ダイカスト総合メーカー「ナガエ」が2015年に始めた新規事業に当たる。

「当社は主に、高岡市の伝統工芸品に相当する仏像や銅像などを手がけるアート事業部と、アルミダイカスト製品などの生産を手がけるテクノ事業部の2本柱でやってきましたが、海外に対しての競争力を上げるためにも、また3Dプリンターなど台頭する新技術に負けないためにも、日本独自のものづくりを提案していく必要性を感じていました。もともとはニューヨークで現代アーティストのマネジメントをしていた鶴本さんとの出会いがあって、他の優れた技術を持つ企業との横の連携も見据え、日本のものづくりのプラットフォームブランドとしての存在意義を持つ『NAGAE+』をスタートさせました」

そう語るのは、ナガエの4代目社長を務める長柄洋一氏。いまの時代に求められるものづくりを世界規模で考えたとき、デザインや感性という視点からものを見て考え、さらに販路や宣伝の仕方までディレクションできる鶴本氏と手を携えての取り組みによって、新しいステージに立てると確信したという。
ナガエ代表取締役社長の長柄洋一氏。膝元である高岡市の本社以外に、ベトナムにも工場を持つ
ナガエ代表取締役社長の長柄洋一氏。膝元である高岡市の本社以外に、ベトナムにも工場を持つ
「これまで我々は商社でありメーカーでした。世界を知り、ブランドを知る彼女と一緒に、『NAGAE+』の新事業をブランド化することが新たなチャレンジと考えています」

一方、鶴本氏はナガエとの出会いによって新たな生きる道を見出したと語る。

「2001年のアメリカでの当時多発テロ事件のとき、私はニューヨークに住んでいました。大変なショックを受けて、何かもっと社会的な、人のためになることをしたいと願うようになりました。そんなときに日本の伝統技術に関わる仕事の機会を得て帰国し、その魅力に取り憑かれました。燕三条でもものづくりに関わりましたが、その後、偶然に長柄社長と出会って、自分のやりたいことを実現するための道筋が見えた気がしたんです。日本に受け継がれてきた伝統の技と、最先端のテクノロジー、あるいは感性を組み合わせて、毎日の生活を輝かせるような、ありそうでなかったものをつくろう、『美という光で世界を輝かせよう』という同じ気持ちを共有できたんです」

そんな2人の出会いから生まれた製品のひとつが、「TRAVEL CHOCO」であった。そして驚くべきことに、「TRAVEL CHOCO」は単体で完結するプロジェクトではなかったのだ。

「『NAGAE+』のブランドは、ここ高岡だけでなくもっと広域における生産者とも連携して、『Made in Japan』クオリティの商品を世界に打ち出していくことをミッションとしています。そこで我々が手がけた『TRAVEL CHOCO』に加え、ほかにも4カ所の卓越した技を持つ生産者の方々に鶴本さんの方から声をかけさせていただき、北信越5カ所でつくるトラベル器シリーズの企画を進めています。5つの器が完成した暁には、2019年2月にドイツで開催される世界最大級の消費財見本市『アンビエンテ 2019』で発表する予定です。同じ生産者の我々だからこそ、他の生産者たちを巻き込みながら、『NAGAE+』のブランドをハブにして一緒に世界に出ていくことができる、そう信じています」

そう語る長柄社長に、鶴本氏が言葉を重ねる。

「いまはまず、酒器をはじめとするホームウェア、アクセサリー、美容関連商品などから製品開発を進めていますが、ゆくゆくは暮らしに関わるすべてのものが揃うようなトータルブランドに育てていきたいと思っています。私たちだからこそできるものづくりを通じて、世界中の人たちの毎日の生活を輝かせていくお手伝いができたら嬉しいですね」

インタビューののち、本社に隣接する工場を案内してくれた長柄社長。砂型を用いた錫製のビアーカップの製造過程を見学させてくれた。
ひとつの型から2つのビアーカップをつくる。型離れをよくするために粉を振った後に砂を盛る
ひとつの型から2つのビアーカップをつくる。型離れをよくするために粉を振った後に砂を盛る
型に、270度に熱して液状になった錫を流し込む。固まるのにかかる時間はおよそ5分
型に、270度に熱して液状になった錫を流し込む。固まるのにかかる時間はおよそ5分
型を開け、砂を崩して固まったビアーカップを取り出す。金槌で叩き、中の砂を落とす
型を開け、砂を崩して固まったビアーカップを取り出す。金槌で叩き、中の砂を落とす
堰(せき)と呼ばれる錫の流し込み口部分をバンドソーで切り離す。本体以外の部分は再び溶かして使う
堰(せき)と呼ばれる錫の流し込み口部分をバンドソーで切り離す。本体以外の部分は再び溶かして使う
バリの部分をバフで研磨してなめらかにならす。作業は熟練した職人の手の感覚に頼っている
バリの部分をバフで研磨してなめらかにならす。作業は熟練した職人の手の感覚に頼っている
研磨の終わった1対のビアーカップ。砂型鋳物ならではの、味わいのある表面の素材感が美しい
研磨の終わった1対のビアーカップ。砂型鋳物ならではの、味わいのある表面の素材感が美しい
記事トップの画像:トランペット、白ワイン、赤ワイングラスの3つのカーブの連なりを持つ、これまでにない新しい錫酒器。


NAGAE+
https://nagae-plus.com/jp/
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