VISIONARYMAGAZINE BY LEXUS

CULTURE

新しい日本酒を世界へ。
自由な発想で快進撃を続けるWAKAZEの挑戦

2019.01.11 FRI
新しい日本酒を世界へ。自由な発想で快進撃を続けるWAKAZEの挑戦

洋食とペアリングするための日本酒をプロデュースし、2018年夏には東京・三軒茶屋に醸造所を併設したタパスバーをオープンするなど、ユニークな視点で新しい挑戦を続ける酒造メーカー「WAKAZE」。彼らのものづくりの姿勢に迫る。

(読了時間:約5分)

Photographs by Takayuki Abe
Text by Mami Okamoto
Edit by Hitomi Miyao

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自社の蔵をもたない、新時代の日本酒メーカー

既存の酒蔵に製造を委託する、一風変わったスタイルで日本酒づくりを手がける「WAKAZE」。洋食とペアリングできるようにワイン樽で熟成した日本酒や、柑橘、ハーブを取り入れた日本酒など、これまでにない新しい発想の日本酒を世に送り出している。

代表の稲川琢磨氏は、ボストンコンサルティンググループでの経営戦略コンサルタントを経て、2016年に独立。日本酒ベンチャー「WAKAZE」を立ち上げた。“洋食に合わせる日本酒”というアイデアの原点は、フランスに留学し「食」と「酒」を新しい角度から見つめ直したことにあるのだという。
「既存の概念にとらわれない日本酒づくりを通して、日本酒の可能性をもっと広げていきたい」 と語る稲川氏
「既存の概念にとらわれない日本酒づくりを通して、日本酒の可能性をもっと広げていきたい」 と語る稲川氏
「フランスでも日本酒は親しまれていますが、淡麗辛口なものが多いので、洋食に合わせるには少しハードルが高いんです。濃い料理と相性がいい、香りの強い個性的な日本酒を造りたい、そう思ったことが大きなきっかけです。理想は、酸がしっかりしていて洋食とマリアージュできる、ワイングラスで飲むのに適した日本酒でした。ウイスキーでは一般的なウッドフィニッシュ製法(エイジング用の樽ではなく、ワインやシェリーの樽を使って風味をつける製法)で、日本酒を造ったら面白いのではないかと思ったんです」

アイデアはあったものの、東京で思い描いた日本酒をつくるのは至難の業。そこで、山形県は鶴岡市に拠点を移した。全国有数の米処であり酒造りも盛ん、海も山もあり食材も豊かな地域だ。また、地方で事業を立ち上げることにもメリットがあった。注目されやすいこと、資金が集めやすいこと、そしてマーケット的にも東京だと埋もれてしまうようなことが事業として成立しやすかったという。

「2年ほど山形に移住して、酒造りの基盤を作りました。蔵を持たずに委託するというスタイルはクラフトビールなどでは見受けられますが、蔵がないとメーカーとして認められない風潮がある日本酒では特に例が少ないんです。ですが幸運なことに、山形で奔走する中で出会いに恵まれて理想の酒造りを実現することができました」
ORBIA、FONIAともに3種類の展開。FONIAは瓶内二次発酵させたスパークリングもラインナップ
ORBIA、FONIAともに3種類の展開。FONIAは瓶内二次発酵させたスパークリングもラインナップ
主力商品は、洋食とペアリングするワイン樽熟成の日本酒「ORBIA」と、ボタニカルSAKE「FONIA」の2シリーズ。ORBIAはワインづくりに使用したオーク樽で熟成させることによる酸味と甘みが特徴的だ。そしてFONIAは柚子や檸檬(れもん)、山椒、生姜を日本酒造りに取り入れた革新的なお酒で、米の発酵中にこれら和のボタニカル原料を入れて薫りを調和している。どちらのシリーズもボディの強さと芳醇な香りが印象的。洋食に合わせやすいことから海外での評価も高く、日本ではミシュラン星付きレストランを含む、フレンチ、イタリアンや創作料理レストランで導入されている。

醸造所を併設したタパスバーを三軒茶屋にオープン

そして2018年7月、店内に併設したスペースで自家醸造を行う直営の飲食店「Whim SAKE&TAPAS」を三軒茶屋にオープン。WAKAZEのお酒と、日本酒に合うオリエンタルなタパスとのペアリングが楽しめる新しいスタイルが話題になっている。醸造所とバーはガラス一枚を隔てた距離にあり、醸造所を目前にしながらお酒を楽しむことができるのも魅力のひとつ。あえてガラス越しに見えるようにしたのは、お酒造りを身近に感じてほしいからだという。
三軒茶屋の栄通り商店街を抜けたところに位置する「Whim SAKE&TAPAS」
三軒茶屋の栄通り商店街を抜けたところに位置する「Whim SAKE&TAPAS」
「WAKAZEの全ラインナップが揃う直営店をやりたいと漠然と考えていたタイミングで社員と飲んでいて、どぶろくのパブをオープンしたらいいんじゃないかという話になったんです。小さな醸造所を併設して、そこでどぶろくを手造りしたら面白いのではないかと。お酒を飲むとやろうという熱量が出てくるので、その熱が醒めないうちに自分が先陣を切ってクラウドファンディングで資金を集めて、物件を探して……、あとはトントン拍子です。思いついてから半年くらいでオープンまでこぎつけました」

このエピソードは店名の原点にもなっている。「Whim」とは、英語で「ちょっとした思いつき」という意味。この店でお酒と料理を楽しみながら、他愛もない会話の中で新しい1歩を踏み出すきっかけになるような「思いつき」が生まれる、そんな場所になればという願いを込めたのだそうだ。店が生まれるきっかけになったどぶろくは、当初店頭のみでの提供だったが、フレッシュな風味が評判を呼んで、「三軒茶屋のどぶろく~白麹酛仕込み~」として商品化。これに続いて、新しい味わいのどぶろくを次々と全国展開している。
醸造所はテーブル席の真横。ここで造られたフレッシュな日本酒を常時3〜4種類提供している
醸造所はテーブル席の真横。ここで造られたフレッシュな日本酒を常時3〜4種類提供している
醸造所には4つのタンクがあり、週替りで新しい酒を仕込んでいる。そのため新商品開発に向けた革新的な日本酒を造ることができ、WAZAKEのラボのような役割を果たしているという。すでに定番となっているどぶろくのほか、現在はお茶を使った商品を製造中。醸造所で造られた酒は、一握りの取引先と店だけでしか楽しむことができないというレア感も手伝って、売りのひとつになっている。

「店と醸造所を併設したことで、メーカー時代にはなかったダイレクトなフィードバックサイクルを実現できました。ここで造ったプロトタイプの日本酒をたくさんのお客さまに飲んでもらって、集まった意見をもとにレシピを高速回転でブラッシュアップさせる。そしてレシピが完成したところで委託先の蔵で量産し、全国展開するといういいスパイラルが生まれています」

時には厳しいコメントもあるが、顧客の生の声は、商品開発するうえで大いに参考になっているという。「ここは自分たちが表現したいことやメッセージを伝えることのできる場所であり、ブランド発信の拠点。お酒だけでなく、野菜、肉、魚など、山形の豊かな食材を使ったタパスを出すことで、WAKAZEの酒造りの拠点である山形のPRにもなればいいと思っています」
店の壁には、WAKAZEの日本酒ができるまでの工程を図解したイラストが。醸造の仕組みを理解できる
店の壁には、WAKAZEの日本酒ができるまでの工程を図解したイラストが。醸造の仕組みを理解できる
マスカルポーネとドライフルーツのディップ¥550、ORBIA「LUNA」¥850、熟成庄内豚ロースハムのステーキ¥1,200
左から、マスカルポーネとドライフルーツのディップ¥550、ORBIA「LUNA」¥850、熟成庄内豚ロースハムのステーキ¥1,200
醸造所を足がかりに、着実にステップアップを続けるWAKAZE。国内のみならず、海外展開に向けても精力的に活動し、現在では北米、香港、フランス、シンガポール、タイなどへの輸出を実現し、各国で高く評価されているという。現在は、フランスに蔵を作るプロジェクトが進行中だとか。日本で生まれた「酒」を、フランス発の「SAKE」として、外国人に向けた新しいレシピで開発していくのが現在の目標だそうだ。そんなグローバルなプロジェクトの起点となっている三軒茶屋の小さな醸造所。ここから発信される新しい日本酒の今後に注目したい。

Whim SAKE & TAPAS
東京都世田谷区太子堂1-15-12
Tel.03-6336-1361
営業時間:月〜土18:00~23:00、日15:00〜21:00
定休日:水曜
https://wakaze.jp/whim/
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