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健康義務から人類を解放する、
完全食「COMP」の狙い

2019.01.07 MON
健康義務から人類を解放する、完全食「COMP」の狙い

シリコンバレーで誕生した、一つで人間が生きるのに必要な栄養素を全て摂取できるという“完全食”。健康志向が高まる昨今、日本で新たに開発を手がけた一人の人物が語った、完全食がもたらす、今と未来。

(読了時間:約6分)

Text by Norihiro Azumi(lefthands)
Photographs by Isamu Ito(lefthands)
Edit by Keisuke Tajiri

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“無駄な食事”を減らすために

「ソイレント」をご存じだろうか。アメリカ人のロブ・ラインハート氏が2013年に開発した、人間が生きるのに必要な栄養素を全て含んだ代替食品、いわゆる“完全食”と呼ばれるものだ。スタートアップを立ち上げようとしていた最中、極貧に喘いでいた彼にとって大きな問題だった、“食べる”ということに必要な経済的・時間的コストの削減を目的に開発をはじめたもので、何とも青年エンジニアらしいエピソードだ。そうして生まれたソイレントは同じような問題を抱えるシリコンバレーのエンジニアたちから大きな反響を集め、Kickstarterでは目標額の10万ドルをたった2時間で達成した。

こうした食にまつわる課題は、日本でも看過できないはずだ。現代人は食に溢れているからこそ生活習慣病のリスクと常に隣り合わせであり、それによって食品も健康が志向されるようになっている。そんななか、それ一つを摂取するだけで生きるのに必要な栄養素を全て摂取できる完全食は、私たちの食生活を大きく変える可能性を秘めている。
日本人の体質に合った完全食の開発を手がけるコンプ代表の鈴木氏
日本人の体質に合った完全食の開発を手がけるコンプ代表の鈴木氏
日本でも、完全食を開発した人がいる。株式会社コンプのCEO、鈴木優太氏だ。きっかけは東京大学大学院の博士課程を修了し、製薬会社に勤務していたときのこと。「僕にとって何かに没頭するときが一番楽しい瞬間なんです。そうなると食事の時間すら煩わしくなる。そこで、手軽に食べられるものを適当に摂取していたところ、病気で倒れてしまったんです」。

これを機に、自身の身体に合う完全食の開発に取り掛かるようになった鈴木氏。「趣味の時間を確保する手段として研究を始めたのに、いつの間にか開発そのものが目的になっていました」と語るように、次第に完全食の研究にのめり込んでいった。自身を人体実験として開発サンプルだけを摂取する日々をつづけ、その効果を確かめていったという。

従来の食へのアンチテーゼ

パウダー、ドリンク、グミタイプとユーザーのニーズに合わせたラインナップを揃える
パウダー、ドリンク、グミタイプとユーザーのニーズに合わせたラインナップを揃える
COMPの商品は、ドリンクとパウダー、そしてグミがあるが、共通してパッケージのデザインは食品らしからぬ、白を基調にした非常にシンプルなもの。その理由を、氏は食業界へのアンチテーゼであると語る。「世に溢れている食品のパッケージは、シズル感というか感情的に見せるんですよね。つまり、おいしそうに見せ、健康的なイメージを訴求する。でも本当に健康を増進できるかというと、そうとは限らないです」。

例えば、コンビニやスーパーにならぶ、脂肪の吸収を抑えるマークの入った商品たち。思わず手にとってしまいがちだが、具体的にどのくらいの効果があるのか明記されていないものもある。あるいは、サプリメントを摂る際、自分にどの栄養素がどのくらい不足しているのか正しく理解している人は多くないだろう。「そうした、曖昧さに満ちた世界を一掃したかったんです。何も考えずに、摂取するだけで全ての栄養素を補える完全食に過剰な演出は必要ないんです」。

ここで一つの疑問が浮かぶ。実利にかなった完全食をなぜ大手メーカーが開発しないのか、ということだ。「大企業の食品メーカーは戦前戦後からあるところが多い。伝統的な「満足においしく食べる」という価値が、いまも彼らのブランドメッセージの中心になっているからではないでしょうか」。しかし、今は飽食の時代であり、健康志向が高まる実情との乖離も見られる。そして、もう一つ問題なのは、栄養ばかりを追求すると明白に味が落ちるというジレンマに対して、決断がしにくいことだと鈴木氏は指摘する。健康のニーズが上がっているが、味を落として健康志向にすると消費者が離れていく――その矛盾が、曖昧な表現を生み出す一因というわけだ。

鈴木氏の話を聞いて驚かされたのは、国が定める栄養基準よりもよほど最近の栄養学は理解が進んでいるという事実だった。氏のチームは膨大な数の論文を参照し、専門家や研究者とディスカッションを重ねることで、独自のレギュレーションをつくりあげていった。そうして誕生したのが、2018年2月に出たパウダータイプの「COMP POWDER 4.0」だ。
必須アミノ酸やミネラルなど、健康に欠かせない栄養素をすべて満たす
必須アミノ酸やミネラルなど、健康に欠かせない栄養素をすべて満たす
「すべての食をCOMPに置き換える必要はありません。朝、時間がないときや、忙しいときに食べるものほど栄養バランスが乱れていることが多い。そこを置き換えるだけで、一番乱れているところが一番理想的になるわけですから、それだけでかなり改善します」。一日の砂糖の摂取量と糖尿病やガンの関係性は統計データですでに明らかにされている。その事実を聞いただけで、忙しさにかまけていい加減にしてしまいがちなタイミングの食事こそ完全食に置き換える意義があると分かる。

コミュニティから信頼を獲得していく

「競合が出てきたとしても、ああ、出たなくらいにしか思わないです」と語る鈴木氏だが、COMPがどう差別化を図っていくのか訊ねてみた。「意識しているのはコミュニティ作りです。COMPだから買いたいんだという要素を一つひとつユーザーに提供するのが大事だと思います。それは、ブランドに対する信頼性や、コミュニティの一員であることの価値ですね」。こう語るように、鈴木氏から消費者にコンタクトを取って会いに行くことも少なくないという。

「今の消費者は、エンジニアをはじめ、インドア趣味の人やゲーマー、あるいはクリエイターなど、主に一人暮らしの若い男性が中心ですが、いずれはあらゆる人たちに受け入れられるブランドになりたいですし、そういうフェーズに来たかなと思っています。次なるユーザーを獲得していくためのプロダクトとブランドを予測しながら設計しています」
「よいものをあるべき価格で提供したいので、大々的な広告は打っていません」と語る
「よいものをあるべき価格で提供したいので、大々的な広告は打っていません」と語る
現在、女性のユーザーも少しずつ増えているという。健康的に美容やダイエットを達成したいならきちんと栄養を摂らなければならないことを知っている層だ。あるいは、働き盛りの忙しいサラリーマンにもCOMPは最適だろう。「30代や40代というのは、健康について本気で意識し始める年齢層です。というのも、この年齢層は何らかの生活習慣病が顕在化する人が多いんです。COMPの商品自体が栄養について改めて考えるきっかけになればいいですね。COMPを通じて栄養のことをキチンと理解してもらうことで、仮にCOMPを摂取しないときでも、良い食事の選択ができる自分になっているはずです」。

何を食べても健康につながるシステムへ

鈴木氏が目指すのは、完全食だけを食べるという未来ではない。食べること、寝ること、運動することは娯楽としての面も持ち合わせている一方で、生きるうえでの必須要件ともいえる。「食事とそれ以外の楽しいことを天秤に掛けたとき、食事が負けることもある。その瞬間、必須要件の食事という側面が顕在化します。何かに夢中になりたい瞬間こそ、完全食のCOMPは真価を発揮するのです」。

最後に、未来の食がどう変貌していくのか、そしてCOMPはどう発展していくのか、そのビジョンを聞いた。

「何を食べても、結果として健康につながるシステムが出来れば次世代かなと思います。リコメンドで完全に調整してくれる発想でもいいですし。栄養について何も考えなくとも、どんな自由なことをしても大丈夫というソリューションが少しずつ出来ていくんじゃないかな。COMPも、健康義務から人類を解放してQOLを最大化することを目指しています。今は栄養の部分に着手しているので、食の面で貢献できればと思います」
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